戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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わ~い!ザックが生きてたぞ~!

ハッ!スミマセン……今週の鎧武を見ててつい……。

私が鎧武で一番好きな登場人物はザックだったりします。

なんたって良い奴ですからね……主人公してたなぁ……。

それはさておき今回は原作主人公である一夏との対決です!

それでは、今回もよろしくお願いします。


VS織斑 一夏(とその後)ですが何か?

クラス代表決定戦三戦目が行われる放課後。第三アリーナは昨日、一昨日よりも人が多いように見える。無理もない話かもな、世界でもここ以外では見れないであろうISを用いた男VS男の試合だし。

 

 ピットで待機している俺はと言うと、絶好調である。というのも、相手が織斑だから人が余計に居なくて調度いい。篠ノ之とかな、言っちゃ悪いけど。

 

 本音は今日もピットまで応援に来てくれた。ここまでしてくれて、今回もみっともない姿をさらすわけにはいかないだろう。

 

「っし!」

 

「お~、気合十分だね~」

 

「あぁ、とりあえず織斑だけには負けてやれねぇ」

 

 あいつの前ではけっこう……どころか、かなりでかい口叩いた節があるし。それに、お互い初心者なのに負けちまうのは嫌だろ。

 

「加賀美。そろそろISを展開しろ」

 

「あり?織斑先生……?」

 

 てっきり織斑のほうのピットにいると思っていたため、つい疑問を投げかける形になってしまう。向こうも俺が「何でこっちに?」って言う意味で名前を呼んだのがわかるのか、フッとクールな笑みを浮かべた。

 

「私が弟の心配ばかりしていると思われてはいかんからな。お前も、そう思っていたクチか?」

 

「まぁ先生の場合心配はしてないんでしょうけど、ただ単にそっちの方が自然かなって思っただけですよ」

 

「そうか、なら良い」

 

 会話にひと段落ついた。そう感じた俺は、右手を軽く上げガタックゼクターを呼び寄せる合図をする。ガタックゼクターをキャッチしたあたりで、織斑先生の視線が気になる。何だ……?俺、何か気に障るようなことしたっけ?

 

「……なんっすか?」

 

「いや、昨日の葬式のような顔はどこへやらと思ってな」

 

「あぁ、その葬式だったら昨日済みましたよ、泣き虫だった俺にサヨナラってね」

 

「サヨナラ~!」

 

 俺が肩をすくめてそう言うのに合わせて、本音は大きく万歳しながら続いた。そうして俺と本音は顔を見合わせてハイタッチ!

 

「布仏のおかげ、と言ったところか?」

 

「そうですね、こいつのおかげで昨日の俺とは決別できたんで」

 

「えへへ~」

 

 本音の頭を軽くポンポンと叩きながらそう言う。うむ、身長差がしっくりくる手の届き方である。対して本音は後ろ頭をさすりながら照れくさそうにしていた。

 

「悪いけど、弟さんには勝たせてもらいますよ?」

 

「フッ、それは期待しておこう。コテンパンにのしてやれ」

 

 うわぁ……心底楽しそうな顔をしていらっしゃる。引くわー……予想外すぎるわーその返答。リアクションに困った俺は苦笑いしか浮かばない。

 

「かがみん~、そろそろ時間だよ~」

 

「おっと、そういえば……。変身!」

 

『henshin……』

 

 まさかスローペースの本音に時間の催促をされるとは思わなんだ。とにかく俺は急いで変身し、マスクドフォームになっておく。

 

 

「よし、それでは行ってこい。失望させてくれるなよ、これでも私はお前を買っているんだ」

 

「先生からそれ言われると、プレッシャー以外の何物でもないんですけど?っつー訳で、本音。気が楽になる一言をよろしくどうぞ」

 

「う~んと~……。かがみん~、勝ってね~!」

 

 はて?俺は気が楽になる一言と言ったんですが?あっ、トドメ的な意味で気が楽にか、ってなんでやねん。でもまぁ昨日と違って本音は「勝て」って言った。

 

 本音のお願いとあっちゃ、勝たないわけにもいかんわな。

 

「任せな、今度は勝さ」

 

「うん~、その意気だよ~」

 

「あぁ、行ってくる」

 

「いってらっしゃ~い」

 

 本音が腕をゆっくり振るのを見届け、俺は振り返る。そのままピットゲートからアリーナまで一直線に飛び出る。さて……気合入れていきますか!

**********

 アリーナの上空でまず目に入るのは、当然織斑の専用機だ。実際に目にするのは二度目だが、印象はやっぱり「白」だ。

 

 名前は確か白式だっけ?名前からしてテーマカラーが白ってのは分かるが。ってか翼がかっけーなぁ……フロートユニットがかっこいいロボットとかはかなり好きだ。

 

「真。今日は良い試合にしような!」

 

「ん?おう、そうだな」

 

 織斑は朗らかな笑みを向けて俺にそういう。試合前だってのにコイツ……単に緊張感がないだけか、はたまた余裕があるのか。

 

「俺達の間に、これ以上の言葉は不要だ」

 

「真?」

 

「せっかくのこういう場だ。言葉で語らなくても、見えてくるもんがある。男同士ってのは、そう言うもんだろ?」

 

「……あぁ!真の言う通りだ」

 

 俺の言葉に同意した織斑は、引き締まった面構えに一瞬にして変貌した。そう、これだ。はなっから全力のお前に勝たなきゃ意味がない。

 

「そんじゃ、いざ……」

 

「尋常に……」

 

「「勝負ッ!!」」

 

『試合開始!』

 

 試合開始のブザーよりも若干フライング気味に戦闘に入った俺達。当然織斑はこちらに真っ直ぐ切りかかってくる。

 

 織斑の白式には近接ブレードである「雪片」一本しか積まれていない。ゆえに織斑は俺に切りかかる以外の攻撃手段は無い。

 

 さて、俺がここでどう出るかだが、普通に考えればこのまま引いてガタックバルカンを連射するのがベターだ。が、俺はガタックゼクターの顎を一気に開く。

 

『cast off!change……stag beetle!』

 

 とりあえず織斑の剣の実力をしっかりと図るため、マスクドフォームからライダーフォームへキャストオフ。ガタックダブルカリバーをしっかりと握りしめ、向かって来る織斑に備える。

 

ガギン!

 

「くっ……」

 

(これは……!予想以上だ……)

 

 刃がぶるかるとともに盛大な火花が散った。織斑の剣捌きは、思っていたよりは数段重く速い。今のも対処が数秒遅れようものなら、斬られていたに違いない。

 

「やるな!」

 

「あ?何それ?余裕っぽくて腹立つ……なっ!」

 

 語尾と同時にダブルカリバーを前に押し出し、織斑の隙を作る。距離が少しあいた織斑の懐に、突きをお見舞いする。

 

「くっ……!」

 

 しかし、俺の突きを織斑は体を翻すことで見事に回避。後ろに回られたため、今度は俺の背中ががら空きだ。

 

「そこだ!」

 

「そうは問屋がなんとやらってな!」

 

 俺だって当然次の事を考えて行動してるさ。突きを放った時の勢いそのままに、俺はそのまま体を反転させ逆さまの状態でしっかりと雪片を受け止める。

 

「ぐ……らぁ!」

 

「おっと!」

 

 織斑は力任せに雪片を振るい、俺を弾き飛ばす。俺と織斑の距離はかなり離れている、試合開始直前よりも遠そうだ。

 

 で、織斑の剣の実力は大体分かった。結論から言わせてもらうと、ヤバイね。何もかもが俺の上をいっているのがよく分かる。

 

 やはり接近戦を挑むのは吉ではないか……。織斑の相手は双剣のみでしたかったが仕方ない。

 

「プットオン」

 

『put on!』

 

「その形態は確か……」

 

「悪いが、チマチマやらせてもらうぜ」

 

 マスクドフォームに戻ったガタックを見て、顔を苦くする織斑。今から俺が何をするのか分かっているのだろう。もちろん織斑の想像通りの事をするつもりだ。

 

ガガガガガガガガガ!

 

「クソッ!またこれかよ……」

 

 オルコットの時と引き続き、避けてばっかだとでも言いたいのだろう。そう口で言いつつもしっかり避けている。むしろこっちに接近しつつあるじゃないか。

 

「ずいぶん簡単そうに避けてくれるぜ……」

 

「そりゃ!オルコットの!ブルー・ティアーズに!比べればな!」

 

 言われてみれば確かにそうだ。そこらかしこから飛んでくるレーザーより、まっすぐ飛んでくるエネルギー弾だったら後者が避けやすいに決まってる。

 

 それに織斑自体のポテンシャルの高さもある。初期化も最適化も済んでいない状態で三十分近くも攻撃を避け続けてたもんな、アイツ。

 

 こりゃ、キャストオフの準備しといたほうがよさそうだ。だってもう織斑が目の前にいるし。

 

「キャストオフ!」

 

『cast off!』

 

「隙あり!」

 

「なっ!?はやっ……ぐわあ!」

 

 キャストオフが完全に終わる前に、織斑は一気に俺との距離を詰めてきた。驚いている間にバッサリ斬られてしまう。自分から防御力下げるとか、とんだサービスをしてしまった。

 

 けど、転んでもタダじゃ起きてやらねぇぞ。織斑が離れる前に、何とかプラスカリバーを一太刀浴びせることに成功した。しかもラッキーなことに胴体部に命中。絶対防御の発動により、与えたダメージはこっちのほうが多いはず。

 

とにかく、プットオンするんだったらもっと距離を置かないとダメらしい。もう一度ガタックバルカンの射程ギリギリまで下がらなくては。

 

 と思ったけど、離れようにも織斑はいつでも斬りかかれそうな距離をキープしつつ、付いてくる。自分の有利な距離を保つのは分かるが……。

 

「ええい!付いてくんなホモ野郎!」

 

「誰がホモだ!」

 

 しつこいな、背中を見せながら逃げ回ってもいいが、それでは無防備すぎるか……ここは腹をくくって迎え撃つしか無い。

 

 俺はいつも通りダブルカリバーを織斑の雪片に合わせて防御を……。

 

「うおおおおおお!」

 

ガギィッ!

 

「しまった!」

 

 今週のしまった。いやいや、とか言ってる場合じゃなくて……。雪片にダブルカリバーを合わせるまでは成功した。しかし、織斑は俺の防御を見越してか、力いっぱい雪片を振った。

 

 思わず知らず、プラスカリバーの方を見事に吹き飛ばされてしまった。回転しながら落ちていくプラスカリバーはザン!と大きな音を立てて地面に突き刺さる。

 

 さてどうするか、プラスカリバーは俺の背後。取りに行こうとすれば、当然隙だらけの俺を狙うだろう。かといってマイナスカリバー一本で戦うのもキツイ。リーチが雪片よりかなり短いんだ、それこそ二本だったからなんとか織斑の攻撃をしのげていた訳だし……。

 

「どうした、真。取りに行かなくていいのか?」

 

「よく言うぜ、弾き飛ばしたのはテメェだろう」

 

 やっぱ誘ってやがるか、作ったチャンスを最大限に活かすなら、俺にプラスカリバーを取りに行ってほしいんだろう。…………いいぜ、乗ってやろうじゃねぇの。

 

「んじゃ……遠慮なく取りに行かせてもらうぜ!」

 

「真ならそう来ると思ってたよ!」

 

 俺は思いっきり織斑に背中を見せ、全速力でプラスカリバーに近づく。このスピードならなんとかプラスカリバーを取り戻すと同時に、織斑の攻撃も対処が出来そうだ。

 

 と思ったのもつかの間。ハイパーセンサーで織斑を確認しながら飛んでいるが、なんだかだんだん近づいてきているような気がする。

 

(いや……気のせいじゃない)

 

 白式はガタックとの距離をグングンと詰めてくる。ライダーフォームでも単純にスピード負けするのかよ……どうする……!どうする……!

 

 でぇい!本末転倒だが仕方が無い。俺は振り向きざまにマイナスカリバーを織斑に向かってブン投げた。

 

「どらぁ!」

 

「ウソだろ!?」

 

 猛烈に回転し、ブンブンと空を裂く音を鳴らしながら、マイナスカリバーは織斑めがけて飛んでいく。これは流石に予想外だったのか、織斑は驚愕の声を上げる。

 

「くっ……!」

 

ガィン!

 

 すでに距離が近く、回避が間に合わないと判断したのか、織斑は白式の足を止め丁寧にマイナスカリバーを防御し弾く。

 

 その間に俺はプラスカリバーを奪取!両足でズザザザザと地面を抉りながらブレーキをかけ、そのまま思いっきりジャンプし、文字通り空中に飛びあがった。

 

「うおおおおお!」

 

「させるか!」

 

 織斑の横を通り抜け、まだ空中で踊っているマイナスカリバーを手に収めようとするが、織斑はそれを逃さない。待ち受けるかのように雪片を縦一閃に振り下ろす。

 

 だが正面からなら対処のしようはいくらでもある!俺はプラスカリバーを逆手に持ち、雪片を受ける。そのまま刃を滑らせながら、雪片を攻撃を受け流す。

 

ギャリリリリ!

 

 刃が擦れ火花と嫌な音をアリーナに散らす。しかし、おかげで織斑の横を通り抜けることに成功。地面に落ちる前にマイナスカリバーも回収した。

 

「ハッハー!どうよ、無傷で生還ダブルカリバー!」

 

「クソッ……確実にダメージを与えるチャンスだったのに……!」

 

 俺が両手のダブルカリバーを高らかに掲げるのを見て、織斑はぐぬぬ……と悔しそうな表情を見せる。とっさの行動だったしまさか上手くいくとは思ってなかったけどな。

 

 しかし、受け流すか……。…………試してみる価値はあるが、相当な賭けでもある。けどやらなきゃこのイタチごっこはいつまでも続く。そうなれば不利なぬは俺の方だ……いっちょやってみるか。

 

 距離はあいているが、俺はプットオンをするそぶりは全く見せず。原作ガタックと同様の構えを取った。すると織斑は、俺が近接戦闘を挑む事を理解したらしい。

 

「もう逃げなくてもいいのか?」

 

「人聞きの悪いことを言うんじゃねぇ。ま、鬼ごっこに飽きたのは確かだけどな」

 

「そうか、だったらここは一つ男らしくいくとしようぜ!」

 

 台詞と同時に織斑も雪片を構えた。様になってるねぇ、流石は剣道経験者。一部の隙も無いとはこの事か。とにかく、これで準備は整った。後は、成功させるのみ!

 

「おおおおおおおお!」

 

「はぁああああああ!」

 

 咆哮と共に、ただお互いの身を目指して一直線に進む。さぁて……神経を研ぎ澄ませろ、織斑の雪片から目を逸らすな、俺がやろうとしていることにはそれが必要だ。

 

「せぇい!!!」

 

ガギィン!

 

(づっ!?っ~……重っ……!)

 

 今の織斑はおそらく全力だ。今までも決して本気じゃないわけではないだろうが、織斑の雪片はさっきまでとはまるで重さが違う。

 

「おおおおおおおおっ!!!」

 

「くっ……そっ!」

 

ガン!ガキィッ!ガン!ガキィン!

 

 怒涛、まさにそう表現するにふさわしい雪片による連続攻撃に、俺は弾くことで精一杯だ。重さだけでなく、速さまで格段に違う……。弾くのは俺の狙いじゃない、いったん雪片を受け止めなくてはならないというのに。

 

「まだまだぁ!」

 

「クソが!調子に……乗んな!!!」

 

キィン!

 

 雪片を振ってくる方向をしっかり確認した俺は、それに合わせてプラスカリバーを下から潜り込ませるように振り上げる。どうだこの野郎!織斑の体勢を崩すことができたぜ!

 

 ……って違うじゃん!今のかなりチャンスだったじゃん!あまりの連撃に耐え切れずついつい弾き返してしまった。織斑もすでに離脱しているし、ダメージを与えることすらできなかったか……。

 

 簡単に逃げれたせいか、織斑も解せない表情だしな。……ダメだな、このままではいくらやっても俺の目的は成されない。

 

(だったら…………)

 

 向こうに選択肢を選ばせてやればいい。攻撃をとらえるのなら、奴の全身全霊の一撃だ。俺は構えを解き、ダラリと両腕を下げ、棒立ちの状態になる。

 

 それは見た目だけで、織斑の攻撃にはいつでも対処できるように心構えはできている。例えるならば、ガンマンが早撃ちの前に銃をいつでも取れる状態と近いだろうか。

 

「………………」

 

 織斑は俺が待ち構えていることは理解できているらしい。表情は、警戒心を隠そうともしていない。が、織斑が俺に攻撃するのならば雪片以外に攻撃手段は持ち合わせていない。

 

 どのみち織斑が俺を倒すには、接近するほか方法は無い。だからこそだ、迷いを捨て、お前の渾身の一撃を見せてみろ。

 

「俺は、真の言う通り馬鹿だからさ。真がどういうつもりなのか、どんな策を練ってるのか想像もつかない」

 

「…………」

 

「でも、俺には「コレ」しかない。だから、真。お前の策……正面から叩き斬ってやる!」

 

「おう!それでこそだ、織斑!かかって来い……お前が逃げないのなら、俺も逃げない!!!」

 

 雪片を再度構える織斑から、肌でピリピリと感じるほどのプレッシャーを感じる。だが俺はそれを目の前にしても顔がニヤけるのを止められなかった。

 

 やはり良い……こういう時間は楽しいもんだ。真正面からお互いをぶつけ合う。これこそ、男の戦いってモンだろ!!!

 

「行くぜ……真ぉぉぉおおおおおおお!」

 

「来い……織斑ぁぁぁあああああああ!」

 

 宣言通り織斑は小細工なしの真っ向勝負で迫ってくる。恐らく本日一のトップスピードでだ。一瞬にして織斑は目の前まで迫り、雪片を振るう。

 

(見えた!斜め方向……袈裟斬り!)

 

 確かに織斑のスピードは今日一だった。しかし!それと同じくらいの覚悟で身構えていたんだ。そう簡単にやられてたまるかよ!

 

ガギィ!!!!!!

 

 俺は今までとは違い。ダブルカリバーを両方同じ方向に向け、雪片を頭の上で受ける。そしてそのまま有無も言わさず体にかけている体重を落とし、ダブルカリバーの切っ先を斜め下に逸らす!

 

ギイイイイイィィィィィ…………!!!!

 

 ダブルカリバーの刃はきれいな曲線を描いている。故に、さっきのように攻撃を受け流しやすい構造だ。俺は、織斑の全力の斬撃をいなす事に成功した。

 

「なっ…………!?」

 

 こんなに簡単に逸らされるなんて。みたいな表情を織斑はしているが、そうじゃない……すげぇよお前は、本当にギリギリだった。多分何かが違えば俺はバッサリやられていただろう。

 

 全力の一太刀を逸らされたためか、織斑は必要以上に大きく体勢を崩した。それを逃さず、俺は一本につなげ鋏となったガタックダブルカリバーで織斑の胴体を挟み込む。

 

「くっ……何を……」

 

 悪いな織斑、説明している暇はない。どうせお前の事だから、このままほっとくと簡単に脱出してしまうだろう。だから……終わらせる!

 

「ライダーカッティング!!!」

 

『rider cutting!!!』

 

 俺の声に呼応するように、ガタックゼクターもエコーがかかった音声を発する。それと同時にバリバリと黄色い雷がガタックゼクターからダブルカリバーまで伝わった。

 

 ダブルカリバーに集約したエネルギーは、近くで見ると目がやられてしまいそうなほどだ。だが、それだけ高密度なエネルギーを零距離でくらえばひとたまりもないだろう。

 

バリバリバリバリバリバリ!!!!

 

「こっ、これは!?早く脱出を……!」

 

「そう簡単には逃がさねぇぜ!!!」

 

 俺はトドメと言わんばかりに、両腕に力を込めながら織斑を俺の頭の上に来る場所まで持ち上げる。とっておきのダメ押しって奴だ、俺は頭上でさらに鋏をきつく締めた。

 

「ぐおおおおおおお!!!」

 

 織斑は両腕で何とか鋏を広げようとしているようだが、俺の両腕の力には劣る。さて、集約しつつあるエネルギーはというと、鋏の一点に集中し過ぎで、あたりにエネルギーが漏れ始めている。

 

バリバリバリバリバリバリ!!!!!!!

 

 やがて高密度なエネルギーは行き場を失い……オーバーフローする!!!

 

バリバリバリバリバリバリ……………ドォォォォン!!!

 

「ぐああああああああッッッ!!!」

 

 エネルギーのオーバーフロー、それすなわち大爆発!鋏となったダブルカリバーは盛大に爆ぜ、織斑を爆発へと巻き込む。そして、俺にとって歓喜の瞬間が訪れる。

 

『試合終了 勝者 加賀美 真』

 

 俺は思わずアナウンスの方向に振り向いた。俺の勝利宣告が信じられなかったからだ。そして、俺が勝利を自覚する前にアリーナが完成に包まれる。

 

ワアアアアアアア!!!

 

 アリーナの盛り上がりをグルリと一周その場で回転し、見渡す。そうしてようやく、俺は自分が勝ったことを確信した。

 

「ぃよっしゃあ!!!やったぜ、俺!!!」

 

 俺は初勝利の喜びを全身で表現する。まるで親父のように飛び跳ねながらの喜びようだ。そして気付いた、今の俺を多くの人間が見ていることを。急に恥ずかしくなり、俺はその場でぴたりと制止し、ゴホン!と喉を鳴らした。

 

「真……負けたよ」

 

「織斑……」

 

「いや~、最後の袈裟斬りを防がれるとは思ってなかったぜ。結構全力だったんだけどな……」

 

 織斑が話しかけてくる。その表情は悔しさ半分、すっきり感が半分と言ったところだろうか、お互い全力を尽くしたが、負ければ当然悔しいわな……俺も昨日そうだったし。

 

「俺も、防げたのが自分でも不思議なくらいだ。お前、なかなかやるじゃん」

 

「そっ、そうか?へへへ……真に褒められるの初めてかもな」

 

 そりゃ今までお前に対して褒める要素が見つかんなかったからね。褒めるべき時は俺だってそうするに決まってる。特に、死力を尽くした後とかはな。

 

「次は絶対に負けないからな!」

 

「ハッ!また返り討ちにしてやるぜ!」

 

「けっこう焦ってたくせによく言うよ」

 

「るっさいわボケ!………ん、ホラよ」

 

「へ?あぁ……うん!良い試合だった。ありがとな、真!」

 

「ああ、こっちこそ!」

 

ガッ!

 

 俺の差し出した拳に、織斑は思いっきり拳をぶつける。そのとたんアリーナは歓声ではなく、拍手で包まれる。俺だけでなく、織斑の健闘もたたえた大きな拍手だった。

 

 こうして、三日間のクラス代表決定戦は幕を閉じた。結果は一勝一敗……敗北も、勝利も、得るものの多い戦いだった。とりあえず俺は勝利の余韻と共に、自軍ピットに帰っていくのだった。

**********

「やったね、かがみん~!」

 

 ピットに帰ってまず俺を出迎えてくれたのは、笑顔の本音だった。まるで自分の事のように喜んでくれている。本当に良い子だなぁ……としみじみと感じる。

 

「あぁ、本音の応援のおかげかもな」

 

「そんな事ないよ~、頑張ったのはかがみんだもん~」

 

「ん、まぁそうかもしれないけど……。本音の言葉が俺の覚悟になったのも確かだしさ」

 

「あれ~?私、何か言ったっけ~?」

 

 本音は自身の言った「勝ってね」の一言が、俺に大きな影響を与えたとは思っていないらしい。ちんぷんかんぷんな様子で頭を抱えていた。

 

「ご苦労だったな、加賀美。見事な勝利だ」

 

「織斑先生……。ありがとうございます」

 

「だが、この程度で浮かれるなよ?お前はしょせん自分と同レベルの相手に勝っただけなのだからな」

 

 む、確かにそうだ。結局のとこ織斑は初心者なことには違いない。それに勝ったからといって、どうということは無い。

 

「ま、かといって喜ぶなとは言わんさ。その勝利の喜びをせいぜい忘れない事だ」

 

 いや、どっちさ。まぁ浮かれるのと喜ぶってのはちょっと毛色が違うからな、そこの所を吐き違えるなって言いたいんだろ。

 

 織斑先生は歩き出し、行ってしまった。その後ろ姿を見届けると、静寂がピット内を支配する。

 

「……腹減った」

 

「じゃあ祝勝会だね~」

 

「おっ、祝ってくれるのか?そんじゃ、飯にするとしますかね」

 

「また一緒に大きなパフェ食べようよ~」

 

「いや、結構です。それだけは勘弁」

 

「え~、どうして~?」

 

「え~ってお前……恥ずかしくねぇの?」

 

 などとやいのやいの言いながら俺と本音も歩き出す。そして、また教室に向かう俺と、食堂に向かう本音で分かれた。ふぅ……さっさと着替えて向かいますか、女の子を待たせるわけにもいかねぇし、といっても本音の場合すぐ追いつくけど……。

**********

「というわけで、クラス代表は織斑君に決まりました」

 

 山田先生の言葉ののち、一組は拍手で包まれる。やれやれ、雨降って地固まるってやつか……。なんて考えていると、そこに水を差す奴が一人。

 

「山田先生!どうして一番負けの俺が代表なんですか!?」

 

「それは……」

 

「それは、わたくしが辞退したからですわ!」

 

 オルコット、少しは遠慮して差し上げなさい、山田先生はセリフを取られて涙目になっていた。なんか……見れば見るほど不憫だな、この先生も。

 

「一夏さんに代表を譲ることにしましたわ。やはりISの操縦には実績が何よりの糧……。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」

 

「なんてありがた迷惑な……。……ん!?って事はまさか、真……お前!」

 

「はぁ?当然だろ、誰が好き好んで委員長みたいな仕事するかよ。俺はリーダーとかそういうの向いてねぇの、分かるだろ?」

 

 いけしゃあしゃあと語る俺に織斑は「なんてこったい」みたいな表情を向ける。昨日のうちに山田先生がわざわざ俺の所に訪ねてきて……。

 

『オルコットさんが代表を辞退したので、繰り上がりで加賀美君が代表になりますけど、よろしいですか?』

 

 とか言いに来た。よろしい訳ないだろうがバカ。口には出さないけど、って言うか口に出したら山田先生は二度と俺と目を合わせてくれそうにない気がする。

 

「そっ、そこでですね一夏さん……。ここはわたくしがISの訓練を……」

 

 オルコットは顔を赤く染めながらモジモジと織斑にそう言う。あっ……(察し)なるほどそうか、俺と戦った時から「一夏さん」呼びになってると思ったら、そういう事だったのか。

 

 まぁ別にうらやましくとも何ともないけどね、俺に対していたって普通に接してくれたらそれで十分である。前みたいに高飛車なのは本当に勘弁してほしい。

 

バン!

 

「あいにく一夏の教官は足りている。私が、直接頼まれたからな」

 

 そしてこういうのも勘弁してほしい。机を叩いて立ち上がった篠ノ之に内心うんざりしながら耳をふさぐ。その後、篠ノ之はオルコットに挑発され、ギャーギャーと声を上げる。……ったくせっかく美人なのにもったいねぇ事だ。

 

「座れ、馬鹿ども」

 

 織斑先生が華麗にオルコットをスパァン!篠ノ之をスパァン!二人は痛そうに頭を押さえて、大人しく座った。織斑先生超GJ!と心の中でふざけた笑みを浮かべてサムズアップしていると……。

 

スパァン!

 

「な……何で……?」

 

「む?すまん、無意識的にイラッと来たものでな……。まぁ許せ」

 

 何その理由!?ウザかった?ねぇ、ウザかったんですか?俺の心の中のふざけた笑顔が?何?なんなの?この人ってエスパー?

 

 痛い……特に理由のない暴力が俺を襲った。今のばっかりは本当に理不尽だと思うわ。まぁ貴重な織斑先生の「許せ」が聞けたからいいか。……いや、良くはねぇだろ。

 

「とにかく、クラス代表は織斑 一夏。異論はないな」

 

 は~い!と織斑以外の女子達は大きな声で返事した。目の席の織斑はというと、見る影もなくしょんぼりしている。ざまぁ!……とはさすがの俺でも言えん。一歩間違ったら俺がこうなってたかもしれないし。

 

 ま、とにかく俺がクラス代表になる事態は避けられた。そこだけは素直に喜んでおくことにしよう。んで……なんだ……まぁ織斑には飯くらい奢ってやろう。クラス代表就任祝いって事で。

 

 すっかり小さくなってしまった織斑の背中に両手を合わせ合掌。とりあえず今は授業に集中することにしよう。俺は意気揚々とノートを広げ、ペンを手に取るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勝利の喜びを知った真。今回も一歩前進!

一夏との戦闘描写……難しかった!

白式が雪片しか積んでないせいで、一夏の行動がいろいろ制限されてしまい……。やりたかったことが書けませんでしたなぁ……。

それと、前回のあとがきでチラっと鈴を出すみたいな事を書きましたが あ れ は 嘘 だ。

いや、スミマセンです。一夏との戦闘が思った以上に長くなってしまい……尺が足りなかったです。

という訳で、次回はたぶん鈴ちゃん登場だと思います。たぶん!(強調)

それでは皆さん、また次回でお会いしましょう。

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