戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

4月25日から、ちょっとした私用のせいで、3日近くパソコンに触れない日々が続きました……。

こうやって二次創作を書いているせいか、どうにもタイピングをしないと落ち着かない体になってしまったらしいです。

カチカチ、ペチペチとキーボードを打つ感覚と、音が堪らない……。やっぱりパソコンって、良い物ですね!(中毒者並の感想)

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


死闘!再来の無人機(前編)ですが何か?

「……ったく、あの女……。何かとつけて盛り上げねぇと、気が済まんらしいな」

 

「なんか……ゴメンね……」

 

 全学年専用機持ち対抗タッグマッチトーナメント当日となり、ピットで控えている俺は、思わず不満を漏らした。先ほどの開会式の事だ……楯無先輩が優勝ペア予想応援・食事券争奪戦なる催し物を行うと宣言したのだ。

 

 早い話が、賭け事だ。かの名門であるIS学園の生徒会長が、生徒に賭け事を勧めると言うのは、どうなのだろうか。……今更の話か……そんな事より、簪は何も悪くないのだからフォローを入れなければ。

 

「何も簪が謝るこたぁねぇよ。まぁ……俺も口が過ぎたかもな、悪い」

 

「お姉ちゃん……楽しい事至上主義だし……。そう言うのは……早めに諦めよう?」

 

 俺は簪の言葉に、全面的に同意の意思を示した。と言うよりは、なんだか前もこんな事を考えていた気がする。つまりは、言うだけ、思うだけ無駄でしかないらしい。

 

 とは言え……俺と簪の溜息は止まらず、同時に息を漏らした。あぁ……イカンな、戦う前にこのモチベーションは非常によろしくない。ここはいっちょ、何とか気合を入れて……。

 

「お~い!加賀美君に簪ちゃん!」

 

「ああ、黛先輩」

 

「こんにちは……」

 

 忙しそうな様子で、黛先輩が現れた。先輩を見かけしだいに、簪は『姉が迷惑を……』みたいな感じで深々と頭を下げる。それに対して、黛先輩はケラケラと笑いながら、問題ないと答えた。

 

 簪よ……どちらかと言えば、黛先輩は楯無先輩サイドの人間であることを、忘れてはいないだろうか。便乗と言えば良いのか、悪乗りと言えば良いのか……個人的な話だが、楯無&黛先輩が揃うと、悪夢状態なのである。

 

「ってか、忙しそうですけど、どうかしたんすか」

 

「あ~うんうん、用事を忘れる所だったよ。はいコレ、オッズね」

 

 オッズって、もう集計が終わったのか?手渡された紙を覗いてみると、確かにそれはオッズ以外の何物でもない。一番人気は、楯無先輩と箒か……国家代表と第四世代相当のIS保持者のタッグ……妥当だな。

 

 二番人気が、三年&二年、次がラウラとシャルロット、次がセシリアと鈴……最後に俺と簪。……妥当だな、周りの生徒の大半は、俺が中堅レベル程度とは言えレベルアップしたのを知らないし、簪に至っては全てにおいて未知数だ。

 

 だが、今この紙を見せられたのは、俺にとってはプラスだ。なんでかって、逆境とか燃えないか?オッズ最下位って事は、俺らに期待してねぇ連中が大半って証拠だ。

 

 その不人気をひっくり返した時に、一番人気に賭けてた連中は、悔しがるわけよ。そう言う悔しがる顔がまた笑える……って、やっぱ俺……性格悪いな……。と、とにかく!吠え面かかせてやるってこった!

 

「っしゃあ!俄然ヤル気が出てきた!」

 

「お~……いいねぇ、熱い加賀美君も。そのままコメントどうぞ!」

 

「よ~し……行くぜ簪!立ちはだかる奴ぁ関係ねぇ……誰だろうとブッ潰す!」

 

「うん!」

 

 どちらかと言えば、新聞部の活動がメインでやって来たらしく、そのままコメントを求められた。なにかヤル気が出た拍子に、テンションがおかしくなった俺は、簪を煽るように声をかけた。

 

 すると意外や意外……簪もそういったノリらしく、腹から声を出した返事をした。どうやら黛先輩としては、満足らしく、興奮した様子で俺達を賞賛する。

 

「100点だね!続けて、ポーズ!」

 

「ポ、ポーズ?ええと、簪……ほら、夏祭りの時の……」

 

「う……うん……」

 

 急にカメラを向けられて、一瞬慌ててしまった。そう考えると、モデルとかは凄いもんだ……カメラを向けられたら、表情もポーズも完璧なのだから。

 

 まず写真を撮られる事に慣れていない俺が、導き出したポーズはと言うと……。腕を組みながら、簪と背中合わせになるアレだった。

 

 どうやら黛先輩には、好感触らしく、さらにテンションが増し増しだ。先輩はシャッターを切りながら、二人とも分かってる……なんて呟くが、やはりそう言った構図が理解できるのは、特撮好きな賜物なのだろうか?

 

「いや~、あまり表に顔を出してくれないけど……良い被写体だよ、二人とも!」

 

「はぁ……まぁ、気が向いたらって事で……な?」

 

「わ、私は……真と一緒なら、別に……」

 

 背中合わせの状態を解除し、正面から黛先輩を捉える。学生が持つには、少々不相応にも見える一眼レフを覗きなが、黛先輩はそう言った。

 

 別に取られるのは嫌ではないが、気が進まない方ではある。簪も同じ気持ちだろう……そう思ったので、目配せしながら同意を求めると、俺と一緒なら大丈夫だと言う。

 

 それを聞き言葉を詰まらせる俺に、黛先輩はここぞと言わんばかりに茶々を入れる。くそ……やはりこの人も、この感じの性質だよな。簪は赤くなってモジモジしてるし、援護は期待でき無さそうだ。

 

「いやはや、若いねぇ、青いねぇ……春だねぇ」

 

「今は秋っすよ……」

 

「面白くない返しだから、パスで」

 

「だぁ!マジで勘弁して下さ……づっ……!?」

 

 面白くないと言われ、頭に来た俺は、単に反論をしようとした。その時だ……最近は落ち着いていたはずなのに、ラウラや福音の際に起きたような頭痛が、俺を襲う。

 

 ズキズキと痛む頭を、片手で抑えながら、集中してISの声を聞き取ろうと励む。以前はそれで、頭痛は収まっていたのだが、どういう訳か大差は無く、頭痛は継続したままだ。

 

 少し呼吸を上気させながら、集中を続けた。声は……複数?だが……複数の声が、どれも同じことを言っているような……。……ダメだ、ノイズが走る感じがして、よく分からない。

 

「真……!?大丈夫……?」

 

「あぁ……何、問題ない」

 

「そうは見えないよ……。保健室で見てもらった方が良いって」

 

 まずいな……周囲に隠しきれない頭痛なせいか、簪と黛先輩を心配させているらしい。放っておけば治るはずなんだ……だが、今回は何か毛色が違う。

 

ゾクッ!

 

(今のは……!?)

 

 感じた……今のは、殺気だ!確か、ソルの時にも似たような経験がある。しかし、ソルと言う線は薄いだろう。奴に感じたのは、殺気よりも嫌悪感が強かった。

 

 背中に、軟体動物でも纏わりついている感覚……ソルの嫌悪感を例えるとすれば、こうだ。それに対し、さっきのは……そう、首元に刃を添えられている……そんな感じ。どちらにしたって、何か……悪い事が起きる!

 

『コロス』

 

「!? 二人とも、俺から離れ……」

 

ズドオオオオン!

 

 俺から離れないように、そう忠告しようとした矢先だ。突如すさまじい爆音と共に、学園全体が大きく揺れた。まるで大地震さながらなその揺れに、簪と黛先輩は体勢を崩す。

 

 万全な状態でない俺は、二人を気遣う余裕はないものの乱暴ではあるが、腕をつかむ事には何とか成功した。腕をつかんだおかげか、何とか自力で踏ん張れるらしく、フラフラながらも立っている。

 

「へ、平気か……?」

 

「うん……ありがとう……」

 

「ありがとう、加賀美君。でも……今の揺れは?」

 

 今の……と言うよりは、継続的に揺れが収まり、また揺れるを繰り返している。すると周りの電燈が、緊急事態を知らせる赤色に発光を始めた。

 

 矢継ぎ早に、教師がアナウンスで地下シェルターへの避難を促すが、アナウンスは教師の悲鳴と共に途絶える。変に不安を煽るようなアナウンスの後、大きな揺れがまた学園を襲った。

 

「ほ、本当に何が起きて……」

 

「……とにかく、黛先輩は……避難を……」

 

「俺らは……ISを展開、だな……変身!」

 

『-HENSHIN-』

 

 現在が有事である事くらいは、よほどのバカでもわかるはず。四の五の言っている暇は無く、ISを展開させるのが、専用機持ちとしては先決だ。

 

 俺がガタックに変身するのと同時に、簪も打鉄弐式を展開する。オロオロしている黛先輩に、再度避難を急ぐように促すと、気を付けてと激励の言葉を述べて去って行った。

 

 ……頭痛は、いつの間にか収まっているな。しかし、確かに聞いたあの声……殺すと、そう言った。いったい誰が、誰を……。……俺である事が、確率的には高い。とにかく、状況を把握しなくては……困ったときの、織斑サポートセンターだ。

 

「織斑センセー、情報提供オナシャス」

 

『貴様、後で覚えていろ。敵は無人機、数は五!そちらにも向かっているだろう……。とにかく死ぬな、以上だ』

 

「了解」

 

 かなり舐めた言い方をしたのは、わざとだ。まぁ……虚勢だな、焦る訳にはいかない。それにしても、五機……ご丁寧な事に、組まれているタッグの数と同数だ。

 

 ついでに言えば、織斑先生は『そちら』とも……つまりは、既に襲撃を受けている奴らも居ると言う事だろう。俺の知っている限りでは、そう簡単にやられる連中では無い。今は、いつ襲われても良いように備えなくては。

 

『青子、ISの反応は?』

 

『ええ、確かに近づいて来ています。接触の際には、ナビゲートいたしましょう』

 

「よしっ、簪……準備は?」

 

「いつでも……!」

 

 言われるまでも無く、簪は既に臨戦態勢の様で、夢現を構えた。この狭い場所だ……俺も近接を意識した方が良いのかもしれない。俺は、ガタックゼクターの顎を開き、ライダーフォームへとフォームチェンジした。

 

 ガタックゼクターの電子音が響き終わると、緊張感と静けさが、俺と簪を包んだ。いつ、どこから襲って来るかも分からない状況だ……本来なら、お喋りををしている場合ではないのだが。

 

「簪、大丈夫か?」

 

「大丈夫って……何が……?」

 

「いや、初の実戦がこんな形で……と言うよりは、この状況、怖くないか?」

 

 前回の無人機襲撃事件以来は、イベントの度に何か非常事態が発生している。正直言って、俺はなんだか、非常事態というものに慣れてしまった。

 

 しかし、簪にとっては慣れない状況だろう。代表候補生だからと言って、平気なはずがない。各国の候補生たちでさえ、焦りや不安な表情を浮かべるのを、俺は知っている。

 

「怖くなんかない……」

 

「…………」

 

「貴方が隣に居てくれるから……私は……」

 

「そうか、余計なお世話だったな」

 

 いつものボソボソとした口調ではあるが、簪の表情は力強いものであった。どうやら、本当に余計なお世話だったらしい。

 

 ならば俺も、万全に万全を期すとしよう。ガタックの両肩に接続してあるダブルカリバーを手に取ると、勢いよく振り下げながら、肩から切り離した。

 

 その際に発生した、シャキン!と空を切る音が耳に心地よい。通路に音が反響し終える頃には、俺も簪も完全に無人機を迎え撃つ準備は完了していた。そして……その瞬間はすぐに訪れる事となる。

 

『マスター!来ます!』

 

ギャギイイイイ!

 

「ッ!?」

 

 青子の警告と共に、俺の付近の壁が、切り裂かれた。そのままなだれ込むように、無人機が乱入してくるが……見た限り、以前よりパワーアップしているらしい。

 

 壁を切り裂いたものの正体は、これ見よがしに装着してある右腕の大型ブレードか……。無人機はそのままの勢いで、ブレードを俺に振り下げるが、横にステップを踏み華麗に回避した。

 

「そこ……!」

 

 俺が横にずれたのを見計らい、簪は隙だらけの無人機に夢現を思い切り突き立てようとする。だがやはり、以前の無人機とは違い、防御も意識しているらしい。

 

 浮遊していた球状の物体が、円の形に列をなしたかと思えば、それを起点にエネルギーシールドが展開された。防御したと言う事は、そのまま反撃に繋げる気は満々なのだろう。そうはさせまいと、俺は無人機の背後に転がり込み、ダブルカリバーで斬りかかる。

 

ガギン!

 

「何!?」

 

 無人機が人型をしているせいか、固定概念に取りつかれてしまっていたのかもしれない。あろう事か無人機は、あり得ない角度に腕を回し、ブレードでダブルカリバーを防いで見せた。

 

 人間でいうなれば、肩関節がおかしい事になっている。だが簪は離脱したし……目的は果たせた。俺もこのまま機械相手につばぜり合いをしている訳にも……。

 

『――――――――』

 

「うお……あっ!」

 

「真……!」

 

 どういう理由かは分からないが、無人機は右腕で俺を掴むと、また肩関節をぐるりと回転させ、俺を勢いよく地面へと叩きつけた。

 

 その衝撃の凄まじいったらなく、叩きつけられた俺は、一瞬バウンドしてしまうほどだ。同じく、地面に残ったクレーターも、その衝撃を物語っている。

 

 バウンドの衝撃を利用しつつ、簪の隣まで離脱する。しかし……いったい何でブレードでの攻撃では無かったのだろうか?と、考えていたら、無人機は左腕を俺達に向けた。

 

「簪……」

 

「うん……」

 

「逃げるぞ!」

 

「うん……!」

 

ドゴオ!

 

 シャープな無人機なつくりにしては、アンバランスな大きさの左腕から放たれたのは、超が付くほどの威力のビームであった。あんなのを、こんな狭い場所で撃たれたら逃げるほかない。

 

 俺と簪は一目散に背を向け、奥の方へと逃げ込んで行く。もちろん無人機はそれを追いかけ、背後から貫いてやろうとビームを打ち続ける。

 

「こっち、アリーナだよな!?」

 

「確か……ロックされてて袋小路……」

 

「クソッ!行くも地獄、戻るも地獄ってか……」

 

 確か、と言うのは前回の例について簪は言っているのだろう。その可能性は高い……各出入り口はすべてロック、アリーナのシールドは、最大レベル……どうする!?

 

 クロックアップを使えば、窮地を脱する手立てはある。だが、まだダメだ……その場しのぎにはなっても、俺が筋肉痛で足手まといになりかねない。

 

 本当に最後の最後、ここで使わなければ死ぬ……くらいのタイミングでなくてはならない。しかし、隔壁は既にハイパーセンサーでなくても視認できる。

 

「なんとか……無人機に扉を壊させられないかな……」

 

『フンっ、馬鹿ですか貴女は……。フルにチャージされた場合、この通路全体を吹き飛ばすくらい訳は無いのが、見てわかりませんか?』

 

「どうやら無理みたいだぜ……。そんときゃ、隔壁と同時に俺らもお陀仏だ」

 

 簪のアイデアに対し、青子が俺の脳内で毒づいた。何と言いますか……本気で簪と本音の事を嫌っているらしい。こんな絶体絶命な状況でもブレない辺りから、その胸中がうかがえる。

 

「なら……どうすれば……」

 

 それは俺もさっきから考えているが……特にいいアイデアは浮かばない。クソッ……やはりクロックアップ以外に手立てはないのか!?そう思いなが、クラップスイッチに手を添えかけた寸前の事だ。

 

プシュー!

 

「ひ、開いた……?」

 

「コレは……」

 

 同じだ……前回と!こうやって、俺が近づいたら極当たり前のように、ロックされた隔壁が開いたのだ。この分であれば、一瞬だけアリーナのシールドも消えてくれるかもしれない!

 

「簪、このまま進むぞ!」

 

「うん……!」

 

 臆している暇などは無く、誘いに乗るしか俺達が万全で戦える手は無い。俺と簪は更にスピードを上げ、アリーナの方へ向かって、突っ込んで行った。

**********

ドゴォン!

 

「「!?」」

 

 アリーナに侵入成功したと思ったら、向こう側のゲートが大爆発した。向こう側は……箒と楯無先輩がいたはず。まさかとは思うが、無人機の襲撃を受けて……。

 

「簪!」

 

「分かってる……」

 

 広い場所に出さえすれば、攻勢に出るくらいはできる。爆発の事も気になるが、とにかく目の前のコイツを何とかしなくてはならない。簪の名を呼ぶと、春雷にて射撃を開始した。

 

 俺も肩部にバルカンをプットオンし、援護射撃を浴びせる。だが異様なまでの機動力のせいか、簡単には当たってくれない。直撃は何発かある物の、大したダメージにはなっていないようだ。

 

『―――――――』

 

ドン!

 

「かはっ……!?」

 

「真……!」

 

 熱線を最小限の動きで回避したが、ノーモーションからの瞬時加速で接近を許し、腹部に思い切りブレードを叩きつけられた。

 

 何かがおかしい……今までそれなりに攻撃は貰ってきたが、これほどの衝撃が発生したためしはない。と言うよりは、絶対防御があるから、衝撃は俺に通らないハズ……。

 

『マスター……何らかの干渉を受け、絶対防御が発動していません』

 

『何だと!?それじゃあ……』

 

 ガタックは全身装甲だからまだいい……だが、俺以外の専用機持ちは、一撃貰ったらほぼアウトではないか!青子の放った一言に、俺は動揺を隠せないでいた。

 

「簪!絶対防御は作動してるか!?」

 

「え……?して……ない……!」

 

 無人機のブレードは、まだガタックの腹部に押さえつけられたままだが、構わず簪に確認をするように言った。どうやら性質の悪い冗談と言う事ではないらしい。

 

 簪の言葉を聞いた直後と言った所だろうか、無人機はスラスターをフルに稼働させ、地面に向かって真っすぐ突っ込んでゆく。もちろんブレードは、腹部に押さえつけられたままだ。

 

ズゥン!

 

「ぐうっ……!」

 

 本日二度目の叩きつけとなったが、絶対防御が作動していないせいか、先ほどとは比べ物にならない。それでもこれは、カウンターのチャンスだ。

 

 簪が上空から無人機の背を狙っているし、俺と無人機の距離もゼロに等しい。すぐさま俺は、バルカンをキャノンへと切り替えた。

 

「コイツでどうだよ!」

 

ドォン!

 

 見事にキャノンのエネルギー弾は、無人機の顔面を捉えた。流石にこの至近距離でのキャノンは効いたのか、それまで押さえつけていたブレードを離し、宙へと浮いた。だがそちらは、ギロチン台だぜ!

 

「入力完了……」

 

『彼女に回避命令を、もう一機が迫っています』

 

「!? 簪いいいい!」

 

「ッ……!?くっ……!」

 

 青子の警告通り、いまだに張れぬ爆煙から、無人機が飛び出してきた。とっさに大声で叫んだのが功を奏したのか、簪はスフィアキーボードによる入力を中止し、夢現で無人機のブレードを受けた。

 

 俺の方の無人機も、近接を仕掛けてきた。簪と俺を引き離すのが目的なのか、ダブルカリバーで受けてはいるが、ガリガリと地面を削りながら、無理矢理後退させられる。

 

 それにしても……もう一機無人機が居ると言う事は、やはり箒と楯無先輩の二人は……。いや、ダメだ……そんな事を考えていたって、仕方が無い。とにかく、倒さなければ、こちらが殺される。

 

『――――――――』

 

「くそっ!」

 

ドゴォ!

 

 右腕のブレードで俺の動きを制限したまま、左腕のビーム砲で俺を吹き飛ばそうとする。俺は、接触しているダブルカリバーを支点に、地面を思い切りけり上げ、なんとか無人機の背後へと飛び出た。

 

 どちらも威力が高いため、非常に厄介だな。逆を言えばどちらか一つでも封じる事が出来れば、かなり楽って事だ!俺はシザーアンカーを展開して、右腕の方へと射出し、アンカーを固定させる。

 

 俺は空中に躍り出ているため、そこから重力デバイスをマックスにしつつ、ワイヤーを掴み勢いよく下へと振り下げる。すると無人機は、躓くような形で、ブレードを地面へと突き刺した。

 

 重力マックスの勢いも相まってか、ブレードはかなり深く突き刺さり、抜けないらしい。ここまでは予定通り……後は、隙だらけとなった左腕を貰うだけだ!

 

「ライダーカッティン……」

 

『更識 楯無!?何を無謀な……!』

 

「!?」

 

 ライダーカッティングで、無人機の左腕を切断しようと試みたその時、青子の思わず飛び出たような言葉に耳を傾ける。ハイパーセンサーに映し出されていたのは、ボロボロのミステリアス・レディで簪をかばおうとしている楯無先輩の姿だった。

 

「クロックアップ!」

 

『―CLOCK UP―』

 

『マスター!?』

 

 その光景を見た俺は、何のためらいも無くクロックアップを使った。距離はかなり遠い……恐らく、俺も庇うことで精一杯になるだろう。

 

 シザーアンカーを切り離し、簪達の方へ向けて全力疾走した。ガタックは飛ぶよりも、自力で走った方が早かったりするのだ。とにかく間に合いさえすれば、なんだって良い。

 

『マスター……何故、何故なのですか!?いくら私が全身装甲とは言え、アレを喰らえばどうなるかは分からないのですよ?!』

 

『何故?愚問だな。これが、俺の決めた道だからだ』

 

 いわゆる自己満足……って所か?聞き用や見方によっては、俺を偽善者だと言う奴もいるだろう。俺もそうだった……他人をかばって、自分が良い奴になっているって……そう言う心理なんだって。

 

 だが、やらない偽善よりは、やる偽善だ!それこそ、他人が俺をなんて言おうがかまわない!笑いたいなら笑え、罵りたいなら罵れ、そんな物は俺の耳には届かない!

 

 とにかくなんだって良い、スマートでなくていいんだ。俺が傷つく事で、他人を守れる道があるとするならば、黙って俺はその道を選ぶ!

 

『…………。馬鹿です、貴方も……。ですが、お供します。それが、私の存在意義ですから』

 

『ハハ……そうか、いつもありがとうな……』

 

 俺を馬鹿と言いつつも、身を案じてくれている青子に、感謝の言葉を述べる。さて、クロックアップしていられるのも後数秒……ではあるが、何とか間に合ってくれたらしい。俺は、簪をかばおうとしている楯無を突き飛ばした。

 

『―CLOCK OVER―』

 

「キャッ!?う、嘘……真君!!」

 

「真……何で!?」

 

「気にすんな、女をかばうのとかそう言うのは……」

 

『――――――――』

 

「男の仕事だって決まってんだよ」

 

ザシュ!

 

「いやああああッ!!」

 

 簪の悲痛な叫び声がアリーナに響き、俺を中心とした空中には……紅が舞った……。




久々の前後編……美味い感じで次回に引けた気がするぞ!

無人機の再戦、描写をどうしようかと思いましたが、ウチでは他の候補生は出て来ない模様。二年&三年コンビの二人は、好きだったりしますけどね。

アニメだと存在自体を無かった事にされてましたが……と言いつつ、私の所もそうでしょうね……よほどの事が無い限りは、彼女たちは名前すら出て来ないと思われ。

さてさて、更識姉妹をかばった真はどうなったのか、二機の無人機を前に、クロックアップを既に使ってしまった真はどうなるのか!?次回へと続きます。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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