戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

いやぁ……皆さん、お久しぶりです。ちょっとした私用で、PCに触れられない生活が続きまして。こうなるのは解っていたんですが、活動報告に書いた方が良かったでしょうか……?

とにかくですね、別に失踪したって事では無いのでご安心を。今日からまた以前のペースを取り戻しますので、今後もよろしくお願いします。

さて、今回でIFのディケイド編がラストです。なんとか……なんとか収まり切りましたよ。まぁそんな感じで、本編の方をどうぞ。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


IFなお話・通りすがってIS学園(後編)

「たぁっ!」

 

「クッ……!素手の割には……パワフルに戦うね!」

 

 1対1で交戦しているクウガとヘラクスは、幾分かクウガが優勢といったところだろう。マイティフォームのクウガは、アックスを腕で防いでカウンターを腹部へ喰らわした。

 

 腹部にパンチを喰らったヘラクスは、数歩だけ後退した。そして賞賛の言葉とも取れる台詞を放つが、声のトーンからしてイラついているのがよく解かる。

 

「舐めるなよ!俺は拳だけでも……けっこう戦えるんだ!」

 

「へぇ~、そう!じゃあ見せてよ!」

 

「うわっ!」

 

ブン!ブン!ブン!

 

 ユウスケの自信に満ち溢れた言葉に、ヘラクスは更に苛立ちを募らせる。そしてその苛立ちを発散させるかのように、ブンブンとアックスを振り回し始めた。

 

 いくらユウスケが戦い慣れているからと言って、この乱舞は避け切れない。最初の内は腕や脚を使って防ぐことに成功したが、ヘラクスは上手く防御を掻い潜ってクウガの懐へアックスを潜り込ませた。

 

「そ~れっ!」

 

ガギン!

 

「ぐわあ!」

 

ドゴォ!

 

 吹き飛ばされたユウスケは、プラスチック製のベンチに突っ込んだ。ユウスケがのしかかったベンチは簡単に押しつぶされて、周囲に破片を散らばらせる。

 

 ユウスケはすぐに立ち上がったが、ヘラクスはゆったりとした足取りでポーンポーンと手元でアックスを弄んでいる。その様子を見たユウスケは、左手をベルトの上部に置き右手を前に突き出すポーズを取る。

 

「超変身!」

 

「うん?色が変わった……」

 

 クウガのベルト中央部に位置するアマダムが、青色に発光する。するとクウガの色も青い色に変化した。素手の戦いは不利と感じて、ドラゴンフォームへとフォームチェンジしたのだ。

 

 ユウスケは壊れたベンチの破片から細長い物を選別すると、それを引っ掴む。するとその破片が、見る見る細長い棍……ドラゴンロッドへ変化する

 

「これで条件は同じだ!」

 

「どっちかって言うと、私が不利なんですけど……」

 

 ヘラクスの呟く通りに棍であるドラゴンロッドの方が、アックスよりもリーチ的に有利である。実際の戦況も、ユウスケが有利に傾く。

 

 ユウスケは突く、薙ぎ払うといった牽制するといった戦法を取る。それに対してヘラクスは、アックスが思う通りに振るえない。そうなると、苛立ちがまたしても湧き出る。

 

「あ~もう……ムカつくなぁ!でもこれで一発解決!マスクドライダーシステムじゃないと……」

 

(来るか!?)

 

「着いてこれないもんね!クロックアップ!」

 

『―CLOCK UP―』

 

 ヘラクスが腰のクラップスイッチを叩くと同時に、その姿が見えなくなった。否……時間流の変化故に、まず視認すら不可能なのだ。そして襲い来るのは……不可視の攻撃。

 

ガギィ!ガン!ギャン!

 

「ガッ……ぐあっ!くっ……超変身!」

 

 クロックアップ中のヘラクスの攻撃は防ぎようが無く、まさになす術がないという様子だ。しかしそんな中で、ユウスケは更に超変身を行う。

 

 今度はアマダムが紫色に発光して、クウガの姿は甲冑を纏った様な姿へ変化する。これは圧倒的な防御力を備えたクウガ タイタンフォームだ。ユウスケには、ある考えが会ったのだ。

 

(ペガサスフォームなら、確実に捉えられる……けど、まだ耐えるしかない!) 

 

 クウガ ペガサスフォームとは、超感覚を取得し必中必倒の一矢を放つ射撃形態だ。しかし……その超感覚故に、音などに過敏になってしまう。

 

 あまりの過敏さのせいで、変身していられるのはせいぜい40秒……。対してクロックアップは、それよりも少し長い間は発動していられる。すなわち……時間が足りないのだ。

 

(狙うなら、クロックアップが終わるタイミングだ!)

 

 クロックアップ発動中は、向こうもこちらの動きは遅くなっている。それならば、照準を合わせる事は不可能だろう。だからこそ、終わるタイミングなのだ。

 

 ユウスケは、ヘラクスの猛攻にジッと耐える。それこそのタイタンフォーム……それこその防御力だ。猛攻が一瞬だけ止むその時を、ユウスケは荒野のガンマンが如く待った。

 

ガン!ガギィ!……

 

「今だ!超変身!」

 

 再三となるポーズを取ると、今度はアマダムが緑色に輝く。そしてユウスケは、弓の様に湾曲しているベンチの金具部分を急いで拾う。

 

 そして拾った金具がペガサスボウガンへと変化すると同時に、ペガサスフォームの超感覚が始まりを告げる。ユウスケには、ハッキリと聞く事が出来ていた。

 

 ヘラクスが止まるためにブレーキをかける……その際に地面を削る音。なるほど、ヘラクスは後ろだな。クロックアップ中なため、姿は視認できないが……ユウスケは確信を覚えていた。

 

(へ……?ちょっと……待ってよ!なんでコイツ……こっちに照準合わせて……私まだ、クロックアップ中なんですけど!?ってか、もう……終わって……!)

 

『―CLOCK OVER―』

 

「そこだぁ!」

 

ドシュウン!

 

「キャアアアア!?」

 

 ペガサスボウガンから放たれる一矢……ブラストペガサス。その一撃は、クロックアップが終了したヘラクスの胸部を確実に捉え……封印の紋章を刻む。

 

「あ、あぁ……?嘘……嘘嘘嘘だよ!だって……クロックアップは最強の能力でしょ!?それが、こんなっ!」

 

「…………」

 

「こんなああああっ!」

 

ズドオオオオン!

 

 ペガサスフォームのせいでまともな返答は出来なかったが、ユウスケはこう思っていた。最強は、必ずしも無敵では無い……と。フォームチェンジを行う前に、ヘラクスは爆散した。

 

「くっ……はぁ……。なんとか、倒せたか……」

 

 制限時間と同時に、ユウスケの変身は解けてしまう。疲労感が限界近いユウスケは、ギリギリの戦いだったと方膝を地へ着け肩で息をしてみせた。

 

 しかし……勝利を掴み取ったのは確かだ。ユウスケは、小さくサムズアップして己を鼓舞する。そしてゆっくりと立ち上がると、真達の元へ戻るために足を動かした。

**********

「いつまで……この茶番を続けるつもりかな?」

 

ズドォン!

 

 逃げる海東を、ケタロスは歩きで追いかける。しかしケタロスの言う茶番とは、追いかけっこだけの事ではない。海東はカメンライドで、仮面ライダーを召喚する行為を続けていた。

 

 だが召喚した仮面ライダーは、ケタロスに簡単に屠られてゆく。たった今も、ライダーがケタロスのクナイに切り裂かれ爆散した。召喚したライダーでは自分は倒せない。だからこそ、ケタロスは茶番と評したのだろう。

 

「ま……どちらにしたって」

 

ズガガガガ!ギャリリリリ!

 

「何をされても、私は負けないけどね」

 

「へぇ……やるじゃないか」

 

 突如としてケタロスの背後を狙ってか、銃弾が飛んで来た。しかしケタロスは瞬時に振り返ると、逆手に持ったクナイで銃撃を全て弾いて見せる。

 

 まるでアクション映画の主人公さながらな手さばきに、海東は思わず賞賛を送った。それまで物陰に隠れていた海東だったが、わざとらしい拍手をしながら姿を現した。

 

「……殺される覚悟でもできた?」

 

「まさか!いつまでたっても、君が見つけてくれないからじゃないか」

 

「負け惜しみにしか聞こえない」

 

「僕はイリュージョニスト……華麗なる怪盗さ。君に僕は捕まえられないよ」

 

 それまで他人任せの戦法や奇襲を行ってきた海東を、ケタロスは警戒の眼差しで見詰めた。ある意味その読みは大正解とも言える。面の良い言葉の裏には、相手を出し抜く何かが潜んでいるもの……。

 

 海東も全てがそうとは言わないが、今回の場合は何か策があっての事だろう。あからさまに警戒されているこの状況にも関わらず、海東はあくまで姿勢を崩す気は無いようだ。

 

「予言しよう。君は僕に触れる事すら出来ずに敗れる」

 

「そんな安い挑発には、乗らない主義なんだよね」

 

「挑発でも何でもないさ、これから事実に変わるのだからね♪」

 

スガガガガ!

 

 手元で一度ディエンドライバーをクルッと回して、海東はケタロスに銃口を突きつけながらそう言った。こちらのペースを乱す狙いがあると、ケタロスは全く動じない。

 

 だが、海東は本当に挑発のつもりで言っているのではない。まるで、始めからそうなる事が解っているような……そんな口調だ。言葉を言い切るのと同時に、ケタロスに対して銃撃を開始した。

 

(……狙いは正確。だけど、この程度で私は倒せない……事くらい解っているハズ)

 

 ケタロスはディエンドライバーから放たれる銃撃を、躱し、弾き、どんどん海東へと接近していく。あくまで冷静なケタロスだが、それ故に迷っている部分もあった。

 

(だとすれば、青い奴の狙いは……?さっきの言葉が本気なら、の話でもあるけど)

 

 前提として海東の言葉が挑発で無いとするならば、その他の目的をケタロスは見いだせないでいた。お互いにノーダメージな状況だが、こうなるとケタロスの頭には1つの選択肢が浮かぶ。

 

(……クロックアップ、使おうか)

 

 クロックアップは相手が同じくマスクドライダーシステムでなければ、一気に独擅場へともって行ける。ヘラクスと同じく、ケタロスもそこは信じて疑わない。だが……その認識が、選択ミスなのだ。

 

「クロック……アップ!」

 

『―CLOCK UP―』

 

(狙い通り……)

 

『ATTACK RIDE INVISIBLE』

 

「何っ……!?」

 

 ケタロスが腰のクラップスイッチを叩くと同時に、海東はアタックライド インビジブルを使用した。それによりディエンドの身体は透明となり、姿を消した。

 

 クロックアップは、時間流を遅くする。それ故に、相手が発動した能力を延長させている様に感じるのだ。海東が姿を消したと同時に、ケタロスはこれが狙いだったと理解する。

 

『―CLOCK OVER―』

 

「!?」

 

「おや、やっぱり何もされなかったね」

 

 一応はクナイを振り回したものの……運悪く海東には当たらなかった。だがほとんど移動していない所を見ると、やはり単に透明なだけだった事が窺える。

 

「くっ……こんな子供騙しに!」

 

「知ってるかい?手品の基本は、子供騙しさ」

 

『ATTACK RIDE ILLUSION』

 

 再びディエンドが、ドライバーにカードを挿入して読み込ませ引き金を引く。すると今度は、5体の分身が現れる。これはアタックライド イリュージョンの効果だ。

 

 初めからこれでも良かったのだが、その場合はクロックアップの反撃があっただろう。クロックアップにもクールタイムに似た物が存在する。だからこその、インビジブルだったのだろう。

 

「それじゃあ、そろそろお別れの時間だ」

 

「そうはさせな……グッ!?あっ……!」

 

『FINAL ATTACK RIDE DIDIDI DIEND』

 

 ケタロスは海東が必殺技を撃とうとするのを察知したが、5体の分身に阻まれてしまう。その間にも海東は、ファイナルアタックライドのカードを読み込ませた。

 

 すると青緑色をしたカードの様なエネルギー体が、筒状に長く伸びてゆく。それはまるでロックオンカーソルかのように、ケタロスの身体も包み込む。

 

「バイバイ♪」

 

ズドオオオオン!

 

「くっ……ああああああ!?」

 

ドガアアアアン!

 

 海東は手をヒラヒラと振ってから、引き金を引く。それと同時に高密度かつ高火力な、青と黒のエネルギー波が銃口から放たれた。これぞディエンドの必殺技……ディメンションシュートだ。

 

 ディメンションシュートは、自身の分身を巻き込みながらケタロスへと直撃した。ガードの体勢は取ったケタロスだったが、エネルギー波はそれごと貫き……ケタロスを爆散させるに至った。

 

「フ~ッ……。僕の予言……当てになるだろう?」

 

 変身を解除して、海東は銃口に息を吹きかける。そしてまたしてもディエンドライバーをクルクル回すと、虚空へと向けて突きつけた。ついでに銃を撃つかのような仕草を見せると、海東は歩き出す。

 

 彼の足の運ぶ先は、士達の元か……それとも。行き先は、とても気まぐれな彼のみが知っている。時には弾丸のように真っ直ぐで、時には雲の様に流れる……それが海東 大樹なのだから。

**********

「フッ!ハアッ!」

 

ズドンッ!

 

「「ぐああああっ!」」

 

 ユウスケと海東が勝利を納める中、真と士は苦戦を強いられていた。それぞれの近接武装で斬りかかった2人だったが、コーカサスは微動だにしない。

 

 それどころか、反撃する余力すらある様だ。真は正拳突きで、士は前蹴りで吹き飛ばされる。これで何度目かのトライになるのだが、何度も似た光景が繰り広げられる。

 

「そろそろ諦めたらどう?貴方達とは、ボディスペックからして違うのよ」

 

「ふ……ざけ……んな!こんなの……どうってこたぁねぇ!」

 

「真!」

 

 士と比べると、真はとてつもなくボロボロだ。しかしそんな様子でも、真は諦めを見せない。だが……1人で突進するには、あまりにも無謀な相手だ。

 

「……単調ね。フンッ!」

 

ゴスッ!

 

「かっ……はっ!」

 

「でやぁ!」

 

ドゴォ!

 

「がああああっ!」

 

 ダブルカリバーのリーチの短さ故か、今度は装甲に一太刀すら入れさせてもらえない。真は刃が届く寸前で、コーカサスの中段蹴りを横っ腹に受けた。

 

 クリーンヒットしたダメージで蹲っていると、更に顔面へ掌底を喰らった。またしても吹き飛ばされた真は、一瞬で士の隣まで戻されてしまう。

 

「おい……しっかりしろ!」

 

「く……あぁ……」

 

 士が声をかけても、真はうつ伏せのまま起き上がらない。それどころか、気力のみで気絶を防いでいる状態だ。このままでは、まずい。士は真を置いて、コーカサスと対峙する。

 

「いい加減にしてくれないかしら。結果は明白でしょう?どう見ても、貴方達の負け……」

 

「まだ……負けてねぇ!」

 

「!?」

 

「敵に負けても……自分にゃ負けねぇ……。俺が立ち続ける限りは!自分にもテメェにも……負けちゃいねぇんだよおおおお!」

 

 無茶苦茶な理論だが、それこそが『加賀美イズム』とも言って良い。真は膝をガクガクと笑わせながら、まだ立ち上がって見せた。こうまでなっても立つ真に、士はある種の尊敬を覚えた。

 

 しかし……やはり立ったとしても状況に変化は無い。コーカサスも、執拗に真を狙い続けるだろう。それこそ真は死んでしまう。士はこの状況を変えるべく、ライドブッカー ブックモードを開いて、使えそうなカードを探した。

 

(これは……!?)

 

 士はライドブッカーを開いて、すぐに気がついた。見覚えの無いカードが、3枚もあるではないか。1枚はバーコードがマゼンタで、ガタックの顔が書いてあるカード。

 

 2枚はバーコードが黄色く、片方はガタックのエンブレムが書かれていて、もう片方はガタックゼクターが書かれていた。これを見た士は、思わずほくそ笑んだ。

 

「真」

 

「あ……?どした?」

 

「準備はいいか?」

 

『FINAL FORM RIDE GAGAGA GATACK』

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

 

「へぁ?……嘘ぉ!?タ、タイム……心の準備が!」

 

 真の名を呼んだ士は、背後へと回り込んだ。そのままファナルフォームライドのカードを、ディケイドライバーへと読み込ませる。そして、ガタックの背中を触る様な仕草を見せた。

 

 背中に走る妙な感覚で、ようやく真は何が起き始めているか理解する。惚けた声を出した頃にはもう遅く、真の関節等は痛そうな方向へ変形していく。そして真の体は……巨大なガタックゼクターとなった。

 

『な……なんじゃこりゃああああ!?』

 

「やはりそうなったか」

 

『いや……そうなったかじゃなくて!ってか、これ俺の声聞こえてる!?』

 

「これは、何が起こっているの……?」

 

 まさか自身が『そうなる』とは思っても見なかったのか、真はゼクターガタックの状態で飛び回る。ちなみに、士にはなんとなくだが言いたい事は伝わっているらしい。

 

 最も困惑しているのは真だろうが、コーカサスもかなり戸惑いを見せている。とはいえ……互いにやる事は変わらない。ただ、目の前の敵を倒せば良いのだ。

 

『ちぃっ!とりあえず……突進だおらああああ!』

 

ガンッ!ズゴガガガガ!

 

「な、なんてパワーなの!」

 

 体の自由は効くし、疲労感も消え失せたらしい。真は顎を閉じた状態で、コーカサスへ突進を仕掛ける。受け止められはしたが、地面を抉りつつ後退させるほどの馬力だ。

 

『おい青子!なんか他にねぇのか!?』

 

『フッ……フフフフ!我が世の春が来ましたああああ!』

 

『はぁ!?お前……何を言って……のわっ!』

 

ドガァン!

 

「ぐうっ!?」

 

 真の脳内へといつもより感覚的に、青子の声が聞こえた。そして青子が歓喜の叫び声を上げると同時に、ゼクターガタックの出力も増した。そのままの勢いで、コーカサスを轢くことに成功する。

 

『あぁ……なんという事でしょう!まさかこんな形で望みが叶うとは思っても見ませんでした。門矢 士には感謝せねばなりません。マスターを愚か者呼ばわりした時は殺してやろうかと思いましたが……。おかげで私とマスターは文字通りに一心同体!なんと素晴らしい!マスターが……マスターが私の中にぃぃぃぃ……!』

 

『うぉい!?変な声色で誤解を招く発言は止めろってば!つーか……落ち着けこの馬鹿!』

 

 真がゼクターに変形したという事は、青子と融合したに等しい。その事実に興奮を押さえきれない青子は、話を性的な方向へと持っていく。心無しか、声色が色っぽいうえに息が荒い。

 

 青子を落ち着けさせようとする間に、真は士から随分と離れてしまった。どうにかこうにか旋回すると、話を再度自分の聞きたかった事へと戻す。

 

『おい……青子!なんか武器とかねぇのかよ!?』

 

『フフフフ……フ?ゴホン……マスクドフォームの各種武装は、内部に収納されている様です』

 

『そうか、解った!』

 

ジャコン!

 

 自分でも取り乱し過ぎと思ったのか、青子はいつもの調子に戻った……と言うよりは、いつもの調子を取り繕った。真は青子の様子を気にせず、遠距離武装を展開する。

 

 真の意志に呼応するかのように、ゼクターガタックの各部はスライドした。両サイドからはバルカンが、底部からはガトリングが、背面上半部からはキャノンが、下半部からはミサイルが飛び出る。

 

『おお、全部同時に使えんのか!士、離れてな!』

 

「うん……?なるほどな」

 

『いっぺんやってみたかったんだよな……。いけぇ、フルバースト!』

 

ズドドドド!

 

「何!?キャアアアア!」

 

 真はコーカサスと交戦中の士へ声をかけると、距離を置いたのを確認する。そしてガタックの全遠距離武装が、同時に火を噴いた。その火力たるや、爆撃機も真っ青だ。

 

 大半はコーカサスに直撃してはいないが、バルカン、ガトリング、ミサイル、キャノンの同時発射は直撃しなくとも十分なダメージをコーカサスへと与える。

 

「真、このまま一気に行くぞ」

 

『アイサー!』

 

『FINAL ATTACK RIDE GAGAGA GATACK』

 

(っ!これは……頭の中に、技のイメージが流れて……)

 

 士がディケイドライバーにファイナルアタックライドのカードを読み込ませると、真の頭にはそれがどんな技なのかがイメージとして現れた。そうと決まればと、真は意気込む。

 

 そのままもう一度旋回すると、士の背後からグングン近づいて行く。このまま行くと激突……寸前に士は大きくジャンプして、ゼクターガタックの背に乗った。

 

『おおおおっ!』

 

「はぁ……はぁ……!ハイパー……」

 

「させん!」

 

ガギィン!

 

「しまっ……キャア!」

 

 ハイパークロックアップを使用する様子を見せたコーカサスだったが、士がライドブッカーでハイパーゼクターを打ち抜いた。ハイパーゼクターはコーカサスの左腰から外れ、カラカラと音を立てて地面をスライドしてゆく。

 

 その間に真は、トップスピードでコーカサスへと接近して、その大顎で思い切り挟み込んだ。そのまま一直線で高度を上げて行き、IS学園がミニチュアサイズに見えるほどだ。

 

『ぶっ飛べぇ!』

 

「フッ!」

 

 ある程度の高さが出ると、真は宙返りするようにして士を更に上空へ打ち上げた。そこから真は、真っ逆さまに地表目がけて急降下を開始する。

 

「タアッ!」

 

 士はそこからゼクターガタックに、ライダーキックを放った。士の足底はしっかりとゼクターガタックの尾部を捕えて、急降下の速度を更に加速させる。

 

ゴオオオオッ!

 

「な……なんですって!」

 

 落下していくスピードの凄まじさを物語るかのように、空気摩擦で赤い膜の様なものが発生する。その熱は、コーカサスの背を焼いた。

 

 赤い発光は真達が落下するごとに強さを増していき……その様は、まさに隕石そのものであった。そんな速度で地面へ叩きつけられれば……後は言うまでもない。

 

「『ハアアアアアアッ!』」

 

「キャアアアア!?」

 

ズドオオオオン!ゴオオオオオオッ!

 

 コーカサスが地面へ激突した数瞬後に、視認できるほどの衝撃波がドーム状に広がりIS学園全体を揺らした。土煙が晴れると、そこには巨大なクレーターしか残されていない。

 

 激突の衝撃と共に、コーカサスは跡形も無く散ったのだろう。ディケイドメテオ Verガタックの威力が、とんでもないという事が窺える。

 

ウィィィィン……

 

「ブハーッ!しんど……」

 

「ああ、お前は良くやった」

 

「ヘヘッ……サンキュー」

 

 ファイナルフォームライドの効果が切れたのか、真は通常のガタックへと戻った。ついでにISであるガタックも解除して、真はその場に座り込んだ。

 

 そして同じく変身を解除した士と、笑みを浮かべて拳をぶつけ合った。流石にクレーターから這い出る体力は無いのか、真は士の手を借りつつクレーターから脱出に成功。

 

「いや、悪いな」

 

「なに……気にしなくて良い。お前はもう少し、誰かの手を借りる事に無遠慮になれ」

 

「肝に銘じとく……」

 

 痛い所を指摘された真は、今回の事でかなり反省しているらしい。いつもならば『言われなくても解ってるっつーの』とか言いそうな物だが、大人しく士の言葉に同意した。

 

「おーい、真!」

 

「ん……?よう、無事だったか!」

 

 ワームを殲滅した一夏達は、真の元へと文字通り飛んで来た。地表に降りてISを解除すると、やいのやいの言いながら真を取り囲む。そんな光景を見た士は、笑みを浮かべて真達から離れて行く。

 

 そして一定距離まで着くと、思い出したかのように振り返った。そして笑顔でじゃれ合う真達にピントを合わせて、そっと……トイカメラのシャッターを切る。

 

「士!」

 

「ユウスケ……に、夏みかん?気を失っているのか?」

 

「ああ……うん。ここに来る前に見つけたんだけど、さっきの衝撃波のせいじゃないか?夏海ちゃんは、士の戦いを見てたはずだし……」

 

 そう……夏海は物陰から士の戦いを見ていたのだが、ディケイドメテオの衝撃波によって吹き飛ばされてしまったのだ。その際に頭を打ったのか、気を失ってユウスケにおんぶされている。

 

「……後が怖いな」

 

「…………そうだな」

 

「……戻るか?」

 

「…………そうだな」

 

 目を覚ました夏海はきっとプリプリと怒るのだろう。その姿を想像して、士は既に頭が痛くなってしまう。ユウスケもとばっちりを喰らう気がするのか、幾分か表情が暗い。

 

 とりあえず2人が出した結論は、光写真館へ戻る事だった。しかしその足取りは何処か重く、2人とも若いのにとてつもない哀愁が漂っていた。

**********

「全く……酷いです!」

 

「ま、まぁまぁ夏海ちゃん……。必殺技って、そんなモンだろ?」

 

「そうだぞ、夏みかん。あまり怒ると、顔に皺が……」

 

「光家秘伝……笑いのツボ!」

 

「フ……フハハハハハハ!」

 

 夏海は頬を膨らませながら、テーブルを強く叩いた。ユウスケが夏海を宥めるが、士は自ら余計な言葉を放つ。現像室から出るや否や秘伝技もらうが、自業自得である。

 

「あれ……この写真。へぇ……良く撮れていますね」

 

「いやいや、被写体が良いのさ」

 

「海東さん!フフッ、それもそうですね」

 

「お、お前ら……!クククク……」

 

 秘伝を喰らった影響で、士は手に持っていた写真を落した。それを夏海が拾うと、良く撮れていると評する。しかしそれをいつの間にか侵入した海東が横取りして、被写体の方を褒めた。

 

 海東の言葉に、それもそうだと夏海は同意した。その写真には、酷く歪んだ真達のじゃれあう様子が納められている。確かに……被写体は完璧なのかも知れない。

 

「ところで海東。コアだかなんだか……結局は返してあげたのか?」

 

「安心してくれたまえ。元の場所にしっかり戻しておいたよ」

 

 真には、良い『お宝』を見せて貰った。意外と人情家である海東は、久々に素晴らしい『お宝』を見れて上機嫌だ。鼻歌交じりに、士が撮った写真を眺める。真を取り囲む……素晴らしい『お宝』を。

 

「士くん……。真くんには、何も言わずに行ってしまうんですか?」

 

「確かに。真は、きっと士に感謝してるし……言いたい事もあると思うんだ」

 

「フーッ……フーッ……。あ、あいつに……もう俺の言葉は必要ないさ。きっとあいつは、あいつの物語を紡いでいくはずだ……あいつの仲間と共にな。だから、俺達はもう必要ないんだ」

 

 ようやくして呼吸が落ち着いた士は、クールな調子を取り戻す。海東から写真を取り戻しながら、夏海とユウスケの質問に答えた。その返答は、2人にとっても納得できるものだったらしい。

 

「よしっ……それじゃあ!俺達も、俺達の物語を紡いで行こう!」

 

「ええ、そうですね!」

 

「ん~……それじゃあ、今回は僕もこっちからお供しようかな♪」

 

「好きにしろ……。さて、次は……どんな世界が待っている?」

 

 背景ロールの前に集まった4人は、新たな世界への扉を開く。彼の名は門矢 士……またの名を世界の破壊者ディケイド。仲間と共に数々の世界を巡り……その瞳は何を見る。

 

 

 




色々と、迷った回でした……。

まずガタックのファイナルフォームライドですが、エクステンダーに変形するのもアリかな~?とか思ったりしまして。まぁそこは、カブトと対になるようにしまして。

ファイナルアタックライドの方は、ネーミングですね。ガタックエクステンダー落しをイメージしたので、ディケイドドロップにしようかなって思ったのですが……。

途中からカブトのファイナルアタックライドのディケイドメテオっぽくなったので、バージョンガタックって事にしました。って言うか、隕石って描写もしましたしね。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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