戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

5月5日は子供の日……とは良く言った物です。知り合いと言うか、親戚と言うか、とにかく小さな子供に小遣いをねだられ……。

勿論大人しく気持ち程度のをあげましたが、こうしてると……齢を取ったなぁとしみじみと感じます……(二十代)

まぁ、オッサン臭いとは良く言われますけどね……うん。……柏餅食べよっと。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


嵐、過ぎ去り(平穏)ですが何か?

無人機の襲撃から、二日が経過した。IS学園は、まだ襲撃の余韻が消えないでいる。それを象徴するのが、保健室に寝かされている真だろう。

 

 真は、未だに目を覚まさないでいる。医師の診断によれば、無人機から受けたブレード等の攻撃よりも、全身の筋肉が断裂している所に起因するとの事。

 

 目覚めても、しばらくは何も出来ない……それほどの症状だと医師は言った。むしろ、しばらくは目が覚めないのが彼の為だ……とも。

 

「やっほ~、かがみ~ん」

 

 保健室に現れたのは、本音だ。本音や簪……だけでなく、一夏や専用機持ち達、果てには相川達も、小まめに真の元を訪ねていた。きっと真が起きていたら、お前ら暇だな……とでも皮肉るのだろう。

 

 特に本音と簪は、短い休憩時間を割いてでも保健室を尋ねていた。現在は放課後、先に到着したのが本音で、しばらくすれば簪もやって来る事だろう。

 

「今日もかがみんは~、おねむだね~」

 

 もはや真が寝かされているベッドの両サイドに置かれている椅子は、本音と簪の専用になりつつあった。椅子に座って真の顔を覗き込み声を掛けるが、今日も返事は返ってこない。

 

 それでも本音は、めげずに今日一日に起きた出来事を、真に話し続けた。いつか真が、ふと返事を返してくれると信じて。

 

 とは言え、今は本音以外に誰も居ない。やがて話題は尽き保健室に響くのは、真の静かな寝息のみになった。夕焼けが差し込む中で、本音は大きく背伸びをする。

 

「ん~!……はふぅ~。すっかり秋だよね~」

 

 一度保健室の窓の方を向き、それから再度真の顔を見た。視線は顔からだんだんと下がっていき、本音の目には真の右手が映った。

 

 真の右手には、いつも巻かれていた包帯は無い。そのためにクナイガンで貫かれた傷痕は、多くのメンバーの目に映る結果となる。

 

 大した怪我ではないが、見せる必要はない……これは真本人の談だ。そのため、これほどにまで大きな傷であることは、想像しなかったのだろう。

 

 そして今の真には、肩と脇腹に新たな包帯が巻かれている。いずれも、無人機から受けた攻撃によるものだ。幸いな事に、どちらも一生残る傷にはならないらしい。

 

 だが本音は、事あるごとに増えていく真の怪我に、どうしても顔をしかめずにはいられなかった。いつまでもこのような事態が続くのかと、気が気でない。

 

「かがみ~ん……」

 

 袖で隠れた自身の手を引っ張り出し、本音は真の手を取った。ぎゅっと握ると、真の手の温かみを感じる。ポワポワとした感じが、本音の胸いっぱいに広がる。

 

 それと、弱弱しいながらも、確かに力が真の手に宿っているのも。もしやと本音は、慌てて真の顔を見た。そのまま名前を呼び掛けると、真は静かに目を開く。

 

「かがみ~ん!」

 

「…………。本音……俺は、生きてるか?」

 

「だいじょ~ぶだよ~。ちゃんと生きてるから~」

 

 本来なら、もっと他に言うべきことがあるのだろう。それでも真は、自分が生きているという事実を、真っ先に確認がしたかった。

 

 真にとって二度目のクロックアップのリスクは、リアルに死がすぐそこまで迫って来ていた……と言う事なのだろう。本音が当たり前の事を当たり前のように言うと、真は『そうか』と小さく呟く。

 

「ふっ……ぐっ……!」

 

「わ~わ~!起きようとしちゃダメだよ~!?」

 

 とりあえず真は、寝たままの体勢で話すのは失礼だと思った。体を起こそうとするが、全く体が言う事を聞いてくれない。その際に、気絶した時と似た痛みが真の体を走った。

 

 本音は真を制すると、ゆっくりとした口調で今の真がどういった症状であるかを説明した。真の表情は、本音の説明が進んで行くにつれて、ゲンナリとした物に代わっていく。

 

「本当に良く生きてたな……俺」

 

「ね~。かがみんも~大概頑丈だよね~」

 

「……馬鹿にされてるような気がすんな。所で、俺はどれくらい眠ってた?」

 

「丸二日だよ~」

 

 これを聞いた真は、かなりたまげた様子だった。それもそのはず……真の時計は、気絶した時から止まってしまったのだから。外の様子が放課後であるため、せいぜい数時間……とでも思ったのだろう。

 

 二日も授業に出なかったうえに、起き上がれないこの状況は、もう数日続くはずだ。となると、課題やら何やらはたまる一方……あの鬼教官が容赦をくれるはずも無い。真は、頭が痛くなるのを感じた。

 

「二日……二日か、そう思うと、なんか腹減って来たな」

 

「もうすぐご飯だし~、後で何か持って来てあげるよ~」

 

 寝ている間は、点滴のみだったのだから腹も減るだろう。とりわけ真は、体が大きいせいか、同い年の男子と比べても良く食べる方である。それが二日も何も口にしなかったのだから、いつもの量では足りなさそうだ。

 

 ここまで、普通の世間話が続く。まるで気絶する前と、何も変わらない。それ故に真は、違和感を覚えていた。自分が無茶をしたのは明白で、最低でも怒られることは覚悟していたのに、拍子抜けだ。

 

「ど~したの~?」

 

「いや、てっきり……泣かせるかなって思ってたもんでさ」

 

「えへへ~、かんちゃんとね~、約束したんだ~」

 

「約束って?」

 

「泣いちゃうと~、かがみんが困っちゃうから~。だから~泣かないんだよ~」

 

 困りはしないが、今跳び付かれたら、真は確実に気絶できる自信があった。だけど恐らく、保健室に運ばれる際は、泣かせたのだろうと思うと、逆に申し訳ない気分となった。

 

 いつまでも人様に心配を掛けさせる自分に、自嘲じみた表情を浮かべた。悪いのは自分だ……しっかりと本音に謝ろうと、視線を本音に戻す。すると真は、目を見開いた。

 

「本音……涙」

 

「へ~?あ、あれれ~……おかしいな~」

 

 本音が自覚しない内に、その頬には涙が伝っていた。真に『泣かれるかと思った』と、そう指摘されたせいかもしれない。そっとしておいたら気付かなかった可能性もあるが、真は指摘せずにはいられなかった。

 

 本音はゴシゴシと余った袖で涙を拭い取るが、流れ出るそれが止まる気配は見られない。真はそんな本音を見て、息を大きく吐くと、大きく吸って、全身の力を振り絞った。

 

「……ぬぅ……おぉ……!本音……我慢なんかしないでくれ。今の本音を見てる方が、よっぽど辛ぇよ」

 

「かっ、かがみ~ん……」

 

 激痛を堪えながら、腕を伸ばした先は、本音の目元だ。残念ながら右腕しか届きそうもないが、真は本音の涙を、自身の手で拭い取った。

 

「本音が泣いてんのは、俺のせいだから。俺は……本音の涙を受け止めたい。本音が泣き止むまで、絶対に俺は傍に居るから……だから、我慢は止めてくれ」

 

「ひっく……うぅ~……うぇ~ん!」

 

 真の言葉の通りに、本音は我慢する事を止めた。と言うよりは、優しい言葉を掛けられ、我慢が出来なくなったと言った方が正しいだろう。

 

 本音はまるで子供の様に、大泣きする。真は小さく『ごめんな』と呟きながら、本音の涙を必死に拭い取っていく。そんな真の目にもうっすらと涙が溜まっているのは、ここだけの話にしておこう。

**********

「良かった……真……」

 

 保健室の扉の前には、簪が居た。たどり着いたのはついさっきで、本音が大泣きした辺りからだろう。簪の場合は、本音がの泣き声が聞こえて真が目覚めたのを察し、その途端に涙が溢れてしまった。

 

 だからこそ、泣いている間は保健室に入れないと、自分に言い聞かす。困らせるから泣かないと、そう提案したのは自分なのだから……。

 

「っ!?わ、悪い……出直すよ……」

 

「あっ……」

 

 間の悪い事に、保健室前に現れたのは、一夏だった。近くに寄ったから、ついでに真の様子を……それくらいの感じでフラッと立ち寄っただけだ。

 

 なのに目の前にいるのは、理由は分からないが自分を避けている女の子で、しかも目撃したのは泣き顔だ。これにはいくらデリカシーが無い一夏でも、すぐさま回れ右をして見せる。

 

「まっ……て……」

 

「ん?わ、分かった」

 

 意外な事に、簪が一夏を引き留めた。一夏はかなり気まずそうに立ち止まると、ぎこちない様子で簪の方へ向き直る。内心何を言われるか分かった物ではないと、一夏はごくっと生唾を飲んだ。

 

「皮肉……。そう思った……」

 

「な、何が……?」

 

「私には……貴方を許せない理由がある……。貴方が……ISさえ動かさなかったらって……」

 

「俺が、ISを……」

 

「うん……でも……。貴方がISを動かして……白式を手に入れてないと……真は……もう死んでたかもしれない……」

 

 恐らく今まで真と共に死線を潜り抜けた回数が多いのは、他でも無く織斑 一夏その人だ。だからこそ簪は、皮肉だと語ったのだろう。

 

 もし仮に一夏がISを動かしていなかったとしたら、今までの事件に一夏が居なかったことになる。打鉄弐式は予定通りに完成していただろうが、だからと言って戦力になったかと聞かれれば、必ずしもイエスとはいえない。

 

 今回の件にしたって、同じ事だ。アリーナ内に居た無人機は二機……もし一夏が居なかったとしたら、絶望でしかない。本当に皮肉な事だが、一夏は簪の事情を知らないため、状況が飲み込めないでいた。

 

「出来たらで良いんだけど、俺の何がいけなかったのか聞かせてくれないか?」

 

「……うん」

 

 とにかく、自分が避けられていた理由を聞かない事には始まらない。そう思った一夏は、質問を投げかけた。簪もここがタイミングだと、始めから訳を話す。

 

 一夏が現れたことにより自身の専用機の開発が、事実上の凍結をしてしまった……。それを聞かされた当の本人は、かなり申し訳なさそうな顔を浮かべる。

 

「それは……悪かった。謝って許してもらえる事じゃないかもしれないけど……この通りだ!」

 

「頭を上げて……。貴方は悪いけど、悪くない……」

 

「言い得て妙って奴か。確かにそうだけど、なんか……俺が納得いかないんだよな」

 

 もちろん一夏も自分が悪いわけでは無いのは、自覚している。しかし……候補生にとって与えられる専用機は、今後の活躍のためのモノだ。

 

 自分は、簪の活躍する術を完全に断った。そう思うと、頭を下げずにはいられなかったのだ。だが簪が頭を上げてと言うのであれば、これ以上は無駄であろうと、大人しく頭を上げた。

 

「貴方が居なければ死んでたかもしれないのは……真だけじゃないと思う……。今回の件に関しては……私も……」

 

「いや、別に俺はそんな……」

 

「そんな事……ある。助けてくれて……ありがとう……」

 

 今度は簪が、一夏に対して頭を下げた。感謝の言葉は受け取りつつも、一夏はアタフタと簪の頭を上げさせた。何とも、日本人らしいやり取りだ。

 

「後……コレから、よろしく……」

 

「許してくれるのか!?」

 

「始めから……許すも何もない……。最初に言ったのは……話が進めにくいから……」

 

 今回の件でようやく気持ちの整理がついたのか、簪は一夏に握手を求めた。ここまで来ておいて、一夏はかなり意外そうに声を上げた。

 

 簪の差し出して右手を、痛くしない程度にガッチリと掴む。そうしてお互いゆっくりと上下に振ると、手を離す。一夏は嬉しそうにニッコリと笑うが、簪の方はそうでもなさそうだ。

 

 ……と思いきや、一夏には分からない程度に、簪も薄く笑みを浮かべていた。それに気付けない一夏の笑顔は、だんだんと苦笑いに変わり、終いには困惑した表情に変わる。

 

「ハ、ハハハ……。それじゃ、俺はもう行くよ」

 

「真は……良いの?」

 

「なんか起きてるみたいだし、他の皆に知らせに行って来る。それに簪さんとのほほんさんに見舞ってもらった方が、真も喜ぶだろ」

 

「簪で良い……」

 

「そうか?それじゃ、また……簪」

 

 そう言うと一夏は背を向けて、手を振った。簪もこれまた小さく手を振ると、一夏の背中が小さくなるまで見送る。そうして今一度、保健室の方を向いた。

 

 涙は枯れたが、真の顔を見ると、また我慢が出来なくなってしまうかもしれない。頑張れ私、負けるな私と、そう言い聞かせながら簪は前に一歩踏み出した。

**********

『…………スコール』

 

「何かしら?」

 

『感じた、奴を』

 

 寝室からゆっくり出てきたソルは、いつものローテンションでスコールに語りかけた。声をかけられた方は、珍しい事もある物だと思ったが、それも一瞬だ……。

 

「まさか、第三フェーズに……」

 

『いや、それは無い。無いが……片足を突っ込みつつあるらしい』

 

 陸と三島が話していた『フェーズ』と言う表現を、なぜかスコールも使った。ソルの言う『奴』とは間違いなく真の事だ。そうだとすると、真に何か変化がある事を示唆しているらしい。

 

 スコールは、真が第三フェーズなる段階に入っていない事に、安心したような表情を浮かべた。そして何故わざわざ、それを言いに来たのかを確認すると、一応だと短くソルは答えた。

 

「それなら良いのだけれど……」

 

『……そんなにすぐ、入られても困る』

 

「フフッ、言えてるわね。ソルでも時間がかかったのに」

 

 本当に珍しく饒舌なソルに、スコールは少し茶化すような言葉をかけた。しかし、気になる台詞と言えよう。まるでこの会話は、ソルが既に第三フェーズに入っている……そう取れる。

 

 それならば、真とソルは、同じように、何らかの段階を踏んでいる……そういう事なのだろうか?現状では何も言えないが、全く関わりが無い二人ではなさそうだ。

 

「彼女、きっかけを与えたいんだか、彼を殺したいんだか……分からないわ」

 

『恐らく、後者だ。篠ノ之 束は、こちらがまだ奴を利用する気だと……そう思っているのだろう』

 

「あら、なら好都合ね。早めに消してくれると助かるわ」

 

 どうやら束と亡国機業が真の命を狙う思惑には、すれ違いが生じているらしい。スコールは、真がすでに用済みだと言った。それに対して束は、まだ亡国が真を利用する気だと考える……見事な擦れ違いだ。

 

『……ところでだが『アレ』の完成はいつだ』

 

「安心なさい、もうすぐ出来上がるわ。次攻め込むときには、ソルの手元にあるはずよ」

 

 アレ、とは……ZECTから奪ったコアで、亡国は『何か』を造っているのかも知れない。もうすぐ完成だと言うスコールの言葉を聞き、ソルは鼻から首にかけて巻かれているストールの下で、口元を盛大に歪めた。

 

 どうやらそれは、スコールには悟られているらしい。いきり立つソルを見て、アラアラとスコールも楽しそうに微笑む。そんなスコールの笑みは、まるで母親のようにも見える。

 

『それと、エムは何処だ?』

 

「彼女なら、行き場所も告げずに出て行ったわ」

 

『……そうか』

 

 本当に今日のソルはどうしたのだろうか、エムが居ないと言うと露骨に残念そうに呟いた。スコールは必死に笑いを堪えている。少しでも吹きだそうものなら、ナイフが飛んで来るからだ。

 

 スコールからして見れば、そんな事は造作も無い。しかしソルは、冗談が全く通じないのだ。もしソルに殺してみろと言おうものなら、ソルは即断即決……何の迷いも無く、殺る。

 

 頭が固いのかどうかは分からないが、スコールがソルに抱く美点であって、悩みの種だ。とにかく変に争いの種を蒔くのも賢くないので、スコールは必死に取り繕う。

 

「暇なら夜景でも眺めたらどう?ここからの眺めは、綺麗なものよ」

 

『その綺麗な景色を壊そうとしているのは、何処のどいつだろうな』

 

「フフ……手厳しいわね。でも、嫌いじゃないわよ?ソルのそういう所」

 

『……単細胞の前では、絶対に言うなよ』

 

 ソルがそう言いながら踵を返すと、部屋に向かって歩いて来ているオータムが、大きなくしゃみをした。ソルが踵を返した先は、寝室でなくベランダの方だ。どうやら、スコールの言われた通りにするらしい。

 

 やはり言う事さえ聞いてくれれば可愛い物だと、スコールはかなりご機嫌なようだ。よほど気分が良いのか、室内用のワインセラーから高級そうなワインを取出し、栓を開けた。そのまま少量のワインをグラスに注ぎ、口へと運んだ。

 

 その優雅な佇まいと言ったら、スコールの気品を体現しているかのようだ。スコールは風でバサバサと揺れるソルのロングコートの音に耳を傾けながら、ワイングラスをクルリクルリと回す。

 

 

 




平穏と言ったな、あ れ は 嘘 だ。

……なんかこのネタは、前も使った気がするな。とにかく、そろそろ本当に穏やかじゃ無くなると思うので、今後のために意味深なシーンを増やしていくスタイル。

冗談とかで無く、次のキャノンボール・ファスト編でかな~りの伏線を回収する予定なので、後々の私の為なんですよ……。

こういうシーンを入れとかないと、後々の説明が豪い大変な事になってしまうので。と言いつつ……立てたフラグを回収しきるかは、謎ですが。

まぁプロットと言うか、フォローチャート式に纏めてありますので、大丈夫だと思います(フラグ)次回は、一夏の誕生会をお送りする予定です。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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