今回の番外編は、タイトル通りになってます。これは確か……ソルとマドカの話の次に、リクエストが多かったですね。
と言うよりは、一夏達のその後が知りたい……との内容の物を頂きました。そこで同窓会ならば、自然に一夏達のその後を紹介できるのではないかと……。
全て私の妄想ですので、このキャラのその後はこうじゃないだろ……みたいなのは勘弁して頂けると幸いです。あっ、それと……どことなく説明調の地の文が多いですが、あしからず。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。
「…………」
「真……少し落ち着こう……?」
「いや、悪いな……2人が心配で」
スーツに身を包んだ真は、何か落ち着かない様子でソワソワしている。それはこの場が、高級ホテルだから……という事では無く、自身の父親に預けた結と晶が心配なのだ。
というのも今日はIS学園の同窓会が、このホテルで執り行われる。もちろん2人は出席する事になったが、そのためには子供たちを見てくれる人が必要だ。
そうなれば、必然的に新が挙がった。更識に預けるという案も出たが、結は人見知りする性質なため……人が多い更識は無理。と言う事で、心配ながらも新に預けるしかなかったのだ。
「お義父さんなら……大丈夫……」
「まぁ……アレでも1人で俺を育てた訳だからな。信用するか……」
割と真は過保護な様で、口ではそう言った物の表情は晴れない。そんな真の様子を見てか、簪が宥める。とりあえず楽しむ事を念頭に、そう簪に言われてようやく気が乗ってきたらしい。
受付の方へ顔を出すと、その時点で懐かしい顔だらけだ。まぁ……まだ『あの面子』とは、誰1人として遭遇してないが。ともかく多国籍なので、仕方が無いと言えば仕方が無い。
「あっ、加賀美夫妻を発見!」
「加賀美くんはともかく、簪ちゃんは久しぶり」
「相変わらず、よろしくやってる?」
「うん……久しぶり……」
2人の前に現れたのは、相川、鷹月、櫛灘の打鉄弐式整備組だ。真はともかく……と言うが、この3人は現在ラボラトリ所属である。つまりは、真と同じくZECTのメンバーなのだ。
真の現在の所属……と言うか、自身の部隊である通称『加賀美隊』は、ISを動かす関係上でラボラトリ内に本部を構えている。それ故、ほぼ毎日のように顔を合わせるのだ。
「簪ちゃん。いつ頃からウチに顔を出す予定なんだっけ?」
「えっと……結と晶が……もう少し大きくなってから……」
「まぁ……ずっと今のスタイルでも良い気がするけどね」
「うんうん……簪ちゃんは、仕事も早いし正確だし……」
実を言うと、簪もラボラトリに就職している。IS選手兼研究員と言う事で、つまりは代表候補生の延長だ。だが選手の方に簪は特にこだわりは無く、メディアからは滅多に表に出ない謎の選手……みたいな扱いを受けていた。
現在は、家のパソコンでもこなせる仕事を回して貰っている。そうすれば、主婦をしながら仕事も出来るという訳だ。だからこそ、3人は同じ所属でも簪を見るのが久しぶりなのである。
「ま、どっかのプロジェクトリーダーよりは……」
「呼んだ~?」
「うわっ、のほほんさん!?いつからそこに……?」
「今だよ~。てへへ~……待ち合わせの時間を間違えちった~」
噂をすれば影と言うが、やはり時々だが本音にも暗部の影を感じる真だった。もはや言うまでもないが、本音もラボラトリの所属である。それも加賀美隊専属の様な物で、本音無くして加賀美隊無し……のレベルだ。
プロジェクトリーダーと言うのは、文字通りだ。本音はキャストオフ及びプットオンシステム搭載の量産型機体の開発責任者だったりする。ちなみに加賀美隊の結成と共に完成し、真の部下4名はその機体に乗っているのだ。
「真……。皆と居て……良い……?」
「うん?ああ、そこは気にしなくて大丈夫だって。どうせ、俺もあの馬鹿と2人になるだろうしな」
「そういう事なら~、奥さん借りていくね~」
「大丈夫、大丈夫!丁重に扱うから!」
この5人は、打鉄弐式を組み立てた後でも親交が深かった。久々の再会となれば、積もる話もあるだろう。特に引き止める理由も無いので、真は簪を送り出した。
現在の真達は25歳なのだが、会場の中へと向かう皆を見ていると……ふと昔の姿が過った。やはり何ら変わりは無く、真は穏やかな表情となる。
「よっ、隊長!」
「……その呼び方は止めろって、チャンピオン……いや、ジークフリートっつった方が良かったか?」
「うっ……俺が悪かったから、その呼び方だけは勘弁してくれ……」
からかう様子で、背後から真の肩を叩いたのは……一夏だった。織斑 一夏ことジークフリード……彼は、IS日本代表だ。しかも、モンドグロッソを制覇している。
その際に送られる称号は、ご存知ブリュンヒルデなのだが……男の一夏にそれは変だという意見が出た。そこでブリュンヒルデと関わりが深いジークフリートと呼ばれるようになったのだ。
「もうすぐ2度目のモンドグロッソだな」
「ああ、千冬姉の成し遂げられなかった2連覇……絶対に果たして見せるさ。ところで、真は出場しないのか?」
「俺は……良いや。悪人のケツを追っかけまわしてる方が、性に合う」
「そっか。だけど……こう話してると、真と試合したくなって来たぜ」
それは真も同感であった。最近は、あまり試合という物をしていない。部下とは模擬戦くらいはするが、いざ現場に出るとそれは試合で無く戦いだ。
あまり溜めこみすぎると、ノイローゼになるかも知れない。そうなれば、モンドグロッソの様なお祭りも悪くない。まぁ……それでも真は、出場はしないだろうが。
「ま、いつまでもここで話してても仕方がねぇし……行こうぜ」
「そうだな、他の皆ももう中みたいだ」
基本的に立ち話となる同窓会だが、話に華を添える料理等がないと寂しい物だ。受付を済ましている2人は、ゆっくりと会場内へと足を運ぶ。
やはり会場内は、女性だらけ……むしろ真と一夏が異質なのだが、ここまでの女性率は久々の2人であった。2人は無言で互いの肩を叩くと、決心した様に見知った顔を捜す。
「んっ……よぅ、社長秘書に中佐殿」
「あっ、一夏に真!」
「嫁に戦友……は、前にも会ったか。うむ……嫁は、久しいな」
「ああ、久しぶりだな」
良く見知った金髪と銀髪が目に入り、真は声をかけた。そこに居たのは、シャルロットとラウラだ。仕事の関係上で、真はたまにだがこの2人とは会う。
加賀美隊は、警護などの依頼があればそれを受ける。つまるところ……この2人はお得意様なのだ。シャルロットは父親と和解し社長秘書に、ラウラは最近昇格して中佐になったらしい。
「真は、もしかして……また身長が伸びた?」
「いやいや、流石の俺も止まったぞ。それ気のせいじゃねぇかな」
「ラウラが居るから、相対的に大きく見え……痛てててて!」
「嫁よ、言って良い事と悪い事があるぞ」
真はラウラと並んでいるだけで、犯罪臭がするとまで言われた事がある。それも……真の厳つい見た目と、ラウラの幼い見た目がそうさせるのだろう。
やはりラウラの姿はあまり変わらず……一夏は久々に2人が並んでいるところを見た。そのせいで余計な事を口走り、ラウラに制裁を加えられるハメになる。一夏は捻りあげられている腕を、全力でタップした。
「ってか、2人とも……長い事仕事が回ってこねぇけど、俺らの手は不要かい?」
「真の隊って、自発的に動かないのか?」
「すげぇ平たく言えば、傭兵みたいなもんだからな。依頼されるのが大半だ」
「う~ん……最近、真達を頼らなきゃならない様な事は……特にないかな、ゴメンね」
「私の方も同じくだ。戦友との仕事は、楽しいのだがな」
真が2人の仕事を気にしたのは、助けになりたい……というのもある。あるが……ぶっちゃけ、2人から来る依頼は稼ぎが良い。妻子持ちの真からすると、有難い話なのだ。
デュノア社とシュバルツェア・ハーゼからの依頼だ……むしろ稼げない方がおかしい。だが真もそこまでがめつく無い。むしろ平穏ならばよい事だと、うんうんと首を傾げる。
「むっ……と言うか、悪い。こんな場で話す事でも無かったな」
「アハハ……良いよ良いよ、お父さんだもんね」
「子供たちは、スクスクと育っているか?」
「ああ、おかげさまで。ちと結の方が難しいが……」
「ハハッ、結ちゃん……真にそっくりだもんな」
日本在住である一夏は、たびたび真の元へ遊びに来ていた。その際に結と晶の遊び相手になっているのだが、一夏の抱く結への感想は、女の子版な真……であった。
言ってしまえば、素直でない子で……ツンデレ。真と比べれば可愛い物だが、他人の子なのに密かに将来が心配だったりする。とりあえず……歯に衣着せぬ物言いをし始めなければ御の字かも知れない。
「相変わらず大きくて助かるわ~。本当、見つけやすいったらありゃしないわ」
「お前も相変わらずだな、ちんちくりん。いや……むしろちんちく『鈴』」
「ちっ!?何よ、これでも少しは……!」
「まぁまぁ鈴さん……落ち着いて下さい」
「そうだぞ、鈴。あまり騒ぐのは良くない」
真をからかって、逆にカウンターを喰らって騒ぐ……このやり取りは、何年やっても変わらないらしい。やって来たのは、箒、セシリア、鈴の3人だ。
箒とセシリアは、鈴を宥める。睨むような目で見てくる鈴を、真は余裕の表情で見据えていた。それが鈴をイラッとさせるが、なんとか落ち着いたらしい。
「真はさて置いて……一夏!今度のモンドグロッソは覚えておきなさいよ!」
「ヘヘッ、何度やったって俺は負けないぜ!」
「そういや、前回はお前ら当たったんだったな」
「私も現地で見させてもらったが、良い試合だったものだ」
「前回大会は、あれがベストバウトって声も多いみたいだしね」
鈴は、中国代表のIS選手である。流石はISに乗り始めてから早期に代表候補生になっただけは有り、その才能を類い稀な才能を発揮していると言えよう。
残念ながら優勝こそ逃したものの……しっかり優秀選手として名を連ねている。真も実戦経験を積んで実力は備わっているが、試合という形式になれば勝機が薄いかも知れない。
と言うか真は、ダーティなスタイルが染みついてしまっている。それはもちろんどんな手を使っても……と言う部分であって、だからこそ真は試合をしなくなった。
「盛り上がりと言えば、箒の方はどうなのだ?」
「私か?うむ……盛況なのではないだろうか」
「しかし……良く考え付いたもんだよな、IS式篠ノ之流道場なんざ……」
「ああ、本当……箒らしいっていうか」
箒がサソードとの戦いで辿り着いた境地……『ISで行う剣道』は、真達を始め専用機持ち達を大いに苦しめた。そこで箒は思いついたのだ。この際だから、IS式剣道の道場でも開いてみてはどうかと。
という事で、現在の箒は半ば指導員の様な物だ。斬新であり実践的で、箒本人が思っていたよりも門下生は多い。ついでに生身でも普通の剣道の指導を行って、各方面へ篠ノ之流が広まりつつあったりする。
「だとすると、ISに触れる機会が減ったのは……セシリアと簪くらいなのかな?」
「そうですわね……最近はメッキリですわ」
「ずいぶん寂しそうに言うな……。もっとこう……宣伝効果に使ったりすりゃ良いんじゃね?」
「それも考えましたが、わたくしはわたくしの力でオルコット家を復興させたいのです」
今のセシリアは、ISから身を引いている。現在は貴族として、お家復興の為に奔走しているのだ。具体的に言えば、貴族で良く聞く公務とやらを行っている事が多い。
真の言う通りに、IS乗りであることを広告塔へと出来ない事も無かった。しかし……セシリアとしては、それを良しとしなかったのである。そこら辺りは、プライドの高いセシリアならではかも知れない。
「ってかアンタ、奥さんの姿が見えないんだけど?」
「ああ、気にすんな。面子が揃う頃にはきっと……」
「もう……揃ってる……?」
「その通り……ナイスタイミングだな、簪」
鈴がキョロキョロと真の周りを見渡して、簪が傍に居ない事を気にした。しかしタイミングの良い事に、簪の方から真の元へ戻ってくる。
それも全て、真の背が高くて目立つ……という事なのだが、いかんせん本人が気にしているために簪は決して口に出さない。簪は皆との挨拶を済ませると、輪の中へと入った。
「さて、揃ったな!」
「IS学園最多……ひと学年8人の専用機持ち、全員集合ってか?」
「やはり、この集まりは特別……そんな気がするな」
「わたくし達は、付き合いが濃かったですもの」
「ま、主に事件のせいが大半だけどね~」
「ハハハ……そこ言っちゃうと、ちょっと微妙かもね。でも……僕は皆と戦えて良かったな」
「うむ、お前達と肩を並べたのは……どれも思い出深い」
「こうやってると……蘇って来るね……」
やはりこの面子が印象深かったのは、1年生の頃だった様だ。様々な事件が起こり、様々な敵と戦った。傷つき倒れはしたが、それでも共闘した思い出は……悪いだけの物では無い。
1年生の頃からカウントすると、10年近い月日が流れたのだ……。皆の思い出話にも拍車がかかるが、どうにもあの時のあの戦いは凄かった等と……大半がドンパチやった話である。
「まぁなんだ……俺らもガキじゃねぇんだし、乾杯でもするか?」
「あっ、賛成!誰が幹事か知んないけど、流石はIS学園の同窓会よね~」
「まぁ?わたくしから言わせれば、飲み慣れた様なお酒ですけれど……」
「よしっ、ならばセシリア以外は乾杯と言う事で良いな」
「ああっ、嘘ですわ……冗談ですわ!仲間外れにしないで下さいませ!」
真がシャンパンのグラスを指差すと、皆はそれに同意した。その際にセシリアが悪乗りするのだが、珍しくも箒がさらに悪乗りで返した。箒も……社会に出て冗談という物を学んだのかも知れない。
焦るセシリアを尻目に、他の皆は笑い声を上げる。そうして自分のぶんのグラスを各々が手に取ると、一夏のコールで乾杯!とグラスをカチンと当てる。
そして先ほどとは打って変わって、大人な夜会の雰囲気へとなってきた。しかし……それなりに酔いも回ってくると、面倒な事になる。というのも……ほろ酔いな状態で、話題は一夏の女性関係へと入ってしまったのだ。
「一夏ぁ……アンタ!いったいいつになったら……そういう事……考えるつもりなのよぉ~」
「お、俺か?う~ん……結果がどうあれ、次のモンドグロッソ以降に考えようかなとは思ってるぞ」
「もぅ……僕達そんなに待てないよぉ?」
「ま、待てない……?何をだよ」
織斑 一夏……安定の鈍感である。と言うか、本当に……この状況はかなり面倒だ。この専用機持ち達……酒に強いと言えそうなのが1人たりとも居ない。
真は異様に強く、一夏は平均的といったところだろう。しかし……それ以外の面子がもれなく比較的に弱い。となれば、一夏に積年の不満が集中砲火するのも頷ける。
「ちょっ……ちょっ、真……助けてくれよ……」
「いや、無理……簪の相手で忙しい……」
「えへへ……」
本来ならば皮肉を言いつつも一夏のフォローに回る……なんとも素直でない真だが、簪もほろ酔いとなると話は別だった。いや……そう言うよりかは、簪は弱め……ではなく、極端に弱い。
そして人それぞれに、酒癖という物がある。簪の場合は……恥じらいを失い甘えん坊になるといった感じだ。それはもう……脇目も振らずに真へ一直線である。
「ま~こ~と~……♪」
「す、少し自重しような……簪。ほら、遠巻きに見てる奴もいるし……そういうのは帰ってからで……」
「家で……?うん……解かった……」
「そ、そうか……なら俺は一夏を助けに……」
「すぐ……帰ろう……。続きは……家で……」
「日本語って難しいっ!?」
これぞ自重率0%の簪である。初めて2人で酒を飲んだ日なんかは、マッハで理性が振り切った真だったが……流石にこんな場でそうなる訳にもいかん。
身体を摺り寄せてくる簪を、ほんのちょっぴりの力を入れて押す。すると距離は空いて、説得成功かと思いきや……何か日本語の意味を自分の都合の良いように解釈されてしまう。
「一夏……ひっく!今日という今日は……アレだぞ……ホラ……。えっと…………なんだったっけ?」
「俺に聞くなよ!?」
「落ち着いて下さいませ箒さん……。この場はぁ……わたくしがぁ……ビシッとですねぇ……」
「どの辺がビシッと……?酔拳とかにしか見えないぞ、セシリア」
「まぁなんだ……嫁と私は結ばれる運命であってだな……」
「ラウラ、戻って来い!そこには俺は居ねぇから!」
マトモな人間が減っていっているために、状況はカオスへ陥る一方だ。しっかり者の箒ですらこの有様になると、もはや一夏1人では始末がつかない。
もうラウラなんかは、虚空に話しかけている……と言う事は、厳格でも見ているのかも。ギャーギャーと5人の女性に囲まれる……この状況も懐かしいが、酔っているぶん非常にやり辛い。
「ま、真……ヘルプ……ヘールプ!」
「だから!無理だっつってんだろ!」
「むふっ……まことぉ~……す~き~……♪」
「おおう、沈まれ煩悩沈まれ煩悩沈まれ煩悩沈まれ煩悩……」
真も簪の暴走が酷く、理性を抑える為か念仏の様に沈まれ煩悩と呟き続ける。この騒動は、かなり長い間に渡って続き……収束する頃には真と一夏は疲れ果てていた。
まぁ……それも含めて、楽しい再会になったのではないだろうか?それは本人達の知る所でしかないが、客観的に見るに……騒がしく馬鹿らしいその様は、昔と変わらぬ関係でなければ成立しない……とだけ言っておこう。
……こんな感じで、大丈夫ですかね?
なんか……何も考えずに書いていたらですね、大半のキャラがISの国家代表になってしまいまして。流石にコレは、偏り過ぎだろうと。
だからなんとなくですが、それっぽい仕事を考えながら割り振ってみました。う~ん……セシリアは、国家代表で良かったかも……?
イギリス……貴族……お家復興……うっ!頭が……!ええ……ご存知の通り、『彼』のイメージに引っ張られている可能性が大きいですね、申し訳ない。
それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。