戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

今日が水曜日……前回の更新が金曜日……うん!ギリだね!週一的な意味で!誰か……誰でも良いから時間を下さい……!

今まで特撮やアニメ見る以外で初めて見つけた趣味なんだよな~……執筆……。皆さんの感想を読むのが楽しみだし、元気貰えるし……。

ぶっちゃけ、仕事とかどうでも良いからずっと小説書いていたい(真顔)

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


本音とデート!(歓喜)ですが何か?

灼熱の太陽、とはよく言った物だ。夏の日差しは、あらゆるものを焼き尽くす勢いで燦々と降り注ぐ。これもこれで、日本の情緒ある四季の一つなのだろうが、俺は夏は少し苦手なのである……。

 

 そんなクソ暑い中、俺は駅前で待ち合わせしてる奴がいる。誰かと言うと、布仏 本音その人なのだが……。先日家事がようやく一段落済んだと思っていた矢先にメールが入った。

 

 内容は本音らしく非常にアバウトなもので、何処か一緒に出掛けよう……みたいな内容だった。俺も基本的には暇なので、快く了承し今に至ると言った所だろう。

 

(それにしても……)

 

 二人きり……なのだろうか?……学園じゃ別に珍しい事でもないのに、妙に緊張するのは何故だ。夏休み、と言う特別なシチュエーションがそうさせるのか……?

 

 何か変に意識してしまう……まさか、俺が女の子とデートする日が来ようとは。ま……いつもの通りでな、別に付き合ってる訳でもあるまい……。

 

「かがみ~ん!」

 

 噂をすれば……と言っても考え事だけど、本音が大きく手を振りながら近づいてくるのが見えた。俺が先に着いているせいか、本音は少し慌てているようだ。

 

「ごめんね~待ったかな~?」

 

「いや、俺も今来たところだ」

 

 なんか定番っぽいやり取りをする俺達だが、嘘を言ってる訳でも無い。俺も本当にさっき駅前に着いたばっかりだし、むしろ本音が待ってたらどうしようかと思っていたくらいだ。

 

 俺の言葉に、本音は安心したような表情を見せた。本音はのんびりとした子だからな……なんとなく、多少の遅刻は許せてしまう俺が居る。ま、今回は時間ピッタリだから問題なし。

 

「そっか~良かった~」

 

「ん、それじゃ行くか」

 

「え~?どこに行くの~」

 

「まぁ、ちょっとな」

 

 せっかくの本音とのデートなのだから、ゲーセン行ったりとかそう言うのはちょっと違うかなと思った。だから、しっかりデートコースとか下調べして、本音と今日一日を楽しく過ごすつもりだ。

 

 それに、こういう時は男がリードしてナンボだろ。女尊男卑の世の中で、そういう考えがどの程度残っているかは知らないが、俺には関係ない話だ。

 

「着いてからのお楽しみって事で、ここは一つ」

 

「わ~!ワクワクするね~」

 

 瞳を輝かせながら本音は俺を見る。う……イカン……自分でハードルを上げるようなマネをしてしまった。ま、まぁ?本音だったら多分楽しんでくれるし……多分……。

**********

「お~……水族館だ~!」

 

 そんなこんなで、本音を連れて来たのは水族館だ。なんか、デートコースとしちゃ定番……みたいなことをネットに書いてあった。天候に左右されず、遊園地のようにアトラクションを待つ時間も無いから、とかいう理由らしい。

 

「どうだろうか……楽しめそうか?」

 

「もちろんだよ~。それに私は~かがみんと一緒なら何処でも楽しいよ~?」

 

「そ、そうか……」

 

 腕をぶんぶん振りながらそう言う本音に、俺は軽くドキッとしてしまう。嬉しい一言だ……意識しているのかどうかは知る所ではないが、男として最高の言葉だろう。

 

「じゃあ、入ろう」

 

 俺はさりげなく本音の方に腕を差し出す。こうしなくても勝手に抱き着いてくるのだろうが、その前に完璧にエスコートして見せようと言う心構えなのだ。そうすれば、少しは照れも緩和できる……。

 

 本音は俺の意図に気付いたのか、パッと明るい表情を見せると勢いよく俺の腕に抱き着いた。……前の時よりも遠慮が無い気がする……。イカン、計画がダダ崩れだ……照れる……。

 

「えへ~……」

 

 ふと本音の方を見ると、嬉しそうにと言うか照れるようにというか……はにかむ、と表現するべきか?とにかく、一言では表現しづらい笑顔を浮かべていた。

 

 ……本音がそれで良いなら、それで良いや……変に意識するから俺はいつまでも照れてしまうのだろう。平常心、平常心っと……。…………いや、無理だわコレ……むっ、胸が!押し当てられて……!!!!

 

「ん~?かがみ~ん?」

 

「なっ、なななななっ……何でも無いです……」

 

「変なかがみ~ん」

 

 変だとは思われているようだが、この態度はいわゆる「あててんのよ」というのではないらしい。天然小悪魔……本音の末恐ろしい所でもあるな。いやいや、もちろん本音自身は天使ですけども。

 

 とにかくして、俺は終始ドキドキしながら過ごすことになりそうだ。魚や海の動物でも見れば心も落ち着くかもしれない。本当にさっさと水族館に入る事にしよう。

 

 さきほど待ち時間が無い……とは言ったが、流石に入り口では少し待つことになる。夏休みと言う時分もあってか、家族連れやカップルは多いようだ。

 

 しっかりと入館料を払うと、中へと通される。ここはまだ入り口だからか、大した水槽は見当たらない。順路にそって行くと、メインの大きな水槽に辿り着くような仕組みか……。

 

 それならば本音と来たのは調度いいのかもしれないな、ゆ~っくり落ち着いてみて回る事にでもしよう。さて、どんな海の生き物が待ち受けているのやら。

**********

 まず最初は、熱帯魚のコーナーなようだ。普通に家庭で飼う用のサイズな小さい水槽が、数えきれないくらいに陳列してある。

 

「小さくてかわいいね~」

 

「そうだな、色もカラフルだし」

 

 本音はしゃがみ込むようにして、水槽を眺めている。カクレクマノミとか、エンゼルフィッシュとか……有名どころの魚以外にも見た事のないような種類も沢山だ。

 

 さっき言ったように、熱帯魚は総じてカラフルな個体がほとんどだ。だだなぁ……本気で可愛いとは思っている……思ってはいるが……。

 

「カラフルすぎて、毒々しく感じるんだよなぁ……」

 

「捻くれてるよ~かがみ~ん」

 

「……自覚はある」

 

 長い事キッチンに立った身だ、嫌でも魚に触れる機会は多い。そのせいか、こういう発想が生まれてしまうのかもしれないな……。正直どう料理したら美味しそうか、とかも考えてしまう。

 

「で、でもよ……コイツとかの斑点。捕食者に対しての警告に見えないか?」

 

「え~、そんな事無いよ~。水玉模様で可愛いも~ん」

 

 そう言いながら本音は、頬をプクーッと膨らませてみせる。……熱帯魚とかどうでも良いから、本音が一番可愛いと思う(名推理)……ハッ!?何を俺はらしくない事を……。

 

「それならコイツはどうだ!」

 

「その子も可愛いよ~」

 

 こうしてなぜか、本音がどこまで熱帯魚をフォローできるか……みたいなゲームが始まった。本音は流石フォロー上手と言うか、 今回ばかりは率直な感想かもしれないが、結果は俺の惨敗と言っても良いだろう。

 

 そんな訳で、俺達は順路の先に進んで行く。メインの順路から少し外れて、小道なような一角がある。そこの看板には「海の殺し屋たち アジトはこちら」と書かれた。

 

 ……どうやら、ここにはガチな海の危険生物……恐らく殺し屋と表現する辺り、毒を持った個体が集められているのだろう。本音に入るかどうか目で訴えてみると、苦笑いが帰って来たので、スルー安定と言った所か。

 

 次いで見えてきたのは、どうやら深海魚のコーナーのようだ。ここら辺りは、深海に居る演出のつもりなのか薄暗い。まぁ本物はこの比では無い暗さだろうが。

 

「えへへ~暗いね~かがみ~ん」

 

「そ、そうだな……」

 

 薄暗い雰囲気がそうさせるのか、本音はより一層俺に体を摺り寄せた。辺りが暗いのが唯一の救いだ……今俺の表情を見られると、本音に笑われてしまう。

 

「かがみ~ん。緊張してるでしょ~?」

 

「滅相もございません……」

 

「あはは~、かがみんってさ~緊張すると敬語になるよね~。口数もすっごく減っちゃうし~」

 

 バレテーラ。というか、俺にそんな癖があったとは……そう言えば、本音や簪に対してドキドキしてる時は敬語だったような……。分かり安っ、この癖は何とかせねばならんな。

 

「でも~……私がこうしてるから、緊張してくれてるんだよね~……?そうだったら嬉しいな~」

 

「…………」

 

 本音のこういう所は、反則だと思う。俺はドキドキが最高潮に達していたため、返事を返せないでいた。本音がそんな俺を眺めて何を思っているかは分からんが、ただただ愛おしそうに俺を見つめている……。

 

「しっ、深海生物って少しグロテスクだよな?」

 

「そうだね~キモ可愛いって奴なのかな~」

 

 強引に話を変えるが、本音は特に気にしている様子も無く話題を合わせてくれる。……スマン、本音……ヘタレな男で本当に申し訳ない……。

 

 ちなみに深海生物だが、俺は割と好きだ。見た目が、とかじゃ無く……深海と言う特殊な環境下で独自の進化を遂げている。そう言った部分に、興味をそそられるのだ。

 

「んぉっ……コイツなんかすごいぜ、本音」

 

「うわわ~!?ど、どうなってるの~コレ~?」

 

 俺が指差した水槽の中に居るのは、テヅルモヅルというヒトデの仲間らしい。どんな見た目をしているのかと言うと、伸びている太い五本の腕から、更に細い数十本の腕が派生して伸びている。

 

 そのインパクトのある見た目は、それこそかなりグロテスクそのものだ。流石の本音もこれには驚いたのか、少し身じろぎしながら目を見開いている。

 

「フォローしないのか?」

 

「かっ、かがみんの意地悪~!」

 

「ハハハ……悪い悪い、分かったから叩くなって」

 

 俺が少し意地悪な事を言うと、本音は可愛らしく腕を動かしペシペシと余っている袖を俺にぶつけた。生憎ながら全く痛くない袖は、ますます本音の可愛らしさを醸し出している。

 

「む~……もう行っちゃうよ~?」

 

「まぁそう言うなって、時間もたっぷりあるんだし……もう少し見よう」

 

 本音は少しばかり拗ねているのか、ちょっと困り顔で俺の腕を引っ張る。だが、やはりグロテスクなものの深海生物は面白い。俺はもう少しじっくり見ていたかったのだ。

 

 俺って、案外研究者とか向いてるのかもしれない。凝り性なところはあるが、自分でもここまでとは思わなんだ。本音は俺の意思を尊重してくれたのか、その場にとどまってくれた。

 

 俺は本音にからかった事を今一度謝ると、深海生物の観察に徹した。でもやっぱり……いかに興味深いからと言って、この見た目にはいつまでも慣れる事は無さそうだ……。

**********

「おっきいね~……」

 

「そうさなぁ……」

 

 しばらく歩くと、一番メインの水槽がある場所までたどり着く。俺と本音はその大きさと迫力に、ありがちな感想しか浮かんでこなかった。

 

 メインの水槽には、大小さまざまな魚や海洋生物達が自由気ままに泳いでいる。遠い故郷からやって来た彼らは、こうやって多くの人々を感動させているんだな……。

 

「まるで海の中みたいだね~……」

 

 本音はそう言いながら、水槽のガラスに両手を付けた。目を細めながら魚たちを眺めている本音は、すごく……可愛い。いや、その表現では生温い……むしろ……。

 

「綺麗だ……」

 

「うん……すごく綺麗だよ……」

 

「へ!?あっ、うん……」

 

 危なっ!マジ今の無意識だ……無意識でボソリと「綺麗」と呟いてしまった……!幸い本音は、自分の事を言われたと気付いていないらしい。ナイス水槽!お前が目の前に居てくれてよかった!

 

「あ~!あっちはイルカさんだ~!」

 

 本音は特に気にする様子も無く、俺の横を通り抜けて行った。向かった先には、一番大きい物よりは少し小さめだが、イルカが入った水槽が置いてある。

 

 イルカ達は縦横無尽に動き回っていたが、本音が近づくと目の前までやってくる。イルカは非常に人懐っこいと聞いたが、流石に本音の所に集まり過ぎではなかろうか?

 

「随分と気に入られてるな」

 

「そうだと嬉しいな~」

 

 そうは言うが本音……偶然にしては出来過ぎなくらいの集まりようだと思うが……。イルカ達の集まりようと言ったら、ハンパじゃないぞ?団子みたいになってら。

 

 こいつらも、本能的に本音の母性的な部分を感じ取っているのだろうか。思ってみれば、本音は動物とか子供には好かれそうだ。

 

「イルカと言えばだけど~。ここってショーとかやってるのかな~?」

 

「ん……?確か、やってたと思うぞ。えっと、ちょっと待て……」

 

 入り口の所で貰っておいたパンフレットを開く、すると丁寧に開演時間などが大きく書かれていた。一回目は……もうすぐ会場を開くらしい。それを本音に教えると、少し慌て始める。

 

「その様子だと、見に行きたいんだよな?」

 

「もちろんだよ~!急ごう?かがみ~ん」

 

「ああ、待て待て……道を知らんだろう。まだ十分間に合うから、慌てず騒がず……」

 

「のんびりに、だね~それなら得意だよ~」

 

 もうすぐ開演だと勘違いした本音を落ち着かせると、パンフレットを見ながら道に迷わないように進む。時間も迫っているという事もあってか、イルカショーの会場へは人の流れが出来ていた。

 

 俺は内心で席に心配をするが、なんてことは無い。会場に着いてみると、人の数はまだ数えられる程度のもので前の方の席は完全に座れる。

 

 せっかくなので、俺達は前の方の席に座る事に。二人して世間話をする事十分程度といった所だろうか、一気に人が会場へ流れ込んで来た。

 

 今度は俺と本音で顔を見合わせながら、運が良かったと笑いあう。そうやって本音と話していると、時間はあまり気にならなかった。

 

 やがて会場にアナウンスが流れ、今からイルカショーを始める事を告げる。会場の奥の方からは、ウエットスーツを身にまとった男女が現れた。

 

「は~い、会場に居る皆さん!こ~んに~ちわ~!」

 

 あぁ……あるある、こういう独特のノリ……。ヒーローショーならともかく、正直こういうノリは得意じゃないんだよなぁ……。

 

「こんにちわ~!ほら、かがみんも~」

 

「お……お、おう。こ……こんにちわ~……」

 

 本音に促され、一応形だけはやって見るものの……俺の声は小さくか細い。そんな俺を、本音はつまらなさそ~な顔で見る。……多分、本音と接してきて一番ショックな出来事だと思う。

 

「おやおや~?声が小さいですよ~?こ~んに~ちわ~!」

 

「「こんにちわ~!」」

 

「おお~かがみ~ん。やればできる~」

 

「褒められても嬉しくねぇ……」

 

 二回目の挨拶に今度こそはと意気込み、本音に合わせて大きい声を出してみる。だけど、やっぱり恥ずかしい……本音が俺を褒め、頭を撫でるからなお恥ずかしい。

 

 で、イルカショーも本格的に始まった。芸を仕込まれた……と言う言い方はアレだが、イルカ達の技は見事な物だ。器用に鼻先でボールをリフティングしたり、二匹でボールをパスし合ってみたり……。

 

 そんなイルカ達に、本音は大はしゃぎだった。他の来客たちも、技が決まる度に大きな拍手で会場を包む。もちろん俺も、惜しみない拍手を送った。

 

 そうしてショーもいよいよクライマックスに差し掛かる。やはりイルカショーの醍醐味と言えば、大ジャンプだろう。イルカ達は、潜水し助走をつけると、勢いよく水上へと飛び上がった。

 

「うわ~!高い高~い!」

 

「おぉ……こりゃ凄ぇ……」

 

 目測で五メートルは跳び上がっているだろうか?これには関心の言葉しか出ねぇ……。……って、なんか連続ジャンプをしながら近づいて来てないか?

 

 いや……気のせいじゃないぞ!?俺達より前の席の人達もなんか慌ててる。そんな中、本音は呑気にず~っと拍手をしっぱなしだ。

 

「いや、本音!?水が……」

 

「え~?」

 

 俺が本音に忠告をしようとしたときにはもう遅い。イルカは水槽ギリギリの位置で着水……当然の事ながら、水は水槽を飛び越え降り注いでくる。

 

 俺は急いで本音を懐に収めるように抱きしめる。俺もなるべく背中をプールの方には向けてはいるが、ほぼ意味は無かった……。空しくも、水は俺の頭の上から襲ってくるのだった。

 

バシャア!

 

「かっ、かがみ~ん?」

 

「はぁ……水浸し……。大丈夫か、本音?」

 

 少し引き離すと、本音は真っ赤な顔で惚けながら俺の顔を見ていた。まぁ……我ながら恥ずかしい事をしたとは思う。だが……女の子を無暗に濡らす訳にもいかんだろう?

 

「わ、私は大丈夫だよ~。その、かがみんが守ってくれたから~……」

 

「そ、そうか……。それなら、うん……良かった……」

 

 こういうのを「良い雰囲気」と呼ぶのだろうか?あ……でもなんとなく、臨海学校の時に話した時もこんな感じだったな……。悪くは無いが、心臓にはよくないな……。

 

 先ほどの大ジャンプは、平たく言えばわざとらしい。そう言う演出だ……とでも思っておこう。連続大ジャンプがどうやら最後の演目だったらしく、ショーは無事に幕を閉じた。……弱冠一名無事じゃないけどね。

 

 俺達は、イルカショーの後すぐに土産屋に寄った。目的は、服を買うためだ。水浸しのままではダメだし、土産屋ならTシャツくらい売ってあるだろうという流れから決まった。

 

 予想通り、土産用のTシャツは売ってあったので、それを即購入。デザインは……土産用らしく微妙なデザインだが、選り好みしている場合でもないしな……。

 

 買ったシャツには土産屋内にあるトイレで着替えた。脱いだ方の服は、買い物袋に畳んで詰め、俺の事を待っているであろう本音の元へ急いだ。

 

「悪い、待たせた……」

 

「…………」

 

 本音は俺の声に無反応で、ある一点を見ているようだった。本音の視線の先には、二匹のイルカがハートを象ったペンダントらしい。そのペンダントは、中心から半分に分けられる仕様のようだ。

 

「欲しいのか?」

 

「へ!?かがみ~ん……いつから居たの~?」

 

「さっき声をかけたんだけどな、聞こえなかったか?」

 

 それほど集中して、ペンダントを眺めていたのかもしれないな。よほど欲しいのだろうが、俺がそう聞くと本音ははぐらかすように視線を泳がせた。

 

「あ、あはは~……ちょっと可愛いな~って思っちゃって~。でも今回は良いよ~ちょっと高いも~ん」

 

「うん……まぁ学生にはちとキツイかもな」

 

「でしょ~?残念だけど諦めるよ~。じゃあ行こうか~」

 

「…………悪い。先に行っててくれ、トイレに物を忘れたらしい」

 

 明らかに思いついたような言葉だが、本音は疑う様子を全く見せない。俺に土産屋の入り口で待っていると伝え、ノロノロと歩いて出て行った。

 

俺のこの行動は、ある考えがあっての事だ。だいたいの人からすれば、簡単に予想のつく事だろうけど……。俺は、おもむろに財布を取り出した……。

**********

「今日は楽しかったね~」

 

「そうか、本音が満足なら俺はそれで良い」

 

 時刻は夕日が沈み始めるころ、俺達二人は集合場所の駅前まで戻ってきていた。あの後も色々見て回ったり、餌やり体験をしたりと、俺と本音は終日水族館で過ごす。

 

 残りの時間は、移動時間と言った所か。流石に遠い場所にあったし、仕方の無い事だ。ここからそれぞれの自宅に帰るとなると、さらに日は沈んでしまう。

 

「それじゃ~また~……」

 

「ああ、ちょっと待て……。渡したいものがあってな……」

 

「ん~何かな~?」

 

 ずっと土産屋の買い物袋に忍ばせておいた箱を取出し、ホイッと本音に差し出した。本音は不思議そうに箱を受け取ると、さっそく中身の確認に入る。そして本音は、目を見開いた。

 

「こ、これ~!?」

 

「うん……まぁプレゼントな。日ごろの礼だと思って、受け取ってくれ」

 

 俺が本音にプレゼントしたのは、例のネックレスだ。そうと分かった本音は、オロオロ、オドオド……そんな感じで泣き出してしまいそうな表情になる。

 

「お金……どうしたの~?」

 

「ん?これでも企業所属のテストパイロットだからな。まぁバイト代程度の金額をチマチマ……ってとこか」

 

 そう、今の俺は別に金には困っていない。ある日突然「バイト代」と書かれた封筒が送られてきたと思ったら、中に爺ちゃんの手紙と、学生が持つには不相応な金が入ってた。

 

 驚きのあまり爺ちゃんに電話したら「当たり前の対応である」と一蹴。丸々受け取るのはアレだったので、半分は加賀美家の預貯金、半分は俺の懐に入っている。

 

「受け取れないよ~!」

 

「もう買っちまったから、受け取って貰わないと困るんだけどな」

 

 俺の言葉に、本音はますます困ったような表情になった。ほんの冗談のつもりなんだが……予想以上に本音は困惑しているらしい。

 

「あ~……ホラ、そんな顔しないでくれよ。さっきも言ったけど、本当に日頃の感謝のつもりだから。俺っていつも口ばっかりだからさ、感謝を形にしたって思いなよ」

 

「…………」

 

「いつもありがとな、本音」

 

「かがみ~ん……。……うん!ありがとう、かがみん!」

 

 本音は、目元をゴシゴシと擦るような仕草を見せた後に、パッと顔を上げた。その表情に宿るのは、いつもの本音の柔らかい微笑みだった。俺は、ようやく素直に受けってくれた本音の頭を強めに撫でた。

 

 すると本音は、振り向いてゴソゴソと何かやっているようだ。もしかして着けて見てくれるのかな?うむ、それは大変にプレゼントしたかいがある。

 

「かがみ~ん。ハイ、これ~」

 

「これは、ネックレスの片割れか……?確かに分割できる仕様だったみたいだが」

 

 本音が俺に差し出して来たのは、二匹のイルカを象った内の一匹。せっかくの二匹合わせてハート型になるというのに、俺に渡してしまっては台無しな気がするが。

 

「その~……ね?ハートの形の物を~かがみんと半分こして持ってたら~素敵だな~って」

 

「さ、左様で……」

 

 なるほど、そんな事を考えながらネックレスを見てたのか……。恥ずかしそうにそう言う本音に、何だかこっちも恥ずかしくなってしまう……って、また敬語になってんじゃねぇか……俺。

 

「うん……だからね~、ビックリして受け取れないなんて言っちゃったけど~。私~すっごく嬉しいんだよ~!大事にするからね~」

 

「喜んでくれるなら、なにより……ですよ?」

 

「あ~!かがみんまた緊張してる~」

 

「うっ、五月蠅いな!俺も今そう思ってた所だよ!」

 

 再び思わず口を出た敬語を指摘され、俺は顔を赤くしながら返した。それを見た本音は「逃げろ~」なんて言って、俺から少し距離を取った。

 

「えへへ~……かがみ~ん。今日は本当にありがと~。絶っ対、また遊ぼうね~」

 

「いやいや……送って行くって、女の子一人は危ないぞ?」

 

「大丈夫だよ~、私の家は近いから~」

 

 う~む……そうは言ってもなぁ……ここで一人で帰らせるのは、男としてどうなのだろうか?でもなぁ、しつこいって思われたらそこまでだし……なんて考えてる間に本音は「それじゃあ」とか言ってるし……。

 

「あ~!?一番肝心な事を忘れてたよ~」

 

「どうかしたのか?」

 

 歩き出し始めていた本音は、キュッとその場でターンして俺の方に振り返る。そしてそのまま俺の方にトテトテと近づいて来て、俺の目の前で背伸びをし……俺の頬にキスを落した……。

 

ちゅっ……

 

「へぁっ!?」

 

「今日のお礼だよ~、えへへ~……。それじゃ~今度こそ~。またね~かがみ~ん」

 

「ああ、ハイ……。また……」

 

 呆然自失とはこの事か……本気で何も考える事が出来ない。いや、正確に言えば本音の唇の柔らかい感覚とかの事を考えていると言えばいるが……。

 

 結局ボーッとしてる間に本音の姿は見えなくなってしまうと言うね……。はぁ~……何やってんだ俺……情けねぇ。俺は思わずため息を吐きながら、しゃがみ込んだ。

 

 そのまま受け取ったネックレスの片割れをギュッと握りしめる。頭の中では、本音のセリフがリピートしていた。半分ずつ持ってると、素敵……か……確かに素敵だけども……。

 

「本音……恐ろしい子……」

 

 本音の唇が触れた部分を押さえながら、そんな事を呟く。……本音と相対する場合は、慣れなければダメなのだろうか?……次会う時は、せめて惚けないようにはしておこう。

 

「…………帰るか」

 

 ゆっくりと立ち上がり、妙におぼつかない足取りで家路につく。最後のアレは、しばらく忘れる事は出来なさそうだ……。下手をすると、今日は眠れんかもしれん。

 

「…………親父、しばいとこ」

 

 特に理由のない暴力が親父を襲う事が確定した。その日の夜の加賀美家は、ドッタンバッタンと物音がいつまでも騒がしかった。

 

 騒ぎが終息し襲ってきた理由を親父に問われると、俺は「モヤモヤ解消」と答える。その発言から第二ラウンドに発展し、結局俺と親父は無制限一本勝負の戦いを延々と繰り広げるのであった。

 

 

 




後半、ちと中弛みしてますね、反省。

水族館デートと言う事でしたが、私個人的にはあまり水族館にいい思い出が無かったり……理由は、イルカショーのシーンで真と似た現象が起きてね……まぁ小さなころの話ですけど。

本音が可愛くかけたか少々心配ですが、後の判断は皆さんに委ねるしか無いです!今更ながら「ウチの本音はこんなんじゃない!」とかは思わんといて下さいね。

次回は簪とデートを予定しております。場所は……予想が付く人には付いちゃうんじゃないでしょうか?まぁ今は秘密で。

それでは皆さん、次回もまたよろしくお願いします。

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