戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

…………話す事が……ないッッッ!

最近どうにも前書きで話す事が思いつきません……。前書きはその話の内容を話すところだろうって?そんな事は分かってますとも……。

でもね、私は話し出したら止まらない性質なので……前書きでその話の事に大きく触れるのは極力避けているわけです。そうでもしないとセルフネタバレと言う斬新な事をしてしまいそうで……。

私は学生時代「マシンガントークの鬼」と恐れられ……って、もう良いや……はい。私の話は無視して、とっとと本編に行っちゃいましょう。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


踏み出す君に力添え(鼓舞激励)ですが何か?

「真さん……真さん……」

 

「真、起きろ。授業はとっくに終わっているぞ?」

 

「ん……?」

 

 優しく肩を揺さぶられたかと思ったら、篠ノ之とオルコットが不思議そうな顔で俺を見ていた。どうやら転寝していたらしい。眠たそうに眼を擦る俺を見て、オルコットは言う。

 

「お疲れの様ですが……大丈夫ですか?」

 

「あぁ、大丈夫……。昨日ちっとばっかし根を詰め過ぎただけだ」

 

「体調管理を怠るとは、らしく無いな……」

 

「いや……白式のあの盾……雪羅だっけ?あれをどうするかを考えてたらどうもな……」

 

 ガタックの遠距離武装はミサイルを除けば、全てがエネルギーを用いた兵装だ。せっかくの白式相手なのに遠距離攻撃を無効化されるのは、なかなかキツイ……。

 

「真さん、そのお気持ちは良く分かりますわ!」

 

「ブルティアーズも、エネルギー兵装がメインだもんな」

 

「ガタックは完全に遠距離しかできないという訳でもなさそうだが……ブルーティアーズは……うん……」

 

 目を輝かせて「仲間を見つけた!」みたいな様子のオルコットを見てか、篠ノ之は何か言葉を詰まらせた。そんな篠ノ之にも気づかないほど、オルコットは嬉しそうだ。

 

「真さんは、どういった結論に辿り着きまして?」

 

「そうだな、逆にあの盾を使わせてやる……って所か。なんか燃費悪いみたいだし」

 

「しかし、それではガタックもエネルギーを消費するのでは……」

 

「バルカンはガタックのエネルギーに直結だが、ガトリングとキャノンは個別でエネルギーが積まれてる」

 

 俺がそう返すと、篠ノ之は「理にかなっているな」と感心している。対してオルコットは、ガタックにはまだ対処する手があると知り、少し落ち込んでしまう。

 

 プライドが高いオルコットだ……一夏に負けたままとあっては、許せない部分もあるのだろう。俺と篠ノ之は顔を合わすと、話題を変えようとアイコンタクトを取った。

 

「と、ところで珍しいな?真が転寝しているのだったら、本音が飛んできそうなものだが」

 

「あっちもあっちで……どうやら大変っぽいからな」

 

 チョイチョイと本音のいる方を指さすと、相川達とああでも無い、こうでもないと話し合いをしている。恐らく状況が飲み込めるのは俺くらいのものだ。

 

「……?彼女たちは、どうかなさったのでしょうか?」

 

「いずれわかるさ。いずれな」

 

 打鉄弐式が完成しさえすれば、本音たちも忙しくなる事は無かろう。手伝いたいのもやまやまだが、俺も俺で手一杯なところがある……。

 

「何やら皆、精進しているな……」

 

「そうですわね……」

 

「真、済まないが……勉強を見てくれないだろうか」

 

「俺か?候補生に頼めよ」

 

「いや、候補生はかえって参考にならない」

 

 キッパリとそう言い切る篠ノ之……。言いたい事は分かるぜ、話が難しすぎて逆に参考にならんパターンのやつや。篠ノ之は比較的に一般人寄りだからな……俺辺りの教え方がしっくり来るんだろう。

 

「……分かった。今日は放課後に用事があるから、飯食った後の時間なら構わない」

 

「そうか、ありがとう。場所は、教室で良いだろうか?」

 

「俺は何処でも」

 

「これは、わたくしも負けていられませんわね。白式対策を他の方とも話し合ってみましょう」

 

 そう言いながらオルコットはどこか楽しそうな様子で去って行った。篠ノ之も再度俺に礼を言うと、オルコットを追いかけるようにして行ってしまう。

 

 ……なんかアイツら、俺に対して遠慮が無くなってるな。いや、なにも図々しいとか言っているわけでは無いが、いい意味で……そう、遠慮が無くなったとでも言えば良いのか?

 

 ちょっと前までは、どこか俺に話しかけるのも少し躊躇っていた。それこそ俺を起こす事なんて、わざわざしなかっただろう。何度も言うが、全面的に俺が悪いのは理解してるからな?

 

 うん……なかなか悪くないものだ。切磋琢磨って奴……お互いに研鑽を積むという事は、なにか前に進めているような感覚を覚える。

 

「よっ、真。なんか楽しそうだな、良い事でもあったのか?」

 

「あぁ……?ハッ、なんでもねぇよ」

 

「そうか?珍しく笑ってるなと思ってさ」

 

 屈託のない笑顔でやって来た一夏に、ニヤリと笑みを浮かべてそう言った。すると一夏は、ハハハと笑いながら返す。……こいつは、テメーのおかげで俺がここまで変わった事なんざ、気付いちゃいねぇんだろうな。

 

「ただ、一夏をどう料理してやろうか考えてた所だ」

 

「真……悪い冗談は止せって」

 

「お?やっと俺が冗談で言ってるかどうかの判断が付くようになったか」

 

 俺がそう言うと「やっぱりか」なんてぼやきながら、一夏は俺の肩を少し押した。そんな一夏にニヤッと口元を歪ませて見せると、一夏も同じような表情を見せる。そして二人してクスクスと笑う。

 

「進化した白式と戦うのが楽しみ……ってのは本当だけどよ」

 

「ああ、真の怪我が治ったら一勝負と行こうぜ!」

 

 右手以外は調子いいんだけどな、どちらかと言えば問題はガタックゼクターの方だ。一夏には生返事で返したが、やはりいつ直るのかが気がかりではある。

 

 せっかくヤル気が出ても、ガタックなしではどうにもならん。しかしあのカブトめ……おもっくそゼクター本体を狙わなくても……まぁ殺しにかかって来ているのだから当然か……。

 

「一夏……」

 

「どうした……?急にシリアスになって」

 

「そろそろ予鈴が鳴るぞ、ちなみに次は……」

 

「千冬姉……!それはシリアスにもなるな!」

 

 俺が時間が迫っていると伝えると、一夏は慌てて席に着き次の授業の準備を始めた。くはぁ……織斑先生の授業だけは居眠りしねぇようにしないと、さもなくばそのまま永眠してしまう。

 

 眠気を覚ますために、パン!と一発頬を叩いた。気持ちのいい音の後に、ジンジンとした痛みが両頬を襲うが、それに比例するかのようにみるみる眠気は覚める。よしっ、集中集中……!

**********

「女狐~放課後だぞ~」

 

 昨日取り付けた約束通りに、女狐を迎えに生徒会室を訪れる。しかし、見渡してみると虚先輩しかいない。あの女……逃げたか?俺が虚先輩に視線を向けると、口を開いた。

 

「会長なら、デスクの裏に隠れていますよ」

 

「はぁ?……おぅ、何やってんだよ」

 

 生徒会長の仕事用であろうデスクを上から覗き込む、するとその中にスッポリ収まるように女狐が体操座りをしている。俺の問いかけには答えず、そっぽを向くばかり……。

 

「ほら、簪と話してみるんだろ?行くぞ」

 

「行かないもん……」

 

「「もん」じゃねぇって、昨日の決意はいったいなんだったんだ」

 

「……絶対また嫌われるだけだもん」

 

「それはアンタ次第だ。ここに居たら現状維持にしかならんだろ」

 

「…………」

 

 プイッと俺から顔を背ける女狐に、俺はどうした物かと頭を悩ませる。力づくで連れて行っても女狐のためにならんし、説得ははなっから聞く耳を持ってないみたいだし……。

 

「虚先輩……これどうにかなりませんかね」

 

「どうでしょう?会長は簪お嬢様の事となると、急にヘタレますので」

 

 そうなんだよね、不思議でならんよ。普段の堂々としてるというか、人をからかっている態度は何処から来ているのだろうか。虚偽の自分か?いや……アレが女狐の本質なのは間違いないと思うんだけど……。

 

 とにかく、このままでは埒が明かない。しっかりと本腰を入れて説得をして、それでも女狐が「行かない」と言うのであればそれまでだ。俺はデスクの裏側に回り込んで、女狐の前でしゃがみ込んむ。

 

「なあ……ほんの少しで良いんだよ、勇気をふり絞ってみねぇか?」

 

「…………」

 

「もしあんた一人分で足りないってんなら、ほら……そ、そのための俺だろ。アンタに、俺の勇気を貸してやる」

 

「……もしかして、口説いてる?」

 

「ちがわい!アンタ口説いてる暇があったら、もっと他の事に時間使うわアホゥ!」

 

 自分でも言ってて恥ずかしいなと思って、少し言うのを躊躇っていたら案の定ツッコまれた。ああ……もう、ハッズイ!耳まで赤くなってるのが自分でもわかる。

 

「フフッ……ねぇ、加賀美君」

 

「んだよ……?」

 

「貸して頂戴、貴方の勇気」

 

「…………ホラよ」

 

 女狐はそう言いながら、俺に向かって手を差し伸べてきた。俺はその手をしっかりと掴むと、立ち上がりながら女狐を引き挙げた。女狐は寮の足でしっかりと立つと、俺に向かって微笑む。

 

「……ありがとう」

 

「礼はいらん、そんなのが欲しくてやってるわけじゃねぇからな」

 

「もぅ、素直じゃないわね」

 

「なんか言ったか?」

 

 黙って女狐は「空耳」と書かれた扇子を開くが、ぶっちゃけ言わせれば聞こえてるからな。もはや俺に対しての「素直じゃない」「ツンデレ」だのは拒否するだけ無駄なのだろうか?

 

 まぁ良いか……さて、そしたら少し人払いをしておかないとな。俺は新調したばかりの携帯を取出し、本音に連絡を入れる。最近では整備室に集まるのが恒例だ……本音にやんわりと簪のみを残す事を伝えると、女狐が付くころには完了させる……との事。

 

「よしっ、舞台は整った。後は、アンタが上がるだけだぜ」

 

「うん……。それじゃ虚ちゃん、少し出かけて来るわね」

 

「はいお嬢様。行ってらっしゃいませ」

 

 虚先輩の深々としたお辞儀に、女狐は力強く頷くと歩き出した。すると虚先輩は俺の事をじっと見ている。それは……よろしくと言う意味が込められているのだろう。

 

 俺も女狐と同じく言葉は発さずに首だけ頷かせると、女狐の背中を追いかけた。一直線に整備室へと向かうその背には、迷いは見当たらない。俺はただ黙って女狐の背を見守り続ける。

 

 やがて辿り着くは整備室前……さっきまでズンズン進んでいた女狐だが、どうしても扉の前から進めない。今の女狐の頭の中は、多くの不安がよぎっているはずだ。……勇気、貸すって言ったしな……俺は静かに口を開いた。

 

「……女狐。一歩進めないんだったら、半歩で良い……半歩分俺が背中をど突いてやる。半歩もムリなら、そのまた半歩……以下繰り返しだ。アンタが望むんだったら、俺はいつでも後ろに控えてる。どうだ?何歩分の手を貸せば良い?」

 

「フフ……ありがと。その言葉で、しっかり一歩踏み出せそうよ」

 

 多少の無理はしているようだが、女狐は俺に向かってウィンクを見せた。そして扉の前に向き直ると、両の足でしっかり……整備室へ進んで行った。

**********

「あ……おかえり、本音。探し物は見つかった……?」

 

 先ほど退出していった本音たちは、探し物という適当な理由で整備室を簪一人にしておいた。簪としては扉が開いた音がするとなると、当然ながら本音たちが帰って来たものだと思う。

 

 そう思っているがゆえに、簪はディスプレイを弄っていて視認をしようとはしない。しかし、そこに立っているのは自身がコンプレックスを抱く姉以外の何物でもない。

 

 一方姉の方はと言うと、盛大にテンパっている。そもそもの話で、第一声としてどう声をかけて良いのかすら思い浮かばない。だが何も言わなければ、不振がられて顔を向けられるのも時間の問題だ。楯無は、乾いた口を開き言葉を紡ぐ。

 

「か、簪ちゃん……」

 

「…………え……?」

 

 簪の耳に届いた声……それは紛れも無く姉の声。驚きのあまりに簪は、手を滑らせディスプレイを床に落としてしまう。そして、もの凄い勢いで楯無を正面から捉える。

 

「お……姉ちゃん……」

 

「その……ね?はかどってる……?」

 

 楯無は気まずさから思わず出た「はかどっているか」と言う問いをしたのを一瞬で悔いる。何のために簪が今までやって来た?それは姉の成し遂げたISの作成を真似たものだ、楯無本人が言うのは嫌味でしかない。

 

 不意に出た失言のせいで、楯無の頭は真っ白になっている。代わりに簪は、いくらか頭も冴えてきたようだ。何も言えない楯無に今度は簪の方から切り出す。

 

「何しに来たの……?」

 

「わ、私は……その、簪ちゃんと話が……」

 

「私は、貴女に話なんてない……」

 

「ッ!?」

 

「……って、昔の私なら……そう言ってたと思う」

 

 あまりにもスラッと出てきた簪の突き放したような言葉に、楯無は酷くたじろいだ。しかし簪の口から続けられた言葉が聞こえると、何とか逃げ出す事だけは止められた。

 

「だけど……聞く耳を持たない事には、始まらないから」

 

「……ありがとう。それじゃ……」

 

 楯無は息を大きく吐いたり吸ったりを繰り返し行った。それだけ緊張がピークに達している事の表れだろう。楯無は真に言われた通り、ありのままの自分で、自分の思っていることを簪に伝える。

 

「簪ちゃん……今まで、ゴメンなさい!」

 

「…………」

 

「私は、あなたの立派なお姉ちゃんでいないとって……それが簪ちゃんの重荷になってるのなんて全然気づけなくて!私の勝手な都合ばっかり押し付けてた……。私は結局……簪ちゃんの姉でいる事に……」

 

「ストップ……」

 

「へ!?ちょ、ちょっと……」

 

 頭を下げて謝罪をしていた楯無だったが、言葉を遮るかのように簪はストップを宣言した。顔を上げてみると簪は、右の掌を広げ楯無の方へ突き出している。

 

「……そこでお姉ちゃんが謝るのは……違う。もうそれは、分かってるつもりだから……。お姉ちゃんが、私の事を想ってくれてるって事……。じゃないと、そんなに怯えたりはしないよね……。私の事を想ってくれてるから、私の事を怖がってる……」

 

「…………」

 

「お姉ちゃん……」

 

「何かしら……?」

 

「これから言う事は、全部本心だから……」

 

 そう言うと簪は、一度目を閉じた。次に目が開かれた時にはキッとした表情で、まるで楯無を睨んでいるかにも見える。

 

「私は……お姉ちゃんが煩わしかった。私を囲む更識っていう環境も何もかもが……。だってそうでしょう……?誰も私の事を見てくれないで……見ているのは、その先にいるお姉ちゃん……」

 

「…………」

 

「何をやっても比べられて、何をやっても……勝てなかった。それでもお姉ちゃんは私に大丈夫だって言うけれど……正直それは、私は……何も出来なくって良いって、そう言われてる気分だった」

 

 簪は今まで積りに積もったものを楯無に吐露する。お互い視線はしっかり合わせ、意識を最大限に向けあう。聞いている楯無の表情にも怯えは見当たらない。

 

「だから私は、お姉ちゃんを見返したくて……この子を作り始めた……。だけどなかなか上手くいかなくて……そんな時に現れたのが……彼。たぶん……知ってるよね?」

 

「加賀美君……」

 

 小さく呟いた楯無に、簪は予想通りといった表情を見せた。そうでなくては、楯無が自分の所に来れるはずがない。真と楯無の間にどういったやり取りがあったか気になる簪だが、ここはいったん保留にしておくことに。

 

「真と会えてから……いろいろな事が違って見えて来たの。お姉ちゃんはお姉ちゃんで、私は私……。比べられるのが嫌って言ったけど……いつの間にか、比べていたのは私自身で……誰かに接する事を恐れていたけど、自然に人に頼れるようになって……」

 

「ええ……それも加賀美君から聞いたわ」

 

「そう……。お姉ちゃん……私は、もう大丈夫だから。お姉ちゃんの道案内は……いらない」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「話は最後まで聞いて……。道案内はいらないから、だからね……お姉ちゃん。私と一緒に……歩いて行こう?」

 

 そう言いながら簪は、楯無に向かって手を差し伸べた。楯無から見て簪の姿は、どこか先ほどの真と重なる。その瞬間に楯無は思った……簪にとっての真という存在の大きさは、計り知れる物ではないと。

 

「もう私は、お姉ちゃんに支えられるだけなのは嫌……。だから私も、お姉ちゃんを支えて見せるから……。私は……お姉ちゃんの隣を歩いてるよ……?」

 

「かん……ざしちゃん……わっ、私は……」

 

 楯無は声を震わせながら、オズオズと簪の方へ手を伸ばす。が……自らを許せない部分があるのか、なかなか楯無の手は簪の手と繋がらない。そんな楯無を見て簪は、グイッと手を伸ばし楯無の手を掴んだ。

 

「大丈夫……お姉ちゃんの知ってる私は、もういないの。ここに居るのは……お姉ちゃんの事が大好きな、お姉ちゃんのたった一人の妹……更識 簪だから」

 

「ッッッ!?簪ちゃん!」

 

 今まで我慢して来たものは、簪の言葉によって崩れ去った。楯無は簪に抱き着くと、目から大粒の涙を零す。それを簪は、ただ優しく包み込む……。

 

「ごめんなさい……!ごめんなさい……!泣いちゃいけないのに……辛かったのは簪ちゃんの方に決まってるのに……!嬉しくて……止まらなくて……!」

 

「うん……私も、避けてごめんなさい……。私の中で、なかなかケジメが付けれなかったから……。お姉ちゃんにも余計に心配をかけて……」

 

 二人はお互いに謝罪の言葉を述べる。お互いに悪い事は自覚しつつも、行動に移せなかったのだから仕方が無かろう。特に楯無は、姉として然るべき事が出来ないでいたのがよほど悔しいのか、捲し立てるように謝罪を続けた。

 

 とにかく簪は、楯無が落ち着くまでひたすら待つ事に。それからいったいどのくらいの時間がたっただろうか?いい加減に止めてほしいと思いだした頃に、ようやく楯無は簪から離れた。

 

「落ち着いた……?」

 

「え、えぇ……ごめんなさい。ありがとう……簪ちゃん」

 

「うん……。所でだけど……真は……?」

 

「あっ!?そう言えば着いて来てくれてるんだったわ!」

 

 楯無は思い出したかのように整備室のドアの方へ近づく、簪も真に一言ちゃんと礼を述べておかなくてはと廊下へ出るが、そこに真の姿は無い。

 

「いないね……」

 

「あの子……お礼くらいさせてくれても良いのに……」

 

「ううん、それが真だから……。たぶん「別に……直接俺が何かしたわけでも無いし?」とか言い出すと思う……」

 

「あっ!それ凄く言いそうだわ!」

 

 二人の脳裏には気だるそうに頭をボリボリと掻きながら、白を切る真の姿が浮かんだ。どうしようもなく素直でない真の姿を想像し、二人は同時に笑いをこぼす。

 

「簪ちゃん……頑張って振り向いて貰うのよ?」

 

「が、頑張る……!」

 

「なんならお姉ちゃんが手取り足取り、色仕掛けのコツでも……」

 

「そういう所……お姉ちゃんの幻滅ポイント……」

 

 手をワキワキと動かしながら、簪にいたずたっぽい笑みを浮かべる楯無。しかしすぐさまジト~っとした視線で見られ、がっくりと肩を落とした。

 

「ふぅ~……久しぶりね、簪ちゃんにツッコまれるのも」

 

「そうだね……。そんな事より、お仕事は……?」

 

「……途中で抜けてきたままだわ」

 

「ちゃんとお仕事してね……?あんまり虚さんを困らしちゃダメ……」

 

「わ、分かったわよ……!それじゃ、またね!」

 

「またね……お姉ちゃん」

 

 簪にそう言われては、楯無は弱い。ヒラヒラと手を揺らすと、生徒会室の方へ走り去って行く。その際に聞こえた何気ない「お姉ちゃん」の言葉を、楯無は何度も脳裏で咀嚼した。

 

「やった~!」

 

 なんて大はしゃぎする楯無の声は、学園中に響き渡るほどの勢いだ。証拠にどこかへと消えて行ってしまった真も、しっかり楯無の声が耳に届いた。

 

「雨降って地固まる……か。良かったな……「楯無先輩」」

 

 立ち止まっていた真は、それだけ呟くとまた歩き始めた。自分が誰かのために、何かが出来た……真は、確かにそう感じている。真は気付かぬうちに、歩幅が大きくなっていた。

 

 それを指摘する者が誰も居ないため、異様に機嫌がよさそうで気味が悪い真に、他の女子一同は困惑するしかなかったとか……。

 

 

 




え?今回は雑過ぎやしないかって?こまけぇこたぁ良いんだよ!(思考停止)

いやね……本当にこの辺りでこういう事にしとかないと、どうしても簪を学園祭の「あのイベント」に参加させ辛くなるんです……。

学園祭編でタイミングを逃すと、恐らくズルズル引きずる羽目になると思ったので、もういっその事だ!といったノリで開き直りつつこの話を書いた所存であります。

ハッハー!文句があるなら言ってみると良い!そんな事をして見ろ……?多分私はパソコンの前で泣くぞ!……と言うのは半分くらい冗談です。どのような意見でも待ってますよ……えぇ、大人しく受け入れますとも。

次回は未定かな……?恐らく真が打鉄弐式の整備に本格参加するか、真が生徒会の』詳しい事情を知るか……のどちらか……?

それでは皆さん、次回もまたよろしくお願いします。

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