戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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以前、この小説を読んでくれている声優オタっぽいリア友に。

「真のイメージCVとかあるの?」

とか聞かれました。その時は答えませんでした……私としては真の容姿や声等は皆さんの想像した姿形が真だと思っているので。

でも答えないのも悪いので考えた結果、個人的には「櫻井 孝宏」さんですかねぇ?

「.hack GU」というゲームのキャラで「ハセヲ」ってのを演じてる時の櫻井さんが近いとイマジネーション。

小話は良いとして、本編に行きましょうか。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします!


真と簪の放課後(事情聴取)ですが何か?

「整備室……整備室……っと」

 

 放課後となり、簪に会いに行く予定だった俺は整備室を目指してふらふらと歩を進めていた。しかし、この学園も無駄に広いものだ……。普通にそのまま簪に会いに行けばよかった……って、俺は簪が何組の生徒か知らねぇじゃん。

 

 そんなことで、いつも通りガタックゼクターに先導してもらっての移動だ。たまに融通が利かない時もあるが、やはり私生活においてガタックゼクターは多方面に便が効く、ありがたい奴だぜ。

 

『キュイイイイ……』

 

「ん、そこか。毎度スマンな」

 

 どうやら、目の前の扉がそうらしい。立札を確認すると、確かにそこには整備室と書かれている。俺はガタックゼクターに一声かけると、相変わらずどこかへと飛んでいくのであった。

 

 別にもうどっか行く必要はない気もするが……。まぁいいや、ガタックゼクターは妙に命令した内容を忠実に再現しようとするから、「近くに居ろ」なんて命令したら四六時中俺の近くから離れてくれなさそうだ。

 

(って、んなこたぁどーでもいいんだっての…)

 

 さーて、この扉の奥に簪がいる訳だが……どう話を切り出していいものか。何とかして例の件に関しての話に持っていければ言う事なしだが、違和感なしに進めれる気がしねぇな……。

 

「加賀美君……?」

 

「うぉう!?」

 

 考え事の最中に話しかけられたため、思わず叫び声をあげてしまう。慌てて振り返ると、そこに立っていたのはほかでもない簪だった。

 

 まぁ……言われてみればそうか。確実に簪が整備室にいるとは限らんよな……。だが都合が良い事に今日も簪は整備室に用事があったようだ。

 

「えっと……どうかしたの?」

 

「ん?あぁ……いや……ええっと……」

 

 イカン……今になって思い出したが、簪に会いに来る時の適当な言い訳を考えるのを忘れていた。そうだな……何かないか……何かないか……。

 

「その……な?前、整備室に居るって言ってたろ?それで、何やってんのかな~と思って様子を見に来たんだが……迷惑だったか?」

 

「そんなことない!」

 

 俺の迷惑だったか?という発言に対し、簪は食い気味に返事をした。そう言ってくれるのは助かる……取りようによってはキモイ奴になりかねなかったし……。

 

「そうか、悪いな。押しかけるみたいになって」

 

「来ても良いって言ったのは私だから……。それより、入って?」

 

「おう、そうだな」

 

 簪が整備室に入るのに続いて、俺も同じく扉をくぐった。その先に広がっていた光景は、一言でいうなれば俺にはお門違い。見て一瞬でそう思った。

 

 何に使うかよく分からんコード類やら機材やら……というかそもそも第二世代型に近いISを使っている俺には無縁な物の方が多いのだろうし。

 

「てか、やっぱ広いよなぁ……」

 

「うん……ここは格納庫の次にISが多く集まる場所だから……」

 

 確かにそこらじゅうに打鉄やラファールが点在している。まるで博物館にでもいるような感じだ。ここに置いてあるという事は、何かしら整備をする必要があるのかもしれない。

 

「ん?コレ……打鉄のカスタム機か?」

 

「………………」

 

 物珍しさにあちらこちらと目移りさせていると、一機だけ異彩を放つ機体に目が留まった。それは淡い水色をした機体で、あまり原形はとどめていないものの仄かに打鉄の流れを汲んでいる印象を受ける。

 

 カスタム機、となるとデュノアのラファール・リヴァイヴ・カスタムツーと同じく専用機……ということになるのだろうが、ならばこの機体は誰のだ?もしかすると上級生の所有物かもしれない。

 

「なぁ、簪。これって……」

 

「その子は……打鉄弐式は私の専用機なの」

 

「専……?嘘ぉ!?お前、代表候補生だったのか!」

 

 若干失礼と思いながらも、俺はどうしても驚きを隠せなかった。なぜって、こんなにも儚いという言葉がぴったり当てはまる簪が戦う姿など想像できなかったからだ。

 

 それに代表候補生だったらクラス代表だよな?それならクラス対抗マッチがあったときに情報が耳に入るはずだが……。

 

(そういえば……)

 

 思えば鳳が初めて一組に顔を出してきたあの日、確かに女子がこう呟いていた。「専用機持ちは一組と四組しかいない」と、なるほど……その専用機がこれか。だが、まだ疑問は残る。

 

「簪……。行事にエントリーしてたか?」

 

「……してない。というより出来ないの……」

 

「? なんでだ?」

 

「この子……まだ完成してないから……」

 

「はぁ?」

 

 本当に、はぁ?の一言に尽きる。未完成の専用機が、どうして代表候補生の手元に転がってきているんだ。仕事が投げやりにもほどがあるだろ。責任者を呼べ!責任者を!

 

「どうして完成してないISがここにある?」

 

「それは……」

 

 話を聞けば、どうやらこの件に関しても織斑が関わっているらしい。順を追って説明すると、打鉄弐式を造っていた倉持技研という企業があったそうな。

 

 しかし、製作途中に男性IS操縦者である織斑 一夏が発見される。矢継ぎ早に政府から倉持技研に織斑 一夏の専用機作成を命じられ、打鉄弐式の制作は事実上の凍結……。

 

 これが一連の流れのようだ。それで簪はどうにかこうにか打鉄弐式のコア及び製作途中の機体を手元に置くことだけには成功したらしい。

 

「あ~……それはなんというか……」

 

 お気の毒なことで……としか言いようがないが、言いかけて止めた。そんなもの簪にとっては気休めにすらならんはずだ。誰も悪い奴が居ないってのが難点だわな……言えば政府が悪いが、正直仕方が無い事でもあるような気もするし……。いや、でも白式が完成してるんだから打鉄弐式を完成させてもいいような気も……。

 

「つまり簪は、ここでこいつを完成させるのが目標って訳か……」

 

「うん……」

 

「そうか、大変そうだな。相当な人数の作業になってんだろう?」

 

「一人でやってる……」

 

「はぁ!?」

 

 さっきとはかなりニュアンスの違う「はぁ」が口から飛び出た。あまりにもサラッと一人で作業してるとか言うもんで、簪と打鉄弐式を交互に眺めた。

 

「何でまた一人で……」

 

「そうじゃないと……ダメだから……」

 

「ダメって……何が?」

 

「……私には、お姉ちゃんがいるんだけど……」

 

 ッ!?予想外もしないところで一番聞きたかった話題が出てきた。思わず反応を示してしまうが、簪は俺の様子には特に気が付くことが無かったようだ。

 

「あの人は何でもできて……でも私は何をやってもあの人より上手にできることなんて何一つなくて……」

 

「…………」

 

「追いつこうって私なりに必死でいるつもりだけど、それでも私が見てるのはあの人の背中……」

 

 ……俺は兄弟とかいないから、こういう気持ちは共感してやれない……。兄弟ねぇ……織斑みたいにポジティブに姉を追っかけてる奴もいるが、この世にいる兄弟姉妹がそうという訳にはいかないよな。

 

 きっと、周りに姉と比べられるのが日常だったのだろう。必死にやってる簪……だがいくら必死にやっても姉に追いつけず、周りはそれを良しはしなかった。

 

 「どうしてできない」「姉はあんなにも優秀なのに」……と、周りの者たちはきっとそういう風な視線で簪を見ていたことだろう。簪の性格を見ればわかる。

 

 簪は自分に自信を持てないでいる。それは周りがそうやって簪にプレッシャーを与えていたからだ。結果、簪はより自分を出せなくなってしまった……と言ったところか。

 

(ケッ……反吐が出るぜ……)

 

 ここまでは俺の想像でしかないが、確かなイラつきと憤りを覚えた。どこまでいったって、個人は個人でしかないというのに。大事なのは個人のままでどこまで頑張れるかだ。

 

 簪は自分で言ってた通りに必死にやっていたに違いない。それなのにどうして姉ばかりと比べて簪を見てやらないんだ。周りの人間のエゴが今の簪を作り上げたとしか言いようがない。

 

「あの人は、一人で専用機を作り上げた……。だから私も一人でやるって決めたの……」

 

「そうすりゃ、姉に追いつけるってか」

 

「うん……」

 

 ……違うだろ、簪……。今のお前に大切なのは、一人でどうこうじゃない……誰かに頼るのをを覚える事だ。だが……言えない……俺がそんな事を言ったって無責任でしかない……。

 

 簪が気付けなければ意味は無い。姉と違ったって構わない、それが更識 簪なんだという事に。……今、俺が簪にしてやれることは何一つ……。

 

「そうか……。だけど既にここまでは完全に一人でやったんだよな?」

 

「う、うん……」

 

 俺の問いかけに簪はまた自信が無さそうに答える。はぁ~……こりゃかなり重症だな……。味方になってくれる奴は多少なりにいただろうが、どんな環境で育ってきたんだこの子は。

 

「ふ~ん……。十分すげぇと思うけどな」

 

「え……?」

 

「だから、ここまで出来たんなら十分すげぇって。俺なんてこの辺の機材がどういう用途かすら分からねぇんだぜ?」

 

 俺はそこら辺に落ちてきた……こう……名状しがたい謎のコードを拾い手の上で弄びながらそう言った。これは完全に俺の本心、自信を付けさせるためとかそんなんじゃない。

 

 ぶっちゃけISの仕組みなんて八割がた理解できていない俺だ。一からISを組むなんて夢のまた夢……。それを思えば簪はすげぇ。

 

「別に……これくらいだったら他の人だって……」

 

「だぁ~……そうじゃねぇだろ……。俺がいつ他の奴の話したよ?俺は、簪を褒めてんだよ、素直に受け取っとけ」

 

「…………」

 

 自ら他人を引き合いに出した簪にガクッと肩を落とした後「俺は」と「簪を」を強調しながらそう言った。すると簪はみるみる顔を紅潮させていく、あまりにも褒められることに慣れてないからか……。

 

「嬉しい……すごく……」

 

「うんうん、それで良いんだよ。最初からそうしとけ」

 

「……加賀美君だって素直じゃないくせに」

 

「それは誰に吹き込まれた……?」

 

「本音……」

 

 まぁそうだろうね、うん。本音のせいというか、別に気分が悪いわけでも無いが……どうにも俺が素直じゃ無い奴みたいな風評被害が広まっている気がする。俺は素直じゃ無い奴でなく嫌な奴なんです、ええ、嫌な奴ですとも。

 

「加賀美君の事は……だいたい教えてもらったから」

 

「そうか……。ま、まぁそれはいいや、アレだ簪……真で良いぜ」

 

「?」

 

「俺の事は名前で良い。なんか余所余所しいだろ」

 

「良いの……!?」

 

「俺が良いって言ってるから良いんだよ」

 

 俺は他人を下の名前で呼ぶことはめったにしないが、向こうが俺を呼ぶときは好きにさせている。当然あからさまに嫌な呼び方ならさせねぇが。

 

「そ、それじゃ……ま、真……」

 

「あぁ、簪」

 

 さっそく真と呼んできた簪の呼びかけに答えると、なぜか簪は両手で顔を押さえて俺に背中を向ける。……なんでだよ、アレか?嫌なのか?嫌なら別にムリすることは無いんだが……。

 

「……大丈夫か?」

 

「だいっ……丈夫……うん……平気」

 

 こちらに振り返った簪は呼吸が整っていない。本当にどうした?時々だが、簪の事がよく分からない時がある。初対面で慣れないうちは誰にでもこんな感じなのかねぇ?

 

「ところでさ、頼みがあるんだが」

 

「どうしたの……?」

 

「作業とか、見ててもいいか」

 

「ええっ……!?見るの……?」

 

「ああ、邪魔ならすぐに暇する。見るっつっても単に興味本位だしな」

 

 結構な無理なお願いだから、断られたらすぐに退散するつもりだった。だが簪は真剣に悩んでいるようで、少しばかりの唸り声をあげている。

 

「分かった……いいよ」

 

「あ~……悪いな、なんか無理言って」

 

「ううん、気にしないで……。それじゃ、始めるから……」

 

 

 簪の言葉を聞くと、俺は簪の打鉄弐式が置いてある場所から反対側の壁にもたれかかった。このあたりなら簪も多少は集中できるだろう。

 

 作業を始めた簪はというと……それこそまるで別人のようだった。空間投影するタイプのキーボードをいじくっては、ああでもないこうでもないと悩んでいる様子だ。その姿は本物の研究員さながらにも見える。

 

 結局なにをやってるのかはチンプンカンプンだったが、案外見てても飽きないもんだ。あっという間に時間は過ぎてゆき、そろそろ飯の時間と言ったところだ。

 

「…………」

 

 だが簪は作業を止める気配はない。集中しすぎてしまっているのかもしれないな……それでなくともここまでノンストップでいるのに、このままでは倒れてしまいそうだ。

 

「簪。そろそろ止めにしないか?もうすぐ飯だし」

 

「いい……大丈夫……」

 

「はぁ……?大丈夫って……」

 

「いつも晩御飯は食べてないから……」

 

 簪の言葉に俺は思わずピクリと反応。そしてそのまま続けた。

 

「……おれ……」

 

「え……?何?」

 

「そこに直れぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「はっ、ハイ!」

 

 俺の号令に簪は軍隊よろしくビシッとその場に立った。よろしい、ならばお説教だ。いつも食ってないだぁ?そんな事を加賀美家の台所事情……いや、家事事情を任されている俺の前で言ったのが運の尽きだ。

 

「年頃の娘が馬鹿言ってんじゃねぇよ。なぜ人間が食事をとるか考えてみろ、腹が減ったという欲求を満たすという理由はもちろん、そもそも食事というものはだな一日に消費した栄養価を補給するという意味合いでもある。それで一日の終わりである晩飯を抜くなんざもっての外だぞ。食事の量を減らすのはまだしも、全く食わないとなると、その日の栄養を賄えなくなる。それなら次の朝喰えばいいや、なんてのもダメだ。そんな事をしたら三食の栄養価バランスが偏って……」

 

「まっ、真……!」

 

「なんだ簪。まだ三分の一も話し終わってないぞ」

 

「分かったから……。ちゃんと食べます……」

 

「分かればよろしい。行くぞ」

 

「あっ……!?」

 

 反省の色は見えるが、どうにもほっといたら逃げそうな気がした。だから俺は簪の手を掴むと少しだけ強めに引っ張りながら歩く。

 

「なんか真……お母さんみたい」

 

「誰がお母さんか」

 

 お母さん……ねぇ。必要に迫られたから家事等は覚えただけだがな。だって、親父不器用だし。ガキの頃から家事をする親父を残念な目で見ていた記憶がよみがえってくる。

 

 そういえば、親父の奴……俺がIS学園に来てるって事はまともな飯を食っていないのではないだろうか?面倒くさいとか言って外食もせずにコンビニ弁当でも食べてるんじゃあ……。

 

(うん、絶対そうだコレ。親父も後で説教だな)

 

 そういや土日もいろいろ忙しくて帰れてなかったっけ?はぁ……今度の土曜か日曜は帰って親父に飯でも作ってやらなければ、説教はついでにその時しよう。

 

「真?」

 

「あ?どうした?」

 

「なんだか楽しそうだったから……」

 

「そうか……。いや、なんでもねぇよ」

 

 いかんいかん……顔に出てたか……。簪の不思議そうな視線が妙に痛く感じる。それにしても、なんで楽しそうだったろうな、俺。親父の事を考えてたからか……?

 

 なにそれ、キモッ。あれだな、自覚はあるが俺って親離れできてないところがあるな。親父も親父で子離れできてない節があるし……。何だこの親子は、頭の中がお花畑か。

 

 そう考えていると、誰かが俺の心を読んでいるわけでも無いのに気恥ずかしくなってきた。不意に簪の手を握っていた手の力が強くなってしまう。

 

「ッ……!?」

 

「あ……悪い。痛かったか?」

 

「大丈夫、むしろ……」

 

「?」

 

「な、なんでもない……!」

 

 簪は、何かを言いかけて止めた。俺には簪がなんて続けようとしたか分からない。なのでとにかく気にしないことにしておいた。

 

 食堂に着くまで簪は無言のままで、また妙に気まずかったが。テーブルについてしまえばなんてことも無かった。朝とは違い今度は自分から話題を振ってくれて、俺もそれにきちんと答える。

 

 もちろん話題は特撮関連の話だ。女の子と特撮の話ばかりしてどうなんだ?と自分でも思ったが、簪が楽しそうにしてくれているので水を差すことはしなかった。

 

 昨日や今日の朝が嘘のように簪は笑ってくれている。どうやら、完全に心を開いてくれたらしい。当初の簪を訪ねる目的とはかなり違ってきてしまったが、この笑顔とプライスレス……結果オーライという事にしておこう。

 

 

 




真はオカン属性が入ってます。

特に食事に関してはうるさいです。下手を打てば小一時間説教をし始める始末。今の主な被害者としては新ですね。

更識姉妹の関係修復に乗り出したはずが、なぜか簪とより仲良くなるだけで終わってしまった……。やっぱあれですね、お姉ちゃん出さないと難しいですね。

真も本気で二人の仲をどうにかしようとしてるみたいですし、またもう少ししたらお姉ちゃんの出番があるかもです。

それより、そろそろ本格的に学年別トーナメントに向けて話に動きを付けなくては……次回はどうなるのか私が一番よく分かってません!

それでは皆さん、また次回でお会いしましょう!

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