戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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みなさんどうもです!

早速ですが一つ謝罪を……今回、ラウラは一つも出てきません。

前回のあとがきで「ラウラが出るよ~」みたいなことをいったらこのザマですよ……鈴の時もそうだったし、誰が出るとかの予告止めようかな……。

今回も特に動きのない地っ味~な話ですが、お付き合いいただければ嬉しいです。

それでは、今回もよろしくお願いします!


真と簪の朝(プラス本音)ですが何か?

 ヴーヴーと鳴り響く携帯のアラーム音で目を覚ます。今日も当たり前の時間に起きて当たり前に過ご……せたらどれだけいいだろうか。

 

 まず寝起きから穏やかじゃないのである。なんでかって女子と同室だからに他ない。まだぼんやりとする目を擦りながら隣のベッドを眺めてみるが、そこには簪の姿は無い。

 

 だとすれば洗面所にいるとみるのが妥当か……大方俺が寝ている間に準備をしておこうとでも思ったのだろう。なら俺も制服に着替えておくか、別に女子と違って髪型を整えたりはしないし。

 

 枕元に置いてある制服に手を伸ばし、袖を通し始める。何度やっても着辛い制服だ、やけに止めるところが多いせいで着崩すことすらままならない。もう少し楽な感じにカスタムするべきだった。

 

「あ……。お、お早う……」

 

「ん……。お早う」

 

 俺が調度制服を着終わったあたりで簪は予想通り洗面所から出てきた。一応挨拶はしてくれたが、簪は挨拶をしたっきり時が止まったように動かない。俺もなんと続けたらいいか分からず固まったままだけど。

 

「あ~……昨晩は眠れたか?」

 

「ど、どうしてそんなこと聞くの……?」

 

「いや、緊張したんじゃないかと思って(怖がってる奴と同室的な意味で)」

 

「当たり前でしょう……!?(想い人と同室的な意味で)」

 

「まぁ……そうだよな、スマン……」

 

 俺の一言に簪は顔を真っ赤にして肯定の意思を示す。なんというか……少し配慮が足りなかったかもしれない。あまり当たり前の発言は避けなければ。

 

「ところで、洗面所はもう使って大丈夫か?」

 

「あ……ごめんなさい。待ってた……?」

 

「ああ、いや!違うから!別に待ってたとかじゃなくて、一応の確認だからな!」

 

 まるで催促したかのように聞こえたのか、簪はハッとしたような表情をした。その反応を見た俺は自分でも驚くくらいの必死さで簪にフォローを入れる。

 

 その数瞬にやってくるのは沈黙……。うん……本当にさ、シーン……って感じの。…………いたたまれねぇ!不毛すぎるだろうがよ、この組み合わせは!誰だ部屋割り考えた奴は…………。

 

「…………歯ぁ磨いてくる」

 

 とだけ言って逃げるように洗面所に突入する。俺と簪の気まずさといったら……氷河期とかに例えるのがふさわしいだろう。もうね、寒いよ、心が……さ。

 

 鏡の前に立つと、俺の表情は数割増しで怠さが露見してしまっている。簪との同室生活初日の朝でコレとか……俺はもしかして心労を患ってしまうかもしれない。

 

「はぁ……よしっ」

 

 一度大きくため息をついた後、鏡の前に映る自分を睨みつける。そして掌いっぱいに貯めた水を顔に叩きつけるかのように浴びた。

 

 とりあえず目は覚めた。そしたらさっさと歯磨きを済ませて洗面所の扉の前に立つ。よし、とりあえず簪を食事に誘うところからだ。俺の胃がどうにかなる前に仲良くなろう……。

 

(誘おうと思ったらいないオチとかじゃないだろうな……)

 

 なんて心配しながら洗面所のドアを開くが、特に心配する必要もなく簪はベッドに座ってオロオロとしていた。…………それはそれでいったい何をやってるんだこの子は?

 

「……簪」

 

「なっ、何……?」

 

「その……朝飯、一緒にどうかな~なんて思ったりして……」

 

「いいの……?」

 

「良いも悪いも何も、俺がそうしたいから誘ってるんだけど」

 

「…………!」

 

 なぜだろう、以外と好感触である。簪はなんていうか、こうパアッって感じで背後に華が開いたかのようなエフェクトが見える。女ってのはよく分からん……俺の事を怖がってる……んだよな?

 

 まぁいいや、付いてきてくれるなら特に理由は聞かなくても。それこそ、ややこしいことになる事に違いない。俺の勘がそういっている。

 

「じゃ、行くか?」

 

「…………」

 

 俺の言葉に簪は大きくコクコクッと首を縦に振った。だからなんでそんなに嬉しそうで……。ああ、もういいや……考えれば考えるだけ無駄そうだし。

 

 とにかくとして、俺と簪は連れだって食堂目指して歩き出す。簪は俺の数歩後ろを歩いているが……なんかこの状態、鳳の時に似てんなぁ……。

 

 などと考えながら、後ろ頭をボリボリと掻く。どうせ振り向いたら動きが止まるだろうと思い、俺は食堂まで常に簪に背中を向けたままなのであった。

**********

「…………」

 

「…………」

 

 食事に誘ったまでは良かった。だがいざ一緒に食事を初めてみれば、ご覧の有様だよ!お互いに自分が買った料理を突くのみで、一切会話は無い。

 

 違う……俺はこんなことのために簪を食事に誘ったんじゃない。仲良くなるために誘ったのだ。こうなってしまってはもはや奥義を使うしかあるまい。いざ、特撮の話題を振ってみるのだ!

 

「なぁ?好きなんだよな(特撮が)」

 

「え……?えぇぇぇえぇぇぇ!?」

 

 ビックリした……そんな大声出せるんだな。でもなんだろうか、この慌てっぷりは?この間の件でバレていないと思ってたのか?

 

「そっ……それはっ……。その……その……好きです!(真が)」

 

「あぁ、やっぱりな。この間から薄々気づいてはいたが」

 

「きっ、気付いてたの!?」

 

 身を乗り出して俺にそんな事を聞く簪。それにしてもまるで別人だな、根暗っぽくしてるよりこっちの方が親しみがあって良い気がするけどなぁ……。

 

「そりゃ気付くだろ。だってあれだけ……」

 

「あ、あれだけ……」

 

「チャージマンのDVD大事にしてたらさ」

 

「…………」

 

 俺と簪の間にビシッと氷にヒビが入ったような音が鳴る。と同時に簪の表情は絶望とかそんな感じのものが色濃く出ていた。え?え?何?俺は何か悪いことを言ったのか?

 

「あの……俺は何か悪い事を聞いただろうか?」

 

「……質問自体に問題は無い。ただ……聞き方に問題が有っただけ……」

 

 怖ッ!?なんだこの声だけで小動物くらいなら死止める(誤字に非ず)事が出来そうな声色は!?と、とにかく簪はセリフと同時にフラァ……っと席に着いた。

 

「まぁなんだ、何かよく分からんが悪かった」

 

「大丈夫……じゃないけど、大丈夫だから……」

 

「それで、特撮は好きって解釈でオーケー?」

 

 簪は大きくうなずいた。そりゃあれだけ大声で好きですって言うくらいだからよっぽどのものなのだろう。どれ、話を少し掘り下げてみることにしよう。

 

「俺もさ、特撮好きなんだよ。意外だってよく言われるけど」

 

「うん……知ってる……」

 

「へ?なんで知ってんだ?俺、まだ一度も自分の口から好きだとは言った事ないぜ」

 

「あっ……!え、えっと……それは、その……」

 

 揚げ足を取るような形になるが、つい気になった一言だったので突っ込んでしまう。それを聞いた簪はアタフタしているが、なかなか言葉が続かない。

 

「ま、別にいいか。俺は特撮だったらだいたいいける口なんだが、簪はどうだ?」

 

「私も、特撮全般……かな?あ……でもヒーローアニメもよく見る……」

 

「アニメか……。俺はアニメの方はほとんど見ねぇな。何かオススメとかあったりするか?」

 

「それだったら……」

 

 ここからは俺達はけっこう盛り上がった……のかなぁ……?俺としては共通の話題を交わせる奴が女子にも居たのが嬉しくて、割とテンションあがってたけど。

 

 何しろこの簪、感情の起伏がほとんどないし、表情にもあまり変化が見られない。さっきのアレとかは例外的なモノとしておいて、どうなんだこれ?心を開いてくれてんのかね?

 

「…………」

 

「どうかしたの……?」

 

「いや、なんでもない」

 

「?……」

 

 この様子を見るにその心配も無さそうだ……。はぁ……とりあえずは良かったな、このまま怖がられっぱなしだとどうしようかと思っていだが。

 

「あれ?加賀美君~浮気はダメじゃん」

 

「あぁん!?」

 

 俺が心の中で一安心していたところに背後から声をかけられた。その女子は一組の女子だが、名前は……なんだっけ?う~ん……ダメだ思い出せん。別にいいか、名前呼ばなきゃいい話だ。

 

「俺に浮気する相手はいねぇからな」

 

「またまた!のほほんさん以外いないでしょ?」

 

「ッ…………」

 

 ?……今、一瞬だが簪の表情が歪んだように見えた。よく分からんが、気にするほどの事でもないのか?

 

「ゲスの勘繰りは今すぐ止めろ。俺はともかく本音に迷惑だ」

 

「分かってるって、冗談通じないな~加賀美君は」

 

「で?わざわざそれだけ言いに来たのか?随分暇みたいじゃねぇか」

 

「うっ……本当に加賀美君の言葉はナイフだよ、グサッと来たよ。うん……まぁ用事というより警告?かな」

 

「警告……?」

 

 警告とはまた物騒な、それだったら対応が面倒臭かろうと用事の方がまだ良かった。しかし、本当に思い当るところは何もないが。

 

「加賀美君って今日が日直だよね?いつも通りの時間でのんびりしてていいのかなって」

 

「にっちょ……くぅ!?マジか、完全に忘れてた!」

 

 言われてみれば確かに今日が俺の日直の日だ。大慌てで残った飯を書き込むようにして飲み込むと、俺はその場に勢いよく立ち上がった。

 

「悪い簪!俺は先に行くから!あと、あれだ。助かった、礼は言っとく」

 

「ジュース一本で良いよ」

 

「ほざけ!じゃあな簪」

 

「あっ……!」

 

 簪は俺に何か言いたげだったが、残念ながら今の俺には構ってやれる余裕はない。朝になって織斑先生に日直の仕事を忘れてましたとか言えるか!

 

 それこそ本気でクロックアップを使ってやろうかとも思う。でもあの人は勘が良いからばれそうな気が……。ってこんなことを言ってる場合ではない……ダッシュだ!

**********

「行っちゃった……」

 

 引き留める間もなく真は食堂から走り去っていってしまった。まるで一年前の再現かのようだ。今回のケースはかなり大急ぎのようなので、仕方ない部分はあるが。

 

「…………」

 

 ポツンと一人テーブルに取り残される。簪にしてみれば珍しい話ではないが、先ほどまで夢のような時間が続いていた反動が大きいらしく、少し物寂しく感じられるようだ。

 

「あれ~?かんちゃ~ん?」

 

「本音……?」

 

 偶然か、それとも必然か真がいなくなったタイミングでちょうど本音が現れた。最近はお互い疎遠気味な2人であったが、当然本音はそんなことは気にしない。滑り込むようにして簪の隣に座った。

 

「久しぶりのかんちゃんだ~。わ~い」

 

「ちょっ……本音……。抱き着かないで……」

 

 おもむろに抱き着いてくる本音に簪は困惑の表情を見せる。本音のこういったスキンシップも昔からだが、なぜこうもナチュラルに人に抱き着けるのかと簪は思う。

 

「えへへ~、嬉しくてつい~。それよりかんちゃん~、また一人でご飯なの~?」

 

「…………」

 

 簪は迷う。今の今まで真がいて、一緒に食事をしていたと告げるかどうかを。この迷いを生む原因としては、例の噂話が大きく作用していた。

 

 「加賀美 真と布仏 本音は交際中」もはやこの噂は真と本音が一緒に行動しすぎで、IS学園女生徒からは呆れられているレベルだ。

 

 本人たちは、さっきの真のように事実を否定している。が、それが建前で本当に付き合っているとしたら?もしここで簪が真との食事を告白したとして、本音が微妙な反応を示したとしたら?

 

 簪はそれが怖くて、本音に事実を言えないでいた。初恋の人物が、仲良くなる以前に自分の親友と付き合っているなんて状況は誰だって苦痛だ。

 

(ここで弱気になっちゃダメ……)

 

 しかし、簪は決心する。包み隠さずすべて話してしまおうと。真が初恋の相手であることから、現在真と同室である事など全て。傷つくことを恐れていたら、一生真には好きになってはもらえないと簪は腹をくくった。

 

「さっきまで、加賀美君と一緒に……」

 

「かがみん~!?なんで~!?」

 

 もちろん本音は驚きを隠せない。友人なんて不必要と考える真と、引っ込み思案な簪。この両者をよく知っている本音からして、全く接点が見えてこないからである。

 

「今ね、加賀美君と……同じ部屋なの。だから朝一緒にどうだって加賀美君が……」

 

「かがみんと同じ部屋なの~?そっか~」

 

 真と簪が同室と聞いて、本音はニコニコと楽しそうに笑っていた。自分の友人である2人が仲良くなっている事実を聞いて、純粋に嬉しいようだ。

 

 対して簪は本音のリアクションを見てとりあえず安堵する。どうやら、本音にとって真は友人の域を出ないらしい。それならと簪は続けた。

 

「それと、本音……。私がずっと昔から好きな人がいるの……知ってる……よね?」

 

「えっと~確か悪い人から助けてくれた人の事だよね~?その人がどうかした~?」

 

「信じられないかもしれないけど……その人と加賀美君……同一人物なの……」

 

「そうなの~!?よかったね~!かんちゃん~!」

 

 簪の言葉に本音はまたも驚く。それと同時に本音は簪の手をしっかりと握り、大きく上下に振った。簪はというとあまりのあっけなさにポカンとした表情だ。

 

「本当に良かったよ~!ずっと会いたいって言ってたもんね~。そっか~かがみんがか~偶然ってあるものだね~」

 

「う、うん……」

 

「頑張ってね~。私は応援してるよ~」

 

 興奮しているのか本音は余った袖をバッサバッサと振っている。まるで自分の事のように喜んでくれている本音を見て、簪は少しだけ負い目を感じた。

 

 だが、こうなったら何が何でも真をオトさなくてはと決心がついた。応援してくれるのなら、それには報いなければならない。簪は心の中で小さく拳を握る。

 

「そうと分かれば私がかがみんの趣味趣向を教えてしんぜよう~」

 

「何のキャラなの……それ?仙人……?」

 

 そう簪に言われた途端、本音は「フォッフォッフォッ」と笑いながら顎髭を触るような仕草を見せる。それを見て簪も思わずクスリと笑みをこぼす。

 

 そうしてしばらく簪と本音の2人は真に関するトークで盛り上がりを見せる。その頃の真と言ったらとにかくクシャミを連発しながら「噂話か……?」などとボソリと呟くのであった。

**********

「ふんふんふふ~ん♪」

 

 簪と別れた本音は上機嫌で自身のクラスである一組を目指す。どう簪と真の仲を取り持つか、などと考えていると楽しくて仕方が無いらしい。

 

「かがみんとかんちゃんが同室か~」

 

 そう呟くとふと本音は足取りが重くなるのを感じた。なぜだ、親友の恋が進展しようとしているのに、嬉しいはずなのにと本音は困惑を覚える。

 

「同……室か~……」

 

 本音の足は完全に止まってしまう。さっきまでの気分が嘘かのように、本音は心の奥底にモヤモヤする「何か」を感じる。

 

(変だな~、嬉しいはずなのに~……)

 

 そう、真と簪が仲良くなって、さらに言えば簪の初恋の人物が真だった。この事実は本当に本音も嬉しいと思っている。それと同時に本人にもよく分からないモヤモヤを感じているのも確かだった。

 

 考えても考えても本音の頭に明確な答えは現れない。それどころか、このモヤモヤの正体を考えると、それに比例するかのようにますます気分は沈んでいく一方だった。

 

(む~……)

 

 今日の自分はどこか変だと「いつもの」布仏 本音に戻ろうとするが、出てきたのは大きな溜息一つ。

 

「ダメだな~……。かがみんがかんちゃんの初恋の人って聞いてから変だよ~」

 

「初……恋ッッ……!?」

 

 割と普段から聞きなれた声が本音の背後から発せられた。本音にはそれが誰の声なのか分かっているし、何よりその人物にとって一番聞かせてはならない内容を呟いていたために、冷や汗が止まらない。

 

「それでなくても同室なのも許せないのにあまつさえ初恋……!?確かに助けられたのかもしれないけどどこをどう転がって好きになったの……?監視してたけど口も態度も悪いし上にZECTなんていう怪しい集団の会長の孫よ……そんな男に簪ちゃんの事は任せられないわ……というわけで、本音ちゃん♪」

 

「な、なんですか~?」

 

「ちょ~っとそのお話……詳しく聞かせてくれないかしら?」

 

 本音が振り返るとそこには予想通り……修羅が立っていた。広げられた扇子には「憤怒」の二文字。とりあえず本音は心の中で、これからかなり面倒臭い目に合うであろう真に謝罪を述べるのだった。

 

 

 




IS学園に日直的なシステムがあるかどうかは知りませんが、まぁ学校だから多少はね?

とにかく簪と本音を一対一で会話させるシーンが欲しかったので日直なんてのはなんとなくです。

真への想いを打ち明ける簪と、真への想いに気づかない本音……この恋は一筋縄じゃいかなさそうですなぁ(他人事)

一筋縄じゃないといえば、とうとう「あの人」の耳に情報が入っちゃった感じで、真の明日が心配だ……(他人事)

さてさて、次回はどうなる事やら……。とにかく学年別トーナメント篇は長くなりそうだ……。

それでは皆さん、また次回にお会いしましょう!

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