戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

一夏と真のタッグ戦を書いてみたものの……あまり満足のいく出来ではないですねぇ……。二対二ないし二対一みたいに人数が増えちゃうとどうも描写が適当になりがちです。

多人数戦の話は今後も多いので、もっと私は努力しないとなりませんね。練習って言ったってこうやって本編を書くくらいしかできませんけども。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


鳴り止む福音(決着の時)ですが何か?

「で、どうするんだ?」

 

「あん?どうするってお前……零落白夜でぶった切る……だろ?」

 

 気合に水を差すような感じで一夏が俺に作戦が無いか聞いてきた。とりあえずは俺も返事をするが、ぶっちゃけいつも通りの事……零落白夜でズバッとやってお終い。これは理想形であって上手くいくとは限らんが。

 

「だよなぁ……けど、上手く使いこなせんのかな……コレ」

 

「お前な、訳の分からないモンをわざわざ使おうとせんでも良いだろうが」

 

 一夏は困ったような様子で変化した白式の左腕を眺めた。きっと白式の事だから燃費の悪い新兵器だろう。ならば、俺の役割は決まった。

 

「一夏、俺は基本お前の援護に回る。好き勝手に動きな、チャンスメイクは任せろ」

 

「ああ、分かった!」

 

 俺の言葉を聞き終わると、一夏は福音目がけて突っ込んでいく。俺は急いで肩部のみをプットオン。武装はミサイルとガトリングだ。

 

「プットオン!」

 

『―――PUT ON―――』

 

 プットオンが完了したところで、二つのカーソルを合わせミサイルを発射。福音は両腕・両足に付いた小さなスラスターで小刻みに動き回避行動をとる。

 

 しかし、ZECT製のミサイルはしつこいらしい。ホーミングを繰り返し、福音をまるで猟犬のように追い回す。が、それもすぐに撃ち落されるか逃げ切られるかしてしまうだろう。

 

「おらっ!」

 

ババババババババ!

 

 俺はあえてそこでガトリングを連射し、自分でミサイルを撃ち落とす。直撃ほどでは無いが、爆風は確かに福音を巻き込む事に成功だ。

 

 そして、その爆煙から伸びてくるのは……エネルギーの爪?あれは、白式の腕か……。どうやら、白式の左腕は数段階に変形するようだ。

 

「うおおおっ!」

 

 エネルギークローは確実に福音の装甲を削るが、シールドエネルギーに阻まれたのか決定打にはなっていない。だが、いい流れだ……このまま攻めればっ……!

 

『いいえ、恐らくチマチマ戦っていると彼が燃料切れになるかと』

 

「青子!?」

 

『口に出さない方がよろしいですよ?不審がられてしまいます』

 

 突然頭の中に青子の声が響いた。その感覚は秘匿通信の物とよく似ている。となると、秘匿通信と同じ感覚で返せばいいのだろうか?

 

『なんでお前の声が……?』

 

『言ったでしょう。これからは私も共に戦うと、つまりはこういう事です』

 

 なるほど……つまりはオペレーターのような役割をこなしてくれるという訳か。それならば、白式の残存エネルギーを確認しての言葉らしい。

 

『白式のエネルギーはどうだ?』

 

『左腕に余計な武装が増えぶん、かなり燃費が悪くなっています。それと、あのウイングスラスターも要因の一つでしょう。車のマフラーも大きい方が排気量は多いですからね』

 

 予想通りに白式はより短期決戦型になってしまったらしいな、今も複雑な回避を繰り返して余計なエネルギーを食っているようだ。

 

『チッ、何とか援護を……』

 

『不可です。備えてください、大きいのが来ますよ』

 

「!? 一夏、下がれ!」

 

「真!?わ……分かった!」

 

 青子の大きいのが来る、との予告に俺は思わず一夏に警告を告げる。一夏は意外にも素直で、一気に引いて福音との距離を広げた。その瞬間……。

 

キィィィィ……ン……ドォン!

 

 福音はやたらめったらにエネルギー弾を放出し始める。最後の悪あがきなのか、俺達を近づけさせないにはこれが最良と判断したのかは分からないが……確かに有効な手立てではある。

 

「くっ……これは!?」

 

『落ち着いて下さいマスター。私が指示する方向にエクステンダーを』

 

『分かった!』

 

 青子に言われた通りにガタックエクステンダーを操作。時折無茶な操作も要求されるが、何とかエネルギー弾の幕を潜り抜けられてはいる。

 

「一夏は……」

 

『彼の左腕は盾にもなるようです。今は自分の事に集中してください』

 

 なんと便利な左腕だ……。だが、どうやらアレは零落白夜を盾として展開しているらしい。この上なく燃費の悪い盾だ。だが、エネルギーの攻撃はまず通らないと見て良いだろう。

 

 福音の弾幕が止まるのはリチャージのほんの数秒間しかない。俺達は防戦一方を強いられていた。更に、ギリギリの回避を繰り返していた俺に、最悪な事態が訪れる。

 

『キズツ……ナ!』

 

「ぐっ……!?ああっ!」

 

 本日二度目となる頭痛だが、状況が悪い。回避行動をとっている間に集中を乱す要因となる頭痛……。俺はエクステンダーの操作が粗くなり、エネルギー弾は様々な箇所を掠り始めた。

 

「くっ……そ!こんな……時に……!」

 

『マスター、冷静に。拒否をしているからこその頭痛かもしれません。ここは一度、彼女の言葉に耳を傾けてはいかがでしょう?』

 

『……やって見よう』

 

 効果があるかどうかは分からないが、試してみる価値はある。集中し、頭に響く声に問いかけてみた。お前は何が言いたいのか、何を伝えたいのかを……すると、はっきりと聞き取れた。

 

『コノヒトヲ……キズツケルナ!』

 

「!?」

 

『ワタシガ……ワタシガマモル!」

 

『……どうやら、彼女は自らの操縦者を守っている。私たちは、操縦者を傷つける外敵……ですか』

 

 しっかりと耳を傾けると、頭痛は起きない。しかし、代わりに以前と同じように俺の頬には涙が伝った。福音の苦しみが、悲しみが……伝わってくる。

 

 そうか……やっぱりお前は、誰かに暴走させられているだけなのか……。……待ってろ!今すぐにお前を止めて、操縦者も無事に助け出してやる!

 

「一夏ぁ!リチャージの数瞬にかけるぞ!準備を……」

 

「わ、悪い……真。余剰エネルギーが、もう残り少なくて……」

 

「お前……盾に頼りすぎだろ!?少しは考えて戦えよ!?」

 

 あろうことか、白式はこの戦いに終止符を打つ一撃を決めきるほどの余力が残っていないらしい。本当……汎用性が増えた代わりにいろいろ劣化してんじゃねぇか!

 

「真!頼みがある。私を……一夏のもとに届けてくれ!」

 

「はぁ!?こんな時に何を……」

 

「良いから早く!」

 

 篠ノ之が突然俺を呼んでそう言った。確かにポジショニング的に前方から一夏、俺、篠ノ之の順番だが……このエネルギー弾をかいくぐりながらは……。

 

『マスター、彼女の言う通りにしましょう。彼女のISから、新たな力を感じます』

 

「……ええい!クソッ……来い、篠ノ之!」

 

「ああ!」

 

 エクステンダーを反転させ、篠ノ之の方に向かう。篠ノ之が両腕を俺の両肩に回したのを確認すると、さらに反転。弾幕に突っ込む形になりながら一夏に接近する。

 

「済まない真……!お前に無理を……」

 

「黙ってろ!今忙しい!」

 

 しおらしい声で篠ノ之がそう言うが、余裕が無い俺は粗い口調で返した。うおお!怖い!正面から迫ってくるエネルギー弾を避けんのは流石に怖えぇ!

 

『そろそろ限界域です』

 

「よしっ、篠ノ之!3・2・1でぶっ飛ばすぞ!」

 

「む?それはどういう意味だ……」

 

「はい、3!2!1!ぶっ飛べええええ!」

 

「わあああああ!?」

 

 俺は合図とともにエクステンダーを空中で急停止させた。その弾みで篠ノ之は前方の目標である一夏へと飛んで行く。エクステンダーのスピードに紅椿のスピードが乗ればあっという間だろう。

 

『マスター、急いで退避行動を』

 

『了解!』

 

 青子の指示通り、再びエクステンダーのスピードをマックスにして離脱!何とか弾幕の餌食にならずには済んだが……いったい篠ノ之は何がしたかったのだろうか?

 

『白式のエネルギーが急速に回復。紅椿が何かをしたように見えます』

 

「何っ!?」

 

 紅椿が金色に光り輝いている……。エネルギーの譲渡か?それとも既存のエネルギーを増幅させたのか?いや、どちらにしたって良い!きっとこれが最後のチャンスだ!

 

「これはっ……いける!いけるぞ、真!」

 

「ああ、分かってる!今そっちに運んでやるよ!」

 

 俺はリチャージの隙を見て、福音の背後へと回っていた。そして、宙返りしながらエクステンダーから足の接続を断つと、エクステンダーのみを福音に突撃させた。

 

ガァン!ギギギギギギ!

 

 エクステンダーの強靭な顎に挟まれた福音は、耳に障る金属音を立てながら織斑の方へ向かっていく。もちろん福音は反撃に出ようとして、エクステンダーに零距離でエネルギー弾を浴びせようとする。だが、そうはさせん……反撃の要因は、根元から断ち切る!

 

「ライダー……カッティング!」

 

『―――RIDER CUTTING―――』

 

 強靭な顎なら、もう一つここにあるんだぜ!福音の翼を二枚まとめて挟み込むと、音声認識を感知しダブルカリバーにイオンエネルギーが充填されていく。

 

ギャギギギギギギ!!

 

「ぬぅぉらああああ!」

 

ギィィィィ!ギャギン!

 

 渾身の力を込めて、鋏となったダブルカリバーを固く閉ざした。すると、火花を上げながら福音の翼は切断される。さぁ、コレで後は……押し通すのみ!!!!

 

「さぁ、一夏!合体必殺技と行こうじゃねぇか!」

 

「ハハッ……ああ、行くぜ、真!」

 

 一夏が雪片を最大出力にしながら、居合のような構えでこちらに向かって来る。それを見た俺は、すかさずダブルカリバーで首元辺りを挟んだ。

 

「「おおおおおお!!」」

 

 猛スピードで接近してゆく俺と一夏。エクステンダーとダブルカリバーの顎に挟まれ身動きのできない福音の運命など、決まったも同然だ。

 

「零落っ白夜ああああ!!」

 

キィィィィ……ン ズン!

 

 エクステンダーとのすれ違いざまに、一夏は目にも止まらぬ抜刀術にて福音の胴体を切り裂いた。福音のアーマーは、ビリビリと雷を纏ったのち、崩れ落ちて行く。

 

 それによって、福音の操縦者はエクステンダーの顎をすり抜け落ちてしまう。俺は慌てて操縦者の下に回り込み、空中でキャッチする事に成功した。

 

「痛い!?」

 

 両腕にずっしりとした感覚が走ると同時に、筋肉痛の痛みも俺の両腕を駆け巡っていった。プルプルと震える腕で何とかこらえ、俺は声高らかに叫んだ。

 

「勝っ…………たーーーーーー!!!!」

 

『マスター、我々の完全勝利です』

 

「真!やったな!」

 

「一夏、真。見事だったぞ」

 

 俺の大声が響き終わると、一夏と篠ノ之が俺に近寄ってきた。近寄ってきた一夏に……いや、この際篠ノ之でも良いよ、俺は操縦者を差し出す。

 

「悪りぃけど……どっちか変わってくんね?」

 

「は?……あ、そうか、筋肉痛か。分かった、俺が……」

 

「いや!ここは私に任せろ、真!丁重に運んで見せよう!」

 

 ああ、そうだよな……女を一夏に預けたくはないか、操縦者はなかなかの美人だしなおさらだろう。まぁ別に変ってくれるなら誰でも構わないけどな。俺は篠ノ之に福音の操縦者を預けた。

 

「ちょっとー!アンタらなんか忘れてるでしょ!」

 

「ん?あ~……悪い!忘れてた」

 

「すごくサラリと言われたよ……僕達も頑張ったんだけどなぁ……」

 

「嫌にストレートな発言が真さんらしいですが……」

 

「フッ、それでこその戦友だろう?」

 

 海の上にぷかぷか浮いてる鳳に忘れてたと返事をした。ハイパーセンサーで確認すると、鳳はかなり不満そうな顔だ。ヨーロッパ三人組はブツブツと何か言っているように見える。

 

「ま、ともかくだ。皆、帰ろうぜ!」

 

 一夏の音頭により、鳳たちの回収作業が始まる。アーマーの形成が何とか維持できそうなものは飛び、無理そうな者はまとめてエクステンダーに乗ってもらう事にした。

 

 さぁ~……て、地獄の門番もとい織斑先生のもとに帰らなくちゃならんのか。もとより覚悟しての事だったが、いざ帰投するとなると気が重い。その時の俺の背は、妙に重苦しかったそうだ。

**********

 花月荘の真達が飛び立った地点に、簪と本音はまだいた。あれからかなりたつが、そこに居る理由はただ一つ。思い人が帰ってくるのを信じて待っていたのだ。

 

「ん……?あれは……」

 

『チッ!』

 

 簪と本音の姿を先に確認したのは、真の方だった。ハイパーセンサーで二人を見て、まだ待っていたのかと驚いている様子だ。

 

 頭の中で、青子の不機嫌そうな舌打ちが露骨に響くが、真はそんなものを気にせず一人花月荘まで急ぐ。真がガタックのスピードを上げると、二人も真に気が付いたらしい。

 

「かがみ~ん……。お~い!かがみ~ん!」

 

「真……!」

 

「二人とも!」

 

 二人の目の前に降り立った真は、ガタックへの変身を解いて近づいた。真をじっと見つめる簪と本音。そんな二人に、真は何か言いたげだが、なかなか切り出せない様子だ。

 

「簪……本音……。あ~……なんつーか……」

 

「ぐずっ……ひっく……ふぇ~ん!かがみ~ん!」

 

「真……!真ぉ……!」

 

「ぬおおおおおお!?」

 

 簪と本音は涙ながらに真に抱き着いた。抱き着かれた当の本人はというと、筋肉痛の痛みでそれどころでは無いのと同時に、背後から送られる生暖かい視線に頭を悩ませる。

 

「ちょっ……し、信じて待っててくれたんじゃ……」

 

「それとこれとは話が別だも~ん!」

 

「よかった……真が……無事でよかった……」

 

 真のISスーツをぎゅっと握りしめ、二人はただただ泣きじゃくる。真は得も知れぬ感覚に襲われていた。それは、温もり……。胸にこぼれる涙は冷たいはずなのに、心は温かみに満ち溢れている。

 

 二人は自分のために泣いてくれている。それなら、自分が二人にしてやれることは何か。真は必死に考えるが、ただ一つしか浮かばない。真は二人をそっと撫でると、穏やかな声で告げた。

 

「……ありがとう、簪。ありがとう、本音。俺の事を信じてくれて、ありがとう。それと……ただいま。俺は、ちゃんと二人の所に帰ってきたぞ?だから……泣かないでくれ」

 

「…………」

 

「…………」

 

 真の言葉を聞くと、簪と本音は我に返ったかのようになる。真から離れると、涙を拭い取り、真を見送りだした時のような笑顔で真を迎えた。

 

「「お帰り!!」」

 

「うん……ただいま……」

 

 その言葉を待っていたと言わんばかりに、真はニカッと笑って見せた。その姿を見守っていた一夏達は、真をからかってやろうと近づいて行った……その時である!

 

「良く帰ってきたな、馬鹿者が!」

 

バシン!

 

「ギャアアアアアア!?」

 

 何処からともなく千冬が現れ、全力で真の背中を出席簿で叩く。真が筋肉痛であると見越して、頭でなく背中を叩いたのだ。真はあまりの痛みにそこらをのた打ち回る。

 

「うごああああ……!!死ぬぅぅぅぅ!」

 

「う、うーわー……流石千冬さん……。アタシだったら気絶してるわ……」

 

「他人事で済めばいいけどね、これからあの矛先がこっちに向くと思うと……」

 

「我が姉ながら……いや、姉だからこそ恐ろしい……」

 

 地面で無様にジタバタ暴れる真を見て、残ったメンバーはかなり引いている様子だ。簪と本音はそれどころでなく、再び涙目で真を揺さぶる。

 

「か、かがみ~ん……しっかり~!」

 

「真……落ち着いて!暴れると余計に痛いよ……?」

 

「で?貴様らは何故ここに居る?」

 

 千冬の矛先は先に簪と本音の両名に向けられた。真の事を心配していた二人は急な一言に背中をビクリと震わせた。当然良い訳なんて考えていない。

 

「えっと……これは、その……」

 

「あ、あはは~……」

 

「お、織斑先生……。二人は機密事項に関して何も知らないんです。外出禁止を破ったのは褒められる事じゃない……けど、それは全部俺のためを思ってやったことだ。二人の責任は……俺が背負う。だからどうか、二人の事は許してやってください!この通りです……!」

 

 真は立つ事すらできないのか、這ったまま文字通り地面に頭を擦り付けながら懇願した。千冬は真を見下ろしながら、大きなため息をついた。

 

「はぁ……お前達、加賀美に感謝しろ。今すぐ消えれば何も見なかったことにしておいてやる」

 

「はは……ありがとうございます……。ほら、二人とも……俺の事は良いから、行ってくれ」

 

「でも~……」

 

「本音……真の好意を無駄にするのはダメ」

 

 グググ……と何とか立ち上がった真は深々と千冬に頭を下げた。そして二人に帰るように促すと、本音は渋りながらだが、花月荘の中へ消えて行った。

 

「さて、お前達。部外者も居なくなった事だ……ゆっくりと話をしようじゃないか」

 

 なぜか千冬は良い笑顔でそう言った。これには一同が更にドン引きである。背中を叩かれたことも無論だが、真はますます嫌な予感が過るのであった。

**********

「ったく……マジお前の姉貴なんなんだよ……。筋肉痛だっつってんのにわざわざ正座させやがる」

 

「千冬姉に甘えを求める方がどうかしてると思うぞ?」

 

 千冬の長い長い説教も終わり、女子達のメディカルチェックが始まると言う事で、男である真達は部屋から追い出される。出るなり早々呟く真に、一夏は至極まともな言葉で返した。

 

「ごもっとも……。一夏も苦労してんな」

 

「ん?真……今俺の事、名前で呼んだか!?」

 

「あぁ?テメェが助太刀に来た時からそう呼んでんだろ」

 

「あの時はとにかく必死だったからな……気が付かなかった」

 

 かなり今更なツッコミに、真は眉間の皺を深くさせながら一夏を少し睨んだ。目を合わした一夏は、ニヤリと口元を歪ませる。

 

「いやぁ、なんか感慨深いな。真が俺の事を一夏って呼ぶのは」

 

「俺はテメェと初めて会った時に言ったぞ。気が向いたら呼ぶ事にするってな。てか、ニヤニヤすんな気色悪い……殴られたいのか」

 

「ああ……そういう所は変わらないんだな」

 

 一夏は一気に顔を引きつらせながら、よせよせと言う風なジェスチャーをしながら後退していく。そんな一夏に真はヘッ!と鼻を鳴らす。が、何か思い出したのか真は続けた。

 

「おっと、礼は言ってなかったけか……。あん時は助かった、一夏が居なけりゃ俺は落ちてた。ありがとよ」

 

「そんなの気にするなよ、友達だろ?」

 

「ハッ……友達……か」

 

 友達という単語が一夏の口から出た途端、真は一夏に背を向け歩き出す。一夏はやっぱり認めてはもらえないのか、と表情を陰らした。真が自分を名前で呼ぶようになって、油断していたのかもしれない。

 

 真の機嫌を損ねてしまったと思った一夏は、慌ててフォローの言葉を考える。しかし、まるでいい案が浮かばなかった。そうこうしていると、真は急に立ち止まり、一夏に背中を見せたままポツリと呟く。

 

「……テメェが俺の事をそう思ってる内は、俺も……一夏の事をそう認識しておいてやるよ」

 

「へ……?真、今なんて……」

 

「二度は言わねぇ。…………またな」

 

 そう言ったきり真は再び歩き出した。取り残された一夏は、しばらく微妙な顔つきをしていたが、真の言葉が遠まわしな友達宣言であると気が付くと、一言。

 

「それなら、俺と真はずっと友達だろうな」

 

 もし真が聞いていたら、それはもう不機嫌な表情になる事請け合いだ。だが、幸いなことに真は廊下の奥へと消えて行って姿は見えない。

 

 一夏は襖に背中を預けると、ズルズルとその場に座り込む。素直でない友人と交わした拳を握りしめながら、一夏は深い眠りへと付くのだった。

 

 

 




一夏との合体技をライダーキックと零落白夜の同時攻撃かで迷いましたが、せっかくなのでオーバーキルしていただきました。

鋏で挟んで身動きできない状態からの零落白夜……ライダーカッティングが発動している分ラウラのAICよりエグいですね……。

それとどうも真と一夏の絡みが上手くいきません……。「友達」という言葉を安っぽく使い過ぎなのでしょうか?でも直接的な言葉が無いと、どう表現していいか分からないですし……今回の話は個人的に反省する点が多いです。

次回は……本音&簪と個別に会話するだけの話になると思います。でも真にとってターニングポイントになる予定です。……予定です。

それでは皆さん、次回もまたよろしくお願いします。

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