戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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お、お気に入りが100件超えてる…だと…!?(ガタガタ震えながら)

皆さんガタックが好きなのかISが好きなのか…。

とにかく私のような初心者の小説をお気に入りしてくださった方、本当にありがとうございます!

これからもぜひともお付き合いください!

それでは、今回もよろしくお願いします。


1日目終了(疲労困憊)ですが何か?

「でだな、ここがさっき授業でやってた所で…」

 

「あぁ、なるほど!」

 

 なんだかんだあったIS学園初日の放課後。俺は織斑に約束通り、勉強を教えていた。ったく…何が悲しくて放課後の教室で男と二人っきりなんだか。

 

 ま、思ったよりも呑み込みが早くて驚いてるけどな。基本的にコイツは馬鹿だが、勉強ができないという事ではないらしい。

 

 そんな訳で、自主勉強はスムーズに進み、今日のノルマは十分だろう。キリのいいところで今日はお開きにしようなどと考えていると、不意に声をかけられた。

 

「あっ、織斑君に加賀美君。まだ教室にいたんですね、よかったです」

 

 どうやら俺達を探していたらしい山田先生に、二人そろって何事かと視線を送る。すると、唐突に山田先生は俺達にこう言った。

 

「えっとですね、寮の部屋が決まりました」

 

 いや、主語があるけど述語が無いんですけど?そんな顔して部屋の紙とキーを差し出されても困るんですけど?そもそも寮で生活するなんて話すら聞いてねーし。もしかしたら俺が聞いてなかっただけか?と思ったが、見ると織斑も困惑しているらしい。

 

「俺達の部屋って、決まってないんじゃなかったんですか?」

 

「右に同じく、しばらく自宅通学って聞いてましたけど」

 

「そうなんですけど、事情が事情なので…。一時的な処置として部屋割りを無理やり変更したらしいんです」

 

 ふ~ん…それならそれで俺は助かるけどね。しばらくとは言え、毎日モノレール使って通学とかふざけんなって思ってたし。

 

 家にいても俺にはZECTっつー後ろ盾があるから日本政府の脅威は及ばないし、初日から寮に入れるなら絶対そのほうがいい。ん…ちょっと待てよ?

 

「あの、俺らの荷物ってどうなってるんですかね?」

 

「あぁ、それでしたら………」

 

「私が手配してやった。ありがたく思え」

 

 続けて織斑先生が教室に入ってくる。ただ腕を組んでるだけなのに、背景にマンガみたいな「ドドドドドドド…」とか「ゴゴゴゴゴ…」が見えてしまう。本当にオーラすごいなこの人。

 

「それは、ありがとうございます」

 

「まぁ加賀美の場合は父親に頼んでおいただけだが」

 

「織斑先生。俺の荷物は…?」

 

「着替えと携帯電話の充電器だけで良いだろう?」

 

 先生の言葉に織斑は頬をひきつらせた。まぁ自分の姉がこんなにドライだったらそうなるわな。別に俺の親父も余計なものは送ってきてないだろうし。…ゲームくらいは入ってるかな?

 

「あっ、それと言い忘れていましたが…スミマセン。二人の内どちらかが女子と相部屋ということに…」

 

「…俺達。同じ部屋じゃないんですか?」

 

「ッヒ!ごっ、ごめんなさい!どうしても部屋の調節がうまくいかなくて…」

 

 いたって普通に質問をしたら、山田先生はかなりビビった様子で俺に頭を下げる。別に怒ってるつもりも睨んでるつもりも無いんだが?俺ってそんなに怖い顔してるかね………。

 

「いや、怒ってる訳でも不満がある訳でもないですから…。それで?二部屋あって、それのどっちかが相部屋なんですよね?」

 

「は、はいぃ…そうですぅ…」

 

「よし、織斑。ジャンケンだ」

 

 織斑のほうに向きなおり、ジャンケンを提案すると、織斑は小首をかしげて「いきなりなんだ?」とでも言いたそうだ。まず趣旨から説明しなくてはいけないらしい。 

 

「ジャンケンで勝った方が、好きなキーを選ぶ。それなら女子と相部屋でも自分で選んだんだから恨みっこはナシだろ?」

 

「なるほど、確かにそれなら後腐れ無さそうだ。よし…それじゃ」

 

「「最初はグー!ジャンケン…」」

 

 さてさて、じゃんけんなんだからグー、チョキ、パー、どれを出しても勝率は三分の一である。個人的な感想だが、考え過ぎは良くない。ここは直感で勝負しよう。

 

 そうさな…せっかく専用機がガタックってこともある。何かの縁だ、ここは鋏であるチョキを出そう。いけぇ!ライダーカッティン!

 

「「ポン!(俺チョキ、織斑グー)」」

 

「よっしゃー!勝った!」

 

「むぅ…負けか、言い出しっぺの法則かね?」

 

 チッ!やっぱりどこまでいっても戦いの神(笑)だなオイ。…っつってガタックのせいにしても仕方がねーか、そんなこといってたらそのうちガタックゼクターに突進でもされそうだ。

 

 織斑は嬉々とした様子で、先に山田先生からキーを受け取る。選んだ部屋番号は1025室か…俺はその隣の1026室だな。

 

「じゃあ時間を見て部屋にいってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用の食堂でとってくださいね。ちなみに、各部屋にシャワーはありますが、大浴場もあります」

 

「あ~…俺らはしばらく使えないっすね」

 

「へ?なんでだ?」

 

「アホかお前は、まさか同年代の女子と一緒に入りたいのか?」

 

 アホなことを言う織斑にツッコミを入れようとしたが、すかさず織斑先生がしてくれた。しかし、自分の弟にそんな訂正を入れなきゃならない気分ってどうだろ?

 

「おっ、織斑君。女子と一緒にお風呂に入りたいんですか?だっダメですよ!?」

 

「いや…入りたくないです」

 

「今後一切、俺の半径1メートル以内に近づくんじゃねえホモ野郎」

 

「ちげぇ!そういう意味じゃ…って距離が遠い!」

 

 織斑のまさかの発言にすかさず後ずさりをする。ま、当然ながら冗談だけどな、予想通りツッコミを入れてくれたので大満足である。

 

「バカをやってないで、そろそろ行ったらどうだ?私たちはこれから会議があるから失礼するぞ。行きましょう、山田先生」

 

「あ、はっハイ!織斑君、加賀美君、道草しちゃダメですからね?」

 

 そう言って担任、副担任コンビは去って行ったが、聞こう、いったいどこで道草喰えと?ここから寮まで50メートルもないんですがそれは。

 

「じゃ、寮に行くか…。お前も、続ける気はおきねぇだろ?」

 

「そうだな、なんかちょうどいいし。今日は終わりにしようぜ」

 

 今日は…ね?もう必要そうなところはだいたい教えた気もするが、まぁ良いだろう。これもすべては俺の食費のためだ。我慢して付き合おう。

**********

 さて、しばらく歩いて学生寮なわけだが、1025室及び1026室の前に来て目を疑った。だって廊下に俺らの荷物であろう段ボールが無造作に置いてあるんだもの。

 

 こんな不自然な置き方されたら、中身に某蛇でも入ってそうな気がする。織斑先生が誰かに任せたのかもしれないが、やっぱりここでの男の扱いはこんなものなのだろうか?

 

 とりあえず荷物が誰にも触られてないであろうことを確認し、持ち上げる。そうして織斑と顔が合うと、お互い苦笑い。何も言わずに部屋へと入っていった。

 

「(さて…女子はっ…と)」

 

 いない。部屋の隅々まで見渡してみても、そこには女子がいた形跡は一つも見受けられない。つまり、1026室が一人部屋だ。

 

 よっし!と誰も見てない事を良いことに、大きくガッツポーズ。悪く思うなよ、織斑。1025室を選んだのはテメェだ。

 

 となると安心して荷解きがはじめられそうだ。っと、その前に親父に一本礼の電話をしとかないとな。そう思い携帯電話を取り出すと、突然ドンドン!と乱暴にドアを叩く音が聞こえる。

 

「まっ、真!俺だ!開けてくれ!」

 

 俺はドア越しに一言。

 

「うるさい」

 

「あっ、あぁ…悪い…。………じゃなくて!後生だから助けてくれよ!」

 

 何があったかは知らんが、かなり差し迫った状況らしいな。あの短時間でどうやってそうなった?まぁいいや、これ以上うるさくされても敵わん。

 

 おとなしく部屋のロックを解除すると、まるで駆け込み乗車の如く織斑は俺の部屋に侵入してきた。ドアが閉じる前に一瞬だけ見えたが、なんか女子が群れてなかったか?

 

「で?これはどういう状況だ」

 

「え~っと…それがさ…その…。同室の人が箒でさ」

 

「そうか、まだ良かったな、知り合いで」

 

「いや…なんていうか…」

 

 織斑の様子に違和感を感じる。歯切れが悪いというか…なんか言いたくない事でもあるのか?ただ、ずっとこうしていても仕方ない。

 

「正当な理由がないなら、摘み出すがよろしいか?」

 

「わ、分かったよ。ちゃんと話すから」

 

「最初からそうしとけ」

 

「実は…見ちゃってさ…」

 

「見た…?何を?」

 

 なんか急に語り口が怪談でよく聞くやつじじゃん。見る…か、篠ノ之とそれが何か関係あるようには思えないが、とりあえず織斑が口を開くのを待つ。

 

「箒の…風呂上りを…さ」

 

「そうか…織斑。実は俺の親父が警官やっててさ」

 

「話が飛躍しすぎだろ!?てか、どこまで本当の事なんだ?」

 

 セクハラは立派な犯罪です。話を聞く限り、おそらく事故だろうが、そんなうらやまけしからん事はこの俺が絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!!!

 

「俺の親父が警官なのは本当。という訳で今からつうほ…おっと電話するから待ってろ」

 

「通報って言ったろ今!」

 

「はいはい分かりましたよ、それで篠ノ之が怒ってたまらず俺の部屋ってことだろ?」

 

「それだけならまだ良かったんだけどな…」

 

 聞けば、部屋から脱出したは良いらしい。だが、騒ぎを聞きつけてやって来た女子達も、例外なく「アブない」恰好をしていたらしい。

 

 まー学園の中に男が二人なら油断した格好にもなるよなぁ…。部屋の前に群れてた女子はそれか、服装までは一瞬すぎてわからなかった。

 

「ま、なんだ。そのうち篠ノ之も頭が冷えるだろ」

 

「そうだな、きっとそろそろ…」

 

「い、一夏。いるか?」

 

 扉の向こうから篠ノ之の申し訳なさそうな声が聞こえた。織斑は安堵の表情を見せ、深くため息をつくと、「ありがとな」と一言。俺の部屋から退出しようとする。

 

「あ~…待て待て、俺も出る。少し篠ノ之に話があるからな」

 

「いいけど…容赦してやれよ?」

 

「アホか、俺が誰それ構わず悪口を言うとでも?それに、今回の件は完全にお前のせいだろうが」

 

 間抜け面をした織斑を睨む、どうにも返す言葉も見つからないのか、ガクッと肩の力を落とした。部屋から出たら、当たり前だが篠ノ之がいる…うえに女子達はまだ群れてるようだ。

 

 というよりは、篠ノ之含めて女子数人が、俺が出てくるなりビクッとしたのは何?山田先生といい…怖がられるのもなかなか辛いわな…。

 

「かっ、加賀美か…。済まない、私のせいで余計な手間を取らせたな…」

 

「いいや、アンタは女性として当然の反応を取ったまでだ。ただな、やっぱ乱暴はよくねーぞ」

 

「う…。面目ない…」

 

「さもなきゃ、気付いて貰えるモンも、届かなくなっちまうぜ?」

 

「なぁっ…!」

 

 お~お~、分かりやすいうえに面白いねぇ。俺の少し意地悪な言葉に篠ノ之はみるみる顔を赤くしている。普段が仏頂面なのはもったいないな。

 

「なぁ?何の話だ?」

 

「う、うるさい!お前には関係…」

 

「篠ノ之~」

 

「くっ…スマン…」

 

「クックック…。まぁ、俺の言いたいことはそれだけだから、せいぜい頑張りなよ」

 

 俺はそれだけ言うと後はさっさと自室へと退散する。部屋の外からギャーギャー聞こえてた気がするが、すでにアドバイスはした、後は知らん。

 

 さてさて、後回しになってしまったが、親父に一報を入れておかなくては、俺は今一度携帯電話を開き親父に電話をする。数コール待つと、親父が電話に出た。

 

『真か?どうした?』

 

「いや、荷物届けてくれただろ?礼くらい言っとかなくちゃって思ってさ、サンキューな」

 

『嫌に素直だな…お前、本物の真か?』

 

「アンタは自分の息子をなんだと思ってるんだ…?」

 

『素直じゃない奴』

 

 即答だよコンチクショウ。なんか俺の精神面に関してみんな酷評しすぎじゃない?って思ったけど、自分の日頃の行いを思い返してみると妥当だね、うん。

 

『それはさておき、真。初日だけど、いきなり孤立しかけてるとかないよな?』

 

「…無きにしも非ず」

 

 俺がそう答えると、耳元では盛大な溜息が聞こえる。俺の友人関係に関しては、親父に悩みの種の一つみたいだから、きっと今回も心配していたんだろう。

 

『はぁ…お前はいつもいつも…』

 

「今回に関しちゃ俺は悪くねぇよ、ただ反論しただけだ」

 

『お父さんは、きっと言い方に問題が有ると思うんだ』

 

 ごもっともなセリフをいただいた。多分もう少し、やんわりとした言い方もできたのだろう。しかし、これが俺だ。あくまで俺の根底にある物は揺らがない。

 

 親父もそれを理解しているのか、再度大きな溜息をついた。

 

『ま、そうだよな…。それが、お前だもんな』

 

「………あぁ」

 

『自分は自分らしく生きるのが一番…か』

 

 なんだか親父は妙に納得したような声色だった。そこで納得されても困る気もするが、まぁ親父とは言え口出しされたくは無いし、良しとしよう。

 

『真』

 

「あん?」

 

『迷った時は、馬鹿になれよ』

 

「いや…どーいう意味?」

 

『他人から見て…いや、むしろ真自身も「馬鹿だ」って思ったことも、自分が正しいって思ったんなら絶対にやり通すんだ。頭を空っぽにした方が、見えてくるモノってのもある』

 

「それが馬鹿になれ…か、オーケー心には留めとく」

 

『ん、そのくらいでいいさ。お前は考え過ぎなところがあるからな」

 

 親父からありがたい言葉をいただき、そう返答すると、さっきの溜息を吹き飛ばすような笑い声が聞こえてきた。

 

「親父が何も考えてないだけだろ?」

 

『何を!?』

 

「やめとけって、まだ勤務中だろ?周りに不信がられるぜ」

 

『…それもそうだ。でも次に会ったら覚えとけよ?』

 

「楽しみにしとくよ、それじゃ」

 

『あぁ、また何かあったら電話しろよ』

 

 俺と親父のコミュニケーションの一種である軽口の言い合い。からのプロレスの流れが加賀美家流であるのだが、目の前に親父がいないんじゃは始めようがない。

 

 なんとなくだけど、やっぱり寂しい気もするな。調子が狂うというかなんというか…。言っても仕方が無いか、俺はそう呟きながら携帯電話をしまう。

 

 さて、これからどうしたものか…とりあえず。

 

「(織斑に飯代でもたかりに行くか…)」

 

 篠ノ之の件に関しても、もうすでに収束しているはずだ。飯を奢ってもらう約束をさっそく守ってもらうとしましょうか。

**********

「(あ~…うぜぇ…)」

 

 翌朝。現在の俺は飯を食うために食堂にいるわけだが、周りの視線がうぜぇ。昨晩は織斑と篠ノ之がいたから良しとしよう。一人で食事している俺には前と比べて視線が数倍に感じる。

 

 それなら織斑と食事をとれって?それはそれで無理だ。今はって話だけど、篠ノ之は今朝方からまた機嫌が悪そうにしていた。

 

 何があったかは知らないけど、篠ノ之の不機嫌オーラは胃に悪い。マンガとかでプレッシャーが肌に伝わる…みたいなシーンあるけど、あながちウソじゃないらしい。

 

 かといって、俺を飯に誘う女子など居るはずもない。言ってて悲しくなってくるが、女子に限った話でもないし、何より慣れた。慣れって怖いね。

 

 そうやって寂しくサバ味噌定食をつついていると、聞き覚えのある声が俺を呼んだ。

 

「あ~、かがみんだ~。おはよう~」

 

「布仏か…おう、おはよう」

 

 間延びした口調は、朝と言う時間が相まってか、幾分か眠そうに聞こえた。というか、そのトレーの持ち方危なくね?安定のダボダボ制服なんだが…。

 

「かがみん、一人~?」

 

「ん?まぁ…見ての通りな」

 

「じゃあ一緒に食べようよ~」

 

「別にそれは構わないけど…」

 

 俺がそう言うと、布仏はゆっくりと席に腰掛ける。…自分のためにならない気がするんだけどなぁ、俺と一緒にいるのって、どうせ俺は評判悪いだろうし。

 

「布仏さ、あんまり俺と関わらない方が身のためだぜ?」

 

「どうして~?」

 

「どうしてって…そりゃぁ、昨日の俺に対しての女子の反応を見たろ?んな俺と一緒にいたら、布仏まで目を付けられかねないし」

 

 男だからよく分からんが、女子ってのはその辺りが特に敏感だという話はよく聞く、ドロドロしてるっての?とにかくそんな感じ。

 

 それで、布仏までハブられでもしたらたまったもんじゃ無いはずだ。しかし、布仏は特に気にする様子もなく、こう言った。

 

「大丈夫だよ~。だってかがみん優しいもん~」

 

「えぇ~…?」

 

 生まれてこの方「優しい」なんて言われたのは初めてかもしれない。俺も他人に優しくした覚えなんて一度も無い。そんな俺を布仏は「優しい」と言った。

 

「だって~、かがみんは私にお菓子くれたし~、がっちゃんがガラス割ったのも素直に謝ったし~、おりむ~が笑われてたのを助けてあげたでしょ~?」

 

 布仏は指を折りながら…うん、見えないけどたぶん折ってるんだって、気にするな。昨日の俺のした行動を振り返っていた。ちなみに、「がっちゃん」ってのはガタックゼクターの事だろう。ツッコまんぞ、俺は絶対にツッコまん。

 

「本当に酷い人だったら~、きっとそこまで出来ないと思うんだよね~。だから~かがみんは優しいんだよ~」

 

「…そうか」

 

「そうだよ~」

 

 なんか…照れるな。そんな事を言われたのは、初めてだからかもしれない。布仏のほにゃ~っとした笑顔を見ていると、顔が赤くなるのを感じた。たぶん今俺は、嬉しいんだろうな。

 

「あ~、かがみん照れてる~」

 

「て、照れてねぇ!」

 

「お顔が真っ赤だよ~?」

 

 バレてるし…この娘、トロ臭そうで案外ちゃんと人の事を見ているな…。俺が図星をつかれて焦っているところに、布仏はあろうことか、俺をさらに混乱させる。

 

「えへへ~、かがみんは良い子良い子~」

 

「んなぁ!?」

 

 布仏は少し座っている位置を俺の方にずらし、腕を伸ばす。布仏の掌の着地点は俺の頭。つまり俺は布仏に頭をなでなでされているのだ。

 

「ちょっ、マジ止めろって!ほかの連中が見てんだぞ!?」

 

「ん~?名前で呼んでくれたらやめてあげるよ~」

 

「分かった!本音って呼ぶようにするから、だから勘弁してくれ!」

 

 俺の言葉に満足したのか、布仏…じゃなくて本音はようやく俺の頭から手をどけた。そして相も変わらず俺の方に笑顔を向けている。そのまぶしい笑顔を見ていられず、俺は思わず顔を逸らした。

 

「どうしたの~?かがみん~」

 

「いや、なんでもねぇ…」

 

「そっか~、それなら良いんだけど~」

 

 なんていうか、本当に無自覚でやってるのか不安になってきた。まぁたぶん天然なんだろう。…そうであってほしい。

 

「それより飯にしよう。さもなきゃ織斑先生にどやされる」

 

「そうだね~、すぱ~ん!ってされたくないね~」

 

 それを合図に再び箸を取る。俺はいたって普通のペースで食べ進めるが、やっぱり、というか本音の喰うペースは遅い。だが、本人もそれを十分に自覚しているのか、本音が喰い終わってもまだ時間に余裕はありそうだ。

 

「ごちそうまでした~」

 

「ん、なら行くか」

 

 俺の言葉に本音は元気に「は~い」と返事し、立ち上がる。俺の隣をちょこちょこと歩く本音に、言っておきたい事があった。廊下は人が居ない…今言えば、他に聞かれることもなさそうだ。

 

「なぁ」

 

「うん~?どしたの、かがみん~」

 

「あ~…その…な?これからも…よろしくな、本音?」

 

「うん~!よろしくね~かがみん~!」

 

 本音は嬉しそうにパッと花の咲いたような笑顔を俺に向ける。おうふ…またこれは破壊力の高い…。また俺は顔を逸らしてしまう。

 

「あ~、かがみんまた真っ赤~」

 

「う、うるさいな!意外と意地悪なのな!お前」

 

「え~、かがみんほどじゃないよ~」

 

 なんて、言い合いながら俺と本音は教室へと歩いていった。親父殿…なんか知らないけど、俺にも気を許せる相手が出来ましたよ。

 

 なんか今後も本音にいじられる未来が見えなくもないが、まぁ良しとしよう。なんたって、珍しくできた俺の「友達」だもんな。

 

 うん、こういうのもたまには悪くない。完全に俺のキャラではないが、本音との距離感はこれで良いんだ。そう思えるのは、やっぱり本音が相手だからだろう。

 

 まるでらしくもない自分に自嘲しながら、俺は力強く歩を進めるのだった。そう、これが俺の進んでいく道だと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 




真の友人認定第一号はワンサマーじゃなくてのほほんさん。

悲しいかな現時点では真的ワンサマーの認識は「面白い奴」なんですよねぇ…。

ちなみに箒は「知り合いの知り合い。面白い奴二号」くらいの認識です。

今後の真は、皆との友情を育んでいけるのでしょうか?

それは真しだいですね、とりあえず今回で本音の優しさに触れたことで一歩前進って所でしょう。

真の成長には要注目!乞うご期待!

それでは皆さん。また次回でお会いしましょう!

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