戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

さて……今回のリクエストシリーズは、結と晶のその後の様子……とりわけ、高校に関するお話が見たいとの事でした。

シーズン的な事もあってか、受験の話からにしてみましたが……。と言うよりかは、とある考えのせいもありまして……。

ぶっちゃけ、高校での生活を描くと……何の番外編か解んなくなっちゃいまして。一応ですが、真や簪を少しでも出演させられる策を取らせて頂きました。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


番外なお話・結と晶の受験

「え~……それでは、第……何回だっけ?まぁいいか。加賀美家家族会議を始める」

 

「父さんさ、せっかく仕事のノリでやるならちゃんとやろうよ」

 

「それ以前に、そんなノリで話すほど大事でも無いし」

 

「母さん、思春期の息子と娘が冷たいんだが」

 

「うん……仕方ない……」

 

 加賀美家リビングのテーブルには、真、簪、結、晶の4人が座っていた。内容的に自分は必要ないと思ってるのか、新はソファに座って茶を啜りながらテレビを見ている。

 

 そして物々しく口を開いた真は、会議開始1分もたたずに簪へ助けを求める視線を送る。仕方が無いの一言で済まされたが、何も簪だって適当に返した訳ではない。気を取り直して、真は咳払いをした。

 

「ゴホン!議題は解ってると思うが、結と晶……お前達2人の志望校についてだ」

 

「焦らなくても良いけど……2人とも……進路は見えてる……?」

 

 加賀美 結、加賀美 晶の両名とも、現在は15歳の中学3年生だ。季節は秋口で、そろそろ自分達の進路を決めるべき時分である。

 

 結と晶は顔を見合わせると、晶の方が頷く。この2人はアイコンタクトである程度の意思疎通が出来る様で、今回の場合は晶の方から話す……という事だろう。

 

「僕は、藍越学園にいこうかなって」

 

「ほぅ?何か、目標があるのか?」

 

「ううん。そんなハッキリ見えないからこそ、藍越にいきたいんだ。ほら、選択肢が広いし」

 

「そうね……。無理するよりも……良い判断だと思うわ……」

 

 晶には、特にコレと言った夢は無い。だが……いざ夢が決まった時に、選べる選択肢は多いに越したことはない。そこらを言わせれば、藍越学園はもってこいの学校だ。

 

 多岐にわたる就職、進学サポートを売りにしているだけに、前評判に負けない実績がある。そのぶん競争率も高い訳だが、勉学に関しての問題は無いだろう。

 

「そうか……。結はどうだ?」

 

「……私も、藍越。あっ、言っとくけど私達で相談はしてないからね?」

 

「双子だからって、一緒に居たいって気は無いよ」

 

「いや……それは言われんでも解ってる」

 

 別に姉弟関係は良好な2人だが、双子だからの一言で片づけられるのを嫌う。かと言って、極端に接触を避けている訳でも無く……よく解からない2人なのだ。

 

 多感な時期ではあるし、双子だからベタベタしている……と思われるのが嫌なのだろう。2人そろっていらないフォローを入れる結と晶に、真は何か面倒臭さを覚えた。

 

「んで、こっからが肝心だな……。この間の成績表を見せて貰おうか」

 

「どんな感じだった……?」

 

「別に、いつもと変わらない」

 

「右に同じ」

 

 学生という物は、親に成績を見せたりするのは渋る傾向にある。しかし2人は、なんのためらいも無く成績表を両親へと提出した。それは自信の表れと言えよう。

 

 親と言うのは、子の成績が良ければ嬉しいもので……。成績表を見る真と簪の様子は、とても満足気だ。もちろ

ん……勉強が全て、そう思っているのとは違うが。

 

「これなら……2人とも……問題なさそう……」

 

「しかし……結。う~ん……これが悪いって言いたい訳じゃないぞ?だが……全体的に、いつもと様子が違う様に見えるが」

 

「そ、そうだね。ちょっと油断したかな~……なんて」

 

「「「…………」」」

 

「な、何……3人揃って!なんか文句でもあんの!?」

 

 真の遺伝子と言うか、真成分と言うか……。それのほとんどは、結に流れている。まず誤魔化すのが下手くそ、更にはそこはかとなく感じるツッコミ魂……。

 

 結はジト目で見てくる家族3人を前に、椅子をガタガタ鳴らしながら立ち上がった。3人の瞳は、一体何を隠しているんだい?……とでも言いたげだ。

 

「は……反省します!次は油断しませんっ!ハイッ、会議しゅ~りょ~!」

 

「あ……結……!話はまだ……」

 

「はぁ……。良いよ、母さん。僕が話して来るから」

 

「いつも悪いな、晶。頼んだぞ」

 

 バツが悪くなったら逃げるのも、真譲りである。結は大げさに腕を振ると、会議終了の宣言をした。そして成績表を回収すると、ドタバタと階段を駆け上がり自室へと消えて行く。

 

 色々と面倒な姉に対して、晶はため息が止まらない。こういう時の結と話すのは、決まって晶だ。結の方も双子の弟という事があって、話がし易いのだろう。晶は階段を上ると、結の部屋をノックする。

 

「結。入って大丈夫?」

 

『何……何の用?』

 

「何って、隠し事の件以外にないだろ」

 

『は、はぁ!?べ、別に隠し事とかしてないし!』

 

 扉越しに話をしているが、晶としては頭が痛くなりそうだった。本当に、本気で……隠しているつもりなのかと。もはや声を大にして小1時間は問い詰めたい気分だ。

 

 クール……と言うよりは、晶は淡泊で常にテンション低めである。このままでは埒が明かないと判断するや否や、即行で結の部屋の扉を開いた。これには結も、抗議するしかない。

 

「馬鹿じゃないの!?姉弟とは言え、女の子の部屋に無許可でとか……」

 

「はいはい。早く出て行って欲しかったら、早く話しちゃおうね。……って言うよりは、僕も知ってるし……母さん辺りも知ってると思うけどね~……っと」

 

「ちょっ……晶!それは洒落にならないから!乙女の部屋を漁らないで!」

 

「……あった。結……これな~んだ?」

 

 晶はいきなり結のベッドに乗ると、壁とベッドの隙間を漁り始めた。プライバシーとかデリカシーがどうの……そういうレベルの話では無い。

 

 結は晶の尻を枕で叩くが、反応を見せる様子は無い。しばらく結の虚しい抵抗は続いたが、それでも晶は止まらなかった。そして、目的の品を引っ張り出す。それは……ISに関する分厚い参考書だった。

 

「今回のテスト、ISの勉強してたから……微妙に悪かったんだよね?」

 

「うぐっ……!」

 

「白状しなって、行きたいの……藍越じゃなくてIS学園でしょ」

 

「ぐぬぬ……!」

 

 そう言うと晶は、結のベッドに腰掛けてバサバサと参考書を捲る。しばらく呼んでいた様子だが、僕にはサッパリだねと呟くと、ボフン!という音を立てて参考書を閉じた。

 

 一方の結は、真意がバレバレでかなり動揺している。ベッドが占領されているので、勉強机の椅子へと座った。グイーッと背伸びをするように寛ぐと、結はゆっくり口を開く。

 

「昔……さぁ……。エクステンダーに乗っけて貰ったの……覚えてる?」

 

「うん、勿論。澄み渡った空がさ、何処までも続いてて……」

 

「そう!すっごく綺麗だったじゃん!」

 

「その空を、ISを……自分で動かして飛びたい?」

 

 結と晶が、小学6年生頃の話だ。真に良い物を見せてやると、そう言って連れ出されたのは……なんと上空であった。その日は2人の誕生日で、形ある物ではなく……真は情景を送ったのだ。

 

 結には、真が普段居る世界が……とてつもなく特別に見えて、それに憧れた。まんま晶に自分が思ってきた事を言い当てられて、結は黙って首を頷かせる。

 

「……なんで、もっと早く言わなかったのさ。僕らの両親、ただ者じゃないんだよ?」

 

「知ってるよ……。元日本代表と、ISを用いた治安維持部隊の隊長……。でもだからこそ、言えないってのもあるからさぁ」

 

「まぁ……言わんとしてる事は解るけど。早い話が、特別扱いとか……。そりゃ嫌だよね」

 

「しかも天下のZECT……。え~嘘~!?結ちゃんの親ってZECTで働いてるの~?……とか、死ぬほど聞いた……ってか、聞き飽きたってば……」

 

 真も簪も、その筋では有名人だ。真の方は、完全に情報が公開されてはいないが、ZECTの職員という事は割れている。それに頼るとなれば、結は今ごろ代表候補生だったかも知れない。

 

 しかし……結は、真よりも控えめであった。それに女子は、そういった都合の良さは嫉妬の対象になりうる。それを恐れていた。そう言い換える事もできる。

 

「実力は申し分ないはずだけどさ。候補生の人って、少なからずコネがあるんじゃないの?」

 

「う~ん……それも一理あるけど……。はぁ……晶にIS適性があれば、私も心強かったのに」

 

「その場合は、僕はIS学園に行くしかないと言うか……」

 

 晶が中学へ進学すると同時に、真の希望で適性検査は行っていた。判定は、適性なし。晶は、ISを動かせないのだ。この結果に、真は大いに喜ぶ。

 

 きっと、自分の苦労を晶に味あわせたくなかったのだろう。晶本人も、無くて良いと思っていたようで……。だが、晶も大空への憧れが無かったと言えば……それは嘘である。

 

「もう観念しなってば。もうすぐ受験だよ?後悔する事になっても良いの?」

 

「わ、私は……。……IS学園に、行きたい……」

 

「うん。それは父さん達に言おうか。っていうか、結が言わないなら僕が言うし」

 

「アンタ、そういうところだけ父さんそっくりだよね!?あっ……晶!待ちなさい!」

 

 ベッドから立ち上がった晶は、手早く結の部屋から出ると、せっせと階段を降りてリビングへと戻る。もしかして、本当に言う気か!?そう思った結は、ドタバタと晶に続いた。

 

 だが……何の事は無い。晶は真と簪に、終わったよと報告すれば……ソファに座って野球のテレビ中継の観賞を始める。と言うか……既に一家揃ってその状態である。

 

「おぅ、結。決心は、ついたか?」

 

「えっと、私は……」

 

「結?」

 

「うっさいな、晶は黙って!私は……IS学園に行きたい!」

 

 いざ真にそう問われると、なかなか声が出てこない。そんな結に、晶は自分が代わりに言おうか? ……とでも言いたそうな視線を送る。するとようやく決心したのか、自分の思いを口にする。

 

「そうか、それなら……休み返上で協力するぞ。けど、弱音を吐くようならすぐ止めるからな」

 

「あなた……脅す様な事は……」

 

「いや、万が一って事もあるんだ。俺の……右掌みたいにな」

 

「父さん……」

 

 自分の娘が大切だからこそ、真は厳しめな言葉を放ったのだ。そして、家でも滅多に外さない……右手のノーフィンガーグローブを外す。結と晶は、どこか痛々しい様子で真の掌を眺めた。

 

 それは生身の状態で貫かれた傷痕だが、それが100%で起こらない……なんて言えない。やはりISに乗るのには、それ相応の覚悟を持て。長く戦ってきた真は、結にそう言いたいのだ。

 

「大丈夫だよ、父さん」

 

「そう……。だって結は……私達の娘だもの……」

 

「晶……母さん……。うん……。父さん……私、やるよ!」

 

「そうか……解った。それなら、俺はもう何も言わない。ただし、俺はスパルタだからな」

 

 それまで見せていた傷を、グローブをはめ直す事で隠した。娘が行く道を決めた……その覚悟を、真はしっかりと受け取ったのだ。結も真や、簪や晶の後押しを心から感じる。

 

 思わず感極まりそうになった結だが、空元気を見せる事で誤魔化した。まぁ……3人には、バレバレなのだが。すると、それまで黙っていた新が口を開く。

 

「それにしても、受験かぁ……懐かしい響きだな」

 

「爺ちゃんの時は、どんなだった?」

 

「いや、お爺ちゃんはスポーツ推薦で入学したから」

 

「結は、知らなかったっけ?爺ちゃんは、元甲子園球児だよ」

 

「うっそ、知らなかった!?何、ポジションは?」

 

「ハハハ!花形のピッチャーだぞ!」

 

 新もそろそろ『お爺さん』という風体になってきた。かなり昔を懐かしむ様子で、そう呟く。そして自身が甲子園球児である事に驚く結に、嬉しそうに当時の事を語った。

 

 長話ではあったが、結はとても興味深そうに聞いていた。加賀美家の家族会議は、それでお開きの流れとなる。だが真は、早速結のトレーニングメニューの作成に移っていた。

**********

「……ねぇ、結」

 

「…………」

 

「結ってば」

 

「ほぁっ!?な、何……?」

 

 家族会議から数ヶ月が過ぎて、いよいよ受験本番の日となった。駅へと向かって並んで歩く結と晶だが、どうにも結が放心している様に思えた。

 

 声をかけても返事は無く、肩を揺さぶるとようやく我に返ったらしい。晶は薄く開かれた目で結を見ると、何か言いたそうにして……止めた。

 

「ちょっと!気になるから止めてくんない!?」

 

「いや、緊張するのも解るな……と思って」

 

「やれる事は、やったつもりよ……。だけど、これから戦いに行くって思うと……」

 

「受験は戦いだよ」

 

「私のは(物理)でしょうが!」

 

 受験は戦い(物理)……言い得て妙である。IS学園の受験と言えば、担当教師とのサシの模擬戦である。IS学園創立から変わらぬ、伝統とも言って良い。

 

 だがいくらそれが解っていようと、戦いとは無縁な場所で生活していれば鬼畜とも言える所業だ。結の場合は、訓練をこなしたとはいえ……それもほんの数か月前からの話だ。

 

「結……知ってる?父さん、最強で最恐で最凶の戦闘マシーンって呼ばれてるんだってさ。敵から見たらの話しらしいけど」

 

「そんな事実は知りたくなかったんですけど!?まぁ……思いっきり娘の顔面を蹴り飛ばす人だしねぇ」

 

「いや、それは単に愛の鞭でしょ」

 

「あ~……解かってるけどさぁ。親に蹴られてみなって、けっこう精神的に来るものあるよ?」

 

 実際にISを動かす実技面に関しては、もちろん真直々の指導だった。そのため繰り返し巻き返し模擬戦を行ったのだが、その際に結は何度もライダーキックを喰らった。

 

 晶の言う通りに、真だって心は苦しいのだ。ただ……それも全ては、娘が力を付ける為……。そう自分に言い聞かせて、得意のボレーキックを結の顔面に喰らわせた。

 

「だから、それは解るけど……。母さんからは、座学だろ。爺ちゃんからは、生身の体力作りに力を貸して貰ったじゃないか。どこからどう見たって、最強の布陣だと思うけど?」

 

 晶の言う通りに、結はけっこうなチート性能なのだ。考えても見ると良い……真の戦闘技術に加えて、簪のISに関する内部知識を携えている。それを教え込まれたのだからISを動かした機関が短いとはいえ、チート以外の何物では無い。

 

 問題なのは、結が両親の偉大さをいまいち理解できていない事だ。なんとなく……凄い。結にとっては、それ

くらいの認識である。それでも……単に晶の励みが、力になったらしい。

 

「う~ん……どうだろ?とりあえず父さんには、ボロクソにしか言われてないけど……」

 

(父さん、言ってたけどなぁ~……)

 

『結か?安心しろ、晶。アイツは……俺や母さんを余裕で超える逸材だぞ』

 

(……って、でも『あえて』言わなったんだろうし……ここは)

 

「リベンジとか、好きな響きだろ。見返してやろうよ」

 

「おっ……良いねぇ、好きだねぇ……リベンジ!ありがと、晶!一発やってやろうって気になったわ!」

 

 訓練の際にあまり褒められなかったと聞いて、晶は自分が父親に聞いた言葉を思い出した、真が贔屓等はせずハッキリ言う性格と言う事を考慮すれば、それは最高峰の賞賛の言葉だろう。

 

 それを結が知らないとなれば、あえて言わなかったに違いない。そう考えた晶は、わざと結を炊きつける様な台詞を言った。そこら辺りも、真の計算である事を……晶は知らない。

 

「家族って……良いね」

 

「いきなりどうしたの?ま、全面的に同意だけど。って言うか、ウチほど絆の強い一家を僕は知らないよ」

 

「うん……今回の件で、私もそれを思い知らされた。それに……皆の努力に報いなきゃね。晶も、本当にありがと」

 

「別に、僕は少し補足をしただけ。元々は、結も努力を怠らなかったって話だよ」

 

 晶は自身の名を出さなかったが、ISの勉学ばかりに気を取られてはダメだと、普通の学生にも必要な学習を補足だが結に指導をしていたのだ。それこそ……自分の勉強の時間を削ってまで。

 

 自分がIS学園に行くと決めてから、本当に……家族のみんなが、まるで自分の事の様に自分の時間を削ってくれた。結は思い出すと同時に、思わされる。自分は……弱音を吐く要因は何処にも無いと。

 

「あぁ……すっごい……なんだろ?本当に、受かる気しかしなくなってきた」

 

「父さん……口癖みたいに、僕らへ伝えてたしね」

 

「「絆の力は、神をも斃す!それが人に秘められた可能性!可能性は、無限大!」」

 

 子へ伝える言葉としては、正直どうかと思う。しかし……実際に、真は絆と言う名の力で神を撃ち破って見せたのだ。その件に関して結と晶は、半信半疑の様だが……実際に神殺しを成した本人が言うのだから間違いはない。

 

 ここぞと言わんばかりに息ピッタリな2人は、全く意識せずとも同時に腕を空へ突き上げた。そうすると結と晶は、顔を見合わせて微笑み駅への道を辿る。

 

「時間的に、結のが先だよね」

 

「遠いからね~受験会場……。おっ、調度時間っぽい。んじゃ、お姉ちゃん行って来るから……晶も頑張って!」

 

「ああ、有難う。ん……結。行ってらっしゃい」

 

「ん?あぁ……うん。行ってきます!」

 

 IS学園の受験会場は、毎年変わらない……が、遠いと評判である。今到着した電車に乗らねば、結は開始時間に間に合わなくなってしまう。既に切符は買ったとして、ホームへ急がなくては。

 

 そんな結を、晶は呼び止めた。見送りの挨拶と同時に、右の拳を結に突き出す。すると結も同じく拳を突き出して、晶の拳とぶつける。これは、2人が交わす大事な時の挨拶の様なものである。

 

 それだけで諸々が伝わったのか、結は笑顔でホームへと消えて行った。受験シーズンと言う事もあって、結の特徴的な水色の髪も……すぐ見えなくなる。

 

「さて……僕も頑張らないとね」

 

 どんな時でも表情が余裕……と取られがちだが、晶もしっかり緊張したりはする。微妙な表情の変化に気付けるのは、家族だけだとか……そうでも無いとか。

 

 ただ、今から詰め込みをするのはナンセンスである。晶は日ごろから努力は怠らない。その自信に裏付けされているのか、特に予習をする様子は見られない。そして晶は音楽プレイヤーを取り出して、電車の時間まで好きな特撮の主題歌を聞き始めた……。

**********

 春……出会いと別れの季節である。桜舞い散る学び舎の中で、初々しい面持ちの新入生達が、自身の素性を元気よく紹介している。いわゆる自己紹介という奴だ。

 

 そんな最中……場所は違えど、2人の双子が自分の番を待っていた。1人は興味も無さそうな顔つきで、1人は何処か緊張した顔つきで……だ。

 

「じゃ……次っと、加賀美!」

 

「はい」

 

「えっと……それじゃあ……加賀美さん?」

 

「は、はい!」

 

 きっと互いの様子を視認できたならば、もっと愛想良くしろ……もっと落ち着けと、感想を抱くのだろう。だが……今やそれも出来ない。今まで、一緒過ごす時間が長過ぎたのだ。

 

 何の因果か、小学から中学から大半のクラスが同じだった。そんな2人は、何処か物足りなさを感じている。しかしそれと同時に、これで良いのだと思っている2人もいる。なぜなら……自分達は、遠くであろうと絆という物で繋がっているのだから。

 

「始めまして、加賀美 晶って言います。スポーツ全般は得意なので、休み時間とか……誘ってくれると嬉しいです」

 

「えっと、加賀美……結です!その……趣味とか、あまり女子らしくないですけど……野球とかプロレスとか好きです!」

 

 やはり対照的な2人は、互いの知らぬ場で似た感じではあるが……様子は違う自己紹介を行う。だが……双方ある意味でのインパクトは十分だろう。そして最後に、対象的な2人は……こう付け足した。

 

「それと、好きな物……って言うか、大切な物は……」

 

「それで、趣味以外の私の好きな物は……」

 

「「家族です!」」

 

 場所は違えど、性格は違えど……此処だけは、この想いだけは、2人は完全に合致していた。藍越学園と、IS学園……違う道を歩みども、心に宿す想いは同じ。

 

 ふと2人は、拍手の最中に窓から空を見た。何か……弟が、姉が、同じ様な事を言っている気がした。そして、通じ合っている事を実感した。その見えぬ繋がりは、真と簪の付けた……結と晶と言う名に、恥じる事は無い……。

 

 

 




成長後の2人のキャラ感……けっこう悩みましたね。

結は見た目は簪に似てて、中身は真に。晶は見た目は真に似てて、中身は簪に……って言うのは、すぐに決まったんですけども。

結は……満足ですね、弄られ系ツッコミ女子で完璧です。晶がねぇ……超低血圧クールボーイになりまして、簪似か……コレ?と。

あぁ……でも、個人的な感想ですけど……簪って真顔で冗談を言いそうじゃないですか?ってか、単に表情に変化が無いだけかも知れませんが。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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