戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

いよいよ二学期……解決しなくてはならないイベントが多くて大丈夫か?とか心配してます。更識姉妹……一夏と簪……うっ!頭が……。

まぁ少し原作とは、事の進みが早くなるかとは思います。まぁ……とは言っても、原作で例えるなら一巻分くらいの差でしょうけど……。

今回は、二学期のプロローグみたいな話とお考え下さい。なので本音と簪の出番はほぼ無いですが、あしからず。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


五章 ~大いなる成長~
真の決心(一念発起)ですが何か?


 IS学園もいよいよ二学期が始まろうかという朝……一夏達いつものメンバーは食堂にて神妙な顔つきで座っていた。それは当然……ZECT襲撃の事件を受けての事だ。

 

 ZECTは文字通り世界を股に掛ける一大企業、そんなZECTが襲撃されたとあれば、国内外でも大騒ぎになるのも無理はない。

 

「これを見てみろ……」

 

 ラウラがテーブルの中心辺りに、新聞を放り投げた。新聞の一面にはこう書かれている。『夏休み最終日の悪夢! ZECT襲撃事件!』写真は、ガタックが突っ込み荒らされてしまったオフィスが写されていた。

 

 先日午前10時頃、ZECTグループ総本社が何者かに襲撃された模様。目撃者の証言によると、犯人はISに乗っており、ZECT製の新型ISに酷似した物だったらしい。

 

 迅速な対応のおかげか、被害は少なかったものの、当時ZECTに訪れていた関係者の親族で、16歳の少年が重傷を負ったとの報告が……。

 

「関係者の親族……とは、間違いなく戦友の事だろう」

 

「その襲撃者と交戦して、負けた……?でも……重傷……それってもしかして……」

 

「シャルロットの考えてる通りでしょうね、ISが解除された後に……手を加えられたって所かしら」

 

 シャルロットが想像したが口には出せなかったことを、代わりに鈴が続けた。絶対防御がある限りは怪我など追う訳が無い……となると、必然的に答えはそうだ。

 

「ゆる……せねぇ……!」

 

「落ち着け、一夏……怒っているのは何も、お前だけではない……」

 

「だけど!何が目的なのかは知らないが……そこまでする必要あるかよ!?」

 

 鈴の冷静な見解に、声を荒げたのは一夏だった。箒の皆同じ気持ち、という言葉も耳に届かない。この場にいる全員は、悔しそうに歯を食いしばった。

 

「嫁よ、単純に戦友に危害を加える目的だったのかもしれん」

 

「だったらなおさら許せねぇ!」

 

「襲撃者の目的が分からない内は、黙って事実を受け入れるしかありませんわ……。一夏さん、どうかココは抑えて下さいませ」

 

「……クソッ!」

 

 一夏は憤りを抑えきる事が出来ずに、ダンッと拳でテーブルを殴った。その際の衝撃が、ビリビリと拳に伝わると、幾分か頭は冷静になったようだ。

 

「……アタシ達の中で、真の連絡先……知ってる人いる?」

 

「鈴……俺は昨日から何度も電話したり、メールした。……でも、まだ何の返信も無い」

 

 重傷と言っても、程度はいろいろだ……とにかく真の安否を最優先した鈴は、質問を投げかける。だが一夏曰く、昨日から返事が無い……となると……全員は何かを察したのか、空気を重くする。

 

「本音……そうだ!本音はどうしているんだ?」

 

「うん……今朝見かけたんだけど、とても声を掛けれる状態じゃなくて……。今は相川さん達に任せてるよ……」

 

「四組の更識さんも……同じような状態でしょうね……」

 

 そういえばと、箒は真と行動を共にしている本音の姿を思い出す。本来だったらいつも食堂に居るのだが……その姿は何処にもない……。

 

「戦友が復帰するまでは、私達で対処するしかあるまい……」

 

「ああ……真は、いつ頃帰って来るんだろうな……?」

 

「普通に初日から登校すっけど……俺が居ちゃ悪いか?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 ガタッ!といった感じで、六人は一斉に立ち上がった。声のする方向を見ると、そこに立っているのは加賀美 真に違いない。ただし……身体のあちこち包帯を巻いていたりと、いかにも怪我人といった様相だが。

 

「あ……真……さん?」

 

「そ、その……怪我したって……大丈夫なの?!」

 

「はぁ?そんなモン、大丈夫な訳あるか。見りゃ分かんだろ」

 

 呆然としている六人を尻目に、真は空いていたスペースにトレイを置きながら座った。そしてそのまま、食事を始める。我関せずといった様子に、全員口を開いたままだ。

 

「アンタねぇ!アタシ達がどれだけ……ってか、この際アタシ達は良いわよ!本音は!?簪って子は!?」

 

「心配せんでも先に会って来た。……号泣されたが、なんとか許してもらったさ」

 

「怪我の具合はどうなんだ!?」

 

「一夏……耳元は止めろ……。あ~っと……頭に軽度の裂傷……全身打撲と……後は……右手を刃物が貫通」

 

「かんっ……!?」

 

 真は食事をする手を止め、包帯でグルグル巻きにされて居る右手をグッパグッパと閉じたり開いたり。刃物の怖さをよく分かっているのか、箒は目を大きく開けて言葉を失う。

 

「戦友よ、お前を襲ったISだが……」

 

「言っとくが何も知らんぞ、こっちが聞きたいくらいだ」

 

 平静を装ってはいるが、一番混乱しているのは真だ。何せ……前世で主人公が変身するライダーが、なぜか今世で現れ自分を襲ってきたのだから。

 

「と、とにかく……真が無事で何よりだ」

 

「無事じゃねぇつってんだろ。まぁ……なんだ……心配してくれて、ありがとよ」

 

「……あっ!?真、どうして連絡をくれなかったんだ?」

 

「携帯がぶっ壊れたから無理だった……教師陣にも連絡してねぇんだよ」

 

「ほぅ?それでいて貴様は、学園に帰って来るなり食事優先か。良い身分だな」

 

 真は背後から聞こえた声を耳にすると、ビクッと体を大きく反応させ、ガタガタと震え出す。ついでに言うと、何故か悪い事をしていない残りの六人も震えていた。

 

「い、いや~……あのですね。今しがた学園に着いて荷物部屋に持って行って……本音と簪に会って来たんすよ、そしたら。あ、コレ飯食う時間ねーや……職員室に行くの後でいっか~……と思って今ここですね……」

 

「つまりは面倒臭かっただけだろう、馬鹿者が!」

 

 いつもの馬鹿者が、と言う声に条件反射的に体をこわばらせた。しかし頭に落ちて来たものは、至って普通に痛い程度の威力……真は思わずあっけにとられる。

 

「織斑先生……?」

 

「全く……包帯だらけの加賀美を見たと聞いたらこれだ。思ったよりも、元気そうじゃないか」

 

「は、はぁ……?」

 

「…………良く、生きていてくれた」

 

 千冬が見せたのは、混じり気の無い安堵の表情。真は何かこう……グッと来る物を感じていたが、何故だか顔にだけは出せない気がしていた。

 

「とはいえ……報告を怠るのは頂けんな。次は無いぞ?……ではな」

 

「…………お前の姉貴……あれ無自覚か?飴と鞭が自然すぎるんだが……」

 

「いや……気付いてないと思う。だから慕われるのにな」

 

 真は千冬の姿が見えなくなると、とりあえず一夏にこの質問を投げかけた。苦笑いを浮かべながら一夏が答えると、真はふ~んと呟きながら食事を再開させた。

**********

「なぁ~……いい加減に機嫌を直せって……許してくれたんじゃないのか?」

 

「…………」

 

「…………」

 

 これだよ……朝顔出してからず~っとこれだ。今放課後だぜ?通算何時間無視されてんだ俺は、ナニコレ?いじめ?……連絡しなかった俺が悪かったのかもしれんけども……携帯ぶっ壊れてるんだからしょうがなくね?

 

 放課後になって整備を手伝いに来たと言うのに、本音も簪もまるで俺が居ないかのように作業を進める。打鉄弐式が設置してある場所から少し離れて胡坐をかいて座っているが、それは指示があればいつでも動けるって事であって……。

 

「それとこれとは話が別だもん……」

 

「かがみんのバ~カ……」

 

「バッ……いやな、俺にも事情ってもんが……」

 

 そうだよ……目を覚ましてからが大変だった。まずは親父……俺が怪我した事を案じてくれたのは嬉しいが、いきなり抱き着くのはキツイ、全身打撲及び筋肉痛だっての。

 

 お次は、ラボラトリの変態ども……大人数で狭い個室に詰めかけやがって……「神!神!お怪我の具合は!?」とか言うんだぜ?右手の傷が開くのとかお構いナシで、ぶん殴ってやろうかと思った。

 

 最後に政府のお偉いさん方……いわゆる事情聴取って奴。アチラさんは、俺が第二の男性IS操縦者という事を知ら無い訳で……辻褄を合わせるのが大変だった。

 

 そんなこんなで、訪ねてきた人の対応をして気付けば夜も更ける。特に政府の連中が長かった……怪我人相手に根掘り葉掘り聞いて来る物だから、少し機嫌が悪くて……で、起きたら早朝。検査入院みたいなもんだったからIS学園来たけど……こんな心配されてるとは思わなかったな。

 

「加賀美君、加賀美君……」

 

「あ?何?」

 

「ホラ……今日の所は帰った方が良いと思うよ?きっと二人とも、明日になったら元通りになってるって」

 

「……根拠は?」

 

「う~んと……女の勘?」

 

 相川が俺の耳元で、そんな事を呟いた。女の勘ねぇ……そう言われると、なんだか従わざるを得ないような気がしてくるから不思議だ……。相川の方に黙って頷くと、俺は静かに立ち上がった。

 

(何か聞かれたら、よろしく伝えといてくれ……)

 

(オーケー……分かった)

 

 コソコソ相川とやり取りを交わすと、抜き足、差し足、忍び足で整備室を後にした。はぁ……二学期初日から……何だこれ?つーか、夏休み最終日が最悪だっただけか。

 

『次は殺す』

 

「…………」

 

 あのカブトの一言が、突然頭の中で響いた。……結局奴は、俺を殺すのとコアを強奪するのと……どちらが本当の目的だったのだろうか?

 

 いや……どちらにしたって、今は重要な事ではない。俺は……負けたんだよな……完全敗北とも言い変えて良いだろう。何も出来なかった、みすみす人質にすらなってしまい……爺ちゃんを、危険に晒した。

 

 あぁ……悔しいなぁ……。こんなに悔しいのは、いつ振りなのだろう。奴の正体だとか、カブトがどうだとか……そんなのは、どうだって良い。「何も出来なかった」そこだけが、俺の肩に重くのしかかっていた。

 

「強く……なりてぇ……」

 

 何も出来なかった……そしたら、殺されていたかもしれないんだ……。俺はもちろん、爺ちゃんも。奴がもしコアでなく、本当に爺ちゃんの首を欲して居たらどうなっていた?

 

 俺は……一生後悔する事になっただろう。爺ちゃんは、本気に違いない……俺を助けるためなら命を惜しまないハズ。そういった覚悟が、爺ちゃんにはある。

 

 それでは、俺はどうだ?もし……誰かを人質に取られていて、迷いなく言えるか?「俺の命で、そいつは勘弁してくれ」と。……無理だ……俺には、言えない……。

 

 言えないならば、どうすれば良い?そんなのは簡単だ。そんな状況に、最初っから誰かを人質にされるような状況にさせなければいい。逆も同じ、俺も人質にならなければいい。

 

 だとすれば、どうすれば良い?それも簡単だ……強くなるしかない。今の俺では、それは詭弁だ……力なき正義は、無力。だったら強くなってしまえば良い……二度と俺なんかの為に、誰にも命を張らせてなどなるものか。

 

「強くなる……なってみせる!」

 

 口に出すだけなら、いかようにして楽な事か。だが違う……今の俺の意志は固い。どれだけ地獄を見たって良い、それだけで俺の周囲が笑っていてくれてるのだったら、そんなものは安いもんだ。

 

 そうすると、俺の足は自然にとある場所まで向かっていた。まず初めに思い浮かんだのが、あの人だ……だがあの人は、素直に首を縦に振ってくれるのだろうか……?

**********

「そうか、頑張れよ」

 

「いやいやいや……そこは違うでしょうよ、織斑先生……」

 

 職員室に来てみて、織斑先生に「強くなりたいんです」っつったら「頑張れよ」で済まされた。もっとこうさぁ……「私の指導は厳しいぞ?」とかあるじゃん?

 

「貴様が私に何を期待しているかは知らんが……短絡的じゃないか?」

 

「……ぐっ……」

 

 否定できない所もある……織斑先生が世界最強だからと言って、泣きついているようなものだ。確かに……少し違う……よな、ここで織斑先生に指導してもらおうなんて。

 

「……襲撃者は、強かったか?」

 

「……はい。今の俺じゃ、なんべん戦ってもムリそうです」

 

「自分と相手の力量の差を客観視できるのなら、少しはマシだな。その力量差を埋めるために出来る事は、私を頼る以外にも方法はあるはずだぞ」

 

 う……ん……?ど、どうなのだろうか?地道に専用機持ち達と訓練……?それも大事なのだろうが、それでは日頃と大差ない。もちろん、俺としてはそんなトントン拍子に強くなろうなんざ思っちゃ……。

 

 ……って、織斑先生の所に来ている時点で説得力は皆無か……。とにかく、織斑先生のこの言葉もヒントな訳で……何かもっと別の方法を……。

 

「……敵を知り己を知れば、百戦危うからず」

 

「はい?」

 

「敵の方はともかく、貴様は自分の事を知らなさすぎだ。筋は決して悪くない……後の仕上げができるのは、どこの連中だろうな」

 

「…………」

 

「これ以上は何も言わんぞ。ほら、傷が癒えるまではとにかく休め」

 

 織斑先生はまるで野良犬でも払い退けるかのように、シッシッと手を動かす。それだけ言うと、手元の資料を眺めて完全に仕事モードと言った所か。邪魔してはいけないので、頭だけ下げて職員室を出た。

 

 うぅむ……俺は俺の事を知らなさ過ぎ……コレはきっと、俺は俺自身で長所や短所を把握しきれていないと言う事だろう。ぶっちゃけ今までは、そんな物知る必要はないと思っていたし……。

 

 織斑先生の言い方なら、それは簡単に知れるって事だよな……?むしろ知っている人が身近に居ると言っているようにも見えた。そこから長所は伸ばし、短所は改善していく……確かに、それは俺の望んでいる事だ。

 

 しかし……俺以上に俺の事を知っているって……。………………あーっ!?なんだよ簡単な事じゃねーか!そうなれば今すぐ連絡を……って携帯無いんだった!

 

「一夏に借りるか……」

 

 今日は確か……初日だし、部屋でゆっくりする予定だーとかなんとか言ってやがったな。俺はダッシュで自室に向かっていった。全身が悲鳴を上げるが、それでも構わず走り続ける。

 

「良いから黙って携帯を貸せーっ!」

 

「うぉっ!?なんだなんだ!?何の騒ぎだ!?」

 

 俺は自室の扉が開くと同時に、大声で一夏に向かって声を荒げた。一夏はというと、あまりに突然の俺の帰室で、その上無意味に半ギレだ。驚いた拍子にベッドから転げ落ちてしまっていた。

 

「えぇ……っと、携帯を貸せば良いのか?……っと、ホラ」

 

「おぅ!サンキュー!」

 

「感謝されてるんだか、怒られてるんだか……」

 

 一夏の目の前で話す事でも無いので携帯を一夏の手からブン捕ると、すぐに回れ右して寮の廊下へ出る。一夏の携帯電話を操作し、岬さんへ連絡を取った。

 

『あら、加賀美君……怪我の経過はどうかしら?まだ一日しか経ってないけど……』

 

「岬さん、お話があるんです」

 

 まずは岬さんの心配に返答をするのが礼儀だろう。しかし思い立ったが吉日とか言うだろう?俺はすぐさま本題に入った。その内容は、俺を鍛えてほしいと言うお願いだ。

 

 恐らくラボラトリには、俺やガタックに関する多くのデータが集約されているはず。それこそ俺以上に俺の伸ばすべき部分や改善すべき部分を、岬さん達は把握しているに違いない。

 

 織斑先生は、きっとZECTを頼れと言いたかったのだろう。遠まわしながら、あの人もあの人で生徒の事を考えているんだな……。日頃の暴君的な態度が無ければ、文句なしで尊敬できるのだが……。

 

『悔しかった……か、加賀美君……それは私達も同じことなの』

 

「同じ……ですか?」

 

『ええ、そうよ。いきなりガタックにそっくりなISで現れて、そっくりなシステムを積んでて……。そして、ガタックを圧倒し、加賀美君を傷つけた』

 

「…………」

 

『それら全てが、私達には許せないし……自分達も許せない……。貴方を守るはずのガタックなのに、あんな……!』

 

「岬さん……。岬さん達のせいじゃ……!」

 

 岬さんの声は、怒りに震えていた。どうやら俺が甚振られた事に、かなりの憤りを覚えてくれている様子だ。しかし……岬さんが怒る必要は何処にも無い。

 

『自分が未熟だから……そう言いたいんでしょ?分かってるわ……だからこそ、こんな電話をかけて来たんだものね。…………加賀美君』

 

「はい……」

 

『見返してやりましょう。あの赤いISを、加賀美君と……私達ラボラトリ……いいえ、ZECTで。協力して、必ずあのISに一泡吹かせるの』

 

「それじゃ……」

 

『ええ、私達ZECTは貴方の覚悟を裏切らない。期待には答えて見せるわ』

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 嬉しかった……協力を承諾してくれたことはもちろんだが、なにより俺をZECTの一員としてカウントし、一緒にカブトを倒そうと思ってくれたことが、心に響いた。

 

『それじゃ、今度の休みに顔を出してくれないかしら?怪我が完治するまでは安静にしてなきゃダメだけど……他にも出来る事はたくさんあるわ』

 

「分かりました……次の休みに、ですね?はい……」

 

 とりあえず予定は決まった……。通話を切ると何重にも包帯で巻かれている右手を眺め、拳を握る。ジワリ……と鈍い痛みが右手に走るが、この痛みは俺の覚悟の証でもある。

 

 痛い……けれど、死ぬよりはずっと良い。怪我でこれだけ心配させたんだ……そんな事があっては、今日の比では無いくらいに本音と簪を怒らせてしまう事だろう。

 

 ハハ……それだけは、避けなくちゃな……。俺は……強くなる……。強くなって、守るんだ……俺の周りにいてくれる大切な人達の事を……。

 

「よしっ……」

 

 用事は済んだので、自室に戻る事にした。一夏にしっかりと携帯を手渡すと、再度落ち着いてから感謝の意を述べる。すると一夏は、何だかこそばゆそうな表情をしながら頬を掻く。

 

「真ってさ……なんか……。……悪い、やっぱなんでもない」

 

「……なんだよ、そこで止めんなって……気持ち悪いだろうが」

 

「いや~……だって言ったら怒るだろうし」

 

「どうせ怒っても今は反撃できねぇよ……」

 

 俺は、自分の事を親指で指した。一夏は俺の満身創痍な装いを見て、う~んと唸るが……なかなか口を開かない。……まぁいいか、どうせ言いたい事は「素直になったよな」とかそんなんだろ。

 

「そうだ……茶請けにと思って色々作って来たんだが……食うか?」

 

「おっ、マジか?真……菓子も作れるんだな」

 

 本当は本音と簪に分けるつもりだったんだけどな……少し調子に乗って作りすぎてしまった。クッキーやらカップケーキやらエトセトラ、エトセトラ、エトセトラ……。今になって、やりすぎたことに気付く。

 

 はぁ……篠ノ之たち五人にいるかどうか聞いてみよう。それでも余ったら……一組の連中か、教師にでも渡す事を考えなければダメそうだ。

 

 とりあえずまだ荷解きが済んでいない荷物から、菓子類を引っ張り出す。適当にテーブルに並べると、一夏相手に毒見……もとい試食会が始まる。

 

 一夏のリアクションは、思ったよりも好感触……うん、これなら誰に渡しても大丈夫そうだ。よほど気に入ったのか、一夏の手は止まらない。

 

 とはいえ晩飯が入らなくなるといけない……無理矢理戸棚に仕舞うと、恨めしい視線で見てくる一夏であった……。男相手にこんな視線で見られると、何だか複雑な気分である。

 

 

 




真がようやく本気で強くなろうと決心。

今までそうならなかったのは「困らない程度の技量さえあれば良い」と思ってた真。でもそれで済ませられない敗北を味わい……本当にようやくですね。

「加賀美 真 強化計画」と銘打って、イベントを発生させるつもりですが、これにより真は技術面にてかなり強くなると思われます。加減が難しそうだ……。

次回は……どうだろ?恐らく……簪と楯無の関係が戻ってない→戻ってないにも関わらず一夏に接触→真、激おこ。……みたいな事になるかと。

それでは皆さん、次回もまたよろしくお願いします。

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