戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

とうとうソルとの最後の戦いがやってまいりました……。この二次創作も、秒読みで最終回が近づいて来ている訳です。

最後の戦いかぁ……ソルとの戦いは、今回で5戦目なのですが……正直マンネリになるかなと思ってました。でも全然そんな事は無かったです。

それもこれも……真とソルが良き成長を見せてくれたおかげでしょう。……自分で言うのはなんなんですが。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


VSソル(最終決戦)ですが何か?

「よし、抜け……って危ねぇ!」

 

 超巨大ジョウントを抜けて、カエルム・スカラム内部にワープしたかと思いきや……目の前がすぐ壁であった。エクステンダーで最大限の減速をかけると、何とか激突せずには済んだ。

 

 心の中で安堵の溜息を吐くと、ハイパーセンサーを用いながら周囲を見渡してみる。なんというか……白いな。壁も床も、何もかもが白い。遠くを見ていると、遠近感が無くなりそうだ。

 

 現在地は……青子にナビゲートしてもらうまでも無いか。ここはどうやら、ワームの格納庫らしい。前に攻めた施設ほどでは無いが、まだ沢山残っているようだな……。

 

『マスター、カエルム・スカラムの下層部に……高密度のエネルギー反応が』

 

『うん……?ソルか?』

 

『いいえ、どうやら……ジョウントの発生装置の様です』

 

 ガタックのハイパーセンサーに映し出されているのは、カエルム・スカラムの4分の1程度だろうか?そこら全てが、ジョウントの発生源か……つまり、此処を落せばジョウントも止められそうだな……。

 

ゾワッ!

 

「づっ……!?」

 

『マスター?』

 

『……ソルが呼んでるみてぇだ』

 

 背中……と言うか、身体全体にソルの嫌悪感を感じた。どうやら……率先して放っているらしいな。そうなれば、アイツが呼んでいるとしか考えられなかった。

 

 青子がカブトの反応を辿ろうかと聞いて来るが、やはりその必要はない。俺は、ソルに導かれるようにエクステンダーの進路を取る。

 

 だがどうやら出てきたのは、同じく下層部だったようで……移動に時間を取られてしまう。エクステンダーは余裕で通れるが、通路でスピードは出せない。

 

 でも俺にとって、この移動時間は救いであった。さっきから……心臓がバクバク言ってやがる。この五月蠅い心臓を落ち着かせるには、良い時間だ。

 

 そしていつしか俺が辿り着いたのは、見上げるほどに大きな門がある場所だ。この先が、決戦の場であるとでも言っている様に感じられる。

 

(あれ……?こんなデザインの門……前にもどこかで……?)

 

『マスター、準備はよろしいですか?』

 

『ん……?あ、あぁ……問題ねぇ。……行くか』

 

 なんだか見覚えがあった気がするが、ただのデジャヴだろう。んな事より集中、集中!それでいて、気合も入れろ!ぜってぇ……勝つ!

 

 俺がエクステンダーを前に進めると、門はゴゴゴゴ……!なんて言いながら、物々しく開いた。そして……その中に広がっていたのは、ドーム?アリーナ……?とにかく、決戦場を思わせる広い空間だ。

 

 そこの中心に悠然と、ソルが佇んでいた。……?いつもと雰囲気が違うような気がする。良い意味でも、悪い意味でもとれるが……まぁいいや。俺はエクステンダーから飛び降りた。

 

「……待たせたな」

 

「ああ、待っていた……」

 

 そう言いながらソルは、着ていたコートをガバッ!と脱ぎ捨てた。……雰囲気が違うっての……あながち間違いじゃねぇらしい。今回のソルは何か……顔つきも違う。

 

 その顔は、なんて言ったらいいのかね……?……男が、何か覚悟を決めた様な感じ。今までような殺気は無いが、こちらの方が厄介かも知れん。

 

「貴様は……オレに生きる意味を尋ねたな?」

 

「……おう。見つかったか?生きる意味……」

 

「……ああ。だから……貴様を殺すのが第一ではなくなってしまったよ」

 

「…………」

 

 そう言うソルの表情は、何処か穏やかさの中に……激しさを隠したような印象を受けた。俺がその様子を見守っていると、ソルは高らかに右手を上げる。

 

 するとその手目がけて、カブトゼクターが飛来した。赤のカブトムシをガッチリ掴むと、ソルはそこで一度手を休めて、再び語りかける。

 

「全ては……マドカと共にあるために」

 

「あぁ……なるほどな」

 

「だからオレは……貴様を殺す!」

 

「……それで良い。何の意味も無く殺されるよりゃぁマシだ……」

 

 ソルの呟きに、完全に納得している俺が居た。全てはマドカと共に……か。そりゃぁ……お前もそういう表情にもなるよな。なんつったて、男が女の為に戦う事を決意したのだから……。

 

「フーッ……かかって来やがれ!俺もな、テメェと一緒で負けらんねぇのよ!」

 

「これで最後だ……。変身!」

 

『―HENSHIN―』

 

「「キャストオフ!」」

 

『『―CAST OFF―』』

 

『―CHANGE STAGBEETLE―』

 

『―CHANGE BEETLE―』

 

 これで最後……か。……ああ、本当に終わりにしよう!一斉にキャストオフして、マスクドアーマーが弾け飛んだ。ここから先、同じことを考えているだろう……。

 

 と、思っていたら正解だった。俺とソルは、同時にハイパーゼクターを呼び出して、左腰へ装着させた。そりゃそうだ……俺達の最後の戦いに、余興なんていらねぇ!

 

「「ハイパーキャストオフ!」」

 

『『―HYPER CAST OFF―』』

 

『―CHANGE HYPER STAGBEETLE―』

 

『―CHANGE HYPER BEETLE―』

 

 ハイパー化を果たすと、黄金と白銀の光が無機質な白を照らした。そうして俺達は、黙って互いの主力武器を取り出す。そして……その数瞬後だろうか、俺達は……お互いに向かって突っ込んだ。

 

「「おおおおおおおおっ!!」」

 

ガギャア!バリリリリ!バチィ!

 

 ソルの振り上げたパーフェクトゼクターに合わせて、右手に握ったプラスカリバーを合わせる。俺達の本気加減が見るだけで解るような火花が散った。

 

 いや……それだけで無く、触れた刃同士がスパークを起こすほどだ。だが……押してダメなら引いてみなってね!俺はハイパーカリバーの刃を滑らせ……。

 

「ぬるい!いつまでもその手は……通じんぞ!」

 

「何ッ!?くぬぅっ……!」

 

ガギィン!ギチチチチ……!

 

 刃を滑らせようとした瞬間の事だった。ソルは一瞬にしてパーフェクトゼクターを刃から離して、受け流しを阻止する。そしてそのまま、頭上からパーフェクトゼクターを振り下ろす。

 

 俺はそれを、ハイパーカリバーを交差させるようにして受け止めた。だが……なんつう……重さだ!何か……単にソルの体重だけがのしかかっている様には思えん……!

 

「ふんっ!」

 

ズガガガガ!

 

「カハッ!……っ!クソ!」

 

 ソルは俺のガードが上がった事で、腹部を蹴りつけてきた。その衝撃で吹き飛ばされ、その隙をさらにガンモードの射撃で追撃してくる。

 

 体勢を崩しながら吹き飛ばされたせいで、数発は受けてしまった。しかし残りの弾は、ハイパーカリバーをロングカリバーに移行して回転させることで防いだ。

 

「はああああっ!」

 

「っ!?」

 

 やべぇぞ、このソル……戦略も何もあったもんじゃねぇ!だからこそ戦い辛れぇ……。今までのトリッキーな方面に持って行っていた技術を、猛攻に全て費やされるとこうなるのか……。

 

 とにかく、突っ込んで来たソルの攻撃を何とか防がなくては……。いや、待て……防ぐ?……アホか!んな消極的な考えで……コイツに勝てるわきゃねぇだろうがぁぁああ!

 

(イオンブレードッ!!)

 

「でやぁ!」

 

ガギッ!

 

「くっ……!」

 

「そこぉ!」

 

ザンッ!

 

 俺はロングカリバーの下方にあるマイナスカリバーで、ソルのパーフェクトゼクターをカチ上げる。これでガードは上がった……お返しだコンニャロウ!

 

 そのままロングカリバーを一回転させて、斬り上げ攻撃でイオンブレードを纏わせたプラスカリバーをヒットさせる。だが……まだだ!俺は今まで、双剣の利点を殺していた。

 

 ソルが体勢を立て直す前に、ロングカリバーの連結を解除。ハイパーカリバーに戻すと、プラス・マイナス双方にイオンブレードを纏わせて、連続斬り!

 

「どおおおおらああああ!!!!」

 

バチィ!バチィ!バチィ!バチィ!

 

「ぐっ!ぬぅぅうう……!離れろ!」

 

「うおわっ!?」

 

 イオンブレードの効力が続く限り、思いのままにハイパーカリバーを振り回す。密着されてマトモにガードも出来なかったソルだが、パーフェクトゼクターを力の限り振った。

 

 刃は俺には当たらなかったが、例の剣圧で発生した突風に巻かれて吹き飛ばされる。しかし反撃は忘れんぞ!俺はまたハイパーカリバーをロングカリバーに。

 

 そしてイオンブレードを纏わせると、ブンブンと回してから勢いよく二度に渡って振る。すると、イオンブレードが斬撃となって飛んだ。これは多少ホーミングする……ソルに向かって飛んでいくはずだ。

 

「…………!」

 

(避けないのか!?)

 

「はああああっ!!!!」

 

ガギン!!!!バキャァ!!!!

 

「うっそ……だろオイ!?」

 

 雄叫びを上げて、ソルはパーフェクトゼクターを斬撃に合わせた。するとどうだ……あろう事か、斬撃の進行方向は反れて……あらぬ方向へと飛んでいく!

 

 かなり出力は抑えたとは言え……代名詞でもあろう攻撃を反らされたのは精神的ショックが大きい。い、いや……んな事言ってる暇はねぇ!次だ次ぃっ!

 

「…………集え……!」

 

(!? アイツ……とばし過ぎじゃねぇのか!?)

 

 次の攻めに入ろうとすると、ソルはパーフェクトゼクターを天高く突き上げて、3種のゼクターへ集合をかける。すると、黄、水色、紫の3色の光を放ち……各ゼクターがパーフェクトゼクターへ合体した。

 

 ソードモードのまま……ってなると、タイフーンの方か!距離からするに、既に発生を止める事は不可能だろう……。それなら、迎え撃つまでだ!俺はロングカリバーを解除して、ハイパーゼクターの顎を倒す。

 

『―MAXIMUM RIDER POWER―』

 

『―KABUTO THE―BEE DRAKE SASWORD POWER―』

 

『―All ZECTER COMBINE―』

 

「マキシマムハイパーハリケーン!」

 

「マキシマムハイパータイフーン!」

 

『―MAXIMUM HYPER HURRICANE―』

 

『―MAXIMUM HYPER TYPHOON―』

 

バリリリリリリリリ!!!!

 

 技名を叫びながらハイパーカリバーを鋏の形態に移行すると、クワガタの顎を模した凄まじいエネルギーがカリバーの刀身から放たれる。

 

 ソルの方も、同じような物だ。パーフェクトゼクターのトリガーを引くと、刀身からカブトムシの角を模したエネルギーブレードが生成された。しかし……俺の方はそれだけじゃないんだぜ!

 

「むっ……?」

 

「悪いが……俺のは特殊効果付きだ!」

 

「そうか、重力場……だったか?ならば……利用させてもらうまで!」

 

(あ~……その手があったか~……)

 

 そうか……せっかくの重力場でもだな、マキシマムタイフーンなら対抗できる訳で……。そうなりゃ、引かれる勢いを突進する勢いに変えちまえば良い訳だ……なるほどなるほど……。

 

 ……感心してる場合じゃねええええ!?イカンぞ、基本的に挟む技だから……待ち構えるしかできない!クソが……両肩脱臼するくらいのつもりで挟み込んでやらぁ!

 

「おおおおおおおおっ!」

 

「どらああああああっ!」

 

ガギン!バチィイイイイ!!!!

 

 ぬぅっ……超弩級のエネルギーのぶつかり合いで、目が開けてられねぇくらいの光だ……。それよりも……マキシマムタイフーンの威力……ハンパじゃないな……。

 

 マキシマムハリケーンが挟んでいるのは、パーフェクトゼクターの刀身だ……押し負けりゃその時点でアウトだろう。上等……そのままパーフェクトゼクターの刀身をポッキリ……。

 

『マスター!これ以上の接触は危険です!』

 

『あん?じゃあどうやって離脱しろってんだ!?』

 

『そ、それはそうですが……』

 

『解ってたら黙ってな!退くって言葉が出ちゃ……勝てねぇ相手だ!』

 

(とはいえこいつぁ……!)

 

 このまま拮抗しっぱなしとなると、前みたいに大爆発だろうよ。ソルもきっとそれは解ってるハズ。となると、自爆覚悟か……?オーケー……そうなるまで付き合うぜ。

 

バリリリリ……ズドォオオオオン!!

 

「くっ……!」

 

「ぐ……おっ!」

 

 そう考えていた数瞬後の事だった。俺とソルの近接系マキシマムは、凄まじい衝撃波と爆発を生んで相殺した。それと同時に、かなり後方へと吹き飛ばされる。

 

 チッ!やっぱこうなるか……。次はどう出る……?今日のアイツは、いつも以上に待ってくれやしねぇぞ。……姿は確認できねぇ……けどなんだ!?この嫌な感じは……!

 

『―KABUTO THE―BEE DRAKE SASWORD POWER―』

 

「!? マジかアイツ……!!」

 

『―MAXIMUM RIDER POWER―』

 

『―All ZECTER COMBINE―』

 

 この煙の中で、パーフェクトゼクターの電子音が鳴り響く。どっちか解かんねぇが……マキシマムハイパーを連発する気だ!俺はすぐさま鋏を解除して、再度ハイパーゼクターの顎を倒す。

 

 今度は、鋏形態ではなくロングカリバーへ変形させる。そして更に目の前で回転……。さて、マキシマムテンペストを撃つ準備はできた。いつでも来いや……!

 

『マスター!真正面です!』

 

「マキシマムハイパーテンペスト!」

 

「マキシマムハイパーサイクロン!」

 

『―MAXIMUM HYPER TEMPEST―』

 

『―MAXIMUM HYPER CYCLONE―』

 

バリバリバリバリバリ!!!!

 

 前回はハイパークロックアップ中だったから解からなかったが、マキシマムテンペストも衝撃を殺すためにクワガテクターが展開されるようだ。

 

 空中でぶつかり合う2つのエネルギー波は、やはり拮抗……。もちろん俺だって本気でやってらぁ……。つまりはアイツも俺も……同じような気合の入れようって事か。

 

ドゴオオオオン!!!!

 

 同じ気合の入れようの結果がこれじゃあ世話ねぇわ。しかしこうなると……マキシマムハイパーはお互いに無意味であるという認識になったろう。

 

「だったら……!この間の続きと行こうぜ……ソル!」

 

「同感だ!」

 

「「おおおおっ!」」

 

ザァン!ガギィ!

 

 どうやら同じ事を考えていたようで、お互いに煙を突き抜けながら姿を見せた。ここまで完璧に前回と同じシチュエーション……違うとすりゃ、ソルが攻撃を止めないってところだろう。

 

 俺とソルは、互いの腹部へ一太刀入れるとすぐさま振り返る。そのままパーフェクトゼクターとロングカリバーで、つばぜり合いを始める。

 

ガギギギギ……!

 

「やはり誤魔化し様が無いな……!貴様とこうしているのは、血沸き肉躍る!」

 

「そりゃ気が合うな……!命とか諸々かかってんのによぉ……やっぱ楽しんでる俺が居るぜ!」

 

「ハハハハ……。良い……それでこそだ加賀美ぃ!だが、勝つのはオレだああああっ!」

 

「寝言は寝てからだぜ、ソル!俺は負けねええええっ!」

**********

「むっ……おい、嫁が帰って来たぞ!」

 

「これで真さん以外は揃いましたわね……」

 

「みんなも勝ったんだな!」

 

 既に勝利を収めた真を除いた専用機持ちは、飛び立った地点に集合していた。必ず戻ってくると言う意味を込めて、ここを合流地点にしようという事になったのだ。

 

 最後に帰って来たのは、一夏だ。その手に抱えているマドカに関して追及されるが、今はそれどころでも無いのも確かだった。一夏はマドカをそこらの木へもたれかからせると、皆の輪の中へ入る。

 

「真の状況……解からないのか?」

 

「うん……あらゆる回線が……通じない……」

 

「そうだ!姉さんならば……」

 

 向こうからは無理やりにでも回線を繋げてきたのに、外部からの通信は遮断する仕組みらしい。流石に真の状況を全く知れないと言うのは、歯痒いだろう。

 

 すると箒が思い出したように、自身の姉ならばと連絡を取る。どうやら調べものをしていたようで少しテンポが遅れたが、なんとか通じた。

 

『あの中の様子?おっけぇいカエルム・スカラム内のカメラで……ほいっと!』

 

「映った!……って……コレ。なんて修羅場よ……!」

 

「弟くん……」

 

 空間投影型ディスプレイに映し出された映像は、真とソルが『前回の続き』を行い始めたあたりだった。2人は……ほとんどノーガードの斬り合いをしている。

 

 ガタックとカブトの装甲は、削れ、抉れ、焦げ……とにかく酷い有様だ。あまりに凄惨な斬り合いに、8人は思わず声を失う……。が、目に余る光景だったのか、逆にシャルロットが口を開く。

 

「ハイパーガタックの装甲って……リヴァイヴのショットガンでもビクともしないのに……!それが、こんな……」

 

「そ、それよか……真の奴……何で笑ってんの……?」

 

「戦友のクローンの方もだな……。とても楽しそうだ……」

 

 真とソルは、お互いの攻撃を入れられても……笑ってみせていた。この2人は……そろそろ互いの目的も忘れて、今この時間を……この命の削り合いを心から楽しんでいた。

 

 そんな2人の心境が理解不能なのか、顔を青くしながら軽く引いている。それどころか、あまり見ていられないのか……真が斬られる度に顔を背けてしまう。

 

「か、簪さん。その……大丈夫でしょうか?」

 

「私もセシリアと同意見だ……。無理して見る必要はないぞ」

 

「ううん……。私は……大丈夫……。真は勝って……信じてるから……」

 

(……簪ちゃん)

 

 そう言う簪の表情は明るいが、皆の見えない所で両手に目いっぱいの力を籠めていた。幸いそれを察知できたのは、楯無だけだ。しかし楯無は、解ってしまっただけに……何も言えなかった。

 

 妹が気丈に振る舞っているのだから、それを無に帰すような事を楯無は出来なかった。だからせめて楯無は、黙って簪に寄り添った。もっとも……それで不安がっているのがバレたのだなと簪は思う。

 

 それからは一様にして、ただただ真とソルの斬り合いを眺める。画面の向こうの真は楽しそうだが、残された8人は気が気でない……。映像では、互いの武器が同士討ちの形で弾かれる場面から続いてゆく。

**********

「だらぁっ!」

 

「せぇいっ!」

 

ガギン!ブンブンブン……!

 

「「!?」」

 

 しまったと思ったが、結果オーライか?ロングカリバーとパーフェクトゼクターがカチ合った際に、俺達の手から離れて地面へと回転しながら落ちてゆく。

 

 結構な高さから落ちた上に勢いもあったせいか、互いの武器はカエルム・スカラムの床へと突き刺さった。取りに行ってる暇ねぇだろうし……。つか、アレだ……ボロボロだな俺ら。

 

「はぁっ……!はぁっ……!」

 

「ふーっ……!ふーっ……!」

 

 俺もソルも、完全に手が止まってしまった。そりゃそうだ……さっきからバリア貫通しまくってっから、それなりにダメージの蓄積が……って、アイツ痛みとか感じないんだっけ?

 

 ったく、フェアじゃねぇなぁ……。だが見た限りでは疲労している……となると、限界はあるらしいな。それなら、奴を限界まで導くとすりゃ……ハイパーキックか?

 

「ハイパー……クロック……」

 

(……詰んだかもしれん)

 

 本日2度目のその手があったか……だ。奴がハイパークロックアップを使ったとなれば、俺はそれに乗らないと確実にやられる。

 

 だが俺もハイパークロックアップを使ったとして……それが終わると、いつものリスクが発動するわけだ。それが発動すれば……有利なのは間違いなくソルだろうよ。

 

 俺はボロボロの状態に、リスクを上乗せ……。ソルはリスクも背負うが、痛みは感じない……。あ~……マジでどうすりゃ良いよ?なんとかアイツのドタマに一発ガツンと入れて、気絶までもっていけりゃ……。

 

 あ……良い事を思いついた。…………だが、それこそ失敗したら負け確定……とんでもなく酷でぇ博打になる。スマンな、簪……お前の所に帰れないかもしれねぇや。

 

「アップ……!」

 

「ハイパークロックアップ!」

 

『『―HYPER CLOCK UP―』』

 

 とりあえず……ソルに合わせてハイパークロックアップを使わないとお話にならない。ガタックとカブトの装甲は、同時に展開して黄金と白銀の羽根が現れる。

 

 そしてソルはそれと同時にタキオンブースターを利用して、俺の周囲をグルグルと旋回し始めた。俺に的を絞らせない狙いだろう。だが……そっちの方が好都合だったりするんだよ。

 

『『―MAXIMUM RIDER POWER―』』

 

『『―ONE TWO THREE―』』

 

 俺とソルは、いつでもハイパーキックを撃てるように準備を始める。よしよし……ここまでは良いんだ。後は……全部俺次第となる。これで上手くいこうといかまいと、どちらにせよ大ダメージは避けられない。

 

 それならば、いつも以上に気合いを入れるまで!俺が何度死の淵から蘇った事か。今回も……その中の一部でしかない。さあ……いつでも来やがれ、俺の準備はできてるぜ……!

 

「っ!そこだああああ!」

 

(ああ、そりゃ『そこ』だろうよ!)

 

 ソルは俺の隙を見つけたらしく、俺の右斜め後方から飛び蹴り式のライダーキックでこちらへ向かって来る。そうだ……そいつを待っていたんだ!

 

『―RIDER KICK―』

 

ドゴォォオオン!!!!

 

「ぐがっ……はっ!?」

 

(獲った!)

 

「ぐふっ……!つ~かまえた~っと……!」

 

「!?なんだと……!まさか貴様……わざと喰らったな!?」

 

 俺は瞬時にソルの方へ振り返って、ハイパーキックをその腹部で受け止めた。その際に吹き飛ばされないように、タキオンブースターを噴射。これによって、俺はキックの勢いを完全に殺す。

 

 そしてそれと同時に、ソルの右足をガッチリとロック……!後は……俺もキックを放つだけ……!意識が遠退きそうになる最中……俺は、ガタックゼクターの顎を引いた。

 

「うおああああっ!ハイパーキック!!!!」

 

『―RIDER KICK―』

 

ゴシャアッッッッ!!!!

 

「ぐわああああああああ!!!!」

 

ズドオオオオオオン!!!!

 

 俺はソルの右足をパッと離すと、タキオンブースターを吹かしつつソルへと接近した。そしてその頭に全身全霊をかけた渾身のボレーキックを喰らわした。

 

 これまでにない威力の出たハイパーキックは、ソルの頭部へとクリーンヒット!手応えも充分だ。そしてソルは、錐もみ回転しながらカエルム・スカラムの床へと吹き飛んでいった。

 

 ソルが墜落した衝撃を物語るように、そこら辺りに白煙が舞った。俺が息も絶え絶えな様子で佇んでいると、ついに……その時が訪れてしまう。……耐えろよ、俺……じゃないと全部水の泡だ。

 

『『―HYPER CLOCK OVER―』』

 

「ぐがああああああ!?!?」

 

ドタン!

 

 身体中に激痛を覚えてしばらく、背中へと衝撃を感じる。どうやら俺は、あまりの痛みに数秒間だけ気を失っていたらしい。それで飛んでいられずに、地面へと激突か……。

 

 と言うよりゃ今も……意識が朦朧と……。まるで、気絶と復帰を繰り返している様な感覚だ……。耐えろ……耐えろ……!後は、ソルがぶっ倒れているのを確認するだけなんだ……!

 

「あお……こ……。ソルの野郎は……ゴハッ!」

 

『…………』

 

「…………。おい……。なんか、答えろ……って……。ゴホッ……!」

 

『…………』

 

 おかしい事に、俺がいくら呼び掛けても青子は反応を示さない。仕方がないので仰向けの状態から転がって、うつ伏せの状態になった。激痛のおかげで立ち上がれないが、これなら自身の両の目でソルを視認できる。

 

 そうしてググググ……っと、ゆっくり頭だけをソルが吹き飛ばされた方向へむけた。そこでようやく俺は、なぜ青子が何も答えなかったかを理解する。確かに……報告できるハズがあるか……。

 

「チ……クショウ……!チクショウ!チクショオオオオッ!」

 

「…………」

 

 俺がその目で見たものとは……無言で俺の事を見下ろしているソルだった……。それは同時に、俺の敗北を決定付ける……。俺の悔やむ叫び声は、虚しくも決戦場内へと響き渡るのみ……。

 

 

 




申し訳ないですが、完全決着は次回で……。

引っ張るでしょう?ええ、そりゃ引っ張りますとも!あまり言えないですけど、ここからが個人的に大事なシーンなのですから!

しかしなんだろうか……演出に妙に文字数を取られた気もします……。文字数にすると、一番長くなる演出って、やっぱりカブト勢なんですかね?

特にハイパーマキシマム系……今回は真とソル合わせて計4発の大盤振る舞いですからねぇ……そりゃ長くなるわ……。

まぁ……それは置いておいてですね。次回……真VSソルの完全決着でございます!そして……この小説最後の超展開が!?

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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