無理矢理にでも、纏めたったわい!……ってな訳で、今回でカッシスワーム戦は終了ですね。やっぱりここで切っておいた方が、続きが書きやすいので。
そのため、やっぱり長くなっていますが……。まぁ、いつもの事ですね、ハッハッハ!私の言葉を真に受けてはいけませんぜ!
あ、それと……(無理矢理)前後編にまとまったので、全話のタイトルを少し変更しておきました。具体的に言えば、(激戦)を(前編)に変更……ですね。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。
「あ゛~!ウザッたい……心底からウザッたいわ!」
(結局……こうなりますか……)
戦闘開始してしばらくが経過したが、お互いに決め手となるような攻撃は入っていない。それは、ディミディウスが非常に堅実な戦法を展開しているからだろう。
ブルー・ティアーズに積まれている武装は、大半がエネルギー兵器である。そうと分かれば、ディミディウスはセシリアを脅威とみなさない。
それと引き換え猛攻を仕掛ける鈴であったが、こちらも大した脅威ではないと判断。何故ならば……攻撃の軌道が、大雑把で読みやすいからだ。
大体の攻撃は、盾と剣で防げる……。防げない攻撃は、エネルギーシールドで対策が可能。となれば、ディミディウスはマトモに戦うと言う選択肢を早々に放棄した。
立体映像による分身も交え、小マメにワームからのエネルギー吸収をすれば完璧だ。後はチャンスがあれば狙って行けばいいし、なければ基本的に防御のスタンスを取れば問題ない。
ディミディウスは、二人の消耗を誘っているのだ。その目的を、戦っている二人こそが一番に理解していた。それ故の鈴の苛立ちなのだろう。
鈴はダンダン!と、足場が凹みそうなほどに地団太を踏む。やはり気が短い鈴の様子に、セシリアは内心で溜息を吐いた。落ち着けと言っても、何か策が無い限り鈴は噛み付いて来るだろう。
(どうした物でしょう……。せめて、真さんかラウラさんが居て欲しかったものですわ……)
無い物ねだりではあったが、セシリアの脳内には真とラウラの姿が浮かぶ。あの両者は、セシリアから見て十分な策士として映っていた。
真は、相手の嫌がる事を考え……言いようは悪いが、いやらしい攻めが得意である。その性格から来るのか、相手の腹の中を読むのも上手く、そう来たか!と思わせるのが真だ。不測の事態には弱いが……。
一方ラウラは、知っての通り軍人ある。人を使うのが上手く、指揮をやらせれば楯無に次ぐ上手さだろう。多少は頭が固い部分はあるにしても、ラウラもしっかりと罠を張る術を心得ている。
(わたくしを推して……彼らの様な策を……)
セシリアは、鈴とディミディウスを交互に見つめた。殺気をむき出しにする鈴……棒立ちなディミディウス。だが、隙は全くない。
その隙を切り崩すには、鈴の力が必要不可欠だ。ならば……このじゃじゃ馬を、何か策を持って手懐けるしかない。セシリアは思考を巡らせる……奴を倒すための策を考える……。
『策を考えるコツだぁ?ん~……まぁ、分析する事だろうよ。戦闘開始時から、策を立て始めた瞬間までを逐一思い出してだな……そっから、相手の嫌がってた事をしてやる。俺がやってんのはそれだけだ』
ふとセシリアが真に質問してみた時に、凄まじく恐ろしい笑みでこう返された。ケッケッケ……なんて笑っていたりもしたなどと思い出されるが、今は重要な所では無い。
都合のいいことに、ディミディウスは既に『待ち』の体勢だ。セシリアはゆっくりと策を練るために、戦闘開始時からのディミディウスを思い出してみる。
(あのISは三島様のおっしゃった通り、万能型であることは間違いありませんわ)
基本的に万能型な上、アンチ・エネルギーを旨とするISだろう。だからこそ、ブルー・ティアーズが活躍できていないのだから。
最大の攻撃を誇るのは、光弾なのだろうが……あれは、割と使って来るタイミングが限定されている。警戒するべきは、カウンターからの毒針で……。
(くっ、やはり上手くいきませんわ……!初めから、何もさせなければ良いのでしょうが……。……あら?確か、真さんも……)
『ま、最高なのは……策云々じゃなくて、相手に何もさせねぇ事だがな。もし俺自身のスペックさえ高けりゃ、ガタックはそれが可能なんだけどよ』
セシリアは、考えている内に真の言葉の続きを思い出していた。そう……ガタックは、相当に真と相性の良いISなのだ。遠距離、近距離、どちらでも対応可能で、シザーアンカーと言うかなり有能な妨害武装まで着いている。
この真の『相手に何もさせない』……。堅実な戦法を取りつつあるディミディウス相手ならば、可能なのかもしれない!最高なのは、パートナーが鈴である事だ。
「鈴さん、少しよろしいでしょうか!?」
「なによ!……って、その顔、何か思いついたって感じね」
「ええ、ですが……かなり鈴さんに、無茶を言う事になりますわ」
「前に出るって言ったのは、アタシよ。女は度胸ってね!」
鈴は、なぜかエヘン!と胸を張りつつ、拳でその胸を叩いて見せた。セシリアとしては、有難い話である。恩に着ますと一言いうと、秘匿通信で作戦内容を伝える。
予想外に無茶をする羽目になりそうな作戦に、鈴は少しだけ焦り始めた。しかし……ココで撤回が出来ないのが、鳳 鈴音という女の子なのだ。
「い、いいじゃない!分かり易くて、アタシ向きだわ!」
「そうですわね、心からそう思いますわ」
「アンタ、ちょっと馬鹿にしてんでしょ……」
鈴の言葉に、セシリアは満面の笑みを浮かべながら同意した。自分で言った事ではあるが、こうもあっさり肯定されるのは、微妙そうだ。
とは言え何もセシリアも本気な訳が無いし、鈴もちろん承知していた。あくまで鈴をリラックスさせる目的だった。それはかなり効果覿面だったようで、鈴は焦った表情を止める。
「さぁ鈴さん、準備はよろしくて?」
「いつでも来なさい!」
セシリアがスターライトMk―Ⅲと、BTを同時に構える。そのまま座った状態の狙撃体制へと入った。鈴は軽く宙へ浮く位置まで上昇。片方だけ残された双天牙月を元気に構えた。
この二人は、何をしようと言うのか?ディミディウスは警戒心を強めるが、やはり自分から攻めに行く気はないらしい。こちらが臨戦態勢に入っても待ちの姿勢を止めないディミディウスに、セシリアは安心したような表情を見せる。
(良いですわ……そのまま、待っていて下さいませ)
基本的に主兵装とBTの併用は苦手とするセシリアだが、その場にとどまった状態ならば、なんとか同時の射撃も可能となっていた。呼吸を整え、ディミディウスに狙いを定める。
(スタート!)
セシリアは、心の中でスタートの合図を切ると、ディミディウスの剣に『なるべく』当てないようにBT4基を乱射する。なんの躊躇いもなくエネルギー兵器を使用するセシリアに、ディミディウスは困惑するばかり。
とにかく、こちらにしてみては好都合でしかない。ディミディウスは剣を防御に使って、BTのレーザーを吸収していく……が。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
『――――――!!』
いくらなんでも、同時攻撃の数が多すぎる。セシリアは、レーザーの大半を肩や脚へとヒットさせていった。狙い澄まされたその射撃は、まさにセシリアならではだろう。
一撃一撃は、決して大したことのない。しかし……目の前から飛んで来るレーザーの嵐に、ディミディウスはついに後退を始める。それを待っていたかのように、セシリアはスターライトMk―Ⅲの引き金を引く。
(そこですわ!)
ドシュウ!バチィン!
『――――――!?』
ディミディウスの浮いた右足を、セシリアは確実に捉えた。高火力のレーザーを喰らい、右足は思い切り後方へとのけぞる。ズッコケるまではしないが、既にエネルギー吸収どころでないのは確かだ。
となれば、セシリアの役目は『一旦』ここで終了だった。研ぎ澄ませていた精神を緩め、小さく吐息を漏らす。その頃には、もう鈴がディミディウスへと突撃をかけている。
「やああああっ!」
『――――――!?』
ガギィン!
これにはたまらず、ディミディウスは盾を構えてエネルギーシールドを張った。しかし……それにひるまずに鈴は、怒涛の連続攻撃を仕掛ける。
まるで、これまでのストレスを発散させるかのような様子だ。ディミディウスはシールドを張り続けるが、先ほどBTから吸収した物も合わせて、全て使い切ってしまった。
「よしっ……セシリア!スイッチ!」
「了解ですわ!」
ドガァン!
最後に衝撃砲を喰らわせつつ、鈴はまた邪魔にならない高度へ戻った。ディミディウスはと言うと、足元に火花を散らしながらノックバックしている。
もちろん体制を整えれるはずも無い。そんなディミディウスに対し、セシリアは再び集中力を高めて狙撃を開始する。そう……これこそ、セシリアの考案した作戦だ。
文字通りに反撃の隙を与えない……ループコンボである。まずセシリアがBT4基で、とにかく攻め隙を見せ次第スターライトMk―Ⅲで大きく体勢を崩させる。
その隙を狙って、鈴が攻めに入る。双天牙月で攻撃を加えれば、防御ルーチンとなっているディミディウスは、エネルギーシールドを使う。少なくとも、セシリアはそう読んだ。
そうしてエネルギーシールドを使わせ、吸収した分を吐かせる。それが確認できれば、鈴は衝撃砲でディミディウスの体勢を崩しつつ、セシリアへと交代……以下繰り返しだ。
ただし、単純に見えて相当に危険を払った作戦だ。なぜならセシリアのミスは、即効で鈴への危害に繋がるからである。セシリアは完全なる安全圏……しかし、鈴はどうだ?
いつ光弾を撃つかもわからないディミディウスに、何度も特攻を仕掛けねばならない。セシリアが詰めを誤れば……。しかし、ここへ来てセシリアの集中力は増していくばかりだった。
(鈴さんはやらせません……。わたくしの、誇りに賭けて!)
(やるじゃんセシリア!アタシも安心して攻めれるってモンだわ!)
両者の間に言葉は無くとも、確かな信頼関係で結ばれていた。日ごろは口論の絶えない二人だが、有事の際にはこうして見事なコンビネーションを見せつけてくれる。
真の言っていた究極の『何もさせない』は、こうして体現された訳だ。ディミディウスはただ後ずさりしていくばかりで、反撃する隙を見いだせないでいる。
『――――!!!!』
「チェックですわ……鈴さん!」
「分かってるわ!」
やがてディミディウスは、これ以上後ろへ下がれなくなった。背後にあったのは、自分が収納されていた隔壁だ。そして、待っているのは……先ほどとは比にならない物量の攻撃だった。
セシリアも、鈴も……もはやありったけとしか言いようのない攻撃を加えた。セシリアはミサイルBT含めたすべての遠距離兵器をフルバースト。鈴は、ディミディウスの頭上から衝撃砲を浴びせ続けた。
ズドドドドドド!!!!
『!!!!!!!!』
あまりにもすさまじすぎて、煙で何も見えないほどだった。やがては、ブルー・ティアーズも甲龍もエネルギーは打ち止めだ。これでディミディウスにこれ以上動かれれば……そこで終わりだ。
すべてやりきった疲労と、ディミディウスに対する緊張感からか、二人は『はぁ……はぁ……』と息を漏らす。そして、煙が晴れてそこに居たのは……ズタボロになったディミディウスだ。
「や……りまし……た?」
「そう……ね」
「「…………」」
「「やったー!」」
あまりに必死だったため、しばらく実感が沸かなかった二人だったが、確実に再起不能なディミディウスの様子にハイタッチを交わした。
しかもこの二人、何気に原型をとどめつつディミディウスを倒した。つまりそれは、コアが無事であると言う事である。衛士のコアは、各国で強奪されたコアだ。
コアが無事=ZECTにいい土産が出来たと言う事だ。二人は気付かないが、この後で陸に大層感謝されることになるのだが……それはまた別の話……。
**********
「ラウラ……!」
目の前で光弾を受けたラウラを目撃し、シャルロットは血相を変えた。吹き飛ばされたラウラへ急いで近づこうとするが、ぐぐぐ……と上半身のみを起こした本人に、手で制された。
ただで済んではいないようだが、とりあえずの無事は確認が出来た。シャルロットは安堵の表情を浮かべつつ、その場へととどまる。
「戦えそう!?」
「何、死ななければ安い」
それはつまり肯定を意味する言葉だが、言い回しが何ともラウラらしい。生きていさえすれば、戦う……何とも、その小柄な体躯には似合わない言葉だ。
しかし、攻撃を受けたラウラがやる気満々なのだから……自分も気合を入れなくては!シャルロットは、心の中でそう意気込んだ。
『――――――――』
「くっ!」
「ラウラ!」
そうこうしている内に、クリぺウスは動き出した。狙いはもちろん、手負いのラウラである。仕掛けてくるのは近接攻撃で、武装は両腕共に剣だ。
レーザー手刀が吸収されてしまう限りは、クリぺウスの攻撃は回避するしかない。密着するように張り付いてくるあたり、狡猾な攻めと言えよう。
(援護したい……けど……!)
「シャルロット、構わん……私ごとやれ!」
「……了解!」
しつこくラウラへと接近しているため、クリぺウスの背中はがら空きだ。明確なチャンスではあるが、シャルロットは手が出せない。このまま無遠慮に攻撃を仕掛ければ、ラウラへ当たりかねないからである。
ラウラは、シャルロットがなぜ攻撃をしないのか分かっていた。だからこそ、声を大にして気にしないよう促す。それでもシャルロットは、少し躊躇いながらアサルトライフルを乱射した。
ズガガガガ!
『――――――――』
命中率は高い物の、やはり大したダメージには至らない。クリぺウスとしては、気にしなくても良い程のダメージ量だったが、大事を取って真横へと飛びのく。
その際に流れた弾が、やはり何発かシュバルツェア・レーゲンへと当たってしまう。しかしこれで、ラウラもクリぺウスの射程から逃れる事に成功した。
「……やはり、何か策が無いといかんな」
「相手の出方はどうですか、少佐?」
「うむ、いくつか分かった事はある」
ラウラは、戦闘中に気になる事は実験の様な事をしていた。例えば、エネルギーシールドは盾を構えなければ使えない……とか。自身が狙われて居なければ、多少は対処が遅れてしまう……とか。
クリぺウスがリボルバーカノンの射程範囲内だっとき、ラウラはあえてその後方に鎮座してあるワームを狙いそれを撃った。すると、クリぺウスはアッサリとその爆風を受けたのだ。
とは言え、小規模な爆発なためダメージにもなってはいなかったが。そもそも……この情報が使えるかどうかも怪しい。ラウラは、そう思っていたが……。
「……それ、使えるかもだよ!?」
「何……?」
「うん、シュバルツェア・レーゲンのワイヤーブレードをね……」
シャルロットの提案に、ラウラはしっかりと頷いた。確かにそれなら、先ほどに述べた衛士の特徴も、しっかりと盛り込まれている。
しかし……上手くいくかは、微妙な所だ。それしか手が無さそうなのも確かではあった。ラウラは息をフーッと吐くと、口を開く。
「よしっ、それでは……作戦を開始する!」
「はい、少佐!」
作戦を提案したのは自分だったが、シャルロットは楽しそうな様子だ。もっとも……クリぺウスとしてはチャンスでしかないのだが。
今まで歩行しか見せなかった衛士達だったが、クリぺウスは微妙に宙へ浮いて二人へと接近していった。どうやら、ガタックやカブトと同じような飛行原理を採用しているらしい。
「シャルロット、また会おう!」
「了解!」
すると二人は、クリぺウスには目もくれず二手に分かれて一目散に逃げ出した。クリぺウスは、攪乱した後の奇襲を狙っているのだと考えるが、無駄な事だと気にしない様子だ。
そしてクリぺウスが追いかけるのは、やはりラウラだ。シュバルツェア・レーゲンの機体損傷は激しく、飛行も万全な状態では無い。
何も抵抗しなければ、追いつかれるのは時間の問題だろう。ラウラは舌を打ちながら振り返り、引き撃ちのような体制でリボルバーカノンを放った。
「喰らえ!」
ズドン!
『――――――――』
飛んで来る弾丸に対し、クリぺウスは移動しつつもクルリと回転する。そのまま盾を用いて、バックハンドブローにて弾丸の進行方向を逸らした。
逸らした弾丸がワームへと激突し、巨大な爆音を上げる。炎に照らされるクリぺウスを見て、ラウラは驚きを隠せない。まさか、力技でどうにかされるとは……。
これによって、ラウラはすぐさま抵抗は無駄だと判断し、逃げる行動へ集中した。事実、たったあれだけのやりとりで距離は縮まってしまっている。
クリぺウスは、いい加減に無抵抗に飛び回る二人に違和感を覚え始める。先ほどから何度もすれ違っているのに、まるでお互いの事を気にしようとはしない。
それこそクリぺウスは既に、ある弱点を突かれているのだが……機械だからこそ、その弱点に気付けないのだろう。しかし……一回で決めなければ、それ以降は絶対に効かなくなる。もちろんそれは、機械だからこそだ。
『――――――――』
クリぺウスは、迷い始めていた。一度追走を中止し、ワームからエネルギー吸収を行うべきか。はたまた、こうして追いかけ続けるかだ。
しかしワームからエネルギーを吸収した所で、光弾の弾速は遅く射程もあまり長くない。高速で逃げ続けるターゲットに当てるのは、至難の技だろう。
『――――――――』
クリペウスは、この追走事態が無意味であると判断した。それならば、ワームからエネルギー吸収を行ったほうが、よほど有意義である。ズダン!と大きな音をたてつつ、クリペウスは着地した。
二人の攻撃にいつでも対処はできるように、片方の盾を維持しつつ吸収行動を開始する。それでも二人は、やはりクリペウスの事を無視している。
『―――――――??』
追走は止めたのに、なぜ飛行を止めないのか。普通であれは、焦って吸収行動を阻止しにかかるはずだろう。クリペウスは考える。もしや、初めから逃げていた訳ではない?
しかし例え何であろうと、向こうの『手』に乗ってやる事も無いと言うことだ。クリペウスは確実に二人を仕留めるための算段を練る。やはり、今まで通りの堅実な戦法が良いだろう。
適当にそう結論付けて、後はただ一応の警戒をするだけだ。その間も、狭い通路を飛び回るシャルロットとラウラの狙いとは……?
「シャルロット!」
「うん!これで……!」
二人は、クリペウスの正面辺りに降り立った。距離感としては、光弾の射程範囲よりギリギリ外と言ったところか。シャルロットとラウラ、そしてクリペウスは、お互いの様子をじぃっ……と観察する。
(ラ、ラウラ……)
(焦るな、急いては事を仕損じる)
『――――――――』
そう……二人の作戦は、本当に一瞬の隙を逃がすだけで失敗に終わる。それ故シャルロットは、凄まじい緊張感に襲われ思わずラウラに声をかけた。
相変わらず男前な反応をするラウラだが、内心では同じく緊張していた。先ほどの言葉は、自分自身に言い聞かせる意味も込められていたに違いない。
『――――――――』
そして、その時はおとずれた。クリペウスは光弾のチャージをしつつ、一歩……また一歩と二人へと接近する。行動をおこすには、まだ早い……もっと引き付けなくては。
クリペウスがゆったりとした一歩を踏むにつれて、二人は自身の鼓動が速くなるのを感じた。この焦らされている感覚が、なんとも言えない。
(後……6歩、かな?)
(そうだな……。カウントダウン、いくぞ)
(3……)
(2……)
((1……!))
「今だ!」
合図と共に、二人は一斉に全力で後退した。するとどうした事か、クリペウスは両手両足の自由が効かなくなってしまう。シュバルツェア・レーゲンのAICに引っ掛かったのではないようだ。
ならば何故……?自身の置かれている状態を良く確認すると、両手足はギギギ……と軋む音がしている。そこ周辺には……ワイヤーが巻き付いていた。
「まだだシャルロット、引け!」
「了解!う~ん!」
ワイヤーの正体は、シュバルツェア・レーゲンのものだ。二人は互いの機体をワイヤーで結び、複雑に張り巡らしていたのだ。
そして仕上げに後方へ引っ張れば、張り巡らされたワイヤーが締まる。こうして、クリぺウスの捕縛に成功したのだ。最後の工程を除けば、確かに衛士を狙った『直接的』な攻撃行為では無い。
そのためクリぺウスは、こんな簡単な事に気付けなかった。全力で後方へ下がる二人のせいか、完全に動きが制限されてしまう。
『――――!!!!』
しかしまるで衛士の底力でも見せつけるかのように、クリぺウスは無理矢理にでもワイヤーを引きちぎろうとする。だが、変だ……今度こそ、本当に体が動かない。クリぺウスのハイパーセンサーに映ったのは……。
「フッ、とっておきのダメ押しという奴だ」
『――――――!?』
ラウラがこちらに向かって、掌をかざしていた。AICが、クリぺウスの動きを完全に制止させる。今の今まで回避され続けたが、これでようやく初ヒットだ。
この光景を見たシャルロットだが、油断する事は無い。急いでトドメの武装となるであろうシールドピアースを発射準備完了させる。
「コア、何処だと思う?」
「……頭部か、胴体」
「だよね。それじゃ……上から行ってみようか」
『――――――!!』
自らをコアごと完全停止させる気満々なこの会話に、クリぺウスは何とか脱出が出来ない物かとあがいて見せる。しかし……残念なことに、それこそ無駄なあがきなのだ。
シャルロットは、リヴァイヴのスラスターを吹かす。パイルバンカーが激突する際の物理的衝撃を、少しでも高めようと言う魂胆だろう。そして……リヴァイヴが、疾風の如く前へ出た。
「クリぺウスってさ、盾……って意味だよね?でも……」
『!!!!!!!!』
「『盾殺し』は、伊達じゃないんだよ!」
(解除!)
ガコン!プシュー……ズガン!ズガン!ズガン!ズガン!
『!?!?!?!?』
クリぺウスの装甲は、一撃目ではびくともしなかった。予想外であったシャルロットは、慌てて二撃、三撃とシールドピアースを連射する。
四撃目が撃ちだされる頃には、クリぺウスの頭部は原形をとどめておらず……オーバーキルも良い所であった。AICを解除しているため、クリぺウスは力なく地に倒れる。
ガシャァン!
「……容赦ないな」
「へ!?い、いや……今のは違うくて……!」
流石にクリぺウスの散り様が、哀れと感じられたらしく、ラウラは少しだけ口元をひくつかせながらシャルロットと、クリぺウスを交互に眺めた。
シャルロットとしても、不可抗力な出来事だ。そのため『違う!違う!』とあざとく両手をブンブンと左右に振った。まぁ……コレは戦いだし、そのくらいがちょうど良いのかもしれない。
「ともあれ、これで衛士とやらは潰した。次の行動に移るぞ」
「も、もう……?損傷軽微の僕が言うのもアレだけど、ラウラ……休んだ方が良いんじゃないの?」
「何を言うか、兵は神速を尊ぶと言ってだな……」
必要なくなったワイヤーを断ち切りながら、ラウラはせっせと行動を開始する。……のに対して、シャルロットは苦笑いを浮かべつつ休憩を提案する。
しかしラウラは、クドクドと故事を交えていかに迅速な行動が大事かを説く。結局のところは、話に夢中になるせいでラウラは止まらない。観念したシャルロットは、何故だか説教されている気分でラウラに先導されるのであった。
さらば、カッシスワーム達!
はい、これにてカッシスワーム三体?三機……は、全滅ですね。いやはや、『とある事』にこだわって描写したために、異様に難しかった……。
まぁ、その『とある事』も別に大したことでは無いので、さほど気にはしないで下さいね。恐らく中身を明かせば、必要あったか?と思われる方もいるかと。
さて、次回から真&簪VSオータムですね。オリジナル要素をブッ込んだアラクネの性能やいかに!?
それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。