戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

ついに……この話がきてしまったか……。この話を見たら、恐らく色々言いたくなるかと思われますが……。まぁお手柔らかにお願いします。

この二次創作そのものが、大きく動き始める話なので、今回は特に余計な事は言いません。何が起きるか、全ては皆さんの目で確かめてください。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


VSソル(リベンジ)ですが何か?

 初めは、なす術も無く敗北。前回は、オータムの回収に来ていたせいか、マトモに戦うつもりは無かった。つまりは、実質的にこれが本気でのタイマンってとこだろう。

 

 こちらに向かって来るソルは、前に見せたアックスモードとクナイモードの二刀流だ。通常ならば、ダブルカリバーで『挑む』のだろうが、何も真正面からいってやる必要はない。

 

 今の俺には、コイツが……エクステンダーが居る。しかも高機動用に換装も済ませているのだから、スピードで翻弄すれば良しだ。

 

「おおらぁっ!」

 

『チッ……』

 

ギャリィ!

 

 超高速ですれ違う俺に対処できなかったのか、ソルは足を止めるようにして、ダブルカリバーを防いだ。惜しい……!惜しいが、どうやら効果は十分みたいだな。

 

 だったら、これを繰り返させてもらう事にしよう。何よりも大切なのは、勝つ事だ。汚いだとかそんなこと言ってる暇は無い。そうでないと……また俺の大事な人たちが傷つけられてしまうんだ!

 

「でやぁ!!」

 

『…………』

 

ガギン!ガギン!ガギン!ガギン!

 

 俺はエクステンダーですれ違いながら斬る、Uターンしてまた斬るを何度も繰り返した。ソルは冷静に対処しているようだが、やはり完全には防ぎ切れていない。

 

 そこまで深くは無い物の、カブトの装甲随所を確実にダメージを与えられている。いつまでこれが効くかどうか……奴が、黙ってされるがままだなんて思えん。

 

 と、思った矢先の事だった。エクステンダーで縦横無尽に飛び回り、ソルを頭上から斬ろうとしたその時。ゆらり……とソルが動くのが見えた。

 

『……ようやく、目が慣れた』

 

ギャギン!バチバチバチ!

 

「エクステンダー!」

 

 確かに見えていたが、しまった!?と思った時には、もう遅い。ダブルカリバーを鼻先寸前の所で躱すと、まるでポロッと手を滑らしたかのように、クナイを離す。

 

 そのまま振り上げた足に引っかけ、蹴りの勢いと共に、クナイはまるで釘を打つかのようにエクステンダーの底部に突き刺さる。あれだけ高速で動いていたのに、確実に捉えてきた……。

 

『エクステンダーのメインシステムに障害。もうすぐ飛んでいられなくなります』

 

『何!?』

 

 狙ったか!?それともラッキーパンチ……?いや、そんな事はどうだっていい。飛べなくなると言う事は、エクステンダーは足かせになってしまう。

 

 俺が慌てて接続を解除しようとしたのを知ってか知らずか、ソルはこちらに突っ込み、ガタックの頭部を掴む。そしてそのまま有無も言わさず、俺をどこかへと運ぶつもりなようだ。

 

「こ……のぉ!」

 

『甘い……』

 

「なっ!?ぐあっ!」

 

 向こうから密着してくれたのなら、チャンスだ。俺はそう思って、ダブルカリバーを振るのだが、俺の頭の上で逆立ちするようにして躱された。

 

 さらにそこから、振り子のように勢いをつけ、膝を俺の顔面へと叩きつける。よろけながらも、ようやくエクステンダーを解除する事が出来た。

 

 既にエクステンダーは、半ば停止状態らしく、虚しくも重力に従って落ちていく。クソッ、済まない……エクステンダー。俺は、エクステンダーが顎を下にして地へと突き刺さったのを見届ける。

 

 しかし……随分と皆と離されてしまったな……。ここはまだIS学園の敷地内ながらも、アリーナはかなり遠い。無事でいてくれよ……そうでないと、寝覚めが悪い。

 

『……友、か……』

 

「……なんだよ、なんか文句あっか?」

 

『全く持って、不可解だ。貴様……なぜわざわざ足枷を増やした?』

 

「……もういっぺん……いや、なんも喋るな。それ以上言ったら……殺す!」

 

 それでなくても、イラつく野郎だってのに……本当によぉ……俺を怒らせてそんなに楽しいか!?どうやらソルに他意は無いらしいが……今の俺にとって、それは禁句だ!

 

 足枷?笑わせんじゃねぇよ!俺がここまで強くなろうって思えたのは、アイツらが居てくれたからだ!それを……足枷だと……!?決めた……絶対ぇその面!思いっきりぶん殴ってやる!

 

『他人の心配……心の隙でしかない。その点、かつての貴様は割と好感がもてたが……見当違いなようだ』

 

「余計な御世話だ!……テメェは、あの女が心配じゃねぇのかよ?」

 

『全く。アイツがここで負けるのなら、その程度の女だったと言うだけの事。最もあの二人程度ならば、心配する必要は何処にも無いが』

 

 ぶん殴るとは言ったが、今の心身状態では夢のまた夢だろう。俺はいったん冷静になる目的で、ソルに話しかけてみるが、意外な事に乗って来てくれた。

 

 一夏とセシリア程度なら……か。ハッ、せいぜい甘く見てろよ……一夏や俺や、セシリア……そして、アリーナでワームと戦ってる皆の事をよ。……足元すくってやるぜ。

 

「それにしても、今日はえらく良く喋るな、ソルちゃん!」

 

『貴様……なぜオレの名を……。はぁ……あの単細胞か……』

 

 これは少し気になっていた事だ。初めて遭遇した時なんかは、一言二言しか発しなかったと言うのに、今日のソルはわざわざ返答までしてくれる。

 

 俺はソルを多少イラつかせる目的で、名を呼びつつ挑発した。どうやら、オータムが俺に教えたと察っしたらしく、大きな溜息を吐いた。

 

『何、上機嫌なのは否定しない。……今日ここで、貴様を殺せると思うと……ついな』

 

「そうかい、だが残念だったな。舐めてかかると、痛い目見るぜ?」

 

『ご忠告感謝する。それでは、そろそろ本気でいかせてもらおう』

 

 チッ!やっぱり本気じゃ無かったか……言葉の一つ一つが、本当に癪に障る。ソルはエクステンダーにクナイを突き立てたため、新しいクナイを左手に収めてから構え直す。

 

 本気で無かった……か。だがなソル、俺だって……まだまだ何も見せちゃいない。お互いの本気をぶつけた時、どうなるかは分からんが……とにかく、全力を尽くすのみだ!

**********

 一方その頃のアリーナでは、専用機持ち達が、必死にワームを駆逐していた。やはり戦闘力は大したことは無く、既存のISで無い兵器でも落とせそうなものだ。

 

 専用機持ち達も、ワームを『大したことは無い』と認識しつつも、とある脅威を感じつつあった。それは、至って単純な事で『数の多さ』だ。

 

「鈴……後ろ……!」

 

「キャ!?……のぉ!鬱陶しいわね!」

 

 鈴は急接近してきたワームの鉤爪での攻撃を、簡単に通してしまう。お返しに双天牙月で切り裂き撃破したが、また次が襲って来る。

 

 倒しても次が、次が、次が、次が……終わりの見えないこのやり取りに、各専用機持ち達は、精神的疲労を隠せないでいる。そして精神的疲労は、先ほどの鈴のように物理的ダメージを招く。

 

「塵も積もれば、山となる……とは、良く言った物だ」

 

「本当だよね、このまま闇雲に戦ってたら……」

 

「箒、シャルロット!口の前に、手を動かしなさい!」

 

ドガン!ズドォン!

 

 衝撃砲が咆哮をあげ、見えない攻撃がワームを襲った。一撃撃つだけで、かなりのワームを撃墜できてはいるが、これがシャルロットの言う『闇雲』だろう。

 

 しかも鈴の言葉は、苛立ちを二人にぶつけた……いわば八つ当たりだ。普段はそんなことは気にしないシャルロットも、精神疲労のせいか、カチンと来てしまう。

 

「鈴こそ、僕の言った事を分かってないじゃないか!エネルギー切れしちゃったら、どうするつもりなの!?」

 

「はぁ!?じゃあどうすんの、他に方法ある?ほら、言ってみなさいよ!」

 

「お前達、そんな事をしている場合では……クッ!邪魔をするな!」

 

「落ち着い……キャッ……!」

 

 突然の仲間割れに、箒と簪は必死にフォローへ回ろうとするが、これまたワームに阻まれて上手くいかない。それがまた、箒と簪を焦らせる。

 

 専用機持ち達は、完全なる悪循環に陥ってしまっていた。このままでは、ワームに押し切られるのも時間の問題だろう。そんな中、一人黙って考えを巡らせている者が居た。

 

(おかしい……おかしいんだ……!何かが!)

 

 シュバルツェア・ハーゼ隊の隊長を務める、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。ラウラは先ほどからのワームの動きに、何か違和感を感じていたが、どうにも最後のピースが埋まっていなかった。

 

 憶測で物を言うと、この状況を更にカオスにしてしまう。ラウラはその一心で、完全に謎が解けるまでは黙っているつもりらしい。だが鈴とシャルロットの様子を見ると、猶予はほとんどないようだ。

 

(この虫ども、妙に統率が取れている……たかがAIが、それぞれ考えて連携を……?)

 

 ラウラはその考えを、即座に却下した。それほどまでに、一機一機が賢いAIを持っているとなれば、自分たちはもっと追い込まれているはず。ならばと、ラウラはすぐさま他の推測を立てた。

 

(だとすれば……指揮を執っている個体が存在するはず!)

 

 いわば群れのリーダー、司令塔と言った所だろう。何処か虫を模したこの兵器に、ラウラの推測は一気に確信へと変わりつつあった。

 

 感じていた違和感は、それだ。先ほどからしっかり観察をしていると『攻撃しているようで、していない』ワームが居た。どこか、率先して空気になろうとしているような……。

 

(もし……指揮を出している間に、他の行動がとれないのだとすれば……!?)

 

 試してみる価値はあるなと、ラウラは心の中で大きく頷いた。そして、ハイパーセンサーで大きく全体を見渡すと……居た!何かしているようで、していないワームが!

 

「そこか!」

 

 ハイパーセンサーでしっかりとロックを掛けつつ、シュバルツェア・レーゲンのリボルバーを指揮を出しているであろうワームに向けて撃つ。結果は、一目瞭然だろう。

 

 耳に残る特徴的な爆破音が鳴ると同時に、撃ち落としたワーム周辺のワームが、突如として統率を失いだした。ラウラを除く三人は、何が起こったかイマイチ理解できていない。

 

「やはりか!鈴、衝撃砲だ……奴らの動きは私が止める!」

 

「え、えっと……了解!」

 

 ラウラが手をかざし、統率を失った一団を停止結界で動きをフリーズさせる。そこへ甲龍の衝撃砲が唸り、一団を吹き飛ばした。それも、たった一発でだ。

 

「よし……確信は得た……。各員、これより私の指揮下へと入って貰う!」

 

 自らが立案した作戦が通用するとは言え、全員の協力は必要不可欠だ。ラウラは作戦の流れを聞き終え、自分が指示を出すまでは、回避に専念する旨を伝えた。

 

「……と、言う事だ」

 

「あの妙な動きは、指揮系統が乱れたのか……」

 

「なら……活路は見えたね……」

 

「その通り。シャルロット、簪の両名は、リーダーらしき個体のみを狙え。箒と鈴は、統率が乱れるまで極力エネルギーの消費を抑え、近接戦闘に専念しろ。そして、統率が乱れたら私がAICで動きを止める。そこを狙って、紅椿は穿千、甲龍は衝撃砲を叩きこめ。簪、お前も余裕がありそうなら山嵐を頼む」

 

 つまりは、各々が自身に出来る役割のみをこなし、効率的に数を減らしていこうと言う作戦だ。理にかなっているし、何より反論する龍は見当たらない。

 

「それでは、これより作戦を開始する!さっさと済ませて、嫁と戦友の援護へ向かうぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

「……の前にさ、シャルロット。ごめん、完全にアタシの八つ当たりだったわ」

 

「へ……?そ、そんな!僕の方こそ、ゴメンね」

 

 動き始める前に今しかないと思ったのか、鈴は気まずそうに頬を掻きながらシャルロットへ謝罪した。このタイミングで謝罪が入ると思ってい無かったシャルロットは、焦りながら自らもしっかりと謝る。

 

 もともと、どっちもどっちだ。それをお互い分かっているのか、顔を見合わせにっこりと笑う。後はお互いの無事を祈るように頷き、それぞれの役割をこなす事に集中した。

**********

『随分と元気が無いじゃないか?』

 

(クソが……!ちっとはオータムの気持ちも分かるかも知れん……)

 

 交戦を始めてしばらくたつが、状況は良くない。ソルの口ぶりからして解るだろう……俺は、押されていた。マジで口を開くたびに、イライラさせる台詞を吐く奴だ。

 

 しかし……俺の調子も悪くないし、集中力もピークだと言うのに。つまりソルは、俺のベストコンディションの上をいく……低く見積もっても、そのレベルなのだろう。

 

 正攻法でダメなら、対ソル用に練習した『アレ』しかないか……?正直通じるかどうかは分からんが、俺はここから先、ドンドン集中力が落ちるばかり……試すなら、今しかない。

 

『来ないのなら、こちらから行くぞ』

 

(ああ……そのまま、来いよ!)

 

 ソルは右手に持ったアックスを振り下ろす。それは難なく防げるのだが、ソルの主流とする技は、トリッキーかつ流れるような連即攻撃だ。

 

 今も斧を防いだ途端に、クナイや足技と言った攻撃へ連携し、隙が全く見つからない。……手立ては、ある。だがそれは同時に、賭けであることも意味する。

 

 ソルには、ある『癖』のような物が有った。それは相手の隙を捉えた時は、確実にこちらを仕留めにかかってくると言う点だ。初遭遇のライダーキックが、これに当てはまる。

 

 一見すれば、それはクセとは言い難いが、逆に利用もできるのだ。つまり『こちらから隙を作ってやればいい』と言う事。隙さえ作れば、コイツは必ず重打を放つ。

 

 さらに言えば、狙って来る場所もゼクターか頭部の二つに限定出来る。狙うのは良いが、避けられなかったリスクが大きい。これが、賭けと表現した所以だ。

 

(だが……!)

 

 さっきも言った……やるしかないんだ!コイツをぶん殴るためには、それしかない。集中だ……集中しろ、俺は今まで、何のために鍛えた?それも全て、この時の為に!

 

「どらぁ!」

 

『フンッ……』

 

 俺はアックスでの攻撃を、大きく弾いた。そして、少しだけ後ろへ飛びのく……ように見せかける。本当に、ほんの一瞬の隙だ。しかし、コイツはそれを見逃がさない。

 

 こちらがわざと作った隙だと分かっていないのか、それとも自分の癖を把握できていないのか。ソルは……仕掛けてきた!それまで逆手に構えていたクナイを順手に持ち、ゼクターへの刺突を狙っている。

 

「いらっしゃいませええええ!」

 

『!?』

 

 俺は飛びのきかけていたのを止め、ソルの腕が左脇を通過するように回避する。そしてそのまま左腕を掴み、思いきり捻りあげ、肩関節を極めるような形となった。

 

 よしっ……ありがとよ、ラウラ!お前に教えてもらった技は、しっかりと役に立った。しかし、これで終わるはずも無い。左腕を無理矢理あげられ、頭が下がったままのソルに、膝蹴りを見舞う。

 

「フンッ!」

 

『ぐっ……!』

 

 膝蹴りと同時に、肩を極めていた手をパッと離す。するとソルは、膝蹴りの衝撃で体が思い切り弓なりへと反れた。俺はそこに思い切り……渾身の想いを込めた右拳をぶつけた。

 

「喰らい……やがれええええ!!!!」

 

ゴッ!メリメリメリメリ……!

 

『ぐぉお!?』

 

 俺の右拳に、確かな手応えを感じた。長かった……恐らく、ソルと戦って初のクリーンヒット!俺の拳はよほど重かったのか、ソルは体勢を崩しながら思い切り吹き飛ばされた。

 

 そして、割と低所で闘っていたのが要因か、ソルはそのまま地面へと激突した。しめた!これは追撃のチャンス。そう思いバウンドしたソルへと近づこうとすると、それより前にソルを拾って飛ぶ影が見えた。

 

『馬鹿な!?動くはずが……!』

 

「エクステンダー!」

 

『……最後の力……ですか。どうやら、マスターにとどめを望んでいる様です』

 

 その強靭な顎でソルを捉えたのは、他でも無い……エクステンダーだった。エクステンダーはあちらこちらから白煙や電撃を上げ、無理に飛んでいるのは一目瞭然だ。

 

 お前は……自分ごとソルをやってしまえと、そう言いたいんだな……。分かった……お前がそれを望むのなら、その勇士に華を添えるのが、主としての役割だ。

 

『こんなものに……ぬぅっ!うぅ……!?』

 

バリリリリリリ!

 

 エクステンダーの顎と顎の隙間から、レーザーブレードが飛び出し、カブトの背部装甲を焼いている。なるほど、岬さんの言っていた奴か……。

 

 出力がフルパワーなのを見ると、それも……無理をしているんだな……。ソルを摑まえたエクステンダーは、Uターンし、こちらへと向かって来る。

 

「クロックアップ!」

 

『!? クロッ……』

 

『―CLOCK UP―』

 

 確実に止めを刺す覚悟で、俺はクロックアップをソルよりも先出しした。動きがスローモーションな所を見ると、どうやら間に合わなかったらしいな。

 

だが、手はゆっくりとクラップスイッチの方へ動いているようだ。アレを押される間に、止めを刺す!でないと、筋肉痛でこちらがやられる。

 

『青子、ライダーキック二発分を片足へ集中させるとどうなる?』

 

『恐らく、オーバーフローして危険です。それでしたら、二度にわたって両足へ分配させましょう』

 

 なるほど、一発分の威力を両足へ分散……これで片足ずつで半分の威力だ。そこからさらにもう一発分を両足へ送れば、片足づつで等倍の威力に。

 

 だが両足合わせると、二倍の威力になると言う事だ。単純で、分かり安い事この上ない。そうと分かれば、さっさとフルスロットルスイッチを押さなくては。

 

『―ONE TWO THREE―』

 

 本来ならココでライダーキックと叫んでから、ガタックゼクターの顎を開く。だが今回に至っては、後でもう一回やるのでそれはお預けだ。

 

 イオンエネルギーは、いつもは右足にのみ集中するのだが、青子がしっかり仕事をしてくれているらしい。イオンエネルギーが股の所で枝分かれし、片足づつに充填!

 

『―ONE TWO THREE―』

 

「ライダーキック!」

 

『―RIDER KICK―』

 

 再びフルスロットルスイッチを三度押し、ガタックゼクターの顎を開く。両足へ更にイオンエネルギーが集中し、いつもの片足ほどの電撃が迸っていた。

 

 青子に指示していた時間や、ライダーキックの際に取る動作を二度行ったせいで、恐らく蹴ってしまえばクロックアップは解除される。……が、二度も喰らえば、ただでは済まんはずだ!

 

「おおおおっ!!!!」

 

 俺は、全速力でソルへ向かっていく。そして、一撃目!俺は左足を、後ろ回し蹴り……他のライダーに例えるのならば『仮面ライダー アクセル』の『アクセルグランツァー』のフォームで顔面目がけて蹴り込む。

 

 ガギイ!と言う音と共に、俺の踵へ確か縦応えが走る。そこから左足を振り切った遠心力を利用し、一回転!再び正面を向いた俺は、いつものボレーキックをソルの顔面へ叩き込んだ!

 

「うぉらあっ!!!!」

 

ガギイ!ガギィン!

 

『―CLOCK OVER―』

 

『ぐわああああ!!』

 

 空間の流れが等速へ戻るのと同時に、ソルは声をあげて吹き飛んだ。キックの威力が、エクステンダーの挟む力を勝ったらしい……無理矢理に飛び出たソルの影響で、エクステンダーの顎は、片方が圧し折れた。

 

 そして……もう本当にあの一瞬で限界だったらしく、エクステンダーは、力なく地面へ激突し、完全に停止してしまった。俺は、その光景を直視できないでいる。

 

 修理すれば、また治る……のだろう。だが、相棒なんだ……エクステンダーは……。そんなに、簡単な言葉では片づけられない。しかし……ソルとの決着が先だ。なにより、エクステンダーがそれを望んだのだから。

 

『ぐずっ……!青……子。ソルは?』

 

『健在……ながらも、既に私達の勝ちと言って良いでしょう。見てください』

 

『あれは……カブトの頭部アーマー?」

 

『借り、完全に返しましたね。どうやら、二度のキックで砕け散ったようです』

 

 ガタックのハイパーセンサーが、ソルの吹き飛ばされている方向にある残骸を映した。良く見てみると、カブトホーンや青色の複眼と言ったカブトの頭部パーツだった。

 

 ダブルライダーキック……だと、二人で撃ったみたいだ。……さっきのは、デュアルライダーキックとでも名付けようか。とにかく、俺のデュアルライダーキックが要因らしい。

 

『土煙で良く見えんな……』

 

『……こちらに、歩いて来ている様です』

 

 ソルは錐もみ回転で吹き飛び、地面にぶつかったのだ。その影響で舞った土煙のせいで、ソルのシルエットしか見えない。それでも青子の言った通りに、歩いて来ているには違いない。

 

 さて……ようやく奴の素顔が垣間見えると言った所だろう。ザッザッと確かな足取りで、土煙を払いのけたソルの顔を見た瞬間……頭が真っ白になった。

 

「!?!?!?!?」

 

「どうした?まるで幽霊でも見たような顔だな」

 

「ざ……けんな……ふざけんな!!悪趣味にもほどがあんだろうが!!」

 

 幽霊だったら、どれほどにまで良かったものか。意味が解らない……いや、意味を解りたくない。どういう事だ!?いったいなぜなんだ!?お袋は、俺しか産んでいないハズだろう!?

 

「お前は、何モンなんだ!答えろ……今すぐ!!!!」

 

「クッ……フフフフフフ……クハッ!フハハハハハハ!愚問だなぁ……加賀美 真!いや、『オリジナル』!」

 

「づっ……!?」

 

「頭では分かっているんだろう?!答えたくなければ、言ってやろう……オレは、お前なんだよ!オリジナル!」

 

 どちらかと言えば、鋭くキリリと角度のついた眉毛。その間に存在する機嫌の悪そうな皺。ガラの悪そうな目つき。そして、他者を小ばかにするニヒルな笑み。ドスの聞いた声……全てが、俺そのものだ。

 

 だからこそ、意味が解らない。お袋が命と引き換えに生んでくれた俺が、もう一人存在して良い訳が無い。解からない……解からない……解からない……解からない……!

 

「お袋を……母さんの死を侮辱するつもりか……!!!!」

 

「では聞くが、オリジナル……貴様は自らの母の事を、いかほどに知っている?」

 

「…………」

 

「おっと、オレの母でもあったか……。フフッ……ハハハハ!!」

 

「殺す……貴様は絶対に、殺す!!!!」

 

 お袋を自らの母だと自称するソルに、完全なる殺意を覚えた。そうだ、こんな物が存在していいはずが無い!俺の命が、お袋の命そのものなんだ!それが……こんな意味の分からない奴に!

 

「フッ、まぁこの際だ……全て話してやろうじゃないか。お前の母が何者なのか、そして……オレとお前が何のために産まれて来たのかを」

 

「俺達……の……?」

 

「さて、何処から話したものか。そうだな、貴様の母である加賀美 光葉は」

 

「…………」

 

「元亡国機業のモルモットだ」

 

 

 

 




中途半端だけど、今回はあえてここまでで。

はい、という訳でソルの正体は『加賀美 真』そのものでした。詳しくは次回で説明させますけど……。

実は、分かり辛いけれど伏線を張ってたり。ソルが皮肉屋だったりするのが、それですね。ソルと真が、全く同じセリフを言ってる部分もあったりするんですよ。

それと、高身長とか……あれも一応ヒントのつもりだったんですけど……。分かるわけねぇか!って言うか、そんな簡単に当てられても困りますしね……。

次回は、恐らく話しばっかになると思います。光葉さんの正体や、真がISの声が聞こえる理由なんかも明かすつもりです。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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