ここまでたどり着くのに15話……完結するまでいつまでかかるのやら……。
それもありますけど15話時点でタイトルがなかなか思いつかないという悲惨な状況になってます。
まぁ新しい候補生が出てくるときはいつも()の部分だけ変えてるだけだから良いよね!ぶっちゃけるとただの手抜きですが。
それでは、今回もよろしくお願いします!
代表候補生襲来(仏国&独国)ですが何か?
「今日は転校生を紹介します!しかも2人ですよ!」
朝のSHRにて、山田先生がなぜか得意げそうにそう告げる。ここはIS学園であって別に転校生は珍しい話ではない。それでもやはりどんな人物かは気になるようで、大半の女子達はざわついている。
(くは……くだらねぇ……)
俺はというと、当然ながら興味なし。我ながら無関心もいいところだ。頬杖ついて欠伸を吹かしている俺はこのクラス内でかなり浮いていることだろう。別に今始まった事でもないけどな。
「それでは、入ってきてください!」
山田先生の言葉と共に、件の転校生2人が一組へと入室した。それと同時に教室のざわつきも大きくなる。いや、大きくなるどころの話ではなかった。なぜなら、転校生のうち片方が……男の格好をしているからだ。
「えっと、自己紹介をお願いします」
「はい。皆さん初めまして、僕はフランスから来たシャルル・デュノアと言います。ここに僕と似た境遇の男子が居ると聞いてやってきました。どうかよろしくお願いします」
「「「キャアアアアアアアア!!!」」」
(セーフ……)
一組の面子が黄色い声を上げるのを見越して瞬時に耳をふさいだ俺はセーフ。大して織斑は頭抱えて「うごぉぅ……」とか呻いてるから間に合わなかったのだろう。
てか何ですか?今の反応を見るからにこのクラスの女子達はデュノアを男子認定ですか?馬鹿ですか?確かにいかにも貴公子然とした様子だし、一見すれば男子か女子か迷うような中性的な見た目をデュノアはしている。
だけど普通に考えて時期がおかしいだろうが。織斑がIS動かしてから行われた一斉検査から一体何か月たったと思ってるんだよ。4月より前だぞ、あの検査。それで発見されたのが俺だし、おそらく検査を行った日時は世界のどこもあまり変わらないはずだ。
にもかかわらずデュノアは「国の方でゴタゴタがあって、入学の時期がずれました」などの弁明を一切しない。つまり、最近見つかった体でIS学園に来ているということになる。
その辺りを今突っ込んでもいいのだが、アクションは起こさない方が良い。というか名前からして「デュノア社」からの回し者と見るのが正解だろう。
確か「ラファール・リヴァイヴ」の開発をしたおおもとの企業だったと記憶している。俺も俺でZECTという一大企業の代表としてこの席に座ってるといっても過言ではないのだから、下手に情報流してZECTをみすみす危険にさらすわけにもいかん。
(関わりあいにはならない方が良いか……)
なるべく接触を断つのが正解だな。男子として潜り込んでいるから難しいかもしれないが、まぁそこは俺の人当たりの悪さで何とかなるはずだ。……たまに本気で自分で言ってて悲しくなってくる。
「あ……あの。ボーデヴィッヒさんも何か……」
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
デュノアもそうだが、こっちもこっちで……なんというか……うん。面倒くさそうなやつが転校してきた。鳳よりもチビッこいくせに醸し出すオーラは強者のソレだ。ってか、リアルで眼帯してる奴を初めてみた。
「ッ!貴様は!」
ボーデヴィッヒとやらは織斑を視界にとらえるや否や、ズンズンと詰め寄り手を振り上げスパーン!とビンタ。あまりに矢継ぎ早だったため、この俺でもポカンである。それよりもビンタされた本人が一番ポカンとした様子だ。
「いきなり何するんだ!」
「私は認めん、貴様が教官の弟などと」
ほら見ろ面倒臭そうじゃないですかヤダーっ!何やらただならぬ因縁が織斑とあるらしい。俺には関係のない話だが、織斑の馬鹿は高確率で俺を巻き込みにかかりやがる。アレと一緒でロクなことがあった試がない。
(今回ばっかりはどうか……!デュノアの対応で忙しくなるだろうし……)
「あ~……SHRは以上だ。各々、授業に遅れないように」
非常に気まずくなったSHRを織斑先生はさっさと切り上げた。と同時に女子達は着替えを開始しようとする。はぁ……今日は実習だったか……?毎度の事ながら更衣室で着替えてほしいものだ。さて……社会的に死にたくはないし俺もさっさと行きますか。
「君が織斑君?僕は……」
「あぁ、そういうの良いから。今はとっとと教室を出て……って真!なんでいつもいつも先に行こうとするんだよ!」
「テメェを待ってやる義理はねぇ」
それだけ言って顔も合わせずに教室から出る。すると織斑もデュノアも俺の背中を追ってきているようだ。それを思うと俺の早歩きのスピードは少し早まる。
「ね、ねぇ?なんであんなに急いで教室から出たの?」
「ほら……女子達がさ、着替えようとするだろ?それだと俺達が居合わせる訳にもいかないからな」
「あ、そっか……そうだよね……」
「それより真。なんでそんなに急いでるんだよ?前みたいなことはもうないと思うぞ?」
「あぁ?……お前の姉貴が面倒臭いからだろうがよ」
本当はデュノアに話しかけられたくないからだが、適当に理由を付けておく。すると、それなりに織斑も納得がいくのか「あ~……」と小さく声を上げる。
「前みたいなこと……って前に何かあったの?」
「あぁ……前までは俺達が移動するのに合わせて大量の女子が押し寄せて来てたんだけどな、真が……」
『どけ、馬鹿ども。邪魔だ』
「の二言で蹴散らして、それ以来はもう女子は見かけないな」
なんかそんな事もあったな……物珍しいからだろうが、文字通り波みたいになって押し寄せやがって、アホか……もぅ……。本当にこの学園の奴らってアホばっかだって心から思う。
「今思えば、もう少し言い方があったんじゃないか?」
「アホか真面目に授業に向かってる俺が、なんでそれを妨害しようとするバカ女どもに気を使ってやらんにゃならんのだ」
「あ、あはは……」
む、今の乾いた笑い声はデュノアか?よしよし、割と悪い印象を与えられているらしい。このままの調子で関わらない路線で行きたいものだ。
そんなこんなで歩いていると更衣室までようやくたどり着く、元が女子高だったから仕方が無いものの……やっぱり男子には優しくない学校だ。
「やっと自己紹介が出来そうだね、僕はシャルル・デュノア。気軽にシャルルって呼んでよ」
「ああ、よろしくシャルル。俺は織斑 一夏。俺の事も名前で……っておい真!一人で行こうとしてるんだよ?」
やべ、ばれた。織斑とデュノアが話している間にさっさと着替えて行っちまおうと思ってたのに。織斑はどうやら俺の様子が普段と違う事に気が付いたらしい。
「なぁ……?なんか変だぞ、今日の真。なにかあったのか?」
「なにか……ね。主な要因はそっちのソイツだけどな」
「え?ぼ……僕?その……気に障るようなことをしたかな?」
「ハッキリ言っとくぞ、俺はお前とよろしくしてやるつもりはこれっぽっちもねぇ」
「っ!真!」
織斑は歯をむき出しにしながら俺に詰め寄り、胸ぐらをつかむ。なんとなくこんなことになるような気はしたが……ダルっ、熱血バカはこれだから……。
「お前……何のつもりなんだよ!初対面のシャルルに向かってそれは無いだろ!?」
「……まさかお前、気が付いてないとかじゃないだろうな?」
「? 何のことだよ……?」
どうやら織斑もデュノアの存在について何の違和感も感じていないらしい。少し考えればわかる事だと思うんですけどねぇ……?
「ハッ、おめでたい脳みそだこと……」
「何!?」
「ヒントをやろう織斑。ちいっとばっかし俺が発見された時の状況を考えれば、ソレがIS学園に平然とした様子で存在してることに差異が生じるハズだ」
「……?」
「ま、足りない脳みそで頑張って考えな。とにかく、ソレが「シャルル・デュノア」としてIS学園にいる限りは俺がソレと仲良く……は愚か、会話すらないと思って貰っても結構……」
ガッ!
織斑の拳が俺の顔面を捉えた。避けれなくも防げなくもなかったが、別にどうって事ねぇし。むしろそんなんで気が済むならいくらでもって感じだ。
「俺は……お前の事を友達だって思ってたよ……」
「そうか、気が合わないな。俺はお前を……いや、「お前ら」を友達だなんて思ったことは一度も無ぇよ」
それだけ言って胸ぐらをつかんでいた織斑の腕を強引に引っぺがす。さっきまでの力強いのはどこへ行ったのか、織斑の腕には力が全くこもっていなかった。
「もう良いか?ハッ……せいぜい仲良くしてやるこったな、なぁ?「シャルル」君?」
「ッ……!」
そうデュノアに言ってやると、ものすごい剣幕で睨まれる。まったくもって迫力のないその表情は、俺にとって滑稽以外の何物でもない。
デュノアにフッと鼻で一瞥くれてやると、俺は振り返り実習用のグラウンド目指して歩き出す。……ケッ!なかなか憎まれ役ってのも怠りぃ……まぁデュノアの事もボーデヴィッヒの事もまるまる織斑に押し付けてんだからおあいこか?そもそもボーデヴィッヒの事は関係ないけどね、俺。
**********
「か、加賀美君……。少し良いですか?」
「はい?」
四時限目が終わり昼休み。とっとと飯にしようと立ち上がった所で山田先生に呼び止められる。特に悪い事をした覚えもないし、そもそも山田先生と大した接点のない俺は言葉尻にクエスチョンマークを付けて答える。
「えっと、どうかしました?」
「ごっ、ごめんなさい!」
「は?い、いや……ちょっと……」
山田先生に近づいた途端、すごい勢いで頭を下げて謝罪される。あまりの事に一組の連中は何事かと俺達に注目。これだとまるで本当に俺が悪い事したみたいじゃねぇか!
「と、とりあえず落ち着いてください!山田先生がなんで謝ってるのか分かりませんし……それにこのままじゃそれでなくても悪い俺のイメージが悪化しますから!」
「あ……悪いっていう自覚はあったんだ」
今そう呟いた女生徒、俺の事は一番俺が分かってるから。
「はい……それがですね。加賀美君がお引越しなのを伝え忘れちゃってですね……」
「引っ越し?俺の部屋、違う場所になるんですか?」
「はい……。デュノア君が転校してきた影響で、織斑君とデュノア君が同室になって、織斑君と同室だった篠ノ之さんもお引越しする事になりまして……」
「いやいや、説明しなくても良いですから、パズルみたいでややこしいですし。とにかく、引っ越しは今日って事ですよね?」
「そういう事になります……」
いまだに山田先生は申し訳なさそうだ。なんというか、方やオルコットみたいな女尊男卑主義者が居るかと思えば、山田先生ときたら殊勝なもんだよな……。俺が怖いってのもあるのかもしれないが。
「分かりました。とりあえず飯食ったらいったん部屋に帰って準備しておきますから」
「本当にごめんなさい……。これ、新しい部屋の番号とキーです」
「どうも」
「あ、それと女子と同室ですからね」
「……マジですか」
「マジです」
なんで女子と同室……?あっ、その辺の説明を俺が言わなくて良いって言ったのか、ちゃんと聞いときゃ良かった。…………大丈夫かコレ?誰と同室なのかは知らんが、俺と同室とか不憫でならない。
「了解しました……。じゃ、俺はもう行きますから」
「はい。今後は絶対こういう事が無いようにしますから!絶対!だから怒らないでくださいね?ね?」
「俺ってそんなに怒った顔に見えますか?」
「はい!とっても!」
全力の笑顔でそう答える山田先生。そこは嘘でも否定してほしかったところだ。まぁそこが山田先生のいい所なんだろう。……多分。
**********
「はぁ……」
そうして放課後となり、俺は新しい部屋を目指して歩いているが……鬱だ……とにかく気が晴れない。今まで一人部屋で過ごしていた弊害か、誰かと同室であることが嫌で仕方ない。
ったく、デュノアさえ来なければこんなことにはならなかったものを……。厳密に言えばデュノアが男として学園に来なければ、だけど。
四の五の言ってもどうしようもならんわな……それこそ女子と同室を拒否すれば俺の部屋は無いって事になるし。さて、この部屋だな……。織斑の二の舞になるかもしれないからきちんとノックを……っと。
「はい……」
「あれ?アンタこの間の……」
出てきたのはこの間ぶつかった水色の髪をした少女だった。特徴的な髪だったし、何より逃げられたことが記憶に残っていた。となると、この子が俺のルームメイトとなるらしい。
「な……なんで?」
「何でって、何が?」
「なんで加賀美君が……私に?」
「……もしかして、なにも聞いてないって事は無いよな?」
もしやと思い俺が少女に質問を投げかけてみると、案の定キョトンとした表情を見せる。山田先生……恨むぞ、俺だけでなくこっちにも伝え忘れとか……。
「はぁ……もう一人男子が転校してきたのは知ってるよな?その影響で、俺とアンタは同室って事」
「…………!?」
バタァン!
……閉められた……部屋のドア閉められた……。これは流石に……ショックだ……。この間の逃げられたことといい、今回のことといい……どんだけ俺はこの子に怖がられてんだ……。
「あの……アンタの気持ちは分かる。だけどどうか事実を受け入れてくれないだろうか……。本当……頼むから……」
「…………」
俺がそういうと水色少女はドアを少しだけ開けこちらの様子を確認しながらオロオロとしている。しばらくすると、何か決心したような表情を見せドアを再び開いてくれた。
「うん……ありがとな……」
「…………」
水色少女はプイッと俺から顔を逸らすだけで何も答えない。一瞬だけ見えた顔色は赤かったように見える。体調でも悪いのだろうか?
「俺は加賀美 真な……まぁアンタも思うところはあるだろうが、我慢してもらえると助かる」
「更識 簪……」
「更識な、分かった」
「みょ、苗字で……呼ばないで……」
更識は俺が「更識」と呼んだことに反応したように見える。よほどの事が無い限りは他人を名前で呼ばない主義なんだが、どうやら何か事情がありそうだ……。面倒だから深入りはしたくないし、大人しく従っとこう。
「……なら遠慮なく、簪って呼ばせてもらおう」
「~~~~っ!!!!」
今度は名前で呼んでやると、更識……もとい簪はなぜか顔面を両手で隠してモジモジし始める。意味が分からん、これは一体どういう状況だ?
「その、簪?」
「ひゃい!?」
ひゃい……って驚きすぎじゃね?やっぱ俺の事が怖いのか……。しばらく過ごしてこの様子が続くのなら山田先生に言って部屋を変えてもらおう。このままでは簪が可哀想だ。
「いや、もし必要なことがあったら言っておいてくれ。例えば……シャワーの時間とか」
「そこは……大丈夫。私はほとんど部屋にいないから……」
「ふ~ん……」
放課後に何をしているのかは気になるが詮索は良くないし、何よりいつも言っているが俺には関係のない話だ。特に気にしないでおくことにしよう。
「なんだ、まぁ何かあったらまた言ってくれ、極力それには応えるようにする」
「うん……」
それだけ言うと簪は俺の横を素通りしてドアの方へと歩き出す。さっそくどこかへ出かけるのか?ならばその間に荷解きを済ませておくことにしよう。一人の時と違って仕舞うのには気を使わなくては。
「あ、あの……」
「ん?」
「私、基本的には整備室にいると思うから……。もし何か用事があったら……訪ねて」
「そうか、分かった」
「それだけだから……それじゃ……」
今度こそ簪は部屋から出て行った。それにしても整備室か……。確か本音も整備科志望とか言ってたな、もしかすると簪と知り合いだったりして……。
もしそうなら本音に一度簪の事を相談してみることにしよう。このまま怖がられたままってのもなんだし、本音が知り合いだとすれば大きな切っ掛けになってくれることだろう。
それと簪の事で気になるのは特撮の件だ。逃げられたために結局チャージマンの事は謎のままだし。もう一回ちゃんと尋ねてみるべきだな、簪が特撮好きなら心を開いてくれるかもしれない。
「はぁ……これだから他人と接触するのは嫌なんだよ……。どうして俺が気を使わないとダメなのかねぇ~っと」
俺の最低な呟きに答える者はいない、ただ空しく俺の声が部屋に響き渡るだけだった。……はぁ、荷解きを終わらせよう。とりあえず目の前の問題から片づけなくては。
(目の前の問題……か)
ほかに大きな大きな問題が有るが……。…………止めだ、デュノアの件には関わらないと決めた。なんか織斑のバカが俺に噛みついてきたが、もともとこれが正しい形だ。
そういえば今までなんで俺はあのバカと仲良しごっこをしていたのだろうか。最初から深くかかわるつもりなんてなかったのに、いつのまにだかしょっちゅう食事したりしてたな。
『俺は……お前の事を友達だと思ってたよ……』
クソが……なんだってんだ!人の事を勝手に過大評価した上にあんな腑抜けた顔を見せやがって!んでもってなんで俺はこんなにイライラしてる……。
ええい!止め止め!こんなのでは全く作業に手がつかん。俺は簪が使っていない方のベッドに寝転び頭から布団をかぶる。
どうにもイライラは収まらず、そのまま俺はふて寝を決め込む事にした。このままの心情で起きても、どうせ寝覚めは悪いだろうが、今はただこのイライラを収めたい一心の俺だった。
勘違いすることなかれ、真は最初から嫌な奴なのである。
ちょっとはマシになってきたけどまだまだ……一夏達とちゃんとした友達になるのは臨海学校あたりかな?
あと真が簪と同室になりました。理由は私がそうしたかったという事に他ありません。
真に対する簪の対応に関しては「簪が真に惚れている」ということを踏まえて心中お察し下さい。いつかまとめて簪視点の話を書くつもりですが……惚れた男がいきなり同室とかビビりますよね。
今回あまりラウラの出番はなかったですが、次の話では動き始めるかなー?みたいなふんわりした感じです。ラウラも真と相性良くなさそうだ……。
それでは皆さん、また次回でお会いしましょう!