戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

もう五月も末か……この調子だと、完結までは一年かかってしまいそうですね。と言うか早いなぁ……後三か月足らずで、一年たつのか……。

まぁ話だけとっとと進めちゃえば、もっと早い事になるんでしょうが、やっぱり原作にあるイベントは、なるべくこなしたい物でして。

と言う事で、タイトル通りに取材ですね。言うほど極秘情報が出てる訳でも無いですが、尺が足りないのでね!纏まらなかったぜ!

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。


真と簪の取材(極秘情報)ですが何か?

 三時限目の授業が終わり、休憩に入ろうとしたところ、黛先輩からメールが入っていた。内容を確認すると、とりあえず話を聞いてほしいとの事。

 

 前にも説明はしたと思うが、俺は新聞部の所属だ……一応だけど。今までもメールで、原稿の催促とかはされたが、会って話を聞いてくれ……と言うのは初めてだ。

 

 それこそ、何か新聞部関連なのかもしれないな……。とりあえず、了承の意味も込めて何処へ向かえば良いかと返信する。すると、携帯をしまう暇も無く『階段で落ち合おうと』再返信が。

 

 階段……と言うと、学年ごとのフロアを繋ぐ階段の事だろうな。授業合間の休み時間な訳で、そう長話ではないハズだ。とにかく、呼び出された場所に向かわなくては。

 

 特に誰も俺を引き留めるでも無く、移動はスムーズに済んだ。階段の方へ歩いて行くと、何やら人影が見える。だがそのシルエットは、黛先輩では無く……。

 

「簪」

 

「真……。真も……黛先輩に……?」

 

「ああ、さっきメールが」

 

 呼び出された場所に簪が立っていたからもしやと思ったが、どうやら簪も俺と同じ理由でここに居るらしい。しかし、簪も詳しい話は聞いていないようで、ただひたすら黛先輩を待つしかない。

 

 俺が簪の隣に立ったと同時位に、上の階からパタパタと駆け降りるような足音が響いた。もはやわざわざ、誰かと確認を取る必要すらない。黛先輩は、階段を二、三段飛び越え、俺達の前に降り立った。

 

「やぁ、ゴメンね二人とも!急に呼び出したりして」

 

「いえ……それは、大丈夫……です」

 

「同じく。後は、内容にもよりますけどね」

 

「おや~、顔が険しいねぇ」

 

 む、顔に出てしまっていたか……?この際だからぶっちゃけるが、嫌な予感はしている。だってこの人も、面白おかしい物事を好むからだ。

 

 俺の顔付を指摘した黛先輩に軽く謝罪を入れるが、どうやら全く気にしていないらしい。と言うよりは、そう思われても仕方が無いと、自覚があるように見える。

 

「それで、話ってのは?」

 

「うん、ちょっと頼みがあって」

 

 黛先輩の頼みとやらは、噛み砕いて言えば取材をさせてほしいと言う事らしい。なんでも、黛先輩の姉は出版社に勤めているらしく、そう言う話が出てきたようだ。

 

 渡された雑誌を見てみると、どちらかと言えばISを取り上げているのではなく、専用機持ちの方にフォーカスを当てているらしい。

 

 なんか、候補生は見た目とかも参考基準になる……みたいな話を聞いたことがあるような。たまったもんじゃ無いな、本当……。まぁ自分で言うのはなんだが強面なだけで、俺も決して悪くは無いと思う。

 

「どうかな?やっぱ、加賀美君はZECT的にNG?」

 

「いや、好きにしろって言われてますけど……」

 

「そうなの……?」

 

 そうなんです。自分の正体を明かすタイミングとかは、完全に俺に一任されている。情報規制をかけておいてくれたのは『後は好きにしていいぞ』って事の表れらしい。

 

 でも……それを抜きにしてもなぁ……。やっぱ正体は、なるべく明かさないで済むならそうしたい。それ以前に、見世物にされるのとか、好きじゃないし。

 

「ところで、簪。簪はモデルの仕事とか、した事は無いのか?」

 

「した事あると……思う?」

 

「あっ、いや……そうだな……」

 

 比較的引っ込み思案な簪が、そんな公の前に姿を晒す事など、率先してするはずが無かった。セシリアと鈴あたりは、それはもうノリノリな事だろう。

 

 ってか、それを言うと、身近な専用機持ちでそういう経験あるの……あの二人くらいじゃね?シャルロットは、デュノア社の了解が取れないとNGなんだろうし。ラウラは、そんな事に興味があるはずも無い。

 

 一夏と箒も、同じ事だろう。二人とも見世物にされるのを嫌う性質だ。だったら、今回の事も無理に受ける必要はないのかもしれない。

 

「簪の意思次第で良いぞ。俺は、どっちでも構わない」

 

「わ、私……?えっと……」

 

「あっ、私も無理にとは言わないよ?お姉ちゃんも、断られたらそれはそれでってさ」

 

「そ、それなら……。やり……ます……」

 

 簪はしばらく考え込んでいる様子だったが、この仕事を受ける気の様だ。簪のオズオズとした喋り方だと、ノーと言えない日本人みたいな印象を受けるが、本当に無理はしていないだろうな。

 

 それを一応問い掛けてみると、前々から興味はあったらしい。一人では心細いが俺と一緒なら安心だと、可愛い事を言ってくれる。それなら、俺も簪の為に一肌脱ぐとしよう。

 

「黛先輩。俺の方は、顔出しNGでお願いします」

 

「それはつまり、顔さえ隠しちゃえば後はOKって事で良いのかな?」

 

「まぁ……はい。マジで、そこだけ勘弁して貰えれば」

 

 とは言った物の、やっぱり顔を出す気にはなれないので、黛先輩に物申しておく。やっぱいろいろまずいと思うんだよ、俺と爺ちゃんとのつながりが、世間一般に広まるのは。

 

 今でこそ学園内で収まっているが、口コミで広がると、ZECTの負担になりかねない。それでなくとも世話になっているのだから。

 

「いや~、良かったよ。お姉ちゃん『二週連続 日本人専用機持ち特集』ってするつもりだったみたいだからさ」

 

「……一夏と……箒……?」

 

「え?あの二人、受けたんすか?」

 

「意外でしょ?箒ちゃんがね、何事も経験だって言って」

 

 ……怪しい。箒の事だ……一夏と二人きりで美味しいとか、そんな理由に決まってる。で、一夏は意味も分からず箒に押し負けた……と。

 

 まぁ別にあの二人も美男美女だし……問題は無いな。問題ないどころか、反響とかすごそうだな……日本人受けの良い男前と、美女だよな……あの二人。世の中とは、不公平なものだ。

 

「とにかく、本当にありがとうね……二人とも!お姉ちゃんも喜ぶと思うの」

 

「俺は黛先輩の世話になってますから、ちょっとした恩返しみたいなモンっすよ」

 

「お姉ちゃんが……お世話になってます……」

 

 黛先輩は、パンッと大きく音が鳴るほどに両の掌を合わせた。俺と簪の事だから、断られるのが前提だったのだろう。まぁ、俺も簪が居なきゃ断ってるだろうし。

 

 でも、世話になってるのもまた事実……。部活動必須な所を、とっとと新聞部に入れて匿ってくれたのは黛先輩だ。おかげで生徒会に入るまでは、どの部にも断る大義名分が出来ていたのだから、本当にありがたい話だよな。

 

「アハハ……どっちも大したことじゃないけどね。それじゃあ、この住所に午後二時までに来て。日付は日曜日だから」

 

「了解っす」

 

「分かりました……」

 

 黛先輩から差し出された、簡単な地図を渡される。了解の返事をする間に、黛先輩はスタコラと去って行った。元気な人だなぁ……ジャーナリズムがそうさせるのか?

 

 取り残された俺と簪は、お互いに顔を見合わせるばかり。予想外の出来事だったために、どう反応するべきか分からないのである。あ~……そうだな、教室に戻る前に一言……。

 

「まぁ、なるようになる……よな?」

 

「う、うん……多分……」

 

「「…………」」

 

 いかんせん、そんな事には疎いと言うか、慣れていない俺と簪だ。話せば話すほど、不安になってくるかもしれない。……ってか、取材?取材だよな……アレ!?凄い事になって無いか?

 

 なんか、比較的に有名人に囲まれて生活していたせいで、感覚が狂ってるのかも知れんな……。織斑先生とか、各国候補生とか……普通じゃ話す事も叶わない面子だよ、今更だけど。

 

「んじゃ、またな」

 

「うん……」

 

 ずっとここにつっ立っていても仕方が無いので、簪に挨拶をすると、それぞれの教室に向かって戻る。そっか、取材か……親父に話したら、腹抱えて笑われそうだ。

 

 ……セシリアとかに、どんな感じかだけ聞いておこう。ろくなアドバイスでない可能性も捨てきれんが、何もしないよりマシって事で。次の授業が終われば昼休みだから、そん時にでも……かね。

**********

「どうも、私が薫子の姉で、名前は渚子。一応『インフィニット・ストライプス』の副編集長をやってるわ」

 

「はぁ、どうも。加賀美 真です」

 

「更識 簪……です」

 

 取材の為に通された部屋に向かうと、待ち受けていたのは、黛先輩の姉……渚子さんだった。副編集長といういかにも偉いであろう肩書に、内心で驚きながら名を名乗る。

 

 簪は相変わらず感情の起伏が無いために、どういうリアクションなのかはつかめないが、とりあえず緊張している事は無さそうだ。

 

「なんだか得した気分ね、ZECT秘蔵っ子の姿が見られるなんて」

 

「んな大したモンじゃねぇっす」

 

「そう?貴方の正体に関しては、色々ネットで騒がれてるわよ~」

 

 そう言いながら、スマートフォンの画面をこちらに見せる渚子さん。そこに映し出されていたのは、いわゆる『スレ』と言う奴だろうか、タイトルは『第二の男性IS操縦者について』……普通だな。

 

 気になる内容はと言うと、本当に様々で。見ているだけなのに、頭が痛くなってきそうだ。俺に変な期待を寄せている人間が、大半だとだけ言っておく。

 

「これなんか当たってるんじゃない?『学園祭で燕尾服着てたノッポが怪しい』って」

 

「あ、本当っすね。まぁ結構目立ちましたから」

 

「じゃあ、正解って書きこんでおくわね」

 

「いや、秘匿義務は守って下さいよ!?マジで!」

 

「分かってるわよ、私も死にたくないし」

 

 だから、周りの人間が抱いてるZECTに対するこのイメージはなんなんだ?何度も言うが、いくらZECTでも、口封じに殺人とかはしないと思う。

 

 まぁ、書き込んでおくと言うのは普通に冗談だろう。緊張を解すためか、はたまた単にからかっているのかは分からんが、良く似た姉妹だ……心からの感想である。

 

「時間も無いし、本格的に始めましょうか。まずは加賀美君。織斑君にも聞いたんだけど、女子高に入った感想はどう?」

 

「どうって……どう……なんだろうか?……別に、どうもしないっすね。大変ってだけで」

 

「0点!それで記事になると思ってるの!?」

 

「えっ、えぇ~……?いや、本当にそれくらいしか……」

 

 ビックリするくらいに身を乗り出して、普通のダメだしをしてくる渚子さんに、困った顔しか浮かばない。別に俺は弾みたいなことを思った事は無いし……。

 

 実際に入って見ても、やっぱり感想は特に変わらない。まぁ一夏や本音に簪……その辺りに出会えたって意味では来て良かったと思えるけど。

 

「スミマセンけど、俺にそういう事を期待しないで下さい。面白ぇ事は一夏から聞けたでしょ」

 

「まぁ……そうね、妹も堅物で真面目って言ってたし。あっ、後ツンデレ?」

 

 ってか、俺が謝る必要は何処にも無かった。なんか……久々に少しだけ昔の俺が顔を出しかけたかも知れない。謝る事なんかせずに、ボロクソ言ってただろうから、下手したらこの時点で帰ってるかも。

 

 渚子さんにだって、きっと悪気はないんだ。うん……そうそう、何も俺を怒らそうって気がある訳じゃない。イライラ禁止、落ち着け落ち着け。

 

「う~ん……それじゃ、簪ちゃん。ZECTに入ったきっかけと、実際に入ってみてどうか聞かせて」

 

「えっと……。きっかけは……真経緯で会長に声をかけてもらって……」

 

 そこら辺りは、他の編集部も喉から手が出るほどに欲しい情報だろう。それを独占できるとなると、相当なものだろうな。渚子さんからすると、もうウハウハに違いない。

 

 簪は、倉持との……こう、いざこざがあって、ZECTに籍を移したことを話す。もちろん、倉持に悪評が掛からぬ様に、言葉をかなり選んでいるようだった。

 

「なるほど……捨てる神あれば拾う神ありってところね」

 

「そんな感じ……です……。それと、ZECTに入った感想は……変な人が多かったです……」

 

 厳密に言えば、ラボラトリの人間がって事だ。変に誤解を招いてはいけないので、俺もちょくちょく補足を入れるために口を挟む。

 

 とりわけラボラトリの人間が、変な方向にパッションする面子だと伝えると、渚子さんはとても興味深そうだ。俺としては、これ以上の詮索は勘弁してほしい。

 

「技術だけは、確かなんですけどね。どうにも子供っぽい連中と言うか……」

 

「何事も……遊び感覚みたいで……」

 

「世間一般が思ってるZECTとは、少し違うみたいね」

 

 うん、そんなに悪い物だとは思わんよ。むしろアットホームと言うか、全く関係ない部署の人達とかが、すっげー仲良さそうだし。

 

 まぁ、そんな感じで……取材はZECT関連の事を聞かれるのが大半だった。これで少しは、ZECTのイメージアップにつながると良いんだけど……。

**********

「あの、これもう……俺の写真、撮る意味ない気が……」

 

「そんな事無いわよ。それに、とても良く似合ってるわ」

 

 取材が終わり、いざ撮影と言う事になったのだが、俺の格好は完全に俺とは分からないハズ。黒のタキシードに、黒マント、極め付けには仮面舞踏会にでも用いられそうなマスクだ。

 

 怪人二十面相がモチーフなのか?シルクハットがあれば、完璧にそうだな。俺は確かに顔出しはNGっつったけど、本当……これだと俺である意味が無いじゃないか。

 

「全体的に、スタジオが赤と黒ですね」

 

「うん、前の二人の時は、白を推したから……対比にと思って」

 

 俺達の撮影に使われるであろうスタジオは、なんというか……教会風なつくりに見える。聖なるイメージからはかけ離れ、どこか妖しい雰囲気だ。

 

 レッドカーペットや、赤い長椅子はそのままだが、どうにも壁が黒基調で、ムーディーと言うかゴシックと言うか。俺の格好が、またそう思わせるのだろう。

 

「それに妹が、貴方は黒でビシッ!とした格好がハマるとか言ってたわ」

 

「自分じゃ分からないっすけど……変じゃないですか?」

 

 マントの端を掴みながら、ヒラヒラとはためかせ、カメラマン等々暇そうな人たちに問いかけてみた。すると男女問わずに、黙って親指を立てたり、首を頷かせたりした。

 

 好感触か、なら良いんだけど。こんな時ばっかりは、高身長であったことに感謝しておこう。とは言いつつ、俺みたいな筋肉質の野郎が着る物では無いんがな。

 

「はい、更識さん入りまーす!」

 

 そうそう、肝心なのは俺でなく簪だよ。流石に女性なだけあって、スタジオ入りは俺よりはるかに遅い。それだけ楽しみも増えるってモンだろ。さて、簪はどう変身を……。

 

 ……オドオドとこちらに向かって来る簪に、思わず見とれてしまった。黒の背中開きドレスに身を包み、普段から外さない眼鏡は、スタイリストの指示か存在しない。

 

 メイクやら何やらは、完璧そのものと言った所だろう。何と言うか、本当に見違えてる。日ごろの簪が、いかにもったいない事をしているかと、よく分かる瞬間だ。

 

「あら、化けたじゃないの!」

 

「そう……ですか……?」

 

「ほら、貴方も何か言ってあげなさい」

 

「あ、えっと……うん……綺麗だ……凄く……」

 

「き、きれ……」

 

 渚子さんに背中をバチンと叩かれ、数歩前によろけて、簪は俺の間合いだ。直視するのが、単純に恥ずかしくて、顔を逸らしながら簪に率直な感想を言う。

 

 なんとも単純だが本当に、今の簪には『綺麗』以外の言葉が見つからない。……綺麗だなぁ簪は、可愛い系だと思っていたが、コレは認識を改める必要があるかも。

 

「フフ……若いわねぇ。じゃ、始めましょうか。最初はピンで数枚撮るから、加賀美君からね」

 

「りょ、了解です!」

 

「祭壇の前に立って、何かポーズをお願い」

 

 そ、そう言うのって、カメラマンの指示じゃないのか?困ったぞ……何か、俺の知識から役に立ちそうなのを絞り出すしかない。

 

 マント……なぁ、俺がマントで一番に連想するのは、仮面ライダーキバのエンペラーフォームだ。総じてキバは、演出がかっけぇんだよ、ダークネスムーンブレイクの夜になるのとか、キバの紋章が刻まれるのとか。ファイナルザンバット斬とかも好きだなぁ。

 

 エンペラーフォーム変身の演出も、これまた痺れる。タツロットがカテナの鎖を切断し、徐々に黄金のキバの鎧を纏ってゆく。個人的に最も痺れるのは、最後の部分だ。

 

 背中に纏わりついている炎を、左腕を振って蹴散らすと、赤いマントが出て来るみたいな。……それでいってみるか、他にマントの演出知らないし。

 

 そういう訳で、俺は左腕で一度マントを纏わせ、大きく真横に振りかぶった。それに伴って、マントはバサッと音を立てて大きく靡く。するとスタジオから、感心するような声が漏れる。

 

「な、何すか?」

 

「貴方……才能あるわよ。かなり無茶振りしたつもりなのに……」

 

 無茶振りしてたんかい。黛先輩が、俺は良い被写体になる……とか言ってたけど、それを渚子さんに話したのかもしれないな。とにかく俺のアドリブは、ウケたらしい……ありがとう、キバ。

 

 その後は渚子さんや、カメラマンの指示に従って、撮影を繰り返した。そこで俺の出番は、いったん終了だ。簪と交代するのだが、ここに来て緊張してるらしい。

 

「簪」

 

「な、なに……?」

 

「大丈夫、自信もてよ。誰がどう見たって、今の簪は綺麗だから」

 

「あ……あぅ……」

 

 さっきはどもったが、今度は照れる事無く簪を褒める事が出来た。ついでに安心させるため、微笑みつつ頭を撫でる。でも、よくよく考えたら仮面着けてるし、表情までは分からんか。

 

 だが、なんとか緊張は解せたらしく、簪は意気揚々とセットに向かっていった。本当……もっと自信を持て、簪。きっと自分は、可愛くないとか思っているに違いない。

 

 セット内の簪をずっと眺めているが、飽きない物だ。むしろ、ずっと見ていたいような……って、俺は何を考えてるんだよ。そうこうしていると、出番がまた……。

 

「はい、加賀美君も入って!」

 

「うっす」

 

 ほら来た……。俺は小走りで簪の隣まで並び立つ、やはりこういう格好をしていると、映画か何かのワンシーンみたくなるな。

 

「加賀美君。左腕を簪ちゃんの背中に回して」

 

「……失礼します」

 

「ど、どうぞ……」

 

 渚子さんの指示通りに動くが、なんとなく簪に敬語で失礼すると言ってしまった。俺は左腕で簪を抱き込むようにする。てっきり俺は、これで完成だと思ったのだが……。

 

「で、右手は簪ちゃんの顎。こう……ほら、クイッて上げて」

 

「へ?いや、何すかそのキスする寸前みたいな……」

 

「シチュエーション的にはそうだけど?あっ、むしろしちゃっても良いわよ」

 

「~~~~っ!」

 

 ぬおっ!?簪の顔が赤い!それも何か危機感を覚えるレベルだ。俺が心配そうに様子を窺ってると、バッチリ目が合った。すると簪は、両手で顔を覆って隠してしまう。

 

 ど、どうする……どうするべきだ!?クソっ、てっとり早く終わらしてしまうのが簪の為だ。俺は残った右手で簪の腕を取り払うと、隠させる隙を与えず、簪の顎に手を添え、少し上に角度を付けさした。

 

「ま、真……」

 

「簪……」

 

 なぜだか名前を呼び合う俺達二人。これではまるで、本当にキスする寸前のような感じだ。そう思っていると、簪は俺の両頬に優しく手を添え、そっと目を閉じた。

 

 俺は思わず、勢いそのままにキスしてしまいそうな衝動に駆られる。あ、あくまでシチュエーションだ……本当の事じゃない。心臓を大きく鳴らし必死で堪える俺に、渚子さんは無慈悲な言葉を掛ける。

 

「遠い遠い!ほら、ギリギリ寸前まで近づけなきゃ!」

 

(いいいい!?渚子さんんんん!!)

 

 今そんな、いらない一言を!だがこの感じ……渚子さんの満足いくようにしなくては、解放して貰え無さそうだ。俺は観念して、ゆっくり顔を簪の方へ寄せていく。

 

 渚子さんがストップをかけるまで、ゆっくり近づけるつもりだった。が、渚子さんは全く指示を出そうとする気配が無い。クソ!ニヤニヤしてるのが目に浮かぶ……。

 

 でもこれ以上は無理だ。これ以上進むと、唇と唇が触れ合う。ぬぉぉぉぉ……!空気読めやカメラマン……はよシャッター切れぇぇぇぇ……と言うオーラを醸し出していると、シャッター音が耳に入った。

 

 それを合図に俺は、頭をスウェイバックが如く後ろに退いた。それまで簪を支えていた左腕も離して、ようやくひと段落と言った所か。

 

「して……欲しかった……」

 

「簪、今なんて言った?」

 

 俺は決して難聴では無いぞ、スタジオの喧騒のせいで、本気で何を言ったかが分からない。分からないが、内巻のクセ毛を弄りながら、モジモジして居る辺り、『そういった事』というのは理解できる。

 

 一応聞き返したが、簪は一向に口を開かない。しつこく聞くと、怒られるんだろうなぁ……。こういう場合はどうするのが正解なんだ?一夏と真逆の事をすれば、正しいのかも知れないが。

 

「二人とも、次いくわよ!」

 

「まだ何かあるんですか!?」

 

「当たり前じゃない!ようやくエンジンがかかってきたって感じよ!」

 

「やった……!」

 

 基本的に淡々としていると思ったが、やはりよく似た姉妹だ。テンションの高い渚子さんは、黛先輩そのものに見える。んで、簪……何でそんなに、嬉しそうなのだろうか?

 

 まぁ良いや、乗りかかった船だし……最後まで頑張ろう。……と意気込んだものの、どうにも恥ずかしいシチュエーションばかりで、正直これから先の事は、ほとんど覚えていない。

 

 印象的だったのは、撮影が終わった帰り際、簪がものすごく楽しそうな表情をしていた事だろう。なんか……簪が楽しかったなら、いいや……。疲れ果てた顔でそう思う俺であった……。

 

 

 




ライダーの変身演出や、必殺技演出は……繰り返し見る人です。

今回は特にキバの事を取り上げましたが……他にも色々好きなのがありすぎる。ファイズの『強化クリムゾンスマッシュ』とか、アクセルの『マシンガンスパイク』とか……あっ、アギトの『シャイニングライダーキック』もカッコイイな……。

カブト勢はどうしたって?話し始めたら、ページが足りなくなるがよろしいか?はい、本当……カブトに関しては触れないです。説明不要だと思ってるので……。

とにかく、結論としては仮面ライダーはカッコイイって事で!さて、次回は……どうなんでしょう?キャノンボール本番かも知れないですし、もう一話何か挟むかもしれないです。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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