戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

タイトルからお察しの通りに、今度は真がTSでございます。口調とかまんま男性版と同じですが、そこはヤンキー少女に脳内変換のほどよろしくです。

後は、基本的に本編の真の性別がひっくり返ったとお考えください。むしろ性別だけ別になった……と、言い換えても良いかも?以下、注意事項です。

・真がTS
・時間軸は、本編の八章に入る寸前
・真(♀)×一夏なカップリング
・しつこく勧告……TS要素を含みます

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


IFなお話・♀な真の恋愛事情

「はぁ~あ……」

 

「何か悩みか?」

 

「あれ……織斑先生。どうかしたんすか?」

 

「……少し教室に忘れ物がな」

 

 時刻は放課後で、既に数時間が経過している。そんな1年1組の教室にて、加賀美 真が自身の机に突っ伏していた。特に勉強している様子は見られず、特に居残りという事では無さそうだ。

 

 盛大に真が溜息を吐くと同時に、千冬が教室へと顔を見せる。人が居ると思ってもみなかったのか、千冬は面食らいつつも教室の電気を付けた。そして、教壇をまさぐると紙束を引っ捕まえた。それが、例の忘れ物とやらだろう。

 

「で、どうなんだ?」

 

「……珍しいですね。あんまし、他人の事には興味無いのかと思いましたけど」

 

「それこそ、興味本位だ。加賀美の悩み事など、滅多に聞けんだろうからな」

 

 真はため込む方……と言うよりかは、悩みなんぞ他人に話しても仕方ない……そんな考えの持ち主だ。だが今回の場合は、かなり深刻な悩みらしい。

 

 しかし話すにしても、幾分か相手が悪い様に感じられた。なぜなら……直接的では無いにしても、真の悩みに千冬は関連性はある。真はそれを踏まえつつ、千冬に話す事にしたようだ。

 

「あ、あの……オレ……。……アンタの弟……好きなんだと思うんです」

 

「…………聞き間違いか?」

 

「やっぱそう思います?けど、オレは大マジですよ」

 

「きっかけは、なんだ……」

 

 そう聞き返された真は、ポツリポツリと話し始めた。自身が世界を壊す存在を、図らずも成長させていた事……。自身を殺さんがために、多くの人間が巻き込まれた事……。

 

 キャノンボール・ファストのあの日……それを知った真は、精神的に不安定な状態へと陥った。真っ暗闇へと落ちたかのような……そんな感覚だった。

 

「オレを闇から引っ張り出したのは、間違いなくあのバカです」

 

「まぁ……失踪したお前を、学校をサボってまで探し当てたほどだからな」

 

「オレ……それが純粋に、嬉しかったんすよ。つか、あんなん言われりゃ……誰だって好きになりますって……」

 

『居場所が無いってんなら、自分で作れ!それが無理そうなら……俺が、真の居場所だ!』

 

 一夏が真へと送った言葉だ。それがしっかり胸へと届き、真は更なる進化を遂げ……ソルを打倒するに至った訳だ。それで済めばよかったのだが、寝ても覚めても頭に一夏の事が纏わりついている事へと気が付いた。

 

 それは誤魔化し様の無い恋慕……。加賀美 真にとって、16年生きて初めて芽生えた感情だった。覚えたてのこの感情は、真を苦しめるものにしかならなかった。

 

「解せんな。お前ならば、すぐさま告白でもしそうな物だが」

 

「そこが悩みの種なんすよ。なんつーか、オレって……女らしくないですし……。他の連中にも、オレがあのバカを好きになる訳がないって……」

 

「そう言った手前で、今更アタックする資格が無いと?」

 

「まぁ……はい。そもそも……振り向いてくれる気もしませんし」

 

 真にとって、一夏なんてものは友人でしかなかった。むしろ……初対面の頃は、当たりがキツかったと言っても良い。関係が良好になったのは、臨海学校以降の事だ。

 

 つまりは、本当に最近の最近までは友人の認識だった訳で……。きっと一夏もそう思っていると、真は始める前から諦め加減なのだ。そんな真の様子に、千冬は口を開いた。

 

「そんな考えでは、私の弟は振り向かんだろうな」

 

「…………」

 

「唯我独尊、威風堂々、傍若無人……それがお前では無いのか?正々堂々やりさえすれば、そこに遅いも早いも無いさ」

 

「……ハハ、傍若無人は余計っすよ。でも……有難うございます。とりあえず……オレなりにやれる事は、しっかりやって見たいと思います」

 

 千冬の言葉を聞いて、真は薄い笑みを浮かべながら椅子から立ち上がった。感謝してみせても、千冬の表情はいつもと変わらない。何を考えているのかは解からないが、真は一礼してその場から去る事に。

 

「……1つ言っておく。別に、お前が特別だから声をかけたわけでは無い。付け上がるなよ」

 

「おお、怖い怖い……。でも、覚悟しといて下さいよ。そのうち……姉さんって呼ばさせて貰いますから」

 

 去り際にそんな事を言われるが、真はクルッと振り返りニヒルな笑みを浮かべてそう宣言した。らしくなってきた事を、自分でも実感が出来た。

 

 どこか足取りも軽く、真は小走りで教室を出て行った。そんな真の様子を見て、今度は千冬が溜息を吐く。そして……こう呟いた。

 

「……本当に、時間の問題だろうな……」

**********

「さ~て、今日の昼飯はどうするか……」

 

 食堂に向かう一夏は、そんな事を呟く。やはり男子学生ともなると、昼食は楽しみの内の1つだろう。特別ストレスだらけの空間で生活していて、摂生できる一夏はやはり健康志向と言えよう。

 

ガッ!

 

「へ……?うおわっ!ま、真……?俺に、何か用か?」

 

「…………」

 

 そんな折に、急に襟を掴まれて道外れに引き込まれる。何事かと混乱した一夏だったが、引きこんだ者の正体が真だと解り、不思議そうな声を上げた。

 

 一夏から真に用事はあっても、逆は珍しい。しかし真は、顔を紅くしながら視線を泳がせる。そしてもうしばらくモジモジした後に、ようやく用件を言い放った。

 

「そ、その……これ……」

 

「これ……って、弁当?真が……俺に?」

 

「オレが……お前に弁当作ったら、なんかおかしいかよ……」

 

「いや、すっげぇ嬉しいよ!ありがとな!」

 

 真が一夏へ突き出したのは、綺麗に包まれた弁当箱だ。これは勿論……織斑 一夏攻略計画の一端である。真は、家庭的アピールをするつもりなのだろう。

 

 これまで家事が出来る事は公言してきたが、実際に形にした事は無い。それ故の手作り弁当なのだろう。渡してみて好感触で、真は安心した様な表情を見せた。

 

「そうか……なら良かった。それじゃ、後で感想を……」

 

「おいおい待てって、何処行くんだよ?コレ、明らかに1人用じゃないだろ」

 

「へ?や、その……別に……それは、だな……」

 

「ホラ、屋上とかで一緒に食べようぜ」

 

 一夏が手渡されたそれは、まるでピクニックにでも出かける様な……何段にも重ねられた弁当箱だ。これは流石に一夏が男だとしても、食べきれる訳が無いだろう。

 

 その場を去ろうとした真の手を握って、一夏は手を引いて行く。そんな大量になった理由は別にあるのだが、真はそれを言う暇が無かったのだ。

 

「うん、良い日和だな」

 

「お、おう……」

 

「じゃあ早速……。うわぁ……美味そうだ」

 

「本当か?そうか……」

 

 屋上に着いた一夏は、芝生へと腰かける。そのまま弁当箱の包みをほどくと、勢いよく蓋を開けた。するとそこに広がっていた光景は、料理をする一夏からしても新鮮なラインナップだ。

 

 食べ進めようとした一夏だったが、ある事に気が付いた。箸が、一膳しかないではないか。それを真に指摘した一夏だったが、なかなか返答が帰ってこない。

 

「だ、から……コレはお前用なんだって……。オレは、別で食べようと思ってたから……」

 

「じゃあ……なんでこんなに量が多いんだよ」

 

「……一夏の好き嫌いとか、解らねぇし……。それで、オレの得意料理をいっぱい食べて貰おうって……。その時のリアクションとか想像してたら、その……いつの間にか」

 

 一夏攻略に際して、一夏に聞かれた事は素直に正直に答える。真は、それを鉄則としていた。これは、周りの人間から学んだ教訓なのだ。箒や鈴あたり……変に誤魔化すから、いけないのだ。

 

 真は一夏の喜ぶ姿を想像していたらと、素直に思いの丈を述べる。まぁ……どうしようもなく顔は紅くて、一夏の顔なんて直視できていないのだが。

 

「そっか……。ありがとうな、真。本当に嬉しいぜ」

 

「う……べ、別に!」

 

「でもどっち道……食べきれそうも無いな。仕方ないから、箸……使い回すか」

 

「うぇぇ……!?オ、オオ……オレは、一夏が平気なら……」

 

 好きになる前は何でも無かったろうが、いわゆる間接キスは今の真にとって難易度の高いように感じられた。しかし……ぶっちゃけ役得だろう。

 

 とにかく自分もこの弁当を食べるとして、真はある事を思いついた。潜在一隅のチャンス!コレを逃す手は無いと、真は一夏の持った箸を奪い取る。

 

「ま、真?」

 

「その……食わせてやる!」

 

「そうか?なら……この唐揚げを貰おうかな」

 

「おうよ。ほら……あ、あ~ん……」

 

 真は箸なんて放り投げて、バンバンと地面を叩きたかった。それほどに、恥ずかしがっているのだろう。プルプルと腕が振るえるのを堪えながら、一夏の口元に唐揚げを運ぶ。

 

 もぐもぐと唐揚げを咀嚼する一夏を、真は心配そうな表情で見守った。大丈夫……ガキの頃から年季は長いんだと、普段は気にしないような事を考えて気を落ち着かせる。

 

「美味い!これなら毎日でも食いたいぜ!」

 

「ッ……!?」

 

「あれ?どうした……真」

 

「な、なんでもねぇ……」

 

 乙女の都合よい脳内フィルターのせいで、今の発言を毎日自分の手料理を食べさせてくれ……に変換してしまう。胸がしめつけられる感覚をおぼえながらも、そんな都合の良い事は無いと自分に言い聞かせた。

 

 平静は保っているが、流石の一夏も様子が少しおかしいと思い始めていた。だが真が何でも無いと言うので、一夏も気にしない事に。そうして、真としては終始ドキドキさせられる昼食が始まった。

**********

「ごちそう様でした!」

 

「おう、お粗末」

 

「いや~……美味かったなぁ。やっぱり女の子は、真みたいに家庭的じゃないとな」

 

「そ、そうか!?本当にそう思うか!?」

 

 満足した様子の一夏が、ふとそんな事を言った。真からすると、一度で二度おいしい言葉だ。まず……一夏が自分をキチンと女として見てくれていると言う点。

 

 もう1つは、しっかり家庭的アピールが出来た事だった。真は嬉しさのあまりに、食いつくかの様に一夏へ問い掛けた。驚きながらもそれを肯定すると、真は更に気分が高揚する。

 

「ところでだけどさ、真。髪……伸ばしてるのか?」

 

「あっ、え……?み、短い方が……似合ってたかね?」

 

「いや、似合ってる。それに長い方が個人的には好きだな」

 

「なら……良いや」

 

 真は一夏を好きと自覚して以来……言動等はともかく、見た目くらいは女らしくあろうと考えるようになった。短かった髪は伸ばし、最近は美容とやらにも気を遣っている。

 

 おかげで元よりポテンシャルの高かった真の肌等は、女子なら誰でも羨むレベルの物となっている。こればっかりには、真も光葉への感謝が止まらない。

 

「……綺麗な黒髪だよな」

 

「お袋がさ、こんな感じだったらしいんだ」

 

「へぇ……。なぁ……少しだけ、触らしてくれないか?」

 

「はぁ!?いや……少しだけだぞ……?」

 

 流石に正面からでは、色々と耐えられないと思ったのだろう。真は一夏に背を向けると、長い後ろ髪を無防備に晒した。すると、一夏の指の感覚が伝わってくる。

 

 一夏は手櫛のようにして、サラサラと真の艶やかな黒髪を触る。一夏が何を考えているのかと思うだけで、真の脳はパンク寸前であった。それを紛らわすかのように、攻略計画のその2を開始する。

 

「な、なぁ……今度の休みとか、暇か?暇なら……一緒に出掛けようぜ……」

 

「別に暇だけど、何処か行きたい所でもあるのか?」

 

「いや……それは特にねぇけど。えっと……ただ休日を、一夏と過ごしたいじゃ……ダメか?」

 

「…………」

 

 真がそう言うと、一夏は急に黙ってしまう。髪を触る手も止まっている……。思わず真は、とてつもない不安が心中に過り始めた。ゆっくりと息の乱れを落ち着かせると、一夏の名を呼んだ。

 

「い、一夏……?」

 

「あ、あぁ……悪い。何でも無いんだ……何でも」

 

「……おう。それで、どうだ?」

 

「俺で良ければ、喜んで付き合うぜ」

 

 またしても脳内フィルターが邪魔して、付き合うという言葉を都合よく変換しかけてしまう。そんな死ぬほどに自分らしくなくなっているのも……全ては一夏のせいだ。

 

そう考えると、なんだか一夏が恨めしく思えてくる。しかしだ……一夏が髮を触るのを再開すると、途端にそんな事はどうでも良くなってきた。割に単純な自分に呆れながら、真はもうしばらく貴重な時間を楽しんだ。

**********

「フッフッフ……」

 

 順風満帆。最近のオレの日常は、その一言に尽きる。なんとなくだが、自分があいつらよりもリードしているのを感じるからだ。一夏はオレを良く頼ってくれるし……あいつらは、勝手に潰し合ってくれる。

 

 連中にフォローを入れなくなったオレは、きっと嫌な女なのだろう。だが……これもある意味で勝負の世界だ。情けなんてかけてる暇はない。振り向いて貰うためには、必要な事なのだ。

 

 これ……本当に、一夏が落ちるのも時間の問題なんじゃねぇかな。攻略計画と題したオレの行いも、順調に進んでいる……様な気がする。判断基準としては、一夏が普通とは違うリアクションを見せるって感じで、それが正しいかどうか解らんけども。

 

 まぁ……逆に、こいつ絶対解ってねぇな……みたいな時にもあるが。むぅ……なんで胸を押し付けてキョトンとされるんだよ?あいつって、性欲とか無いの?

 

 う~ん……色仕掛けは、効果的じゃないか……。つか、むしろオレに発生する羞恥という名のダメージの方が大きいし……。ならば次は、どうやって一夏にアピールするべきか……。

 

「――――――が好きなんだ!」

 

「!? 今の……一夏の声か?」

 

 廊下の人気の無い方向から、一夏の声が聞こえた。台詞からして、嫌な予感しかしない。しかしオレには、確認せざるを得なかった。壁に背をやり、コソコソと曲がり角を覗きこむ。

 

 そして……頭が真っ白になった。一夏は背中しか見えないし、角度的に相手の姿も確認できない。でも……一夏は相手の肩を掴んでいるらしい。それがどれだけ、必死な告白であったかを伺わせる。

 

「っ!」

 

「? 誰か居るのか?」

 

 動揺して、物音を立ててしまった。パニック状態が極限まで達したオレは、その場からダッシュで逃走を図る。だが、廊下は長い……。きっとオレの後ろ姿は、バッチリ目撃された事だろう。

 

 しかし……そんなのは、もはやどうでも良かった。あの場から逃げられて、現実から目を反らす事さえできれば……それで良かった。オレの足は、知らず知らずのうちに外へと向かっていた。息を切らせながら、目に入ったベンチに腰かける。

 

「……バッカみてぇ。そんなん……解ってた事じゃんよ」

 

 オレは声を震わせながら、そう呟いた。そうだ……始めから、変な希望なんて抱くものではない。こんな……男女……好きになって貰える訳がねぇのにさ。

 

 あ~……ダメだ……涙が全然止まらねぇや。失恋かぁ……。初恋と失恋が、こんな短い間にやってくるとは思っても見なかった。……次に顔合わせるまでには、なんとかしねぇと。困らせたくはないしな……。

 

「真っ!」

 

(ちょっと……早ぇよバァカ……)

 

 こうなる事は予想ができたが、一夏はオレを追いかけて来たようだ。それはとてつもなく嬉しいが、まだ涙が止まらない。こんな顔だけは、見せたくはなかったんたけど。

 

 でも……これ以上は逃げたって、何も前に進まない。一夏に……おめで……とうって……そう……言ってやらないとならないん……だから。ダメだ……考えれば考えるほど、涙が溢れ出てくる……。

 

「さっきの……聞いてたか?」

 

「……あぁ」

 

「なら……どうして、オレから逃げるんだ」

 

「はぁ……?どうしてって、そりゃお前……」

 

 何か一夏とオレの会話は、どこか噛み合ってない様に感じた。検証したいところだが、今のオレでは考えが纏まらないだろう。制服の袖で、涙を拭き取る。

 

 すると、もう流れてはこない。よし……いける。オレは息を長く吹いて、深く吸った。そうしてベンチから立ち上がると、しっかり一夏を眼前に捉える。

 

「そりゃ、逃げたくもなるだろ。一夏が……告白してるのなんて聞いたら」

 

「は?俺は告白された側だ」

 

「んぅ!?だ、だってお前……好きなんだっつってたじゃん!」

 

「あ、そうか……そこだけ聞こえてたのか。真……それはお前の勘違いだぞ」

 

 やはり食い違いがあるようだから、しっかり一夏の言葉へ耳を傾ける。まず始めに解ったのは、告白した奴はいつものメンバーではないらしい。

 

 一夏が言うには、顔と名前だけしか知らないような女子だったようだ。でも……その女子は、偉いな。オレ達なんかよりは、よほど勇気のある行動をとったのだから。

 

「だとして、なんであんな台詞が出てくるんだよ……」

 

「こんな言い方……本当はダメなんだろうと思う。けど、けっこうしつこくてさ」

 

「うん……まぁ、仕方ねぇよ。悪いと思えるんなら、それで良いだろ。んで、一夏はなんて答えたんだ?」

 

「…………。俺は、真の事が好きなんだって……そう言ったんだ」

 

 ……………………。は、はい……?今オレの目の前に居るこのおバカさんは、なんと言ったのだろうか?先ほどとは、違う意味で頭が真っ白になってしまう。

 

 聞き間違え……じゃないよな?うん……?なら一夏は、オレの事が好きだから……その子の告白を断ったのか、フーン……。……………………嘘ぉ?

 

「嘘ぉ!?オ、オレ!?お前……オレの事好きなの!?」

 

「そんな大声で言うなよ、恥ずかしいだろ……」

 

「い、いやいや!オレは騙されんぞ!絶対……絶対どこかにカメラでも……」

 

「じゃあ……もう1回ハッキリ言うぞ。真……俺は、お前の事が好きだ」

 

 えぇ……?いや、もちろん一夏にそう言って貰えるように努力して居た訳で、いざその状況になってみると……何も言葉が出て来ない。あぁ……顔熱い、心臓五月蠅い、一夏と目ぇ合わせられない!

 

 もう……なんだ、ぶっちゃけ『好き』って意味がゲシュタルト崩壊を起こして、なんて返せば良いのか全く見えてこない。な、ならば……思うままに、疑問を一夏へぶつけよう。

 

「い、いつから……オレの事を?」

 

「いつって、割と出会った頃からだけど」

 

「そんな前から!?……あっ!もしや、一夏が初めから馴れ馴れしかったのって……」

 

「うん……まぁ、少しでも早く心を開いてくれればと思ってさ」

 

 入学当初から……この野郎はしつこいのなんの。半ばストーカーじみていた。それは単に、オレがなるべく1人でいようとするから……友達として、そう思っていたのだけれど。

 

 まさか……ねぇ?つーか、このおバカさん……あれで口説いてるつもりだったのかよ。解るかよ、そんなもん。どんだけ察しが良ければ気付ける……。

 

「あのさぁ……。昔のオレ、一夏に酷ぇ事言ったし……口調もこんなだし……。なんで、オレなんだよ」

 

「ハハハ……確かに、言われてショックだった様な事もあった。けど……凛として、堂々としてて……飾らない立ち振る舞いの真って、凄く……綺麗でカッコイイと思う」

 

「…………」

 

「それだけじゃないぞ。やっぱり真は、素直じゃないだけで……優しい女の子だろ。自分でどう思ってるかは、重要じゃねぇんじゃないかな。少なくとも、俺にはしっかり届いてるぞ!」

 

 一夏はそう言いながら、何か自信ありげにドン!と自分の胸を叩いて見せた。オレは、誰かに優しくしたつもりなんてない。ただ……そうして発言した事と反対の物事をしていれば、楽……それだけの事だ。

 

 だって、そうだ……言葉で壁を作っておけば、誰もオレの内側なんて気にしない。……はず……だったのに。このバカは、見事に……いや、無遠慮に、土足で!……人様の底の底まで入り込んできやがる。

 

「こんな感じの告白になっちゃったけど、俺の想いは本物だ。何度だって言ってやる!俺は、真の事が好きだ!」

 

「……バーカ。こっちこそ、何度言ったって言い足りねぇよ……。本当……バカだよ、お前。でも……そんなバカを好きになってるオレは、もっとバカなのかもな」

 

「それじゃあ……!?」

 

「ああ……。オレも、一夏の事が好きだ」

 

「やったー!俺……ずっと嫌われてんのかと思ってたぜ!」

 

 何だろうな……さっきまで、つーか……一夏を好きになってから……ずっと心がつっかえた感覚だった。自分の気持ちを素直に伝えたら……ビックリするほど、その感覚は消え失せる。

 

 その代わりに、何か……心がフワフワするような感覚に変わった……と言った方が良いのかもしれない。これがきっと、幸せって感情なんだろう。

 

「なぁ、真!具体的に、俺の何処が好きなんだ?!」

 

「ちょっ、調子に乗んなバーカ!そういう台詞は、雰囲気でオレから言わせやがれ!」

 

「いや、それこそ真って素直じゃねぇからさ……。ダイレクトに聞かないと、言ってくれそうもないだろ」

 

「だから……その……。愚直なとことか、ひたむきなとことか……。え、えぇい!もう知らん!」

 

「あっ……待てって、逃げるなよ!」

 

「次の授業までに、捕まえられたら教えてやるよ!ついでにチューもしてやらぁ!」

 

「マジでか!?俄然やる気が出てきたぞ!」

 

 逃げ出したオレを、一夏は追いかけはじめた。オレがこんな事を言うのは、絶対に捕まらない自信があるからで……。あぁ……でも、勢いでチューとか言っちゃったしな……。

 

 ……捕まっても……良いのかも……。って、いやいやいや!何をらしくない事を……どうかしてるぜ。でも……うん、て、手加減くらいはしてやろう!べ、別にキスして欲しいとかじゃ無いからな!オレと一夏の鬼ごっこの結果は、まぁ……ご想像にお任せするさ。

 

 

 




ヤンキーデレ、略してヤンデレ。

まぁ……別に口悪いだけで、不良とは少し違うんですけど。そこら辺りは、そこらに置いてですね……。ん~……どうだろ、もっと真をデレさせても良かったのかもです。

私の中で、そこらが想像し辛かったです……。恐らくは、真の生みの親としての弊害がモロに出ましたね。いや……修正前は、死ぬほどデレッデレだったんですわ……。

ですけど途中でですね……『あっ、コレは無いわ……』といった具合に、私の心が先に折れてしまいました。せっかくのリクエストシリーズだと言うのに……。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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