戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

84 / 143
どうも、マスクドライダーです。

私的に、今年一番であろうビッグニュースが入りました!なんと!なんと!DXガタックゼクター……コンプリートセレクション化が大・決・定!

ひゃっほおおおおう!我が世の春が来たああああ!!!!発売日やら価格は未定の段階ですが……私が買わない訳が無い!

いやぁ……ガタック好きな私から言わせると、本当にうれしいニュースです。ハイパーゼクターもコンセレ化らしいですが、私にとってはそっちがオマケです!

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


続・能力検証(ラボラトリ)ですが何か?

 日曜日となり、改めてラボラトリを尋ねた。目的としては、俺の全てを話す事。いろいろ考えた結果だけど、やっぱり岬さんと田所さんには、知っておいてほしかった。

 

 そこで、本当に小さな……多く見ても四人用の応接室にて、俺に起きた出来事を二人に話す。最初は、どうして行方をくらましたのか、ここから話すと纏めやすい。

 

 そうして話を、俺の能力へと繋げていくと、二人はだんだんとリアクションに困り始めているようだった。だが質問があれば最後に、そう言っておいたので、表情を曇らせるのみ。

 

「……ってな感じですかね?」

 

「あ~……岬。どこからツッコむのが正解だ?」

 

「ここぞと言わんばかりに……。私にだって、分かる訳ないですよ」

 

 田所さんは、固めた髪を直しながら。岬さんは、白衣の襟を直しながら……やはり困ったような様子だ。田所さんの場合は話を岬さんに振った……って事は、早々に考えるのを放棄したらしい。

 

 俺にはそれが、単純に嬉しく感じられた。多分だけど……そんなの関係ない、俺は俺だって……そう思ってくれているのだろう。

 

 だが岬さんは、れっきとした科学者だ。常識を逸脱し、オカルトの域に入る俺の言葉に、どうにも納得のいかないような様子。もちろん岬さんも、俺が俺であると言う事は思ってくれてはいるだろうが。

 

「加賀美くん。セカンドシフトしたって聞いたのだけれど、それとは違うの?」

 

「そうですね、ソルは外部的要因を用いた超限定的なセカンドシフトだって言ってました。実際、ハイパーゼクターを外すと解除されますし」

 

 俺も俺なりに、色々と試しては見たが……やっぱり原作のハイパー化……と言うよりはフォームチェンジとあまり変わらないらしい。

 

 そもそも原作がどういった原理かと聞かれれば、詳しく解説できる自信は無いが。ともかく、概念としてはフォームチェンジが最も近いと言う事だ。

 

「ま、何にせよ……試してみたら良いじゃねぇか。ここは天下のラボラトリだろ?」

 

「……加賀美くん?」

 

「うっす、いつでも行けます」

 

 田所さんの提案により、とにかく詳しくデータを取る事となった。一応だが模擬戦のデータは送っておいたが、あまり参考にはならなかったらしいな。

 

 とにかくして、俺はラボラトリの実験施設まで移動した。練習用のアリーナ的な場所とは違って、様々な計測器等々が俺を囲っている。

 

 合図がある前に、とりあえずガタックだけには変身しておこう。俺はガタックゼクターを呼び出し捕まえ、ベルトにスライド挿入。そこから更に、キャストオフを行う。

 

「キャストオフ」

 

『―CAST OFF―』

 

『―CHANGE STAGBEETLE―』

 

 さて、アーマーが弾け飛んだ訳だが……やんややんやと忙しそうだな。ここから岬さん達の様子は、ガラス越しにバッチリ見える。あっ、田所さんが露骨に邪魔扱いされてら……。

 

 結局、田所さんってどのレベルの地位なんだ?ラボラトリ主任である岬さんと対等以上に話してはいるし……。アレか?例の幹部以上を示す『ブラックメンバーズ』なのかね?岬さんもそうだろうけど。

 

『お待たせ、加賀美くん。それじゃ、やっちゃって頂戴』

 

「了解。ハイパーキャストオフ!」

 

『―HYPER CAST OFF―』

 

『―CHANGE HYPER STAGBEETLE―』

 

 パススロットからハイパーゼクターを呼び出し、宣言と共に左腰につけ、ハイパーゼクターの顎を倒して起こした。後はいつもの通り、ガタックの顎が巨大化し装甲がクワガテクターへ変貌していく。

 

 ハイパーガタックになると、少しばかり観衆がどよめいた。しかしそれもほんの一瞬で、一気に静まり返った……と思ったら、騒がしくなった。

 

『ちょっと……これ、え~……?ど、どういう事?』

 

『どういう事って……。その、ガタックのアーマーそのものが……別物に変わったとしか』

 

『いや、見ればわかる。分かるが……どういう事だ?』

 

 やはり通常形態のガタックは『無かった事』と同然になっているようだ。つまり今俺が装着しているのは、あくまで『ハイパーガタック』のアーマーってこった。

 

 まぁ……それが常識的に考えられないから、こうして大人たちが慌てふためいているわけだが……。そんな中、岬さんがコソコソと、俺に通信を入れてくる。

 

『今のが、第三フェーズで良いのかしら?』

 

『はい。コアとコアをシンクロさせて、全く違うISへと進化させる……だそうです』

 

『…………。つまり、この場合はガタックゼクターとハイパーゼクターのシンクロ……。加賀美君が自身の能力で双方の親和性を……』

 

 岬さんは俺との通信中にも関わらず、一人でブツブツと考え込んでしまった。う~ん……これは、俺と田所さんが置いてけぼりな感じか……。

 

 俺は俺で、試そうと思っていたことがあるし……やって見るか。俺はガタックを身に着けたまま胡坐をかいて座った。そしてそのまま、青子へ語りかける。

 

『青子、ちょっといいか?』

 

『なんでしょうか、マスター』

 

『ハイパーガタックの間って、お前の領域はどうなってる?』

 

『はぁ……?特に、変わりはありませんが……』

 

 何故そんな事を聞くかと言うと、ガタックゼクターに対する青子が存在するならば、居るハズなのだ……ハイパーゼクターに対する存在も。

 

 ほぼ100%の確率でいる『ソイツ』とも、俺の第二フェーズで対話が可能なはずだ。だとすれば、俺は早めに済ませておきたかった。それを青子に言うと、気になる言葉を呟く。

 

『そういう事でしたか。でしたら、訂正いたします。私の領域に変化はありませんが、感じはします。私以外の……何かの存在を』

 

『……ビンゴ。……だと良いんだがな。とりあえず、一度そちらへ行ってみよう』

 

『かしこまりました。いつでも、お待ちしております』

 

 俺は胡坐をかく状態から、座禅へと切り替える。そしてそのまま……ゆっくり呼吸を落ち着かせ、瞑想の体勢へと移行する。集中力……鍛えておいて正解だった。

 

 俺の意識は、簡単に遠のいて行く。この感覚が、だんだんと掴めてきたぞ……。あまりいい気持ではないが、俺は意識を別の世界へと持って行った。

**********

「痛い……。全然慣れんな、コレ」

 

 背中に瓦礫の角とかが当たるのを感じ、そうぼやきながら上半身を起こした。はぁ……何度見ても、荒んでんなぁ青子の領域は……エリアXを模しているから仕方が無いか。

 

 空を見上げると、月はすさまじく丸々としたものが顔を覗かせていた。って事は、俺の精神は安定していると言う事だろう。

 

「マスター」

 

「おお、青子。わざわざ迎え……に……?ど、どなた様?」

 

「何を仰いますか。正真正銘、貴方の妻ですが?」

 

 まぁ、それはスルーするとしてだ……明らかに、大人になっている。青子はどう見積もっても、中学生程度の見た目をしていたと言うのに……。

 

 髪形や服装は変わらないものの、顔つきや体のラインはより女性的なモノになっていた。完全に、見た目だけならば俺より年上であろう。

 

「……第三フェーズか?それともハイパー化してるからか?」

 

「ああ、その事でしたか。恐らく、前者です。実は私……初めは小学生程度しかありませんでした」

 

 そ、そうだったのか?するとつまり、フェーズごとに見た目の変化があると言う事か?ってこたぁ……俺の能力はここで打ち止め……ってのは、考えにくいな。

 

 ソルは、さらなる高みを目指すと言っていた。ならば、第四フェーズと続いて行くのだろう。フェーズを上げて行った先に、奴らの目的があるのかもしれないな。

 

「まぁ、ハイパーゼクターを捜すぞ」

 

「……一言も無しですか。了解しました……大まかな位置は、私が彼女を感知いたしますので」

 

 見た目が大人っぽくなったことに関して、何も言わなかったから少し不機嫌らしい。簪と付き合い始める前ならば、言っていた可能性は大きい。だがもう、簪以外にそういうのは口が裂けても言えん。

 

 そんな訳で、瓦礫を踏み分けながら進んで行く。しかし、彼女か……。やっぱり姿が女性なのは、確定みたいだな。青子のように、厄介な性質でなければ良いのだが。

 

「このあたりに居るハズ……ですが」

 

「……姿が見えないな」

 

「ええ、彼女は我々から隠れているのでしょうか?」

 

 青子に案内されて着いたのは、比較的に建物の形を残している廃墟が立ち並ぶ一帯だ。もし隠れているとすれば、かなり面倒でしかない。

 

 俺は、ここにゲリラごっこをしに来たのではない。落ち着いて辺りをキョロキョロと見回すと、そこを残像が通り過ぎた。居た……小まめに隠れ場所を変えてるようだ。

 

「青子」

 

「かしこまりました」

 

 早急に捕まえるべく、あぶり出し作戦を使う事に。青子に指示を出すと、俺は追い詰める方向に隠れた。ジリジリと、隠れているであろう廃屋に近づく青子……。

 

 そして、次の瞬間にまた影が飛び出た。残念だが、逃がしはしない!俺は通せんぼをするように、ハイパーゼクター?の前に立ちはだかった。

 

「っし、捕まえ……。ち、ちっさ……」

 

「…………」

 

 それこそ、どう見たって小学生……しかも低学年にしか見えない少女が俺を見上げていた。青子のように髪は青く、瞳は紅い。ただし、青子のようにツインテールでは無く、何もまとめられてはいない。

 

 服装も青子に似たドレスだが、幾分か金の配色を占める割合が大きい。さて、そんなハイパーゼクター?が、俺を見上げて放った第一声は……。

 

「おとーさん!」

 

「……は、はい?お、俺の事……だよな?」

 

「なるほど、マスター……きっとこの子は、私とあなたの間に……」

 

「お前は黙ってろ」

 

 俺がそう言うと、青子はしょんぼり。対してハイパーゼクター?は、ピョンピョンと飛び跳ね『お父さん』を連呼している。

 

 舌足らずな発音は、まさに小学生を見ているような感じだ。とりあえず俺は、ハイパーゼクターを抱え上げ問い掛けてみる事にした。

 

「えっと、ハイパーゼクターで良いんだよな?」

 

「そー!」

 

「……なんで、俺がお父さん?」

 

「おとーさんは、おとーさんだもん」

 

 ……さいですか。まぁ……小学生の見た目した相手に、怒鳴るのは……俺の良心()が痛む。まぁ、理由は分からないにしてもお父さんと呼ばれるしかないか。

 

 そんで、この子にも名前を付けなければ。すると、良く見てみれば……前髪にカーブを描いて、青では無く金髪の部分があった。なるほど、ならば……月子だな、カーブの金髪が三日月に見えたからだ。

 

「あ~っと、月子。聞きたい事があるんだが」

 

「なぁに、おとーさん?」

 

「ハイパークロックアップ、あるだろ?あれさ、タキオンをゼロからマイナスまで持っていけるのか?」

 

「う~ん……たぶん無理ー!できたとしてもね、おとーさんの体が持たないと思う」

 

 難しい話だから心配したが、しっかり受け答えをしてくれた。そうか……やっぱりタイムスリップは無理だよな。出来るとすれば、ソルがとっくにやってるだろうし。

 

 単純に、クロックアップよりも上の能力と考えた方がよさそうだ。ハイパー化に関わる事は、疑問が尽きない。俺は青子に、続けて質問をした。

 

「そもそもあれって、月子の能力……だよな」

 

「えっとね、正確に言うとね、おねーちゃんの能力だよ。私はね、おねーちゃんと融合するまでがお仕事なの」

 

 なるほど、と言う事は……ハイパー化に際して、クロックアップが進化したと言う事か。ってこたぁ……月子の第一フェーズによって引き出された力は……『融合進化』といったところか。

 

 だがそれは、俺の第三フェーズの『シンクロ』によって、初めて発動するのだろう。だから他のISを強制的にセカンドシフトさせるのは、無理そうだ。

 

「じゃあ最後に、ハイパークロックアップの弊害って……悪化するのか?」

 

「ごめんね、おとーさん。私にはわからないの……」

 

 そうか……まぁ、それもそうだよな。月子に聞いたって分かるはずはないが、一応だ。もし仮に悪化するからといて、ソルが使ってきたら使わないわけにもいかないし。

 

 しかし……あいつ、本当にリスクを喰らってるのか?いつも平然としている……そんな印象を受けるが。ただのやせ我慢だと、良いんだがな。

 

「ん……解かった。それじゃ、俺はもう帰っから」

 

「えー……やだー!おとーさんと、もっと遊ぶ!」

 

「あ~……悪いが、お姉ちゃんと遊んでてくれ。良い子だから、な?」

 

 遊ぶって事は、隠れていたのはかくれんぼか何かのつもりだったらしいな。俺は渋る月子の頭を、優しく撫でた。すると月子は、涙目ながらも頭を頷かせた。

 

 ちなみに青子だが、俺の言葉がよほどショックだったのか、少し遠くで落ち込んでいた。……何も言わんぞ、俺には簪が居るのだ。

 

「おとーさん、また遊ぼうね?約束だよ?」

 

「ああ、分かった。約束しよう。ほら、行ってきな」

 

「はーい!行ってきまーす!」

 

 しゃがんで再度月子の頭を撫で、背中をほんのちょっとの力で押した。すると月子は『おねーちゃーん!』と元気に青子へと突っ込んでいく。

 

 これは……定期的に、月子とは遊んでやった方が良いのかもしれん。とりあえず今回は、退散するか……俺はそのまま目を閉じ、現実世界へと帰還した。

**********

 現実世界に戻ってみると、やっぱり時間はさほど進んでいない。……疲れは感じないな。自分のIS以外の領域へ入ると、疲れるのかもしれない。

 

 俺は座ったまま肩をグルグル回して、ひと段落。そして、大人達の意見がまとまるのを待った。田所さんなんかは、椅子に座って寝始めてしまっている。

 

『加賀美くん。とりあえず、先に色々と試してみたいのだけれど』

 

「ああ、了解っす。指示、いつでもどうぞ」

 

 俺を待たせる事になるから、さっさと記録だけはしてしまう事になったらしい。岬さんの指示に従いつつ、様々な事を行った。

 

 といっても、大半がハイパーカリバー関連だけど。特に、イオンブレードに関して……かな?それが一通り終わると、岬さんが最後にと指示を出した。

 

『申し訳ないのだけれど、ハイパークロックアップをして見て』

 

「へぁ!?あっ、あ~……その……」

 

 しまった!ハイパークロックアップが使えない言い訳を、全く考えていなかった!残念ながら、何が起こるか分からないので、無駄撃ちはできない。

 

 俺はテンパって、しどろもどろとしてしまう。その様子を睨むような目つきで見ているのが、岬さん……もとい岬主任だ。

 

『何か、隠してるでしょう?』

 

「そんな事は……」

 

『加賀美くん、ISを解除してこっちに来なさい』

 

「……はい」

 

 こうなったら、腹をくくるしかなかった。とりあえず岬さんだけに、吐血した事を伝える。すると岬さんは血相を変えて俺に説教を始める。

 

 それが終わったら、精密検査に駆り出された。当然ながら俺に拒否権などなく、あれよあれよと言う間に事が過ぎていく、そんな一日だった……。

**********

「はぁ……」

 

 精密検査の結果は、特に異状なし。医者も、途中から不思議そうな様子だった。まぁ至って健康体が、するような検査では無かったし。

 

 それで今は、IS学園への帰路なのだが、足が重い。それは……岬さんに、ある事を言われたからだ。と言うか、脅し半分だぞ……アレ。

 

『簪ちゃんだけには、話なさいね。貴方が言わないのなら、私が伝えるわ』

 

 なんて言われて……。まぁ、俺と簪の間柄の事を考え……アレ?ちょっと待て、あの人……何で俺と簪のこと知ってんだ!?いや、ちょっと待て!プライバシーなんてあったもんじゃ……。

 

 ま、まぁ……簪が、岬さんに報告したのだろう……本当、そうであってくれ。報告と言えば……簪は今、学園に居るのだろうか?俺は、携帯を取出し簪へと繋げた。

 

『もしもし……』

 

「簪、今……学園に居るか?」

 

『うん……私の部屋……』

 

「そうか。同室の奴、居る?ちょっと、二人で話したい事があるんだ」

 

『居ないよ……大丈夫……。でも……話したい事って……?』

 

 それに対して俺は、俺が着いたら話すと答えた。恐らく簪に、変な期待を持たせてしまっているだろう。だって、わざわざ二人で話したい……なんて言ったからな。

 

 俺の足取りはますます重くなるが、簪の部屋の前まで着いてしまった。俺はしっかり覚悟を決めて、部屋の戸を優しくノックする。

 

「いらっしゃい……」

 

「おう、悪いな、いきなりで」

 

「ううん……。会いたいって言われるのは……嬉しい……」

 

 あぁ……やっぱり、変に期待させてるっぽいぞぉ……。簪は俺から顔を逸らし、頬を染めている。いや、そりゃ俺だってもちろんさ、簪と二人きりは嬉しいが……。

 

 ま、とにかくやるしかない。俺は簪の部屋に入ると、とりあえずベッドに腰掛ける。すると簪は、俺とほとんど密着した状態で、隣に座った。……とりあえず世間話から入ってみるか。

 

「メガネ、どうしたんだ?」

 

「あっ……それは……その。前……少し邪魔だったから……。真と会う時は……外そうかなって……」

 

 あ~……前ってこたぁ……アレだな、キスの時の話か。別に俺は邪魔には感じなかったが、簪がそう言うのならそうなんだろう。というか、なんて可愛い事を言うんだこの子は……。

 

 つまりは、いつでもキスしやすい様にって事じゃん。いかん、めっちゃチューしたい。だが今は我慢だ……そういう事をする雰囲気では、無くなるのだから。

 

「それより……話って……?」

 

「ああ、それな……」

 

 むしろ、簪に逃げ場をなくされた……。そりゃ、気になるよなぁ……。俺は簪に隠していた後ろめたい気持ちを振り払うかのように、口を開く。

 

「……俺は、とあるリスクを背負っててな」

 

「真……?」

 

 いきなりの切り出しに、簪は困っているようだった。しかし……包み隠さず話した。初使用時の吐血……心臓の痛み……。それが、ハイパークロックアップを使用すると起きる事を。

 

 それと、これから症状が重くなるのかどうかは、全くの未知数である事も伝える。話し終わる頃の簪は、顔面蒼白で……俺は、どうして良いのか分からない。

 

「……もう……使わないで……」

 

「簪……そういう訳には、いかない……。そうじゃないと、アイツを止められ……」

 

「止められなくったって……良い……!世界がどうなっても良い……!貴方が居ない世界なんて……私は……嫌!」

 

 簪は、力いっぱいに俺の服の胸部分を鷲掴みにする。その手が酷く震えていたのは、力が込められているからではないだろう。

 

 ……世界と俺とを天秤にかけ、俺の方が傾くか。俺だって、もちろんそうではある。臭い台詞だが、簪の為なら世界を敵に回したって構わない。だが、しかし……。

 

「簪……ゴメン、やっぱり約束はできない」

 

「どうして……!?」

 

「どうしてって、そりゃ……。世界が終わっちまったら、簪と結婚もできないし、家庭も築けないだろ」

 

「でも……死んじゃったら……」

 

「まだ、死ぬって決まった訳じゃねぇ」

 

 死なないって、決まった訳でも無いけど。悲観的に物事を見るのは良くないから、どうせなら俺は簪と歩んでいく明るい未来を見ていたい。

 

 そう……俺は死ぬためにハイパークロックアップを使うのでなく、むしろ逆だ。簪と、生きるために……簪と共にいるために使いたい。

 

「俺の近頃の行動原理な、本当……ほとんど簪の為って、そう思ってる」

 

「ま、真……」

 

「だから俺は、簪の為に生きる。それに、約束もしたろ?ずっと、一緒だ。俺、信用ないか?」

 

「そんなこと……ない……」

 

 多分、俺は今……とても卑怯な言葉を言っている。こういってしまえば、簪は同意するしかないと分かっていてるのに……。でも、そうでもしないと……簪は折れてくれなさそうだから。

 

 …………。愛おしい。俺の事を、こんなにも思っていてくれる簪の事が。気が付けば俺は、簪を強引に抱き寄せていた。何もかも儚い簪は……それだけで壊れてしまいそうだ。

 

「簪……愛してる」

 

「わ、私も……」

 

「私もじゃ、ダメだ。愛してるって、言ってくれ」

 

「あ……愛して……る」

 

 あぁ、こんな予感はしてたが、やっぱり我慢できねぇや。俺は簪を少し離すと、間髪を入れずにその唇を奪った。簪はかなりビックリしているようだったが、逃がさないために俺は後頭部を抑える。

 

 前は、触れるだけだったが……そんな物では、全く足りない……もっと簪の愛を感じたかった。俺のエゴでしかないのだろう……しかし俺はもう、止まる事が出来ない。

 

 簪の口内へ、ゆっくりと舌を潜り込ませる。俺の舌先が、簪の舌先へと触れた。今度こそ簪は、分かるくらいに体を跳ねさせる。それに伴って、舌も少し奥へと引っ込んだ。

 

 大丈夫だ……怖くない。そう伝えるように、ゆっくり……ゆっくり……舌を動かす。すると、簪の方からもゆっくりだが舌が近づいて来た。

 

 俺はそれを逃さず、優しくではあるが、舌を深く絡め取った。安心してくれたのかは分からないが、簪の方からも積極的に舌が動き始める。

 

 簪の柔らかい舌の感覚……簪の唾液……簪の切なそうな声。何もかもが、俺を狂わせる。もはや我慢なんて、生易しい感覚は残されていなかった。

 

 自制が全く効かずに、どれだけの時間が過ぎただろうか。もはや、時間感覚も良く分からなくなってしまった。ただ室内に、お互いを求めあっている証拠の水音のみが響き渡る。

 

 しかし……このままいくと、本当にまずい。このままでは勢い余って、一線を超えてしまいそうだ。もちろんその欲求は激しいが、今はまだ時では無い。俺は、名残惜しいながらも簪から離れた。

 

「……メガネ、外してて正解だったな」

 

「うん……そうだね……」

 

 そう言いながら簪は、俺に体重を預けつつ腕に抱き着く。重くもなんともないが……うん、心地いい。俺は簪の頭を撫で続ける。

 

 お互い会話も無く、ただ時間だけが過ぎるが……今の俺には、ただ簪が隣に居るだけで幸せだ。簪も、そう思ってくれてると良いが……。こうして、俺の休日は過ぎていく。これからもこうして、幾年の時を……簪と共に……。

 

 

 

 




真面目な話になったけど、結局オチは簪で落ち着く。

話の構成上ですが、岬さんと田所さんには真の事を離しておかなければならない事を、思い出しました。

これでカブトに登場した人物が、全員知った事となります。三島は、前から知っていました。陸、三島、田所、岬……この面子が、どうしても必要なので。

それ故、簪とのデートは次回にと言う事で……とは言っても、書き出す前に思い出したので、次の投稿もいつもと同じくらいになる……かな?日曜日には、いつも更新してますが。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。