私はこの通り、年の瀬までにスパートかけてますよ。故にこの投稿日時の速さでございます!それと引き換えに内容が薄……ゲフンゲフン!
年内にあと何話更新できるでしょうか?せめて臨海学校まではいきたいところです……。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします!
「う~……すぅ?」
まだ筋肉痛で重い体を引きずりながら一組の戸を開く……と言ってもこの学園のドアは大半が自動ドアだが。一組に入って見るなりなんか通夜か?葬式か?と思うほどズ~ン……と重苦しい空気が教室内を包んでいた。
いったい俺が気を失っている間に何があったというのか。よく見れば篠ノ之やオルコットも正気を放っている。それどころか、篠ノ之は一番酷い印象を受ける。今すぐにでも頭からキノコが生えてきそうなほどだ。
「ホラーですやん……。こっちまで気が滅入るっての……」
「よっ、真!お早う!」
ベシィッ!
「ぬおぅ!?……ぐぅ~……!?」
俺が教室に歩を進めることを躊躇っていると、織斑は勢いよく俺の背中を叩きながら挨拶をしてきた。ち な み に現在の俺は絶賛全身筋肉痛である。ええ、そりゃあもう痛いですとも。
軽く背中を丸めて呻き声をあげる俺を見て、織斑はようやくハッとなり謝罪をしてきた。だが、時すでに時間切れ。俺の怒りは有頂天に達した。
「わ、悪い!そういや筋肉痛だったよな……」
「殺す…………!!」
「本当に悪かったって!そんなに殺意のこもった眼で見ないでくれよ……!」
よほど俺が恐ろしいのか、織斑は顔を青くしながら必死になって俺を諭す。……コイツに対していちいちこんな事で怒ってたらやってられんな、今回は勘弁してやることにしよう。
「チッ、次俺に触れてみろ。そん時はマジで48の殺人技の内一つをお前にプレゼントしてやる」
「分かった……恐ろしさの度合いはよく分からないけどな。その……48の殺人技……ってやつ?」
「キン〇マンを読めばわかる」
「あぁ……大昔にあったらしいな、そんな漫画」
大昔……大昔ねぇ、俺が転生する以前もかなり昔の漫画だったしな。近未来の世界が舞台となった「ココ」ではなおさら廃れた過去の遺産か……寂しいもんだ、面白いと思うんだけど。
「ってか、デュノアはどうした?」
「ん?いや、俺もよく分からないけど……「先に行ってて」って言われたからさ」
ふ~ん……見かけないと思ったら、なんかの用事でもあったらしい。だが、もうすぐ朝のショートホームルームが始まる時間だ。デュノアの性格上、遅刻する事は無いと思うが。
「ま……ど~でもいいか」
「ところで真。なんか昨日から女子達が暗いんだが、何か知らないか?」
「昨日の事を俺が知る訳ないだろ……。つーか、昨日からこんななのか……」
ついでだから織斑に俺が保健室に運ばれた後の話を聞いてみることに。席についてグダーッと体を机に預けながら、適当に織斑の声を脳にインストールさせる。
結局あの事故で学年別トーナメントは中止……だがデータを取るためにすべての一回戦は行うそうだ。半分エキシビションマッチになったって事な、そいつは残念……あのまま続けてれば優勝も狙えたかも……って俺とボーデヴィッヒは一回戦敗退みたいなモンか?
それと、俺達男が大浴場を使っていい時間帯が出来たらしい。そこは割とどうでも良いが、俺達の待遇が改善されるのは喜ばしい事だ。
「それと……さ、真はIS同士の会話ってどう思う?」
「!? ……言葉の意味が分からねぇ」
織斑が言うには、昨日の零落白夜が決まる最中、謎の空間にて「ボーデヴィッヒ」と会話を行ったらしい。一瞬だけ俺の事を見抜かれたのかと思って焦ったが、こいつがそんなに敏感なら篠ノ之たちも困らねぇか。
「…………んな非科学的なことは信じない主義だ」
「そっか……。まぁ深く考えないでくれよ、ただ聞いてみただけだから」
「気にしてねぇ、テメェの口から出る言葉の7割は流してるからな」
「だんだん俺の扱いが雑になってきてないか……?」
「ZZZ……」
「聞けよ!?」
とりあえず俺も「例の件」に関しては深く考えたくも無いし、真相を知りたくも無いため狸寝入りを決め込み織斑との会話を終わらす。
(そうだ……ISとの会話だと……?馬鹿馬鹿しい……そんな事が、あってたまるかってんだ)
「み、皆さん……お早うございます……」
山田先生の声が聞こえたので、それまで伏せていた体を起こす。声だけでもなんとなく察する事は出来たが、山田先生は非常に疲れた様子だった。苦労人ではあるとは思ってるけど、ここまで酷く疲れている山田先生は始めてみるかもしれない。
「今日はですね、転校生を紹介したいと思います……」
その一言で一組は盛大にざわつく。俺も声に出しはしないが、驚きを隠せないでいる。それでなくとも最近2人もの転校生が一組に来たというのに、またなのか?
「では、入って下さい」
「失礼します」
目を細めて教室の入り口を眺めるが、転校生なる者が入ってきた瞬間に俺は脱力した。なんてことは無い……ちゃんとスカートを履いたデュノアだった。
確かにシャルル・デュノアとは別人……という事で良いのか?本人だけど別人というかなり矛盾した表現がぴったりな気がする。
「改めて、シャルロット・デュノアです。皆さんよろしくお願いします」
貴公子よろしく……って違う違う、淑女よろしくデュノアは俺達に向かって丁寧なお辞儀を見せる。それに対して女子達の反応は薄い。男子だと思ってたやつが女子でした……となったら混乱するのも分かるけど。
で、デュノアが女子であるという事に気が付くと言う事は、芋づる式に女子達はある事に気が付く。それは織斑とデュノアが同室である事と、昨日は男子の入浴時間が……って、あり?もしかして一緒に入ったのか?……まぁ、いくら織斑といえどそれは無いか。
なんてくだらないことを考えていると、一組のドアがすさまじい勢いで開かれる。何事かと思ったら鳳だった。もう二組に情報が入ってるのか?それとも一組に来る間にスカートを履いたデュノアが目撃されてるとか?
「一夏ぁ!どういう事か説明しなさいよ!5秒だけ待ってあげるからなんか言いなさい!どっち道死ぬけど!」
「いや、鈴これは……その……。まっ、真!助けてくれ!」
「ガードベント」
「この薄情ものぉぉぉぉ!」
「近くにいたお前が悪い」
助けを求めて近寄ってきた織斑に、有無も言わさず羽交い絞めをかける。何とか俺を振りほどこうとするが、残念ながら技術うんぬんよりも圧倒的に筋力が足りてない。
羽交い絞めを決めた俺を見て、鳳はニヤリとした表情を浮かべて龍砲を……龍砲!?ソレだと俺も巻き込まれて死ぬだろうが!?せめて双天牙月で……。
「死ねっ!」
ドガン!と喧しい音をあげて龍砲が放たれた。あ……死んだわ……コレ……。…………嫌だー!織斑と一緒に半ば無理心中とが嫌すぎるー!
(さらば親父……先に逝く親不孝な息子を許してくれ……)
ズドオオオオン!!!!
すさまじい衝撃音が鳴るが、痛みも感じない……?生きてる?俺は生きてるのか!?おぉぉぉぉぅ!!今のはマジで死んだかと思った!生きてるって素晴らしい!
俺が生きているのは何故だ?と考えていると、目の前にはボーデヴィッヒがいた。となるAICで衝撃砲の慣性を消滅させたという事か。全く……AIC様々だな。
「助かったボーデヴィッヒ、礼は言っとく」
「同じく、ありがとうな。というよりISはもう直ったのか?」
「コアはかろうじて無事だったからな、予備パーツで組み直した」
あ、そういやよく見りゃレールカノンが無いか、織斑のクセによく気が付いた。しかし、予備パーツか……そういえばガタックの装甲が抉れた場合は替えが効かないのか……今後はもっと慎重に戦う事にしよう。
「お前は私の嫁にする!異論は認めん!」
「……婿じゃなくてか?」
「ん?何?何が起きた……?」
考え事をしていた間にどうやら一悶着あったらしい。織斑がボーデヴィッヒに嫁宣言され、気に入ったものをそういう呼び方をする古くからの習わしがある……とか言い始める。
古くからそんな慣わしあったらとっくにこんな国滅びてるっての。ていうかむしろ滅びてしまえ、そんな国。どうやらボーデヴィッヒに余計な事を吹き込んだ輩がいるらしい……。
「そして、加賀美」
「あ?俺もか?つーか、いいの?お前の後ろで嫁が大変なことになってるぞ」
再び鳳に衝撃砲を向けられ、逃げ道をオルコットにレーザーで防がれ……という風に、いわゆる「織斑LOVE勢」にだんだんと織斑が追いつめられているが、圧倒的スルースキルでボーデヴィッヒは俺との話を続ける。
「喜べ、貴様は私の戦友だ」
「あぁ?」
「ともに死線を潜り抜けた相棒を戦友と書いて友と呼ぶと聞いた」
マジでボーデヴィッヒに余計な事を吹き込んだ奴を今すぐここに連れてこい、説教してやる。嬉しくとも何ともないわ、むしろウザい。俺はきっと心底うんざりした顔をしている事だろう。
「ふざけんな、勝手に人を戦友呼ばわりするんじゃねぇ」
「そうかそうか、私に戦友と呼ばれるのがそんなに嬉しいか」
「人の話聞いてんのか、お前……」
「ついでに戦友のような人間を「ツンデレ」と呼ぶと聞いた。つまるところ、戦友の否定的発言は照れ隠しという事だろう?」
「だろう?……じゃねぇ!誰だ、余計な知識をお前に与えたのは!今すぐドイツから引っ張って来い!ハリィィィィ!!!!」
最近になってようやく「ツンデレ」言われなくなったと思ったらこれか!百歩譲って「ツン」は許してやろう。だが、いったい、いつ、なんどき、俺が、デレたよ!?
「ハッハッハ、まぁそんなに照れるな。これからもよろしく頼むぞ戦友よ」
「あぁ……もうそれで良いです……ハイ……」
もう大声出すだけ無駄な気がしてきた俺は、とりあえず薄暗いオーラを出しながら席に着き黙って耳をふさいだ。なんでかって?デュノアがとてもいい笑顔でパイルバンカーを構えているからだ。
ガコン!プシュー……!ズガァァァァン!!
物理的ダメージを与える武装なだけあって、威力は折り紙つきである。一年一組という名の大きな箱は、パイルバンカーによる一撃で大きくシェイクされるのであった。
**********
某日某所……そこにはとある天災の城があった。城と言っても比喩表現でしかないが、こんがらがったケーブルは城壁を思わせる……かもしれない。とにかく、そこは研究所なのだがラボと表現するよりもフォートレスと表現する方が近しい。
とある天災とは、言うまでも無くISの開発者である篠ノ之 束その人である。彼女は今の状態を一言で表すのなら、暇。であろう、故にナノ単位のISのプラモデルを組み立てるという常人では到底理解の及ばない暇つぶしにいそしんでいた。
テレ~テレ~テレテレテ~♪
不意に束の携帯の着信音が鳴り響いた。かの名作ゴット・ファーザーのテーマだ。最近ではどちらかというと某お笑い芸人が登場した場合に耳にする方が多いかもしれないが……
「この着信音は!?トォ!」
どんがらがっしゃ~ん!という風な様子で束は携帯電話に飛びついた。その際にいろいろと蹴散らしているのだが、束の優先順位から外れた物体の末路はそんなものである。
「もすもす終日?」
『…………』
束の挨拶と同時に携帯の通話が切れた、厳密に言えば通話すらしてはいないが。ちなみに、終日(ひねもす)とは呼んで時の如く朝から晩まで続く様の事を言うそうだ。
ワン切りされて束が焦っていると、待ってしばらくすると再びゴット・ファーザーのテーマが鳴り響く。束は今一度携帯の通話ボタンをプッシュし……。
「はいはい!みんなのアイドル束さん……」
『聞きたいことがある』
「あぁ、もう……切ろうともしないで話を進めないでよ。ちーちゃん」
『その名で呼ぶな』
「OK!ちーちゃん!」
携帯を通して聞こえる軽快な声に電話の主である千冬は頭痛を覚えた。昔からの事だと自分に言い聞かせ、さっさと自分の要件を話すことにする。
『VTシステムが発動した……と聞けば、後は私が何を言いたいかくらいわかるだろう』
「あれ?もしかしてちーちゃん私が作ったって思ってる?嫌だなぁ!あんな不っ細工なもの束さんが作る訳ないよ!」
作るもの完璧において十全でなければ意味がない、束のポリシーだ。千冬は本人の口からそれが聞ければ自分の用事は済んだ。
『そうか、邪魔をした』
「ああ、ちょっと待ってちーちゃん。あのさ~ホラ、何だっけ?いっくんともう一人の……なんか無駄に大口叩く癖にISの腕は可も無く不可も無くレベルの誰得ツンデレ野郎がいるでしょ?」
『……加賀美の事か』
そう言われて思いつく……というよりはイメージにぴったり合う人物を千冬は真以外に知らない。だが、不可解だ……なぜ束は真に用事があるというのか。
「そうそう!ソイツ!ソイツの事で一つ忠告しておこうと思って」
『忠告だと……?確かに奴はZECTの身内だが、警戒するようなことは何も……』
「誰得ツンデレ無駄ノッポをさぁ~これ以上ISに乗せないほうがいいと思うよ?」
『何だって?おい、束……それはどういう意味だ?』
「さっあね~私からはもう何も言えないかなぁ~っと、それじゃ!そういう訳だから!」
『待て、束!ちゃんと説明を……』
ピッ!
今度は束が一方的に通話を終了させた。束は用事が済んだ携帯電話をポイッとそこら辺に投げ捨て、回転イスに乱暴に腰掛け、しばらくクルクルと回って見せる。そして足でブレーキをかけると、ニコニコと楽しそうな笑みを浮かべる。
「さぁ~て……会えるのを楽しみにしてるよ、加賀美 真君?」
性別問わずに誰しもが見とれてしまうような綺麗な笑みを浮かべている……が、どうにもドス黒いオーラを纏っているように見えるのは、決して気のせいではないのだろう。
真にとって、この天災との出会いが何を意味するのか……それはまだ誰にも分からない……。
ラウラが真を戦友と呼ぶのは、何か特徴が欲しかったからです。他に「兄」とかあったかもしれませんが、真は兄と呼ばれるほど兄らしい事をラウラにしてませんので戦友になりました。今後は皆さんの脳内で戦友は「とも」と読んで下さい。
ようやく二巻に相当するシーンが終わったのですが、やっぱりしばらく幕間が続きそうですねぇ……。次回はとりあえず真の出番はほぼ無しで、簪と本音のガールズトーク?になると思います(多分)
それでは皆さん、また次回でお会いしましょう。