戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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だんだんと真の口の悪さが際立ってきました。

ですが、最初の真はこんなものなんです…ここから成長するんです。

しばらくは、真の言動に気分を害してしまうかもしれませんが、どうか寛大な心で見守ってあげてください。

それでは、今回もよろしくお願いします。


代表候補生襲来(英国)ですが何か?

「ほとんど全部わかりません」

 

 そんな言葉が一年一組にこだました。まるで教室は時が止まっているかのような状態となる。時を止めた張本人である織斑 一夏は、自分が言った事の重大さがいまいち理解できていないらしい。

 

 というのも、二時間目の授業に入ってから織斑は自己紹介の時に輪をかけて挙動不審だった。そうして手を挙げて先生に質問・・・かと思いきや「全部わからない」とのこと。

 

 今の授業は基礎中の基礎とも言っていい内容だ。それこそ、適当に勉強した俺ですら普通に付いていけるのだから、まだここは簡単な部類だろう。あ、ちなみにだが俺は普通に勉強できる方だからな。

 

「え…っと…全部ですか?」

 

 山田先生は織斑からこんな言葉が飛び出るのは想像していなかったのだろう。顔をひきつらせて、困ったような表情をしている。もしかすると、これ以上は簡単に説明できないのかもしれない。

 

「ほかに、分からない人は居ますか?」

 

 先生の問いかけには誰も答えない。無論だが、俺も理解できている。織斑は、周りの女子達にもだが俺が手を上げないことに一番驚いているようだった。どういう意味だコノヤロー。

 

「おい、真!今聞いとかなきゃ後悔するぞ!?」

 

「あのな…なにも俺は見栄を張ってる訳じゃねーの。この状況はお前だけが完全にアウェイなんだよ」

 

「や、やっぱりそうなのか…?」

 

 ある程度そういう自覚があるならまだマシな方だろうな。でも俺が分かってないってのは本気で思っていたらしい。…ぶっ飛ばされてぇのかなコイツ?

 

「織斑。入学前に渡した参考書には目を通したか?」

 

 今まで黙っていた織斑先生が織斑に…ってややこしいなオイ、質問を投げかける。参考書ってのは嫌がらせみたいな厚みのあるアレの事だろう。

 

 同じく俺も入学前に受け取り、参考書に目を通しておいたおかげで、こうして授業に付いていけているというものだ。もし織斑が目を通してないとすれば、それは完全に自業自得だ。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

「ブフーッ!」

 

「必読だと書いてあっただろうが、馬鹿者が」

 

 本日通算五度目となる出席簿の一撃が、織斑の頭を襲う。目を通すとか、そういう段階にも入っていなかったとは…本当に面白いなコイツ。ついに耐え切れず俺は思いっきり吹き出してしまった。

 

「再発行してやるから一週間で覚えろ」

 

「い、いや……あの厚さを一週間は…」

 

「やれと言っている」

 

「はい…」

 

 織斑に死刑宣告が告げられる。正直に言わせてもらうと、織斑の言うとおりアレを一週間では無理だ。だがまぁそれだけ基本的かつ重要な内容なんだろうな、覚えておいて正解だった。

 

「それで?貴様はいつまで笑っている」

 

スパァン!

 

「ス、スミマセ…クッ!フフフフ…」

 

 ダメだ…笑いが収まらない。織斑先生に叩かれて、かなりの痛みが頭に走っているのに、いまだに笑いが止まらない。あ、ヤベ涙出てきた。笑い過ぎか、痛みか、どっちの涙かわかんねぇなこれ。

**********

「なぁ…真」

 

「参考書の件なら他を当たれ」

 

「ま、まだ何も言ってないだろ」

 

 その割になんでしょうね、そのギクッ!みたいな表情は、分かりやすくて助かる。織斑は自分一人の力でどうにかできないと踏んでいるのか、食い下がってくる。

 

「別に手伝ってくれてもいいだろ?」

 

「理由は三つ。一つ、テメェに教えてやる義理がねぇ。二つ、テメェのケツくらい自分で拭け。三つ、面倒くさい」

 

「一つ目と二つ目はまだいいとして、三つ目は流石にひどくないか!?」

 

「もっと頼れる先生ってのがいるだろ?あの人たちは教えるのが仕事なんだ」

 

「そうだけどさ…」

 

 まぁ気持ちも分からんでもない。同じ境遇の男がいるならそっちを頼りたいよな。それこそ俺以外は誰と勉強しても女とマンツーマンになっちまうし。

 

「はぁ…わぁったよ。教えてやる」

 

「本当か!?」

 

「ただし、しっかり見返りはもらうぜ?そうだな…飯を奢れ、その条件で交渉成立だ」

 

「ああ、そのくらいなら全然かまわないよ!ありがとうな、真!」

 

 そう言って織斑は俺の両手を握り、ブンブンと大きく上下に振った。それを見ていた周りの女子達は「新作」がどうだの「真×一」がどうだの、断片的に肝心なところだけ聞こえやがる。

 

 このままではマズイ。危機感を覚えた俺は、織斑とのつながれた手をバッと引き込んで、キュンと持ってきたのち、ガッと力を込めて固めた。いわゆるアームロックの体勢だ。

 

「がああああ!なっ、何すんだ真!?」

 

「何って…アームロックだが?」

 

「そういう事を聞いてるんじゃなくってぇ!?痛たたたたたた!」

 

 なんかコイツ…だんだん親父に似てるように思えてきた。実の息子である俺よりはマジで似てるかもしれない。どこがって特にリアクションがだ。

 

俺がからかってる時も、技をかけてる時も決まって親父はちょうど今の織斑みたいに、技の痛みをこらえつつしっかりツッコミを入れてくるんだよな。

 

 それはさておき、周りの女子達の視線はさっきの腐った感じから、織斑を憐れむような視線へと変わっていた。よし…いっその事このままへし折って…。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「よろしくない。今コイツの腕をへし折るので忙しい」

 

「へし折る!?よろしいです!よろしいですから助けてくれ!」

 

 織斑は俺達に話しかけてきた女子に助けを乞う。こうなってしまったら仕方が無いか…俺は心の中でチッと舌打ちをしてから織斑を離す。

 

「お~………痛かった…」

 

「そりゃ痛くしてたからな」

 

「もうツッコミを入れる気力もない…」

 

「なんだ、つまんねぇ」

 

 手首をぶんぶん振りながら、そうつぶやく織斑。何かを諦めたようなテンションになってるな。俺の性格に関しての事なんだろうけど。

 

「ちょっと!わたくしを無視するつもりですか!」

 

「あっ、忘れてた」

 

 ヒステリックな声が聞こえたので振り向くと、そこには俺達に声をかけてきた女子がいた。きれいな金髪を縦ロールにして、どことなく上品さを感じる。

 

 だが、俺には一つの予感があった。なんというかこの女子、何の気なしに偉そうにしている。そういった態度の女子は「その手合い」が多いが、この女子はどうだ。

 

「忘れてた…?せっかくこのわたくしが話しかけているというのに、なんですの態度は?」

 

 ハイ、確定。間違いなくこの女は女尊男卑主義者だ。態度に関しちゃそのセリフ、バットでそのまま打ち返してやりたいところだが、正直こういう女は相手にしないのが得策だ。

 

「(織斑。後は任せた)」

 

「(逃げるなよ…俺だってこういう子は苦手だけど、仕方ないだろ?IS学園なんだから)」

 

 織斑に押し付けて、すたこらサッサしようと思ったが、どうやらそうもいかないらしい。仕方が無いか…仕方が無いなら、そうなんだろうな。だが、絶対にペコペコ頭は下げねぇぞ。

 

「聞いてます?お返事は?」

 

「あ、ああ…聞いてるけど。どんな用件だ?」

 

「ですから、もう少し態度というものをわきまえるべきでは?」

 

「アンタの理想に俺らが合わせてやる筋がどこにあるよ?それとも何か?「あなた様のお声はしっかりと耳に届いております」とか言わせたいの?だとすりゃ最悪だな、アンタ」

 

 俺の言葉に織斑はギョッとしたような表情を見せる。たぶん「誰がそこまで言えと!?」とか思ってるんだろうな。目の前の金色ドリルは俺をものすごい剣幕で睨みつける。

 

「…フンッ、野蛮ですわね。あなたはもう口を開かなくて結構です」

 

「ハッ!話しかけてきたのはそっちだろ?会話は成立さねなきゃなんねぇからな、俺は喋るのをやめないぜ」

 

「あぁ…落ち着けって、真。えっと、君は本当に何の用事なんだ?というか、いい加減に名前を教えてくれると助かるんだけど…」

 

「知らない!?このセシリア・オルコットを?イギリス代表候補性にして入試主席のわたくしを知らない!?」

 

 なんでこの女。俺らが知ってる前提で話をしてるんだ?世界人口70億人もいりゃ知らない奴いてもおかしくないだろ。それとも本気でみんながみんな自分の事を知ってると思ってるのか?だとすれば随分とハッピーな脳みそだ。

 

「なぁ、質問いいか?」

 

「下々の者の質問に答えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って、何?」

 

 途端に聞き耳を立てていた女子達がガタタッと音を立ててズッコケた。なんか妙なところで一体感があるなこのクラス。

 

 それよりもコイツ、余計に話をややこしい方向にもっていきやがって。見ろよ、オルコットの奴も変な顔つきになってるぞ。

 

「あなた!本気でおっしゃってますの!?」

 

「ああ、知らん。真は知ってるか?」

 

「………簡単に言えば、スポーツの強化指定選手みたいなもんだ」

 

「なるほど、それでグレードが上がればオリンピック選手か」

 

 織斑は納得がいったように手をポンッと叩く。アホか、代表候補生くらいだったら本気でIS関係ない人間でも知ってるぞ。もう既にコイツに勉強を教えるのが嫌になってきた。

 

「からかわれていると思いましたが…本気でしたのね」

 

「言っとくが、こいつと俺を一緒にはするなよ?」

 

 オルコットは俺の言葉にフンと鼻を鳴らしてやるだけで、何も語ろうとせずに織斑のみを視界にとらえた。おう?マジで無視かコンチクショウ。

 

「ふん…まぁ良いでしょう。わたくしは優しいですから?あなた方に提案があってわざわざ話しかけてあげたのです」

 

「提案?」

 

 言葉の端々を不必要に強調しながらオルコットは言葉をつづけた。そっちがその気なら俺もと言わんばかりに無視だ。

 

「ISで分からないことがあれば、泣いて頼まれれば教えてさしあげないこともありませんわよ。なにせ、わたくし、入試で唯一教官を倒したエリートですから」

 

「入試ってあれか?ISを動かすやつ」

 

「それ以外に試験などあり得ませんわ」

 

「俺も倒したぞ、教官」

 

 なんでさっきからコイツは地雷原をダッシュで駆け抜けていくのだろう?織斑の言葉にオルコットはみるみる表情を変える。

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

 

「女子ではってオチじゃないのか?」

 

 あぁ…誰でもいい。俺の隣にいる超高校級の馬鹿に「沈黙は金」とか「言わぬが花」って言葉を教えてやってくれ、さもなきゃ俺に飛び火が…。

 

「あっ、あなたは?あなたはどうなんです!?」

 

「…………………」

 

「ちょっと!聞いてますの!?」

 

「エ~デモ~、クチヲヒラクナッテイワレマシタシ~」

 

「さっきは喋るのをやめないと言ったでしょう!?馬鹿にして!」

 

 人のこと馬鹿にした態度の癖によく言うよ、他人のふり見てわが身を直せってな。さっき口を開くなっていわれなきゃ俺は真面目に答えていただろう。

 

「えっと、落ち着けって。な?」

 

「これが落ち着いていられ……………」

 

キーンコーンカーンコーン

 

 ここで休み時間終了のチャイムがオルコットの言葉を遮る。チャイムを忌々しそうにオルコットは聞くと、俺達に向かってビシッ!と人差し指を突きつける。

 

「またあとで来ますわ!逃げない事ね!よくって!?」

 

 それだけ言うと、オルコットは特に返事も聞かずに自分の席へと戻っていった。はぁ…隣のお馬鹿さんのせいで余計に目を付けられてしまった。とにかく俺の言いたいことは一つ。

 

「ケッ!二度と来んな!」

 

「ま、まぁまぁ…」

 

 イラついている俺を必死になだめようとする織斑。だが言っとくぞ、俺がイライラしてるのは大半お前のせいだ。そういう意味も込めて織斑にはチョップをくらわせておく、本人は「何で?」って顔をしてた。

**********

「…そうだ。再来週のクラス対抗戦に出る代表者を決めなくては」

 

 三時間目の授業に入ろうとした織斑先生が、思い出したようにそう言った。なんでもクラス代表ってのは普通の学校の委員長のようなもので、対抗戦のほかにも委員会の出席等が義務となってるらしい。

 

 面倒くさそうなにおいがプンプンするぜ。よって、パスだ、そういうのはやりたい物好きだけがやっときゃいいだろ。が、そう一筋縄ではいかなかった。

 

「はい。織斑君がいいとおもいます」

 

「あっ、私は加賀美君で」

 

「候補者は織斑と加賀美…。他にいないか?自薦他薦は問わないぞ」

 

 こんなことになるだろうとは思っていたけど、やっぱり実際なると腹が立つな。たぶん飴玉が口に入ってたら一瞬で俺の歯によって砕かれてるぞ。

 

 俺はそのくらいの勢いで歯を食いしばってイラつきを押さえていた。そうでもしないと、面白半分で俺を推薦しやがった女子達をどうにかしてしまいそうだったからだ。

 

「お、俺!?」

 

「織斑。邪魔だ、座れ。さて、他にいないなら織斑と加賀美の決選投票になるぞ」

 

「ちょ、ちょっと待って!俺はそんなのやらない…………」

 

「織斑」

 

「ま、真………?」

 

 ようやく自分がどういう状況か理解できたらしい織斑は、立ち上がり織斑先生に反論しようとする。俺はそれを織斑を呼ぶことで制した。だってそうでもしないとさ、もう本気でイライラがやばいんだもん。

 

「ギャーギャー喚くな、マジで。これ以上…俺をイライラさせる言動をするな。座れ、黙れ、静かにしてろ」

 

「ッツ!?……………わかっ…た」

 

 俺が殺気と言うものを放っているかどうかは分からないが、どうやら織斑はそれに近いものを俺から感じたらしい。目に見えて顔を青くしながら大人しくなった。

 

「…不服か、加賀美」

 

「不服と思わない方がどうかしてるでしょうね。が、アンタの言葉には逆らわないって言葉を理解はしてる」

 

「………」

 

「けどな、納得はしてないってことを覚えてもらっとくとこっちとすれば助かるね」

 

 俺は織斑の時と同様に、先生に対してもイライラモードMAXで返答する。それに対して先生は怯むどころかフッと楽しそうな顔まで見せる。

 

「良いだろう、覚えておいてやる。ただし、どんな時でも敬語は外すな、今回は見逃してやろう」

 

 なんか本当に随分と楽しそうな表情だ。もしかして今ので気に入られたとか?だとすれば余計なこと言わなきゃよかったな~…。とりあえず俺は返事だけはしておいた。

 

「さて、話を本題に戻すか。織斑と加賀美、どちらを代表にするか多数決を………」

 

「ちょっ、ちょっと待って下さい!そのような選出は認められません」

 

 いよいよ俺か織斑の二択、という直前でオルコットが焦った様子で声をあげる。あぁ、俺が口を挟んで話が脱線したから出るタイミングを見失っていたのか。

 

 オルコットは、それから先は矢継ぎ早に言葉を発する。織斑先生とのやり取りでだいぶ頭が覚めてきたので、内容の大半は聞き流すことに成功した。

 

 どうやら、珍しいからと言う理由で男が代表になるのはNG。代表になるべきは自分がふさわしい的なことを言ってるらしい。

 

 自薦他薦は問わないって、織斑先生言ってたんだけどね。そんなに代表やりたいなら自分がやるって言ってくれ、そうすればみんなハッピーだ。

 

 どうやら、オルコットの話す内容もだんだんと脱線しているらしい。なんか日本にいるのも苦痛とか言い出す始末だ。このクラスの大半は日本人なんだが?よくこんな状態でそういうこと言えるな。

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理何年連覇だよ」

 

 日本の事を引き合いに出されて頭に来たのか、織斑は口を開いてそんな事を言う。だが織斑、さっき言わなかっただろうか、俺をイライラさせる言動を取るなと。

 

「あっ、あなた!わたくしの祖国を侮辱する気ですか!?」

 

 先に日本侮辱したのはそっちだけどな、とは口が滑っても言えない。はぁ…面倒なことになった。オルコットの奴は目に見えて怒っている。それはもう顔を真っ赤にするほどだ。

 

「決闘ですわ!」

 

「おう、いいぜ。四の五の言うよりはわかりやすい」

 

「おい、ちょっと待て馬鹿ども。何勝手に盛り上がってんの?なんでお前らの程度の低いケンカに俺もつき合わされなきゃなんないの?」

 

「あら?怖いんですのね」

 

 

「うわっ、ウザッ!何その返し、ウッザ!…ったく、分かった。やりますよ…」

 

 半ば諦め加減で肩をすくめると、オルコットは満足したような表情を見せる。ISだったら絶対に負けないって思ってるんだろうな、この余裕な感じ。クソが、絶対に足元掬ってやる。

 

「で?ハンデはどうする?」

 

「あら、さっそくお願いですか?」

 

「いや、俺がハンデをどのくらいつければいいのかなーと」

 

 織斑の言葉を聞き、教室は笑いに包まれる。といっても、気持ちのいい笑いではなく、どちらかと言うと嘲笑に近い部類のものだ。

 

「織斑君、それ本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

 そう、これが現代における「男の立場」というものだ。女は自分たちがISに乗れるから偉いと思っているし、そういう風潮が当然となっているのはISが登場してから世の常だ。

 

 くだらねぇ、と言わんばかりに欠伸をしていると、ふと織斑が俺を見ているようだった。なんか睨みつけるみたいな感じ?俺、何かしたっけ。

 

「真…さっきからなんだよ?」

 

「はぁ?どーいう意味だよ、分かるように言え」

 

「悔しくないのかよ!お前も男だろ!?」

 

「いや、別に悔しくねーけど?つか、お前が笑われるようなこと言ったのは確かだし」

 

「何…!?」

 

 こう返すと織斑は今にも殴りかかってきそうな感じになる。なんで俺がこんな奴のためにフォロー入れなきゃなんないんだろ?

 

「勘違いするなよ、女自体にケンカ売るのは笑うとこじゃねぇ。代表候補生にハンデってのが考えられねぇんだよ。お前、代表候補生がいったい何時間IS動かしてるか知ってる?」

 

「……いや」

 

「あぁ、そう…。なら、あとで教えてやるよ。それと、笑われたことは流しとけ、どうせお前笑ってる奴らほど大したことねぇよ」

 

 俺の言葉にさっき織斑を笑っていた数人から、矢の突き刺さるかのような視線を感じる。「どういう意味だコラ?」とでも言いてぇんだろうけど。

 

「だってそうだろ?オルコットは、自分以外で教官に勝った奴はいないと言った。だったらテメェら全員負けてんだよな?善戦しただとか詳しい試合結果は知らねぇ、けど負けは負けだ。だったら現時点で俺達とテメェらにそんな実力差はねぇ、そうだろ?聞くが、自信を持って確実に俺達に勝てるって奴、手ぇ上げろ。あ、オルコット以外な」

 

 すると手を挙げる者は誰一人いなかった。それどころか、バツが悪そうに俺から視線を外す奴が多数だ。なんだ、反論は無しかよ、つまんねぇ。

 

「ほれ、お望み通り言い返したぞ。これでいいんだろ、織斑?」

 

「あ、あぁ…うん」

 

「で、ハンデはどうするんだ」

 

「あ、えっと。ハンデは良い」

 

 俺に話を振ったくせに、織斑はキョトンとしたままだった。お前のせいでこのクラスの大半の女子にケンカ売ることになったってのに、この野郎。

 

「話はまとまったか?それでは…」

 

「あ、ちょっとタイム、織斑先生」

 

「…なんだ?」

 

「オルコットに、一つ聞きたいことが」

 

「わたくしに…?良いでしょう許可しますわ」

 

 俺は織斑先生に許可をもらおうとしたのに…。本当にコイツ俺の事なめてるよね?また何かあったら怒ってもいいよね?うん、そうしよう。それはさておき、聞きたい事をとっとと聞いてしまおう。

 

「オルコット。ノブレス・オブリージュって知ってるか?」

 

「当然です。わたくしを誰と心得ているのですか?」

 

「そうか、だったら今のアンタに「それ」が出来てるのか、もういっぺんよく考えてみなよ。俺の知ってるノブリス・オブリージュは、もっと高貴で気高いもんだった」

 

「……………」

 

 俺の言葉にオルコットは、少し顔をしかめるだけで、特に何も言ってこなかった。後は織斑先生に「もういいですよ」と言う視線をくれてやる。さもないと頭の上に?マークを浮かべてる奴らが救われない。

 

「それでは、勝負は一週間後の放課後、第三アリーナで行う。織斑、加賀美、オルコットは準備をしておくように」

 

 必要なことを伝えると、織斑先生は教科書を開き、とっとと授業を始めてしまう。まるで何事もなかったかのような様子だ。このスルースキルは、俺も見習わなくちゃだな。

 

 それにしても…なし崩しとは言え、人生で初のISでの試合の相手が代表候補生になるとは夢にも思わなかった。期間は一週間…か。流石にその間なにもしないわけにはいかないだろうし。

 

 とりあえず情報収集だな、あとで爺ちゃんに電話してみよう。しかし、初戦の相手が代表候補生だと聞いたら、爺ちゃんでもびっくりするだろうか。

 

 …無いな、あの人の驚く姿とか、たぶん一生かかってもお目にかかれないだろう。…っと今は授業に集中しなくては、織斑先生が教鞭を振ってるって事は重要な内容に違いない。

 

 俺は急ぎ、目の前に置かれているノートを開き、ペンを手に取る。織斑先生の授業スピードについていくのは必死だった。そのため、ノートに書かれていく文字は殴り書きそのもので、後で自分でも読めるかどうか心配なほどであった。

 

 

 




真の言ってるノブレス・オブリージュは、もちろん「神に代わって剣を振るう男」の事です。

まぁ彼は後半から暴走・迷走しますが、そこはご愛嬌で。

 ちなみに真ですが、試験は特に受けてないです。理由としては単純にIS学園側の時間の無さと人手の足りなさのせいです。

 真の事はどうでもいいや、今回のほほんさんが出せませんでした…。恐らく次回は出てきます。と言うか意地でも出します!

それでは皆さん、またお会いしましょう!

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