やっぱり自分で小説を書くに当たり、資料ってのは大事なものですね。私は主に週刊仮面ライダー等を利用しているのですが……。
かなり特撮に詳しい気でも、そんな設定が!?とか思うようなのばっかりです。まぁ細かすぎて、資料として利用できない面もありますが。
資料抜き差しとして、やっぱり深く趣味を掘り下げれるのは良い事だと思います(自己完結)ぶっちゃけ怪人のデータが、一番の楽しみだったりしますけど。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。
罪を謝る(誠心誠意)ですが何か?
(あ~……入りたくねぇ……)
何処へかと聞かれると、自宅である。俺が見上げているのは他でも無く、加賀美家だ。恐らくだが……親父を相当怒らせているはず……。それはもう怒髪天を突きすぎて、天元突破するレベルだろう。
別に親父が怖いって事ではねぇけど、気まずいんだよなぁ……。俺の失踪をよほど心配させたのだろうから、と言うか……チラシ配ってたもんな。
だから昨日とかも帰るって連絡は、電話で無くメールだった。そう言うのは、基本的に電話で伝えるべきだったのだろうが、気まずいんだよ……。
だが、今回の件は全て俺が悪かったんだ……キチンと、しっかり、誠心誠意の謝罪をするのだ!うぉらぁ!加賀美 新がナンボのモンじゃい!俺は勢いよく、自宅の戸を開いた。
「ただいま!」
「おう、御帰り」
…………出待ちかよ、コンチクショウ。親父は玄関で、仁王立ちをしていた。その表情は、普段とあまり変わらない。……いや、ちょっとタイム……やり直したいんだけど……ダメか。
と言うかもう、怖い。はい、怖いです。帰るなりに怒鳴りつけてくれれば、どれほどに良かったか。すぐさま親父に謝ろうと思っていたが、俺は完全に停止してしまう。
「真」
「な、なんだよ」
「歯ぁ食いしばれ」
親父のそのセリフと、ほぼ同時の事だった。俺の左頬に、まるで鉄塊が激突したかのような衝撃が走る。俺は立っていられずに、尻餅をついてしまった。
ドガシャア!と玄関の戸に激突すると、口の端から紅い液体が垂れてくる。血だ……親父の顔面パンチなんて、何度も受けて来ているが……これほどまでの威力は初だ。
血を拭い取りながら親父を見上げてみると、フーッ!と息を荒げながら震えるほどの力で拳を握っていた。本気で親父を怒らせたのも、これが初だな……。
「馬鹿野郎!俺が……俺がどれだけ心配したと思ってんだ!」
「…………スマン」
「スマンで済むか!」
怒鳴る親父に、二撃目を覚悟しながらキツく目を閉じた。が、衝撃などは襲ってこず……むしろ温かみに包まれた。見れば、親父が尻餅をついたままの俺を抱きしめている。
親父は……泣いていた。俺が知る中では誰よりも、強く逞しい……あの親父が。……俺がした事は、それほどまでに親不孝な行いだったのだろう。
「心配……させやがって!真にまで居なくなられたら……俺は……父さんは!」
「あぁ……分かってる。ゴメン……親父」
失う恐怖と言うのもを、親父は一度味わっている。それはもちろん、お袋の事だ……。それで俺が失踪したと聞いたら、不安にもなるだろう。
それこそ、一時は本気で……死ぬ道も考えていた俺が居た。だが……選ばなくて、本当に良かったと思える。親父を……一人にする訳にはいかないからな。
「なぁ……親父?」
「……なんだ」
「全部、話す。俺に……何があったのかを」
この事を、親父にだけは自分の口から話したかった。俺やお袋が何者で、何を背負っているのかを……。と、その前に治療からだ。頬を冷やしとかないと、ぜってー腫れる。
**********
「……俺からの話は、終わりだ」
「…………」
俺達は、お袋の仏壇のある部屋……仏間で、正座をしながら向かい合っていた。事の顛末を話し終えた俺は、親父の反応を注意深く観察する。
親父は、かなり混乱している様子だ。それもそうだろう……幾分か、突飛も無い話なのだから。妻が悪の組織の実験体で、命と引き換えに子を産み、そのクローンが世界を脅かす……なんざ、笑い飛ばされてもおかしくない。
しかし親父には、俺が失踪した理由もちゃんと告げた。その事が、事実の裏付けとなっているのだろう。親父は目元を抑えるような仕草を見せると、静かに口を開いた。
「そうか、光葉は……そんな過去が……」
「悲しいけど、事実らしい……」
「世界の為に、真を……か。ハハ……光葉らしいや」
お袋の遺影を見ながら、親父は微笑んだ。その表情はどうにも穏やかで、まるで隣にお袋でもいるかのような錯覚を覚える。
「真、良く立ち直ったな。流石は俺と母さんの息子だ!」
「ああ、親父とお袋の影響もデカイからな。本当……感謝してもしきれない」
俺の言葉に親父はパチクリと瞬きをして、意外そうな反応を示した。思わず反論したくなるが、既に昔の俺は死んだ。どんな時でも真新しい気持ちで……俺の名には、そう言う想いが込められているのだから。
親父は二カーッと笑って、俺の頭を乱暴に撫でる。痛いくらいだが、とりあえずはされるがままにしておこう。気が済んだのか、親父はパッと手を離した。
「『も』って事は、他に何か……あったんだな?」
「……俺は、一人じゃ無い。俺の傍に居てくれるのは、親父やお袋だけじゃない……。今の俺には、仲間がいるんだ。正直、世界の為とか……そんな事の為に戦う気なんてねぇよ。俺は、俺の大切な人達の為に戦いたいって……そう思ったから……」
「そうか……。うん、偉いぞ……真」
また親父は、穏やかな表情を見せた。単純に、俺がこんな事を言うのが嬉しいのだろう。友人関係では、苦労を掛けた。俺は心の中で、親父に謝罪しておく。
「あ……そうだ。親父、コレ」
「ん?ハンディカムか……これが、どうかしたのか?」
「それ、お袋が俺に充てたメッセージ。俺用だけど、親父に渡しておこうと思って」
「いつの間に撮ってたんだ……?って言うか、光葉一人で撮れたのか……」
やはり親父としても、お袋のド天然が気がかりなようだ。その点に関しては、何も問題が無かったと指摘すると、親父は更に怪訝な表情を見せる。
一体……お袋は、俺の知らない所で何をやらかした?迷子になった拍子で、海を渡ったりしてたんじゃないんだろうな……。なんだろうか、お袋の事は良く知らないのに、本当にやってそうで怖い。
「あぁ、それとさ、親父に……聞きたい事があるんだが……その……」
「おっ、珍しいな……真が俺に質問なんて。いいぞ、お父さんに任せろ!」
「う~……あ~……。い、言っとくが……笑うなよ!絶対だかんな!」
これだけは、親父以外に相談するわけにはいかんのだ!というか、必死に前振りはしたが……絶対に笑われる自信がある。いや……良い、他の面子に相談した時の事を考えれば。
早く話せとワクワクしている親父に対し、俺はゆっくりと心を落ち着かせる。そしてゴホン!とわざとらしい咳払いをしてから、親父に打ち明ける。
「人を好きになるって……どんな感じだ?」
「なんだって……?」
「だっ、だから!恋ってどういうモンかって聞いてんだ!」
「ブッ!?クククク……アッハッハッハッハッ!」
落ち着け、ここまでは想定の範囲内だ。親父は、畳をバンバン叩きながら可笑しそうに笑う。予想していたとはいえ、やはりこうも清々しく笑われると……イラッと来るぜ。
しかし質問したのは俺だし、笑われるような事を言った覚えもある。俺は顔を赤くしながらも、親父が笑い終えるまで微動だにしない。
やがて親父は、ヒーヒー言いながら涙をぬぐった。そうして顔を上げるのだが、俺の顔を見ると思い出し笑いのような感じで、ニヤニヤと頬を釣り上げた。
「……もう良いか?」
「悪い悪い……。あの真が、そんな事を言うとは思わなくて。それよりも、どうしたんだよ急に」
「俺は……俺に関するあらゆる物事に、決着を着けたいんだ」
「そうか……例のあの二人だな」
親父の言葉に、俺は黙って頷いた。もう逃げるのも、見て見ぬフリをするのは止めようと思う。しかし、いざ真面目に考えてみても、単にドキドキするのと、恋愛感情の違いがピンと来ない。
そこで、お袋を愛した親父に相談してみようと言う事だ。まぁ……内心では、焦っている部分もあるのだろう。俺の体は……いつまで持つかは分からない。
すべてに決着がついてからは、遅いかも知れん。だから……俺がこうして健康優良である間に、二人の想いに対する答えは出したかった。そうでなくては、きっと後悔する。
「俺のがアドバイスになるのかは、分からないが……。そうだなぁ、俺の場合は……本当に、母さんの事が頭から離れなかったんだよ」
「そりゃあ……よっぽどゾッコンだったんだな」
「まぁな、でもまぁ……恋ってのは、良いもんだと思うぞ。その人の為に、強くあろうって思えるからな」
「……解かった、参考にして見る」
なんとなく、心当たりはある。明確に『あの時のアレがそう』だとかは、ハッキリと言えないが。恐らく、二人の内どちらか一方に感じた……んだと思う。
ぶっちゃけ、俺の中では答えは決まりつつある。あともう一押しか……。じっくり考えてる……暇が無いから焦ってるんだったな。まぁ……本当に、後悔だけはしないようにしなくては。
「んじゃ、俺……もう行くからな。心配かけて、悪かった」
「何処かに出かけるのか?」
「とりあえず……ラボラトリ。岬さん達にも謝っとかないとさ……」
「真が世話になってる人達だな。しっかり、謝っておくんだぞ」
俺は呟きながら立ち上がると、痺れかけている足を揉み解しながら親父の質問に答えた。ラボラトリの面子はもとより、田所さんにも会えればいいんだが……どうやら、かなり心配させたらしいし。
玄関の方に向かう前に、親父が折り菓子を俺に持たせる。『俺の息子がご迷惑を』と言う事の様だ。むしろ親父も付いてこようとするが、断固として止める。
考えても見ろ……戦神なんぞ呼ばれているところを、親父に見せる訳にはいかん。親父は渋々だが従ってくれて、俺を玄関まで送りだす。すると、思い出したように親父が言った。
「あっ、そうだ真……。もし告白するんだったら、せめてその隈が取れてからにしろよ。男前が台無しだからな?ポイント半減だぞ」
「なんだよ、ポイントって……。まぁ……ご忠告どうも、親父殿。……じゃ、行ってきます」
「おう!行ってこい……バカ息子!」
「誰がバカだよ、クソ親父!」
冗談めかした表情で、親父は言った。俺はそれに片腕を上げながら答えると、家から出る。さて……目指すはラボラトリか。岬さん達……忙しくないと良いんだがな。
**********
「はぁ~……酷い目にあった……」
俺は、思わずそう呟かずにはいられなかった。俺の右頬には、新たに湿布が張られている。何があったのかと聞かれれば、田所さんと色々……。
岬さん達の仕事場に向かってみれば、待ち構えていたのは田所さんで……。後は、親父の時とほぼ同じだ。俺の右頬を鉄拳が射抜き、口の端から血が流れた……デジャブなんてレベルでは無い。
田所さんの場合は俺が左頬を怪我しているのを見て、急遽殴る手を左に変更し右頬を捉えたようだった。その点を見ると、かなりの手加減なのだろう。一瞬で判断するとか、流石としか言いようがない。
あ~……でも『馬鹿弟子が!』って怒られたのは、少し嬉しかったかもな……認められてるんだって思えた。その後は、いつものアホ共に『御帰り戦神!』と胴上げされ、岬さんの説教のフルコースだ。
ちなみにだが、後日にハイパーガタックのデータ計測を執り行う事に。俺の事を説明するのは、その時で良いだろう。ラボラトリの場合は、口を挟む余裕すら無かったもの……。
それで、俺が何処に向かってるのかと言うと……店長の所だ。あの人にも、キチンと謝っておかなければならん。何と言ったって、嫌な事を思い出させたのに、俺は憎しみをぶつける目で店長を見ていたのだから。
店長の店は、今日も繁盛していないらしい。日によっては、かなり人が多いのだが……波があるのだな。店長目当てで来る物好きも居たりするのだが……まぁ見た目だけは100点だろうし。
それは、この際良いだろう。俺は押し戸を開き、店の中へと足を踏み入れた。すると、あろう事か店長はカウンターで爆睡中だった。これまた……女性らしくないイビキをかきながらだ。俺は、呆れた表情で店長を揺さぶる。
「おい……おいってば!」
「んひぃ!?何!?何事だ!?」
「…………。アンタ、思ったより可愛いところあるんだな……んひぃって……」
「ば、ばばばバカヤロウ!驚かせるからだろうが!かっ、かわっ……かわわわ……可愛いとか言ってっと殴るぞ!」
店長は驚いたようにガバッと立ち上がると、顔を赤くしながら必死に取り繕う。店長の声はハスキーなのだが、さっきの『んひぃ!?』は妙に音程が高かった。
普段とのギャップのせいで、余計に可愛く思える。まぁ……年齢は、お袋より上なのが確定してる訳だが……。だからこそ、と言う点もある。
「つか、何しに来たよ?オラぁてっきり、二度と店には顔を出さねぇと……」
「いや、俺はもう大丈夫だ。だから、アンタに謝りに来た。悪かったよ……俺は……」
「坊主が謝るこたぁねぇよ。オレも、お前に隠してたんだからな……」
「んじゃ、お互い様って事で……いいな?」
あくまで店長は、俺に対して罪悪感を覚えているようだった。だが言った通りに、俺はもう気にしてなどはいない。だからこそ、こうやって謝罪に来たのだから。
俺が差し出した右手を、店長は黙って取る。……が、妙に握力が強く、普通に痛い。どうやらさっきのお返しらしいが……店長相手に女性だからと手加減はいらん。負けじと俺も店長の手を力いっぱい握る。
お互いギリリ……と一歩も引かないまま、数分が過ぎ去った。いい加減このやり取りは不毛だと判断した俺達は、どちらとも無く手を離した。
「止め止め、アホくせぇ」
「先に仕掛けて来たのは、そっちだろうが」
「あん?オレをからかったのは、何処のどいつだ?」
「別にいいだろ。可愛かったんだから」
再びカウンターに座った店長と、いつもと変わらないやり取りを繰り広げる。お互いに基本的に喧嘩腰で、どうにも殺伐とした感じ……だが、信頼し合ってこそのだ。
しかし『可愛い』に関しては、本気で照れているらしいな……今も顔紅いし。意外な店長の弱点を発見したと言っても良い。これは今後使えそうだ……追い込まれた時に言ってみよう。
「ったく……酔狂な野郎だな、坊主は。普通は許せねぇと思うぜ」
「ん~……一つ、思った事があってな。母さんの命日の白百合……アレ、アンタだよな?」
「…………」
店長は否定すらしないが、逆にそれが正解であることを物語っていた。お袋が白百合が好きだっての……他に知っているのはこの人しか思い当らなかった。
それに、店長はお袋の事を大事に思っていたみたいだし……。どこかでお袋が亡くなった事を聞き、せめてもの手向けとして白百合を置いていたのだろう。
「純潔、威厳、無垢、甘美、清浄……」
「……白百合の花言葉か」
「おお、良く知ってんな。あの子は、花が好きでよ……ある時、ふと言ったんだ。この花言葉は、豪くお前に似合ってるな……ってよ。そしたら、気に入ったらしい……可愛い奴だろ?」
なるほど、姉のように慕っている人物からそう言われるのが……嬉しかったのだろう。うん……威厳以外は、しっくり来るな。清廉潔白……なんてお袋に似合う言葉だろうか。
しかし……それだと疑問が残る。お袋は、どうして名前を全く関係なさそうな名を名乗っていたのだろうか?ZECTの用意した戸籍と言うのなら、分からなくもないが。俺は、疑問を店長へぶつけた。
「確か……『津波 光葉』って名乗ってたんだよな?そりゃ多分……もじったんだと思うぞ」
「もじった?何を?」
「Crime and Punishment……奴らは、それがあの子の『作品名』だっつってた」
「罪と罰……。つみとばつ……つばみつば……確かに、似た響きだな。でも、どうして……忌まわしい記憶のハズだろ」
「あの子の事だ……どうせ、自分が背負ってる物を忘れねぇように、とでも思ってたんだろ。ま、加賀美になっちまった訳だが」
完全なるアナグラム……例えばだけど、フォーゼの登場人物である『歌星 賢吾』の名を並び替えれば『ほんごう たけし』になるのとは違うが……。それでも、なんとなく似た響きの名を名乗っていたのだな。
それにしても……やっぱ腐ってやがるな、亡国機業……。お袋相手に……『作品名』だと?いったい……命をなんだと思ってやがる!俺は、憤りを隠せないでいた。
「坊主、落ち着きな。あの子も、坊主のそんな顔は見たくねぇだろうよ」
「そう……だな、悪い。つーか、また思い出させちまったか?」
「いやぁ、オレのこたぁ良いんだよ。あの子との思い出も、嫌なモンばっかじゃねぇし。オレにとっちゃぁ……ほとんどが良い思い出だ」
「そうか……。良かったら、聞かせてくれないか?お袋との思い出……」
「おうよ、もちろんだ!そうさなぁ、あの子は……」
それからしばらく……どころか、学園に帰らなくてはならないギリギリの時間まで、お袋の話を聞いた。店長の話を聞く限り、お袋のド天然列伝は……お袋の小さな時からの話だったらしい。
やはり母親として、多少ゲンナリはするものの……それも含めて、聞けて良かったと思える話ばかりだった。思い出話を語る店長も楽しそうで、丸く収まったといった所だろう。
親父にも、聞かせてやりたかったな……。いや、親父も真実を知った今、直接聞くべきなのだろう。今度暇があったら、引っ張って来てやる。どうやら親父は、店長が苦手みたいだけどな。
店長が姉替わりだったってのは、端折ってるし……いったい親父は、どんな顔をするのだろう。そんな事を考えながら、少し笑みをこぼしつつ俺は学園への帰路に着いた。
轟く新ナックル&田所ナックル。
まぁ尺の都合上で、ラボラトリ訪問はカットですが……後日やる予定のハイパーガタックの諸々検証にて、詳しく明かすかもしれません。
こうして見ると、大人勢にも真は愛されておりますな……。父親である新はもとより、岬さん……田所さん……店長……。ついでに、信者達。
近い年齢同士で無く、年離れの絆もなかなかどうして……。やっぱり仲間ってのは、良いもんだ!皆さんも、仲間は大切に!
それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。