戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

123 / 143
どうも、マスクドライダーです。

今回……クッソ長い!最大級に長い!いやですね、もうすぐ最後ですし……キリの良い所まで書いたんですよ。

まぁ……でも七章と同じで、凄まじく大事なシーンが多発するのでこうなったのでしょう。後半は疲れが文章に現れているような気もしますけど……。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。



人に宿りし可能性(∞)ですが何か?

『……少しやり過ぎましたかねぇ?』

 

 マキシマムハイパーサイクロンを撃ったデウス・エクス・マキナは、超巨大なクレーターが出来た向こう側の壁を見つつそう呟いた。カエルム・スカラムが特殊な構造でなければ、決戦場ごと吹き飛んでいるだろう。

 

 そうして警戒状態を解除したデウス・エクス・マキナは、ハイパーセンサーで倒れている真とソルを捉えた。なんという事は無く、単に真の肉体が無事かどうかの確認で……ソルはついでだ。

 

(ふむ、案外……調度良い加減だったかも知れません)

 

 倒れている真とソルは、ピクリとも動かない。身体の各所に火傷や打撲痕、それに擦り剥いたような痕はあるが、四肢の欠損等の重傷は見られない。

 

 それはガタックとカブトが、全身装甲のISである事が起因しているのだろう。しかしデウス・エクス・マキナとしては、パーツの欠損が無いかつ殺害がしたかったので、及第点といったところか。

 

「くっ……ゲホッ!ゲホッ!はぁ……はぁ……」

 

 デウス・エクス・マキナが満足気に頷いていると、ソルがむせ返りながら目を覚ました。うつ伏せのまま周囲を見渡すと、数歩で届く範囲に真を見つけた。

 

 ソルはそのまま這いずるように、真へと近づいて行く。デウス・エクス・マキナは、特にそれを止める事はしない。なぜなら……結果などもう見えているからだ。

 

(……!呼吸はあるが、脈が弱い……!)

 

 倒れたままの状態で、ソルは真の呼吸と脈を確認した。どうやらこのままだと、心臓が止まるのも時間の問題……。心臓が止まれば、いずれ呼吸も止まる。

 

 そうなれば言うまでも無く、真は死を迎え……身体を乗っ取られてしまう。それすなわち、人類の滅亡である。しかしソルは、ただ目の前の真を助けたい一心でISスーツの襟元を掴んで声をかける。

 

「おい……起きろ。貴様は、オレに生きろと言ったハズだ!その貴様が……こんな所で死んでどうする!?自分の言葉に責任を持て!このままでは無責任だぞ!」

 

『お止めなさい。貴方と違って、彼は苦しむのですよ?そのまま眠るように死なせ……』

 

「っ……黙れっ!貴様ごときが、コイツを語るな!コイツなら言うはずだ……殺してでも起こせとな!」

 

 ライバル関係の最中に、奇妙な友情を真に対して抱いていただけに……珍しくクールなソルが激昂した。そして自身も死に体だと言うのに、必死に真を死の淵から呼び戻そうとする。

 

 しかし……それこそ真の意識は、深淵まで潜り込んでいた。だがどこか、その深淵は暗く深いだけでは無い。果たして、真の意識の行方は……?

**********

「…………むっ?」

 

 あ~……?んだコレ、頭がすっげーぼんやりしてやがる……。つーか何?ここ何処だよ?そう思いながら俺は上半身だけを起こして目を開くと、そこは一面が白百合の花畑だった。

 

 …………ISの領域……では無いよな。だとすりゃ、天国とか?……笑えねぇ。でも俺がここに居る寸前の状態から察するに、それが一番近いような気がしなくもないな。

 

「ん~……他には湖くれぇしか……しか!?」

 

 俺は立ち上がって周囲を眺めると、先にある湖の畔に佇んでいる人の姿を見つけた。ラッキー、と……思ったのは一瞬だ。あの後ろ姿……見た事は無いけど、誰だか解る。

 

 自分でも変な事を言っているのは、十分に解ってる。だけど、そうとしか表現しようがない。気が付けば俺は、その人影に向かって走っていた。

 

「なんでとか、どうしてだとかは……どうでも良い!」

 

 無意識に俺は、そう叫びながら走り続ける。そして……俺は人影の真後ろに辿り着いた。そしてその人影も立ち上がって、俺の方に振り向く。

 

 とても優しい笑みを、俺に向けている……。そして……やはり俺の予感は間違いでは無かった。黒真珠の様な綺麗な瞳……艶やかな黒髪……白磁の様に白い肌……。そう間違いなく……俺の……。

 

「おふく……」

 

「このおバカさーん!」

 

バチィン!

 

「アバーッ!?」

 

 な、なんだか解からんが……16年生きて、お袋とのファーストコンタクトがビンタになった。見かけによらず良いモノをお持ちで、俺はズザザー!と地面をスライドしながら1m弱吹き飛んだ。

 

 今俺の目の前にいるのは、間違いなく加賀美 光葉その人である……。感動の涙を流しそうになったのに、今では違う意味で涙が出てきたわ。ってか何?おバカさんって……。

 

「あ、あの~……お袋……?」

 

「真くん……そこに正座しましょうか?」

 

「は、はいっ!」

 

 な……何だこの……妙に逆らえない気がするオーラは!?こ……これが母親と言うもの……?とにかく俺は、急いで体勢を直しつつその場にビシッと正座した。

 

 お袋も、俺の正面に正座して座った。その……ニッコニッコしてるのが逆に怖いんですけれど……。なんて思いながら俺は、脂汗を浮かべる。

 

「なんですか、お友達に対するあの態度!?終いにはお母さん怒りますよ!」

 

「え……?いや、あの……は、はい……。自分でもそう思ってですね、最近は反省して……」

 

「そうですか……?一夏くんには特に酷い様に見えますよ?」

 

「あ、あれは……ある程度の節度を持ちつつ……その……男同士のコミュニケーションであって……」

 

 何を怒られるのかと思ったら、主に俺の態度に関する事だった。母親に怒られるのは初体験なためか、どうにもしどろもどろとしてしまう……。

 

 プリプリ怒ってるお袋は、年不相応なハズなのに可愛い。のに……やっぱり怖い……これが母か……。俺は終始ガミガミガミガミと怒られる。

 

「……真くん、ちゃんと聞いてますか?」

 

「あぁ……えっと、ゴメン。お袋に怒られるのが嬉しくて……ちょっと」

 

 別に俺はマゾじゃないぞ?むしろサドだ。でも……考えても見ろよ。16年……母親に怒られた経験が1度も無いんだぜ?親父も……俺がしっかりし過ぎていたせいか、面と向かって説教は出来なかったみたいだし……。

 

 他の奴に当たり前の事であっても……俺にしてみればそうじゃない。そう思うと、嬉しくて……目に涙が溜まって来た。俺は必死に取り繕うと、再びお袋に目を向ける。

 

「……ずるい……です……」

 

「え?」

 

「泣かないようにしてたのに……そんな事を言われたら……」

 

 お袋は、俺よりも解りやすく泣き出してしまった。その泣き顔は、酷く……美しい。そう思っていると、お袋は俺を抱き寄せた。お袋の両腕は、俺を温かく包み込んだ。

 

「立派に……大きく育ちましたね……。お母さんは……嬉しいです……」

 

「お袋……」

 

「こうして……抱きしめてあげたかったです……。貴方が辛いときには……傍に居て、こうして……!」

 

「お袋ぉ……!」

 

 ずるいのはお袋もじゃねぇか……涙が、止まらねぇよ……。恥ずかしい話だが、俺はお袋に身を預けた。今まで知らなかった母の温もりを前に、幼児退行してしまったのだろうか……?

 

 そうしてしばらく俺達は、そのままの状態だった。しかしいい加減に恥じらいの方が勝りだして、俺はお袋の腕の中から飛びのいた。……シュンとした顔しないでくれよ、罪悪感が沸くじゃん。

 

「……あっ!そうだお袋……やっぱり此処って……」

 

「……そうですね。ですが、真くんはまだ此処には来るべき時じゃないですよ。ほら……お友達も呼んでいます」

 

「…………?そんなん俺には聞こえないけど……」

 

「フフッ、耳で聞こうとしてはいけません。心で、聞くんです」

 

 俺が耳を澄ますような仕草を見せると、お袋は何か得意気にそう言った。本当に可愛いなこの人は。親父の嫁なのが勿体ない様な気がする。

 

 う~ん……しかし、皆まで言わなかったが……やっぱ『此処』って『あそこ』だよなぁ。……臨死体験してるんだよなぁ。……早く戻りたい……なんか、そうじゃないと取り返しがつかない気がしてきた!

 

「それじゃあ名残惜しいですが、また会いましょうね……真くん?」

 

「えっ、戻れんの!?ど、どうやって!?」

 

「それはですねぇ……こうするんです!」

 

「ちょっ!嘘だろこれ……サンズ・リバー・スープレック……どへぇ!?」

 

 お袋が楽しそうに俺の背後に来たかと思えば、俺の腰に抱き着くようにして腕を回した。そして次の瞬間には、体に浮遊感を覚える。

 

 言うまでも無く……お袋が上体を反らしたのである。俺は綺麗に頭を地面へと叩きつけられ……意識を手放した。これ……本当に戻れ……グヘッ……。

**********

『真……頼むから起きろよ!』

 

「!? ブハーッ!?死ぬかと思った!」

 

「加賀美!?はぁ……心配をかけさせおって……!」

 

 真はカッ!と目を見開くと、息を思いきり吐きながら飛び起きた。あまりにも突然の事に、ソルも少しばかり驚き身体を反応させる。そしてすぐさま、再び真の脈拍を計った。

 

 不思議な事に、脈拍は完全に正常値へと回復していた。とは言え真が無事で何よりと、ソルは勘ぐるのを止めたらしい。ソルが真の首筋から手を引くと、ゆっくり語りかける。

 

「……気分はどうだ?」

 

「あ~……なんか、花畑が見えた様な気が……」

 

「縁起でも無い事を……」

 

 どうやら真は、先ほどに起きた出来事を忘れてしまったらしい。痛てててて……と頭を押さえて、何処か上の空の様子だ。しかし……嫌でも目に映るデウス・エクス・マキナを前に、現実へ引き戻される。

 

「…………」

 

「どうした?」

 

「いや、どっかの熱血バカの声が聞こえたんだけど。そんなん考えてる暇もねぇなぁと思って」

 

 真の言葉に、ソルは熱血バカ……?と首を傾げる。どうやら真は、一夏の声を聞いた……気がする様だ。自分を起こしたあの声は、実際に聞いたのか……それとも気のせいか……。

 

 感覚としては秘匿通信に似ていたが、残念ながらその線は薄い。ああ、そう言えばISの声を聞く感覚にも似てたな~……なんて思うが、いい加減に現実を見る事にしたらしい。2人は、互いに手を貸して立ち上がる。

 

『……もう決着はついたハズです』

 

「フッ……つまらん事を言う」

 

「決着ってのはな、俺らの息の根が完全に止まったらだ!」

 

 これ以上の戦闘は無意味である。そういった意味でデウス・エクス・マキナはその言葉を放った。しかし2人にとっては、無意味なんて言葉は意味をなさない。

 

 デウス・エクス・マキナを鼻で笑う様に言ったソルに便乗する形で、真はズビシと指を差しながら続けた。だが……デウス・エクス・マキナの言葉も正しいのである。

 

『ISも無しに、私に勝てるとでも?』

 

「「…………」」

 

 ぐうの音も出ない正論であった。真とソルの腰に巻かれているベルト……そのバックル部に挿入されているゼクターは、完全に破壊されてしまっていた。バチバチと電撃が走り、真っ黒焦げだ。

 

 これには流石に沈黙を貫くしか無いのか、2人は何も答えない。答えられない……が、本来の表現なのだろう。だが……2人は希望を捨てていない。2人の目がそう語っているのだ。

 

『まぁ良いでしょう。私にも色々と準備がありますし』

 

ゴゴゴゴ……!

 

「何の揺れだ!?」

 

「恐らく……カエルム・スカラムの降下が止まったのだろう」

 

 ソルの言う通りに、今の揺れはカエルム・スカラムの降下が止まった影響だ。外部から見ると、カエルム・スカラムの最低部が、ジョウントに入るか入らないくらいの位置まで来ている。

 

 すると下半分の球体部が、まるで溶ける様にジョウントの中へと入っていく。そして先ほどまで皆が戦闘をしていた場所へと流れ落ちる。

 

 しかし液状になっていたカエルム・スカラムは、海底に着くと同時に元の硬度へと戻る。その様はまるで、1本に繋がる塔のにも見える。だがこの塔が、何を意味するのだろうか。

 

「いったい……何のつもりだ!」

 

『あれですか?あの塔は……タキオン収集機と言ったところでしょうか』

 

「準備とは、加賀美の前世とやらに飛ぶための……か」

 

 この塔は、カエルム・スカラムへと繋がるエネルギーパイプである。地球上に存在するタキオン粒子を吸収し、本体へと直接送り込む。そして真の身体を得たデウス・エクス・マキナは、カエルム・スカラムごと転移するつもりなのだ。

 

 恐らく現実世界に存在する既存の兵器では、デウス・エクス・マキナを倒せない。マキシマムハイパーサイクロン一発で、どれ程の命が失われる事になるだろうか?

 

『チャージが完了するまで、約15分です。それまで私は、何も手を出しません』

 

「んだコラ……!慈悲深いつもりかよ!」

 

「落ち着け。逆に言えば、15分もくれると思えば良い」

 

 何もしない宣言は、完全に自分達を舐めているのだ。そう感じた真は、泣く子も黙る様な形相でデウス・エクス・マキナにズンズンと詰め寄ろうとする。

 

 それを冷静な様子で、ソルは羽交い絞めで止めた。しばらく真はジタバタと暴れるが、そのうちに息を切らせながら大人しくなる。落ち着いた真は、ソルの腕をタップして解放を促した。

 

「15分……これが俺らの寿命にならねぇといいがな」

 

「そのために、出せる知恵は絞るべきだ」

 

「……お前の言う通りだ。ソル……カブトの反応は?もちろん第2フェーズ的な意味で」

 

「ウンともスンとも言わんな。残念だが……オレのはコアごとイッている」

 

 あくまで冷静なソルに、真は返って可笑しさを覚える。もはや使い物にならない事を、なぜそんな簡単に言えるのか……不思議でならない。

 

 なぜなら真は、言い出せなかったからだ。ガタックが……既に機能停止状態であることを。だが残念ながら、ソルはそんな事は解っていた。あえて聞く必要も無い……程度の事らしい。

 

「……情けねぇけど、敵前逃亡も1つの手だぜ?」

 

「残念だが……奴がカエルム・スカラムを動かしている時点で、オレにジョウントの操作権利は無い」

 

「あぁ……わぁってるわぁってる。言ってみただけだよ……」

 

 真には始めから逃げるつもりなどないが、一応の確認のつもりだったらしい。しかし……すぐさまソルに否定されて、やっぱりかと肩をすくめる。

 

 そして2人の議論は、何の実りも見せない。そのまま刻一刻と15分がすり減っていく最中に、ソルの思考はいかようにして真を生かすかへとシフトチェンジし始めた。

 

 ソルの判断は、とてつもなく正しい。他でも無い……真が殺されては、全てが終わる。自分が生きると決めた世界も……何もかもが無に帰ってしまう……。

 

『さて、15分経ちました。早い物ですね、貴方がた人からすれば……長い物なのですか?』

 

「そうさな、3分のカップ麺5個分なら結構長げぇかもしんねぇ」

 

「人間……待てば長い物だ」

 

『ハハハ……!そうですか、私には感じられない概念ですね』

 

 真の小粋?なジョークと、それに乗ったかもしれないソルのやり取りに、デウス・エクス・マキナは純粋に面白さから来る笑いが飛び出た。

 

 エコーに乗って聞こえるデウス・エクス・マキナの笑い声は、凄まじく喧しい。しかし……ずっと笑っていてくれれば、どれほどに助かった物か。

 

『それでは、安心してお逝きなさい。大丈夫です……痛みは感じないよう配慮します』

 

「……ソル」

 

「……何だ?」

 

「ありがとな。最期に一緒に戦えて、嬉しかったぜ」

 

「……オレの人生、貴様に出会えて良かったと……心からそう思う」

 

 痛みを感じない……と言うのは、クロックアップ中の殺害であるからだろう。デウス・エクス・マキナは部位の欠損を配慮してか、コードの先にほんの小さなハンドガンを形成する。

 

 2人は……諦めざる状況だと悟った。最期に思いの丈を述べると、後は……静かに目を閉じる。そうすれば、いつの間にか死を迎えているはずだと思って。

 

『かがみ~ん!』

 

「「!?」」

 

『…………?』

 

 死を迎えるであろう寸前に、2人は確かに聞いた。特に真は聞き覚えがある。今のは間違いなく……布仏 本音その人の声だった。2人は思わず、後ろへ振り返ってから顔を見合わせる。

 

「今の……聞いたか?」

 

「……確かに」

 

『何事ですか?思わず手を止めたくなってしまいますね』

 

「あぁ……テメェにゃ聞こえてねぇのな」

 

「当然だ……所詮は紛い物の第1~第3フェーズなのだからな」

 

 2人は先ほどまでの諦め加減など、何処へ行ったのか……完全にデウス・エクス・マキナに背を向けて、顔をニヤつかせる。そこでようやくデウス・エクス・マキナは気づいた。

 

 そちらの方向には確か……地球があると。だからと言って何なのか、普通はそう思うだろう。しかしデウス・エクス・マキナは感じていた。確実に、2人へ力が宿りつつあると。

 

「随分と……慕われているな」

 

「ハハハ……まぁな。だから……消させてやれねぇんだよ」

**********

 2人がマキシマムハイパーサイクロンを喰らってから……地球に残った面子は、絶望を絵に現したような表情を見せる。目を逸らすもの……泣き崩れる物……顔面を蒼白にする物……。

 

 だがしかし、この男……織斑 一夏だけは、決して希望を捨ててはいなかったのだ。そして……腹から声を出す。ただ……声の届かぬ親友を鼓舞するために。

 

「真……頼むから起きろよ!」

 

『ブハーッ!?死ぬかと思った!』

 

「……!?皆!真……真が!」

 

 一夏がそう叫んだ途端に、まるで仕込んだかのように真が起き上がった。とりあえず真が生きていたことに、皆は歓声を上げる。簪に至っては、腰が抜けてしまった。

 

 そして、問題なのはその後だった。一夏は真が口走った『どっかの熱血バカに呼ばれた気がした』と言う……この台詞を聞き逃さなかったのだ。そこで一夏は、閃いたのだ。

 

「第2フェーズ……第3フェーズ……。束さん!」

 

『なっ、何かないっくん!』

 

「真の第2と第3フェーズが複合する事って……あり得るか!?」

 

『ん~……イエス、かな?どっちもコアに密接に関係するからね』

 

 突然に束へと呼びかける一夏に、残った女子達はビクッと驚きの表情を見せる。なぜ一夏が、そんな質問をするかが理解できなかった。

 

 しかし一夏は、束の返答を聞いて……やっぱりかと嬉しそうな表情を浮かべる。よしっ……!と、力強く手を握りしめて、更に何か思いついている様子だ。

 

「一夏!アンタ……何か思いついたなら何か言いなさいよ!」

 

「そうですわ!事は一刻を争うのですわよ!?」

 

「届くかもしれないんだ!俺達の声が……真に!」

 

 一夏の考えはこうだった。真の第2フェーズは、ISの声を聴く事。そして真の第3フェーズは、コアとコアとのシンクロ……。つまりこの2つが複合さえしていれば、自分たちのISのコアとガタック及びカブトのコアへとシンクロさせる。

 

 更にそこから、自分たちの声をISのコアへと代弁して貰えば……自分たちの声が真へ届くと言う寸法だ。一概にいい作戦とは言えない。

 

 そもそもこちらからガタックのコアへとシンクロがかけられるのか、など……問題は様々だ。しかし一夏は、真の口走った『熱血バカ』を、決して偶然などと思っていない。

 

「俺達のできる事を、精一杯やる!それが……真にしてやれる事だろ!?俺の思い違いかもしれない……だけど!アイツは、世界の為に戦ってるんだ!俺達は、見てるだけで良いハズが無い!」

 

「私は……一夏を信じる……。私の個人的な感情だって思う……。それでも私は……真を、せめて応援してあげたい……!だからお願い……皆……力を貸して……!」

 

 簪は楯無に支えられながら立ち上がると、皆に向かって涙ながらに頭を下げる。それまで半信半疑だった皆も、流石にイエスと言わざるを得ないだろう。

 

「弟くんが頑張ってるんだものね……妹の未来の旦那を死なせたりしたら、義姉の名が廃っちゃうわ!」

 

「いずれ奴とは、またコンビを組もうと思っている。それだけに私は奴を戦友と呼ぶのだ」

 

「なんだかんだで優しい真だもん……恩を返さないとね!」

 

「アタシも勉強とかで世話になったしね……。ってか!アイツが居ないと誰がアタシの勉強見るのよ!」

 

「彼に思い出させていただいたノブレス・オブリージュ……今こそ真さんに見せつける時ですわ!」

 

「私は真に負け越しなのでな……勝ち逃げなどさせん!」

 

 例え1%の可能性だとしても……一縷の希望に皆は賭けて見る事にした。自分の突飛も無い考えに乗ってくれた皆に、一夏は感謝の意を示す。

 

 そしてそのまま一夏がリーダーシップを発揮する形となった。束を含めた皆に指示を出すと、しっかりマドカも回収しつつ行動を開始する。

 

 まず一夏が向かったのは、千冬の元だった。白式も展開した状態だったため、頭は叩かれ放題だった。しかしIS学園での地位を確固たる物にする千冬に、頼むのが手っ取り早かったのだ。

 

「はぁ……とっとと用件を言え……」

 

「アリーナに、全校生徒……いや!学園に居る全ての人間を集めてくれ!」

 

「何……?それはいったいどういう……」

 

「説明してる暇が無いんだって!それじゃ、そういう事だから!」

 

 千冬が呼び止める暇も無く、一夏は全力でその場を去っていった。もちろん千冬は、陰ながら皆を見送ったために戦いの後だと言う事は解る。

 

 そうなれば……残るは真。これは急がねばならないかもしれないと、千冬も行動を開始する。そして……一夏の指示通りに持てる力の限りを尽くし、学園の関係者を全て集めた。

 

 時刻は早朝……突然の事に、関係者たちはざわつきが冷めない。そんなアリーナの中心に専用機持ち8人が佇んでいるのだから、更に訳が解らなかった。

 

 ある程度は予想の出来ていた事だ。8人を代表するのは、もちろん一夏。一夏は皆よりも少し高度を上げると、オープンチャンネルで関係者に語りかける。

 

「皆……聞いてくれ!集まって貰ったのは、皆に頼みがあるからだ!」

 

 そう一夏が叫ぶと同時に、モニターへとカエルム・スカラム内の様子が映し出される。そのシーンは、真とソルが15分間の会議をしている頃だ。

 

 これに集められた関係者は、更にざわつき始める。当然だ……真が2人居る事もさることながら、訳の解からない異形を目の前にしているのだから。

 

「え……何?加賀美くんって、双子だったの?」

 

「いや……ツッコミどころそこじゃ……。うん……?そこもツッコミどころ?」

 

ガヤガヤガヤガヤ……

 

「今ニュースで話題の要塞……真は、あの中で戦ってる!皆の……世界の為に!」

 

 着眼点がずれていた関係者たちは、ようやく真とソルがボロボロである事に気が付いた。それはそれでざわつくが、一夏は全く構わずにつづけた。

 

「見ての通り、真はボロボロだ……。だから、頼みたい!真を、応援してやってくれないか!」

 

 一夏は必死にそう訴えるが、関係者にはいまいち響いていない。応援ごときが何になるのか……そう思っているのだろう。何もしないよりはマシと言う発想すらも浮かばない。

 

「皆の声は、俺達のISが届かせる!何言ってるかは解かんないと思うけど!どうか……頼む!皆の声が、きっと……真の力になるはずなんだ!だから!」

 

ザワザワザワザワ……!

 

「かがみ~ん!」

 

「のほほんさん……」

 

 関係者たちは、言えば言うほどにざわつくばかり……一夏がダメかと思ったその瞬間の事だった。周囲の喧騒を突き破って、声を上げたのは本音だ。

 

 本音が叫んでもざわつきの音量には勝てないハズなのに、周囲は一気に静まり返る。そんな事も気にせずに、本音は腹の底から声を出す。

 

「かがみ~ん!頑張って~!かがみんならきっと……きっと~……世界を守れるよ~!」

 

「ホラ、加賀美くん!振った女の子がそう言ってるよーっ!」

 

「意地見せないと、ますます男として立つ瀬が無いんじゃないかな!」

 

「まぁとにかく気張りなよ!きっと君なら大丈夫だから!」

 

 本音に続いて声を上げたのは、相川、鷹月、櫛灘の……打鉄弐式の整備に関わった面子だった。全員事情は良く解かっていない……それでも、だ。

 

 真は恩を貰うばっかりで、何も返せてはいない……そう思っていた。だがこれを見るに、そんな事は無かったのだ。相川も鷹月も櫛灘も……真に沢山の言葉に出来ない物を貰っていた。だから声を出す……真の力になるために。

 

「加賀美くーん!」

 

「加賀美くん……ずっと前から好きでした!」

 

「あ、コラ!アンタどさくさに紛れて……!その……実は私も加賀美くん派です!」

 

 本音たちの声援を皮切りに、クラスメイトと……真に近しい人間からどんどん声を上げていく。いつしかアリーナ内は、真コールで包まれる。

 

 どさくさに紛れて告白をする者も居たりしたが、盛り上がって来たので何も言うまい。真の紡いだ絆で一体となったアリーナの中心に居る一夏達は、感動の一心だった。

 

「よし……皆!この声を、俺達が絶対に届けよう!」

 

「「「「「「「了解!」」」」」」」

**********

「加賀美く~ん!頑張って下さ~い!あっ、でも怪我はダメですよ~!」

 

「フッ……クククク……!ハッハッハ……!」

 

「お、織斑先生?」

 

 並び立つ1年1組担任・副担任コンビは、アリーナのモニターの真を見つめていた。訳の解からなかった真耶だが、とにかく大事な生徒の為にと声を張る。

 

 すると突然に、隣に居る千冬が珍しく大声で笑いだす。これに真耶は、ギョッとした顔をして千冬を見た。いったいどうしたんですか?そういったニュアンスで千冬の名を呼んだ。

 

「考えてみろ……『あの』加賀美が、こんな大勢に応援されているのだぞ?ハハハ……」

 

「た、確かにそうですけど……加賀美くんは良い子ですよ!」

 

「ほう……露骨に怖がっていたのにか?」

 

「そ、それは……あうぅ……」

 

 千冬は入学当初の真を思い出していた。あろうことか、自分に噛みついたような態度を見せる……珍しい『人種』だった。だからこそ千冬は、真に一目置いていたのだ。

 

 しかしいくら一目置いたとしても……あの態度ばかりには評価は向かない。でもいつの間にか、真は大きく成長していた。それは、今の光景が証明している。

 

「まぁ……とにかく奴を応援してやろう。それが……教師として、大人として出来る事だ」

 

「で、ですね!」

 

「加賀美!必ず帰って来い……スペシャルな懲罰をくれてやる!」

 

「とにかく無茶はダメですからね~?先生と約束です~!」

**********

「会長!」

 

「安心しろ、事態は聞いている」

 

 朝早いZECT本社の会長室に、三島がノックも無しに押し入ってきた。それだけの一大事なのだが、陸の耳にはとっくに入っていた事だ。

 

 陸のPCに映し出されているのは、真とソルの様子……そしてその手に握られているのは、ISのコアだ……。事態を知らせたのは、束だ。

 

 一夏の頼みで、真に近しい人々に話を通したのだ。ちなみにコアは、自前の物である。もしもの時に誰にも言わずに保有していたのが、こんな所で役に立つとは……。

 

「その様子ならば、三島も話を聞いたのだな?」

 

「え、えぇ……一応は」

 

「なら、お前も何か言ってやれ」

 

「私もですか……」

 

 陸からコアを投げ渡された三島は、盛大に困った様な表情を浮かべる。それは真と関係が深いわけでは無いから……では無く、自分が口下手だと知っているからだろう。

 

 もっと言えば、陸がニヤニヤしているから更に言い辛い。三島は大きく息を吐いてから咳払いをして、もう一拍の間を置いてようやく喋り出す。

 

「あ~……その……実を言うとな、君が私を怖がっているのは知っている……」

 

「プッ……」

 

「それなりに、ショックなのだぞ?だから……帰って来てくれ。私も……君に友人と認められたいのでな……」

 

「クククク……!」

 

 プルプルと震えながら笑う陸に耐えられなくなったのか、三島はコアを投げ返して会長室を飛び出る。それほどに、恥ずかしかったのだろう。陸は笑いが落ち着くと、コアに向かって語りはじめる。

 

「真……私の誇りある孫よ……。とんだ狸爺で、毎度世話を焼かせるな。私は……お前に感謝している。残り短い人生で、どれほど恩を返せるかは解からんが……。とにかく、言わせてほしい……愛しているぞ、孫よ……」

**********

「皆、お早う……って、何この騒ぎ!?」

 

「オラお前ら、もっと腹から声出せコラアアアア!」

 

「ウス!戦っ神!戦っ神!戦っ神!戦っ神!」

 

 岬がラボラトリへと出勤すると、ツッコミどころの多すぎる光景が広がっていた。田所が超大型モニターの前で、戦神と書かれた旗を振っていた。それも……ラボラトリと田所隊の両方を引き連れてだ。

 

 しかもこの真コールならぬ戦神コール……全然理解が出来ない。岬は人混みをかき分けながら、田所の元へと急ぐ。辿り着くまでに体力はかなりもっていかれたが、岬は田所を怒鳴り付ける。

 

「ちょっと田所さん!説明して貰えますよね!?と・く・に……何で修理の依頼が来てた打鉄をコアの状態までバラしてるんです!?」

 

「あー!?なんか良く解かんねぇけどよーっ!コアに向かって声かけりゃ……真に声が届くんだとよ!」

 

「加賀美くん……!? なに……これ……IS……?」

 

「な、良く解かんねぇだろ?とにかく真は、そのデカブツと世界を賭けて戦ってんだと!」

 

 流石に研究室内を滅茶苦茶にされて、目が行かなかったのだろう。岬はモニターに映っている真とソルの姿に気が付いた。そして……デウス・エクス・マキナを前に驚愕する。

 

「ガキが戦ってんのによぉ……何も出来ねぇのは悔しいだろ!?」

 

「…………」

 

「だから俺ぁ声を出す!この先一生声が出なくたって、構いやしねぇ!馬鹿弟子の力になるんならな!」

 

 そう言ったきり田所は、再度ラボラトリと田所隊の人間の指揮を執る。持っている巨大な旗も、より一層に左右へと振った。既に田所の掌には、マメが出来はじめている。

 

 だが旗へと込められている力は、全く持って緩まない。そんな田所の姿に、岬は考える事を止めた。やっぱり状況は良く解からないけど、たまには馬鹿っぽい事も悪くない。

 

「加賀美くん!私達の造ったガタックが、そんな気持ち悪いのに負けるはずが無いわ!だから頑張りなさい!」

 

「聞いてっか、馬鹿弟子ぃぃぃぃ!俺ぁなぁ……まだまだ手前に教える事がいっぱいあんだ!みっちり教えこんでやっから、覚悟しときやがれ!」

**********

『始めの出会いは目潰しだっけ……?アレ、本当にごめんなさいね!貴方の目の前で謝らせて頂戴!』

 

『戦友よ、貴様にしかやれんことを……精一杯やれ!それだけだ!』

 

『君は遠い所に居るけど……物理的距離なんか関係ない!僕らは……『そこ』に居るから!』

 

『アタシ、負けたら承知しないって言ったでしょ!帰って来なかったら、更に承知しないんだからね!』

 

『真さん!貴方の高貴な行い……しかと見届けさせて頂きます!どうかわたくし達の声を……力に!』

 

『私はお前に何かしてやれた試しがない……だからせめて!応援くらいはさせて欲しい!頑張れ、真!』

 

『ここまで盛り上げておいて、まさか負ける事なんてないだろ?なぁ……相棒!』

 

「あ~……何なんだろうね、本当……俺を泣かせて、あいつらそんなに楽しいのか……?」

 

「貴様の泣き顔など、滅多に観れんだろうからな。存外……本当に楽しんでいるかもしれんぞ?」

 

 皆の放っている声は、想いとなって……確かに真へと届いていた。真はソルの目があっても耐えられず……ボタボタト涙を流す。そして……最も大切な人の想いへと、耳を傾ける。

 

『真……』

 

「簪……」

 

『貴方はいつだって……私の……ヒーローだから……。だからお願い……なんだって良いの……!私の所に……帰ってきて……!』

 

「…………」

 

 真には声しか届かないのだが、聞いただけで解った。簪は……泣いていると。真は思う……簪を泣かせないという誓いを破るのは、これで何度目だろうかと。

 

 自分が無茶をする限りは、簪は泣いてくれるのだろう……。だからこれで、最後にしよう。真はグッと拳を握って、デウス・エクス・マキナの方へ振り返る……前に思った。

 

「なんか応援俺ばっかりだけど、力になりそうか?」

 

「安心しろ……オレには、1人の女の声で十分だ」

 

『ソル……約束は守れ。私を……迎えに来てくれるのだろう……?』

 

 あれから保健室で寝かされていたマドカは、目を覚ましていた。モニターで一夏の演説はしっかりと聞いていたので、コアは無事なサイレント・ゼフィルスに語りかける。

 

 ソルは小さく、もうすぐだと呟くと……堂々とデウス・エクス・マキナの方へ振り返る。そして振り返りかけていた真も、それに続いた。

 

『……本当に、何が起きているのです?』

 

「ハッ!テメェにゃいくら言おうと無駄な事だっつの!」

 

「貴様は、人の可能性を信じる事を放棄した。その時点で底が知れる」

 

 目の前で行われる真とソルのやり取りに、デウス・エクス・マキナは困惑する。この状況で、この2人は何をそんなに強気でいられるのだろうか?

 

 そこら辺りが、真とソルの言った台詞の通りなのだろう。だが2人には、痛いほどに解る。なぜなら……身体の内から、力が湧き出てくるのを感じるから。

 

「やっぱ人間……捨てたモンじゃねぇ!なぁソル!」

 

「ああ、奴が勝手に失望しただけだ。オレ達が、解らせてやればいい」

 

「人間の素晴らしさ!」

 

「人間の尊さ!」

 

「そしてそれを、未来へと繋ぐ……」

 

「「人間の……可能性を!!」」

 

ゴオオオオオオオオッ!

 

『!? これは……まさか!』

 

 2人が声を合わせてそう叫ぶと、2人の周りに粒子が漂う。真の付近には金の粒子が、ソルの周りには銀の粒子が……。良く見るとその粒子は、2人を包み込んでいるようにも見える。

 

 なぜだか温かく、優しい光を放つ粒子に……2人は身を預ける。すると、どうした事だろうか。真とソルの傷は見る見る癒えて、それぞれのゼクターも完全修復された。

 

『時間の逆行……自分達を、傷つく前の状態まで戻した……!辿り着きましたね……最終フェーズへ!』

 

「……加賀美、オレは悟ったぞ」

 

「奇遇だな、俺もだ……」

 

 2人はニヤリと顔を見合わせると、修復されて自分の周りを飛び回るゼクターをその手に収めた。その状態で一旦はストップして、デウス・エクス・マキナに語りかける。

 

「『最終』フェーズなど、始めから存在しなかったんだ」

 

「そいつぁそこで、俺らの進化は打ち止めって事だからな……。おい神ぃ!テメェがテメェのモノサシで、勝手に俺達の限界を決めるんじゃねぇよ!」

 

「オレ達の……人間の進化に終わりなど無い!」

 

「それこそが、俺達の示す可能性って奴だ!だからあえて言や……コレは、俺達の……」

 

「「第4フェーズッ!」」

 

ゴオオオオオオオオッ!!!!!

 

 2人が身体へ力を込めると、まるで粒子がオーラの様に纏わりつく。つまりこれは……目に見えるほどのタキオン粒子。2人は辿り着いた……皆への感謝の気持ちの果てに、新たなる境地へと。

 

 目の前で繰り広げられる光景にデウス・エクス・マキナは、信じられないと言うのが率直な感想であった。しかし決して、焦るような事は無い。むしろ……好都合なのだから。

 

『フッ……ハハハハ!なるほど、次なるフェーズへの鍵は……貴方達が手を取り合う事だったようですね!』

 

「「…………」」

 

『良いでしょう!お互いにフェアな状態で戦おうではありませんか!貴方達の言う人の可能性……それを超えて見せます!そして私は……全てを無に帰す!』

 

「ソル、しっかり合わせろよ」

 

「それは構わんが、何故だ?」

 

「アホか、そっちんがカッコイイからに決まってんだろ!」

 

「フッ……いかにも貴様らしい!」

 

「「変身!!」」

 

『『―HENSHIN―』』

 

 ベルトへとゼクターをスライド挿入させると、ガタックとカブトのアーマーは再び形成された。どうやら……本当に壊れる以前の状態まで、巻き戻してしまったらしい。

 

「「キャストオフ!!」」

 

『『―CAST OFF―』』

 

『―CHANGE STAGBEETLE―』

 

『―CHANGE BEETLE―』

 

 続けざまに2人はゼクターの決められた動作にのっとって、キャストオフを行う。するとアーマーが弾け飛んだ後に、それぞれ顎と角がせり上がる。さて……ここからが本番だ!

 

「「ハイパーキャストオフ!!」」

 

『『―HYPER CAST OFF―』』

 

『―CHANGE HYPER STAGBEETLE―』

 

『―CHANGE HYPER BEETLE―』

 

 まだまだ2人は止まらない。ハイパーゼクターをパススロットから呼び出すと、左腰に装着してハイパー化を行う。ハイパーフォームに移行したガタックとカブトは、どこか様子が違っていた。

 

 放っている輝きが、いつもより強い。2つのハイパーが放つ輝きは、何処までも暗い闇を……明るく映し出してくれるような、そんな光だった。

 

「さて……行くか、加賀美!」

 

「おうよ、俺達の未来を創っていくために……神!」

 

「「テメェを、ぶっ殺す!!」」

 

 

 




人々の声援で立ち上がる……これぞ、仮面ライダー!

ってな訳で、覚醒する真とソルでした。今回は、応援される→からの覚醒な王道パターンを狙ってみました。

『ウルトラマンティガ』の最終回とか、『仮面ライダーW』の劇場版とか……私はどうにもああいうシーンが大好きでして、いつも涙ながらに見てます。

だからこそ、自分で書いてる小説の主人公も……同じパターンで立ち上がって欲しかったのです。紡いだ絆を力にして……立ち上がって欲しかったのです。

さて……そんな訳で次回は、次なるフェーズに辿り着いた真&ソル……反撃開始!次回こそが本当に……本当の……ラストバトルになります!

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。