今回から福音戦だ!私にしては珍しく戦闘に入るまでの前置きが短く……って言うほどでもなかったッスね……見直してみたらいつもと同じくらいだわ……。
まぁ真にとってこの一戦は今後に関わる非常に重要な一戦ですからねぇ……別に臨海学校編でセカンド・シフトはしませんけども。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。
福音との距離がだんだんと近づく最中、俺はきっと他のメンバーとは別の事を考えている事だろう。こんなにも速く空を飛ぶのは気持ち良いものかと、爽快感を覚えていた。
というのもこのガタックエクステンダーだが、各国の専用機に追いつくどころか、余りある馬力を誇っているからだ。ガタックは知っての通りスラスターが付いておらず、こんな景色が後ろへ流れてゆくのを見るのは初めてだった。
「戦友よ、見えるか!」
「ああ、今捉えた!」
そうは考えているものの、頭は集中している。ボーデヴィッヒに促されるとほぼ同時にガタックのハイパーセンサーが海上で佇む福音を補足。
有無も言わぬ勢いで、ボーデヴィッヒは砲撃型パッケージ「パンツァー・カノーニア」を装備したシュバルツェア・レーゲンにて射撃を開始した。
二門のレールカノン「ブリッツ」が火を噴く、噴く、噴く。初弾は見事に頭部に命中したものの、福音は構わずこちらに突っ込んでくる。翼から放たれるエネルギー弾に撃ち落とされているようだ。
「変われ、ボーデヴィッヒ!」
「了解した」
砲撃形態ゆえ、今のシュバルツェア・レーゲンに機動力はさして無い。俺は早めにボーデヴィッヒを後退させ、攻撃の準備にかかる。
「ZECTの新兵器……テメェで試させてもらう!」
肩の武装をガタックバルカンからガタックガトリングに変更。イメージインターフェースを用いた武装の変換は何気に初だが、難なくこなす事ができた。
「喰らいやがれ!」
ババババババババババババ!!
ガタックバルカンとは明らかに連射力の異なる音が俺の両肩から響いた。高速回転する砲身から放たれる細かなエネルギー弾は、ガタックバルカンよりも甘い狙いでかなり命中する……しかし。
(ッチ……やはり威力がしょっぱいな……)
距離が空いているためか、ガタックガトリングの弾丸はかなりバラけるのだ。そのため福音は些細なダメージと判断しているのか迷わず突っ込んできている。
ガタックガトリングは中距離で集中砲火を浴びせなければ効果が薄い……か、岬さんに報告しておく必要がありそうだ。だが、つまりは退きつけてしまえばこちらのものよ。
向こうが勝手に突っ込んできてくれているのなら、ギリギリまで連射し続けるのが吉。俺はガタックガトリングで福音を狙い続ける。
ババババババババババババ!!
「…………」
ドヒュン!ドヒュン!
「なぬぅ!?」
今目の前で何が起こったかと申しますと。福音は真っ直ぐ向かってきていたのだが、急に真横にスラスターを吹かしたと思ったら、また正面に急加速してこちらに接近してきた。
その姿はさながら某ロボットゲーのクイックブースト……擬音に例えるなら「ドヒャァ!ドヒャァ!」みたいな変態めいた動きであった。流石の事で対処はしきれなかったが、俺は安心して福音を待ち構えている。
「させませんわ!」
「ありがてぇ、助かった」
オルコットのステルスモードからの急襲により、俺は難を逃れた。現在のブルー・ティアーズは例のストライク・ガンナーなる高軌道パッケージを装備中だ。
ビットをすべてスラスターとして使用し、その分の火力を補うために大型のレーザーライフル「スターダスト・シューター」を装備している。俺が離脱している間もかなり無茶な軌道をしながら射撃を繰り出し福音を翻弄しているようだ。
続けてデュノアが二丁のショットガンにて肉薄している間に、俺は肩部をガタックバルカンからガタックミサイルへ変更。マルチロックにて四つのカーソルが全て福音へと重なる。
「発射ッッ!」
ドシュュュュウン……!
福音はデュノアにカウンターを喰らわせてやろうと必死だったのか、誘導ミサイルは全て福音に命中を確認した。そして、ミサイルの煙から現れたのは……。
「そこだぁ!」
紅椿と篠ノ之、そしてその背に乗った甲龍と鳳。篠ノ之の背から飛び降りた鳳は強化パッケージ「崩山」を展開させた。龍砲の上位互換とでも言えばいいのだろうか?
既存の龍砲に加え新たに増設された砲門が二つ、合計四つの砲門が福音を除いていた。そしてその砲門からそれこそ龍を思わせるかのような、真っ赤な炎が飛び出た。
「離脱する前に……叩き落とす!」
原理的には詳しく分からないが、衝撃砲の空気に圧縮熱でも持たせて発火させているのか?ともかく、すさまじい衝撃砲の雨が福音を襲う。
「やりましたの!?」
「まだよ!」
「往来そう言うセリフは「やってないフラグ」だしなぁ……」
これだけやっても福音は、未だに停止するそぶりを見せない。逆にそれこそ一転攻勢の様だ。離脱できなかった篠ノ之を「ガーデン・カーテン」を装備したデュノアが守っている。
「ラウラ!セシリア!真!お願い!」
「言われずとも」
「お任せになって!」
「オルコット、合わせてくれ。ボーデヴィッヒはもっと後ろだ」
ブルー・ティアーズストライク・ガンナー仕様とガタックエクステンダー装備が高軌道を生かした射撃し、ボーデヴィッヒは安全圏からの狙撃。これが援護にふさわしいと思い意見を述べるが、二人とも肯定らしくすぐさま動きを見せた。
(バルカン!ガトリング!)
一方俺は片方の肩部をバルカン、片方の肩部をガトリングに変更。本当はキャノンで前衛的な射撃をしたいところだが……制御できていないらしいからあてにならん。
俺とオルコットは左右入れ替わるようにして射撃を開始。「合わせてくれ」という俺のお願いの通りオルコットは俺に合わせたような動きを取る。
素人が見たらきっと長年コンビを組んできたような動きに見える事だろう。そのくらいにオルコットは俺の意図を読んだ動きをしてくれる。
「真さん!」
「ああ!」
俺はバルカン・ガトリングを、オルコットはスターダスト・シューターをそれぞれ連射しながら福音へと接近。そのまますれ違いながら振り向き最高出力のチャージショットを浴びせた。
(グラついた!?)
福音の野郎もこれは堪らないのか、動きを一瞬だけ止めた。誰しもがこの瞬間を渇望し、待ち続けていた。さぁ、ここで最も効果力を誇るのはもちろん……鳳、任せた!
「もらったぁぁぁぁああああ!」
真下から双天牙月の斬撃を浴びせた後、龍砲を至近距離でぶちかます。どうやら狙いは一番厄介だったスラスターであるシルバー・ベル。
(!?)
あろうことか鳳はエネルギー弾によるカウンターを気にせず突っ込んでゆく。まずい……こういう流れは「良くない」!チャンスがあるから無茶をするのが最良?それは違う!こういう時に無茶をすると、事を仕損じるのだ。
証拠に鳳は福音の翼を半数もぎ取ったが、すぐに体勢を立て直した福音のスラスターによって加速させた蹴りを喰らう。無茶をしたのが相まって、アーマーはあっけなく崩壊し、鳳は海に落ちて行った。
「鈴!おのれ……よくも!」
鳳が落ちた影響で、篠ノ之は冷静さを失っているらしい。紅椿にてギリギリの接近戦を挑んでいるのものの、あれでは鳳の二の舞が関の山だろう。
(どうする……!どうする!?)
クロックアップを使ってとどめを……いや!それで仕留めきれなかったら俺まで再起不能の役立たずになる。何か無いか……何か、奴を確実に一撃で沈めれる何か……!
その時俺の脳裏をよぎったのはガタックキャノンだった。威力が高すぎるのなら、きっと奴を止めるカギになってくれるはず。だが、威力が高すぎる故の制御不可だ……撃った途端に吹き飛ばされて狙いすら定まら……。
(吹き飛ば……される?)
吹き飛ばされる……のだとすれば、その慣性を殺してしまえば?それならば、狙いも付くしガタック自体吹き飛ばされない!そして、それを可能にするのは……!
『ボーデヴィッヒ!』
『戦友よ!今それどころでは……』
『良いから聞いてくれ!俺は今からヤツに突っ込む、合図したらガタックにAICをかけるんだ、いいな!?』
『なっ、何!?まるで意味が解らんぞ!』
『説明してるヒマはない!』
秘匿通信で最後に「ええい!」とか聞こえたが、気にせずエクステンダーを全速力で福音の方に向かわせる。篠ノ之もどうやら限界らしい。刀を弾かれたのか無防備な状態で手を広げていた。
(ガタックキャノン!)
肩部を例の問題作であるガタックキャノンに変更する。その実態は思った以上に巨大で重厚な砲身だ。この様子なら火力はお墨付きといったところだろう。
幸い福音は篠ノ之に気を取られているようで、こちらには興味を示さない。ここまで近づければ十分、俺はエクステンダーを踏み台にするようにジャンプし、福音の頭上に躍り出た。
「今だ、ボーデヴィッヒ!」
「くっ……どうなっても知らんぞ!」
「ああ、これで良い!これだからこそ良いんだ!ぶっっっっ……放せええええええええ!!」
ズドオオオオオオオオン!!!!
ガタックキャノンを暴発寸前のところまでエネルギーを圧縮させ、宣言通りにぶっ放す!すると発射した瞬間にすさまじい光と爆音が辺りを包んだ。
撃った俺が一番目を疑うような威力だ……ガタックバルカンのチャージショットの遥か上を行く、2倍や3倍では生温いだろう。
福音は至近距離で命中した超高密度エネルギー弾と共に海へと叩き落とされ、巨大な水柱を作った。ISの反応も完全にロスト……はぁ、勝ったんだな……。
「な、なんという威力でしょう……」
「ふむ……だからAICが必要だったのか、納得したぞ戦友よ」
「いや、ラウラ。もっと他に言うべき事があるよね?」
「…………」
残ったメンバーはガタックキャノンの威力にかなり引いているようだ。目の前をエネルギー弾が通り過ぎて行った篠ノ之に至っては、無言で口をパクパクさせていた。
「って!海面に向けて撃っちまった……鳳は大丈夫か……?」
「き、きっと大丈夫だよ……たぶん」
「デュノア……きっとの後にたぶんを重ねると不安……にぃっ!?」
『キ……ズ……ケ……ルナ……!』
「真……?大丈夫か?」
篠ノ之が心配そうな顔をして近づいてくるが、今の俺に返事をする余裕はない。なぜなら、今また……あの時と同じように頭痛が起き、声らしきものが聞こえたからだ。
だとすれば、それはおそらく福音のもの。だが福音は、さっき俺が自らの手で落としたはず。それでも声が聞こえたとするならば、それはつまり……。
「……わって……ねぇ……」
「真さん!?しっかりしてください!何を仰りたいのです?!」
「まだ……終わってねぇ!!!」
ガンガンと鳴り響く頭痛を堪えながら、最大限出せる声を出した。それと同時に福音が沈んだ辺りが光り輝き始め、そこだけえぐり取られるかのようにポッカリ穴が開く。
「これは……いったい!?」
「まずいぞ!セカンド・シフトだ!」
ボーデヴィッヒが警鐘を鳴らした途端、エクステンダーは俺を両顎で挟んで退避させる。酷い眩暈の中で俺が見たのは……海へ落ちてゆくボーデヴィッヒの姿だった。
「ボーデヴィッヒ!」
言っているのもつかの間、目の前でドンドンと専用機持ち達が蹂躙されてゆく……。デュノア……オルコットとなすすべなく落ちてゆく。
「貴様……貴様ああああ!キャストオフ!!!!」
『―――CASTOFF CHANGE STAGBEETLE―――』
「クロックアップ!!!!」
『―――CLOCK UP―――』
凄惨な光景を見せつけられた俺は、頭に血が上ってしまったのだろう。何の考えも無しにクロックアップを使ってしまった。ゆっくりと流れる世界で、福音に恨みを乗せるようにフルスロットルスイッチを三度押す。
『―――ONE TWO THREE――‐』
「ライダーキック!!!!」
『―――RIDER KICK――‐』
出力全開のイオンエネルギーを纏った俺の右足は、幾分かいつもより煌々と輝いているかのように感じた。クロックアップが終わる前に福音へと接近し、ボレーキックを顔面に放つ!
「うおらあっっっっ!!」
ガギィン!
『―――CLOCK OVER――‐』
(どうだ!?)
いつもだったらキックを喰らった相手は、クロックオーバーと同時に吹き飛ばされるはずなのに、福音はわずかに首の向きが違う程度だ。次の瞬間にはまるで油でも切れたブリキの人形のようにギギギ……と俺の方をゆっくりと見た。
ガシッ!
「づっ!ぐお!」
目にも止まらぬ速さでガタックの頭部を掴まれてしまう。頭部の装甲がギシギシ、メキメキと嫌な音を立て、ハイパーセンサーは頭部への致命的なダメージを知らせる警告をしつこく発していた。
ギリギリギリギリ……!
「ぐわああああ!!??」
「真ぉ!!」
俺の頭を握り潰そうと言わんばかりの力で、福音はガタックを締め上げる。篠ノ之の悲痛な叫び声が俺に届くが、何もかももう遅い。
福音のエネルギー翼がだんだんと俺を包み込み始めている。ここまでか……ここまでなのか!?やっと……ようやくあいつらに一歩歩み寄れたと思ったのに……!!
何が織斑の代わりに守るだよ!俺は、全く何もできてやしないじゃないか!ただ見ている事しかできなかった!鳳がボーデヴィッヒがオルコットがデュノアが落ちていくのを!
(ここで終わりで……いいのか……?)
いや……良い訳が無い!頑張った?良くやった?そんな物……全部やりきった奴の言葉だ!俺はまだ何もしちゃいない!まだ俺は……やれるんだ!
(そうだ……力を……もっと力を!総てを守って、戦う力を!)
すると、俺は違和感を感じた。包まれている光の毛色がいつの間にか違っているからだ。さっきまでの無機質で、絶望的な光じゃ無く……温かい。この……光は?
そう……まるで、俺を呼んでいるようだ。証拠に俺は光に導かれるかのように、だんだんと意識が深くなっていくのを感じた。
よく分からないが、この光を信じてみることにしよう。そうすれば、何かが分かる気がするんだ。俺はそうして光に包まれ、意識を手放すのであった。
ちょっと引っ張るような終わり方で申し訳ないですけど、今回はここまでという事で。しつこいようですが、最後の方はセカンド・シフトの前フリではないですよ。
次回はたぶんですけど色々言われるであろう超展開が待っている予定です……。辛口の意見も待ってますけど、次回は本当にほどほどにお願いします、マジで。
次回の事を今言っても仕方が無いか……明日は明日の風が吹くってね~♪という訳で次回は……決着!銀の福音!って所でしょうか。一夏とタッグで福音をぶっ潰すのもアリかな~とも思ってます。
それでは皆さん、次回もまたよろしくお願いします。