戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

今回から「キャノンボール・ファスト編」に突入でございやす。相も変わらず最初の一話は、話ばかりですけどね。

って言うか、前の「専用機持ちタッグトーナメント編」もそうだったんですが、六巻と七巻の内容がミックスしてますから、頭がこんがらがります……。

忘れたままでぶっ飛ばしちゃう内容とかが、出なければいいんですけど。個人的なメインイベントは、一夏と箒が取材されてたあれかな……?アレは、忘れないようにしなければ……。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


七章 ~背負いし運命~
始まりを告げる(色々)ですが何か?


「…………」

 

「おい、一夏」

 

「…………」

 

「……コラ、無視すんな」

 

 ちょっとした用事があったために、一夏に声を掛けるが全く反応が無い。あの誕生日会以来、こうして何か深く考え込んでいることが多いような気がする。

 

 無理も無いか……なんたって、襲われたんだからな、あの夜。一夏はあの日に『自分は何もしていないから』と、一人で飲み物を買いに行った。

 

 その際に発砲されたそうだが、間一髪でラウラが助けだし、大事には至らなかったらしい。気持ちは十二分に解る……こちとら意味も分からず命を狙われた経験がある身だ。

 

 しかしこう同時となると、犯人はやはり亡国機業と睨んでいいのだろうか?その辺りを、楯無先輩に詳しく聞いてみておいた方が良いのかもしれない。

 

 それにしても……一夏のこの顔は、単に襲われたから考え込んでいるとか、そんな単純な事で悩んでいる様には見えない。何かもっと他に……だが、それは本人のみが知る事だ。

 

 とりあえずは俺も、用事を済ませてしまいたい。俺は一夏の肩を掴むと、少し強めに揺らす。すると一夏は、驚いた様子で俺の事を眺めた。

 

「真……いつからそこに?」

 

「さっきから何回か呼んでるっつの」

 

「そうか、悪かった。で……何か用事があるんだよな」

 

「ああ、今日の放課後は暇か?暇なら、模擬戦の相手をしてもらいたい」

 

「もう動いても平気なんだな。分かった、俺で良ければ相手するぜ」

 

 そう……ようやくして俺も、ほとんど万全な状態と言った所だろう。ガタックの方も、修理は完了している。俺が眠っている間に、本音が応急処置をしておいてくれたそうな。

 

 ここの所は、じっとしているしかなかった。そのせいで体がだいぶ鈍ってしまってる。てっとり早く勘を取り戻すには、実力的に一夏との模擬戦が一番だ。

 

 一夏は俺の誘いを、快く引き受けてくれた。先ほどまでの表情は、何処かに消え失せているようだ。と言うか、本人が顔に出ている事を、分かっていないのかもしれない。

 

「……ありがとな」

 

「何言ってんだよ、これくらい」

 

「ん……そうか。なら、お前も何かあったら、俺を頼れよ。頼り無いかもしれんがな」

 

「そんな事ねえって、それに俺は、いつも真の事を頼りにしてるさ!」

 

 ……こいつは、女たらしと言うよりは、人たらしなのかもしれない。実際に俺も、今の一言は普通に嬉しいものだった。的確かつ無自覚に、相手の喜ぶ台詞を言うからだろう。

 

 まぁ……なんだ、頼りにされてるんだったら、期待に応えようって気にはなるよな。はぁ……本当、我ながらお人好しになったものだ。

 

 俺も俺で、この男にたらし込まれてる証拠だろう。だが甘やかすのは良くないから、適度に手を貸してやることにしよう。とりあえず、今日の放課後はアリーナに遅刻しないようにしないとな。

**********

「まっことく~ん♪」

 

「うっす、楯無先輩。珍しいっすね、昼休みに用事ってのは」

 

 昼休みに昼食を済ませ、図書室で調べ物をしていたところ、楯無先輩が現れた。この人が俺に用事となると、たいてい放課後とか、もっと時間が長いときにやって来るのに。

 

 そうすると、何か個人的な用事なのかもしれない。または、よほど緊急を要するとか……?どちらにしたって、人の多い図書室で話す事ではなさそうだ。

 

 俺は楯無先輩を待たせないように、手早く借りたい本を選ぶ。そのままそそくさと図書室を出ようとすると、楯無先輩はなんだか楽しそうについて来た。

 

「貴方って、紳士よね」

 

「紳士が女に向かって『女狐』なんて言うかよ」

 

「でも、私を待たせないように急いだでしょ?そう言うさりげない気遣いって、大事よ」

 

「別に、俺は時間には煩いってだけだ」

 

 俺が先を行き、その後ろを付いて来る楯無先輩と、そんなやり取りを交わした。すると後方から扇子が開く音がしたので振り返ってみると、そこに書かれていたのは『片意地』……。

 

 素直でない表現の一つだ。楯無先輩はこれまた楽しそうに、扇子に書かれている三文字を見せつけてくる。そんな先輩に、俺はフンっと短く鼻息を鳴らすと、次から振り返る事は無かった。

 

 そのまましばらく歩くと、人気のない場所までたどり着く。ここらあたりなら、何を話しても問題ないだろう。そう思って足を止め、俺は楯無先輩と向き合った。

 

「さて、何の用事だったんだ?」

 

「察しが良くて助かるわ。ちょっとした報告と、お願い?かしら」

 

「まぁ……順を追って説明を頼む」

 

「アメリカのIS保有基地が、襲撃を受けたわ」

 

 ……またか。これでは何の為に、専用機持ちトーナメントを開催しようとしたか、分からなくなってしまいそうだ。アレはアレで、俺達のスキルアップには繋がっただろうけど。

 

 亡国機業め、ISを奪って戦争でも仕掛けてくるつもりなのだろうか。それは全く洒落にならんな、IS学園所属の専用機だけで、どうにか出来るかどうかは保証できない。

 

「一応俺の耳には……って事か」

 

「まぁね。優先順位は、貴方のお爺様からだけど」

 

 そりゃあそうだろうよ、爺ちゃんより先に、俺に話したって仕方の無い事だ。俺達ZECTだって、大事なコアを……爺ちゃんの夢を奪われたのだから。

 

 だがそう考えると、何か不自然なのを感じる。なぜ亡国機業は、ZECTがコアを保有していたことを知っていたんだ?奪われたISの全てが、ほぼ完成した状態だったはず。

 

 ISが完成した状態ならば、亡国機業が知っているのも頷ける。だが、コアに関してはどうなのだろうか。厳重に保管していたし、爺ちゃんが外部に漏らすような事をする訳が……。

 

「……気になる事がありそうね」

 

「あ、あぁ……ちょっと、良いか?」

 

 どうやら黙り込んでいたせいで、俺が何か考えていたことは丸わかりらしい。気になったのならば、言ってみるべきだと、俺はそのまま思った事を楯無先輩に語った。

 

「う~ん……私も、それは少し気になってたの」

 

「やっぱり、不自然だよな……」

 

「なんでZECTの時だけ、わざわざそんな面倒な事をしたのかしらね」

 

 完成、または完成しかけたISを奪うのは、そちらの方が効率的だからだろう。ISの開発にかかる手間暇を、全て各国にやらせ、後はハイエナしてしまえば良いのだから。

 

 それをわざわざ……ZECTの時は、コアだけ……。ソルも『そのコアを渡してもらおうか』とハッキリと言った。コアが狙いだったのは、この時点で知れている。

 

 連中は既にカブトを手に入れていた、だからZECTがISを造るのを、待つ必要が無かった……そういう事だろうか。だとすれば、あのコアを使って……。

 

「独自のISを、作ろうとしている……?」

 

「それが、妥当なとこでしょう。ま、向こうの思惑なんて考えるだけ無駄ね。何が来ても、叩き潰しちゃえばいい話……そう思わない?」

 

 そう言いながら楯無先輩の開いた扇子には、今度は『粉砕』の二文字が。それは言えている話だけど、そう上手くいけば良いが。って、何を弱気な……楯無先輩の言う通りだな、うん!

 

「その通りだな、とりあえずは要警戒……って事で。んじゃ、俺にお願いってのは?」

 

「うん……すこ~し無理なお願いだから、無理なら無理で良いのだけれど……」

 

「おいおい……俺に何をやらせるつもりだよ」

 

「ZECTの方でも、織斑君を監視して貰えないかしら?もちろん!彼のプライバシーを尊重しつつね」

 

 それは一夏が襲撃された事からだろう。確かにZECTは、俺の身の回りは警戒していても、一夏に関してはノーマークだろう。自分で言うのはなんだが、ZECTは俺至上主義みたいな所があるからな。

 

 俺は監視はされて居ないだろうが、個人的に襲撃を受けた場合は、どういった対応になるのだろうか?田所さんとかでも飛んできて、場を収めてくれるのかもしれないな。

 

「つまりは、俺から爺ちゃんに頼めって事だよな」

 

「そういう事。私が頼むより、貴方が頼んだ方が早いでしょ」

 

 そうは言うが、協力関係を結んでいるのなら、爺ちゃんも別に渋らないと思うんだけど。その辺りの確認も含めて、一夏との模擬戦が終わり次第に電話してみる事にしよう。

 

 とりあえず楯無先輩の言葉に、了解だと答えると、一安心したような表情を見せた。後は俺にも周りを警戒するよう釘を刺し、感謝の言葉を述べつつ去って行く。

 

 警戒しろ……か、ISの方だけでなく、生身の方でももっと精進しないとダメそうだな。それなら、軍人であるラウラにでも、生身での訓練を頼んでみる事にしよう。

 

 あいつは俺の何を気に入ってるのか知らないが、事あるごとに生身での訓練を勧めてくる。俺はそれに対して、田所さんもいるし『間に合ってる』と断っていたんだが、どうもそんな事を言っていられるような状況でもないらしい。

 

 認識が甘かった……俺の心のどこかに、まだ『何とかなる』と楽観的な部分が残っていた。もうそう言うのは、止めよう。常在戦場……いつでも戦場にいるような気構えで、一つ褌を締め直さなければ。

**********

「チクショウあの野郎……完全にこっちの動きを読みやがって……!」

 

 一夏と模擬戦をしたのだが、それはもう長引いた長引いた。一夏が強くなったって話は聞いていたが、まさかあそこまでとは……。俺が仕掛けるのよりも先に、避け始めているのだから。

 

 どうやら先読みのスキルらしい。俺は俺で見えてさえいれば、避けたり防いだりするスキルは、専用機持ちでもトップクラスと自負している。

 

 そのおかげで、お互いに攻撃が当たり辛いのだ。長丁場と言う話では片づけられない。結果的に俺は、白式の燃費の悪さのおかげで、勝ちを貰ったようなものだ。

 

 本人に何で読めるのか聞いてみると『え?いや、なんとなく……』みたいな、自身の無さそうな返事をされた。どうやら一夏の先読みにも、俺の集中回避と同じでムラがあるらしい。

 

 だがあれが完璧になるとすると、誰も一夏を止められなくなるだろう……。とにかく、しばらくは一夏と模擬戦をするのは止そう……アレは疲れる。

 

「さて、いつもの場所に到着っと……」

 

 俺が模擬戦終わりに寄った場所は、いつも爺ちゃんに電話を掛ける中庭のような場所だ。別にここでなくてもいいのだけれど、なぜかここは落ち着いて話が出来る。

 

 しかし時間帯が悪いかもしれないな、放課後と言うよりは、皆そろそろ寮に戻り始める頃合いだ。一夏との模擬戦が長引いたのも要因の一つだろう。

 

 だけど楯無先輩の話した内容からして、急いだ方が良いに決まっている。俺は携帯の電話帳から爺ちゃんの項目を選び、耳元に携帯を当てた。

 

「もしもし、爺ちゃん?」

 

『真か、体の調子はどうかね』

 

「まだ本調子じゃねぇけど、問題ないさ」

 

 あの件に関しては、爺ちゃんを始めとしたZECTの人達に、余計な心配をかけてしまった。俺が意識不明だったことは、織斑先生が各方面に伝えたらしく、目が覚めて携帯を見たら、すさまじい数の着信履歴で驚いたものだ。

 

 もちろん各方面に目が覚めた事は、すぐに電話しておいたとも。爺ちゃんと話したのは、それ以来か?ここの所は、特に用事も無かったしな。

 

『それは、良かった。直接見舞いに行けず、済まないな』

 

「良いって、基本的にIS学園は部外者立ち入り禁止だし」

 

『む……それもそうだ……。それと、何のための電話なのだろうか』

 

「それがさ……無理なら無理でも良いんだけど」

 

 俺は爺ちゃんに、一夏を監視してほしい旨を伝え、どうしてそう言う話になったのかを伝えた。話し終えると、爺ちゃんは難しそうに唸って見せる。

 

 ダメなのだろうかと思ったが、なぜ楯無先輩が自分に伝えないのか……それが気になったようだ。それに俺はそのまま、俺が言った方が早いと言っていたと返す。

 

『ヤレヤレ……まだ警戒されているようだな』

 

「やっぱ、そう言う理由なのかね?」

 

『まぁそれは、良しとしよう。その件、了承した……そう伝えておいてくれ』

 

「ああ、分かった。それじゃ、ありがとな」

 

『真……少し待て。私も、お前に用事があった』

 

 ほう……それは実にタイミングの良い事だ。俺が爺ちゃんに用事がある事は多いが、逆のパターンはほぼ無い。それこそ、ラボラトリに予算が降りたとか、そう言う話が多いのだ。

 

『近々、キャノンボール・ファストが開催されるだろう』

 

「キャノ……?あぁ、はいはい……ISを用いたレースの奴か」

 

 まだ織斑先生からなんの伝達も受けてないが、そういった大会があること自体は知っていた。ISも部門別でいろいろな競技があるし、俺も全ては熟知していないが。

 

 しかし、それとこれとが俺に何の関係があるのだろう?もちろん参加はするが、エクステンダーの使用が認められないとか、そう言う凶報だったりするのかもしれない。

 

『大会の開催に合わせて、追加予算が降りたぞ』

 

「ま、またか……。そんなポンポンやって大丈夫なんだろうな?」

 

『何、問題は無い。真には、エクステンダーの高速移動用の強化パーツを。簪君には、高機動用追加パッケージの開発が計画されている』

 

「おお、簪にもか!きっと喜ぶぜ」

 

 簪の打鉄弐式にも追加パッケージが配備されることを聞いて、俺は喜びを露わにした。簪はZECTの所属なのだから、当然と言えば当然なんだけど……。

 

 それでも簪は、この話を聞けば驚く事だろう。今から簪のビックリした顔が目に浮かぶ。今度ラボラトリを尋ねてみるのも良いかもしれない。

 

 それにしても、エクステンダーの強化パーツか……。確かに考えてみたら、エクステンダーはあくまで『高空域戦闘用』のフロートユニットだからな、そこまでの速さは想定されていない。

 

 スピードが出る事には出るのだが、スラスターに全てのエネルギーを回した白式や、高速移動形態の紅椿には劣る。最低でもアレと同等の速度を出さなければ、まず勝ちは無いと言うのは、キツイ話だ。

 

『簪君には、真から話しておいてくれ。もちろん、内密にな……』

 

「了解した。そっちも、岬さんによろしく伝えといてくれよ」

 

『あぁ……分かった。では、真……身体に気を付けるのだぞ』

 

「うん……サンキュー。じゃあな」

 

 爺ちゃんは俺に優しく声をかけると、電話を切った。それにしても、まさか本当に予算の話になるとは思わなんだ。高速移動用強化パーツか……ガタックのアーマーに装着しないのは、変な感じなのだろう。

 

 そう考えると、ガタックも足の底くらいにはスラスターを付けても良かったんじゃないか?まぁそれは、今更言っても遅いよな……いったい何か月前の話だよ。

 

 とにかくもう用事は無いし、飯でも食いに行くことにしよう。時間的にはまだ食堂は空いているが、知り合いは捕まらないかもしれない。久しぶりに独りの食事か、寂しい物だ。

 

 さっきの事を簪に伝えるのは……明日にしておこう。爺ちゃんは内密にと言っていたし、生徒会室とかで話すと良いかもしれないな。よしっ……そうと決まれば、飯にするか。

********** 

「この間の無断接触の件は、どう説明するつもりかしら?」

 

「…………」

 

 エムの部屋に、ノックもせずに入って来たのは、スコールだった。表情こそニコニコとしてはいるものの、スコールの放つ雰囲気は、泣く子も黙るに違いない。

 

 そんなスコールに対し、エムは臆す事は無い。と言うよりは、何も感じていないと言った方が正しそうだ。エムが一夏と接触したのは、当然の事ながら単独行動で、責められて然るべきだろう。

 

 しかしエムからすれば、そんな事は分かっている。だからスコールの言葉も、面倒な説教にしか捕える事が出来ない。だから何も感じず、そこに立っているのだ。

 

「困るのよね、あまり好き勝手されると。問題児はソルだけで十分なの」

 

「……分かっている」

 

「あまり私的な用途でISを使うのなら――――」

 

 台詞と同時か、もしくは食い気味に自身のISを展開し、部屋のベッド等を吹き飛ばしながら、エムを壁に惜しい付ける……つもりだった。

 

 気付いた瞬間には、エムは既に目の前には居ない。スコールは全く瞬きをしていないし、エムが目の前から消えた理由なんてすぐに解った。

 

「ソル、その危ないのをしまって頂戴」

 

『人のふり見て、わが身を直せ……だ』

 

 振り返らずにハイパーセンサーで確認すると、ソルがスコールの背にクナイの切っ先を向けていた。残った片腕でエムを抱え、守るようにソルは立っている。

 

 間違いなく、クロックアップだ。クロックアップの使用に伴う筋線維の断裂は、カブトでも同じように起こる。しかしソルは、エムを守ると言う理由だけでそれを使った。

 

 スコールは思わずため息をつく、物鬱げなその表情には、問題児に対する気苦労がはっきりと表れている。スコールは再度溜息を付きながら、ISを解除した。

 

「エム、忠告はしたわよ?」

 

「だから分かっていると、そう言った」

 

「ああ、そう……」

 

 スコールがエムの部屋を出たのを確認すると、ソルもカブトの展開を解除した。パンパンと埃のついたコートを払うと、ソルも退出しようと踵を返す。

 

「何のつもりだ?」

 

『…………』

 

 それを引き留めたのは、エムだった。その言葉の裏には『余計な事を』とか『あの程度が自分に防げないハズが無い』など、とにかくソルが邪魔であったと、そう言う意味が込められている。

 

 ソルもそれは、理解していた。エムの実力は知っているし、スコールの攻撃を防げたことも、自分が邪魔だと言われる事も。ソルはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

 

『……オレとお前は、良く似ている』

 

「……質問の答えになっていないぞ」

 

『似ているモノが無益に傷つくのは、胸糞が悪い……それだけの事だ』

 

 そう言うとソルは振り返り、エムの握っているナイフを取り上げた。そうすると、クルクルと手の甲で弄んだ後に、エムのぶら下げているホルスターへと仕舞った。

 

「貴様と私では、事情が違う」

 

『そうだな……。だが、せめて顔は止めておけ、治るにしても……綺麗な顔をしているのだから』

 

「ソル……お前は……」

 

 エムは自分が傷つく事に、ある種の快楽を感じる癖がある。それは、自分の顔が『あの女』とそっくりだから。ソルはその事を知っていて、嫌な気分を味わうようだ。

 

 ソルはエムの頬を、掌で優しく撫でた。それはエムとよく似た『ある女』の顔では無く、エムを慈しむ行動と言えよう。黙って撫でられ続けていたが、驚いたようにエムは後ろへ飛びのいた。

 

「お前は……私の心をかき乱す」

 

『…………。オレは、そのつもりでやっている』

 

「…………」

 

『おやすみ、マドカ』

 

 エムをマドカと呼ぶと、ソルは有無を言わさず部屋から出て行った。ソルがエムの事をそう呼ぶときは、決まって二人きりの時だけだ。

 

 それ以外では、必ずエムと呼ぶ。その行動はまるで、その呼び方が『特別』であるかのようだ。事実ソルにとってはマドカは『特別』なのだろう。本人にも、どうやら自覚はあるらしい。

 

 対してマドカは、よく分からない。先ほどの台詞からして、全く何も思っていないと言う事ではないようだ。どちらかと言えば、そう言った感情が分からないのかもしれない。

 

「…………」

 

 部屋でただ一人残ったマドカは、壁を背もたれにヘタリと座り込む。そして、先ほどまでソルが撫でていた頬に触れた。吹き飛ばされたベッドを戻すのは、今は面倒らしい。

 

 マドカはそのままうつらうつらと、眠りへと誘われていく。いつもより幾分か心地よく眠る事が出来たのは、マドカには自覚が無いままであった。

 

 

 




苦労人なスコールさん。

ウチでは問題児が一人増えて、気苦労もマシマシですね。別にソルは命令に背く単独行動はしてないですけどね、まぁ……今はのの話ですけど。

そしてそして、キャノンボール・ファスト仕様のエクステンダーと、弐式の高機動パッケージをオリジナルで出す事にしました!

相変わらず微妙な奴になると思いますけどね、アイデア立案は以前にも私を助けてくれた友人、ならぬ友神様です。私の二次創作は他人の意見で成り立っているのだ!

……自慢げにいう事ではないか。さてさて次回は……どうだろう?まぁ、未定ですかね。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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