とうとうソルとの最後の戦いがやってまいりました……。この二次創作も、秒読みで最終回が近づいて来ている訳です。
最後の戦いかぁ……ソルとの戦いは、今回で5戦目なのですが……正直マンネリになるかなと思ってました。でも全然そんな事は無かったです。
それもこれも……真とソルが良き成長を見せてくれたおかげでしょう。……自分で言うのはなんなんですが。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。
「よし、抜け……って危ねぇ!」
超巨大ジョウントを抜けて、カエルム・スカラム内部にワープしたかと思いきや……目の前がすぐ壁であった。エクステンダーで最大限の減速をかけると、何とか激突せずには済んだ。
心の中で安堵の溜息を吐くと、ハイパーセンサーを用いながら周囲を見渡してみる。なんというか……白いな。壁も床も、何もかもが白い。遠くを見ていると、遠近感が無くなりそうだ。
現在地は……青子にナビゲートしてもらうまでも無いか。ここはどうやら、ワームの格納庫らしい。前に攻めた施設ほどでは無いが、まだ沢山残っているようだな……。
『マスター、カエルム・スカラムの下層部に……高密度のエネルギー反応が』
『うん……?ソルか?』
『いいえ、どうやら……ジョウントの発生装置の様です』
ガタックのハイパーセンサーに映し出されているのは、カエルム・スカラムの4分の1程度だろうか?そこら全てが、ジョウントの発生源か……つまり、此処を落せばジョウントも止められそうだな……。
ゾワッ!
「づっ……!?」
『マスター?』
『……ソルが呼んでるみてぇだ』
背中……と言うか、身体全体にソルの嫌悪感を感じた。どうやら……率先して放っているらしいな。そうなれば、アイツが呼んでいるとしか考えられなかった。
青子がカブトの反応を辿ろうかと聞いて来るが、やはりその必要はない。俺は、ソルに導かれるようにエクステンダーの進路を取る。
だがどうやら出てきたのは、同じく下層部だったようで……移動に時間を取られてしまう。エクステンダーは余裕で通れるが、通路でスピードは出せない。
でも俺にとって、この移動時間は救いであった。さっきから……心臓がバクバク言ってやがる。この五月蠅い心臓を落ち着かせるには、良い時間だ。
そしていつしか俺が辿り着いたのは、見上げるほどに大きな門がある場所だ。この先が、決戦の場であるとでも言っている様に感じられる。
(あれ……?こんなデザインの門……前にもどこかで……?)
『マスター、準備はよろしいですか?』
『ん……?あ、あぁ……問題ねぇ。……行くか』
なんだか見覚えがあった気がするが、ただのデジャヴだろう。んな事より集中、集中!それでいて、気合も入れろ!ぜってぇ……勝つ!
俺がエクステンダーを前に進めると、門はゴゴゴゴ……!なんて言いながら、物々しく開いた。そして……その中に広がっていたのは、ドーム?アリーナ……?とにかく、決戦場を思わせる広い空間だ。
そこの中心に悠然と、ソルが佇んでいた。……?いつもと雰囲気が違うような気がする。良い意味でも、悪い意味でもとれるが……まぁいいや。俺はエクステンダーから飛び降りた。
「……待たせたな」
「ああ、待っていた……」
そう言いながらソルは、着ていたコートをガバッ!と脱ぎ捨てた。……雰囲気が違うっての……あながち間違いじゃねぇらしい。今回のソルは何か……顔つきも違う。
その顔は、なんて言ったらいいのかね……?……男が、何か覚悟を決めた様な感じ。今までような殺気は無いが、こちらの方が厄介かも知れん。
「貴様は……オレに生きる意味を尋ねたな?」
「……おう。見つかったか?生きる意味……」
「……ああ。だから……貴様を殺すのが第一ではなくなってしまったよ」
「…………」
そう言うソルの表情は、何処か穏やかさの中に……激しさを隠したような印象を受けた。俺がその様子を見守っていると、ソルは高らかに右手を上げる。
するとその手目がけて、カブトゼクターが飛来した。赤のカブトムシをガッチリ掴むと、ソルはそこで一度手を休めて、再び語りかける。
「全ては……マドカと共にあるために」
「あぁ……なるほどな」
「だからオレは……貴様を殺す!」
「……それで良い。何の意味も無く殺されるよりゃぁマシだ……」
ソルの呟きに、完全に納得している俺が居た。全てはマドカと共に……か。そりゃぁ……お前もそういう表情にもなるよな。なんつったて、男が女の為に戦う事を決意したのだから……。
「フーッ……かかって来やがれ!俺もな、テメェと一緒で負けらんねぇのよ!」
「これで最後だ……。変身!」
『―HENSHIN―』
「「キャストオフ!」」
『『―CAST OFF―』』
『―CHANGE STAGBEETLE―』
『―CHANGE BEETLE―』
これで最後……か。……ああ、本当に終わりにしよう!一斉にキャストオフして、マスクドアーマーが弾け飛んだ。ここから先、同じことを考えているだろう……。
と、思っていたら正解だった。俺とソルは、同時にハイパーゼクターを呼び出して、左腰へ装着させた。そりゃそうだ……俺達の最後の戦いに、余興なんていらねぇ!
「「ハイパーキャストオフ!」」
『『―HYPER CAST OFF―』』
『―CHANGE HYPER STAGBEETLE―』
『―CHANGE HYPER BEETLE―』
ハイパー化を果たすと、黄金と白銀の光が無機質な白を照らした。そうして俺達は、黙って互いの主力武器を取り出す。そして……その数瞬後だろうか、俺達は……お互いに向かって突っ込んだ。
「「おおおおおおおおっ!!」」
ガギャア!バリリリリ!バチィ!
ソルの振り上げたパーフェクトゼクターに合わせて、右手に握ったプラスカリバーを合わせる。俺達の本気加減が見るだけで解るような火花が散った。
いや……それだけで無く、触れた刃同士がスパークを起こすほどだ。だが……押してダメなら引いてみなってね!俺はハイパーカリバーの刃を滑らせ……。
「ぬるい!いつまでもその手は……通じんぞ!」
「何ッ!?くぬぅっ……!」
ガギィン!ギチチチチ……!
刃を滑らせようとした瞬間の事だった。ソルは一瞬にしてパーフェクトゼクターを刃から離して、受け流しを阻止する。そしてそのまま、頭上からパーフェクトゼクターを振り下ろす。
俺はそれを、ハイパーカリバーを交差させるようにして受け止めた。だが……なんつう……重さだ!何か……単にソルの体重だけがのしかかっている様には思えん……!
「ふんっ!」
ズガガガガ!
「カハッ!……っ!クソ!」
ソルは俺のガードが上がった事で、腹部を蹴りつけてきた。その衝撃で吹き飛ばされ、その隙をさらにガンモードの射撃で追撃してくる。
体勢を崩しながら吹き飛ばされたせいで、数発は受けてしまった。しかし残りの弾は、ハイパーカリバーをロングカリバーに移行して回転させることで防いだ。
「はああああっ!」
「っ!?」
やべぇぞ、このソル……戦略も何もあったもんじゃねぇ!だからこそ戦い辛れぇ……。今までのトリッキーな方面に持って行っていた技術を、猛攻に全て費やされるとこうなるのか……。
とにかく、突っ込んで来たソルの攻撃を何とか防がなくては……。いや、待て……防ぐ?……アホか!んな消極的な考えで……コイツに勝てるわきゃねぇだろうがぁぁああ!
(イオンブレードッ!!)
「でやぁ!」
ガギッ!
「くっ……!」
「そこぉ!」
ザンッ!
俺はロングカリバーの下方にあるマイナスカリバーで、ソルのパーフェクトゼクターをカチ上げる。これでガードは上がった……お返しだコンニャロウ!
そのままロングカリバーを一回転させて、斬り上げ攻撃でイオンブレードを纏わせたプラスカリバーをヒットさせる。だが……まだだ!俺は今まで、双剣の利点を殺していた。
ソルが体勢を立て直す前に、ロングカリバーの連結を解除。ハイパーカリバーに戻すと、プラス・マイナス双方にイオンブレードを纏わせて、連続斬り!
「どおおおおらああああ!!!!」
バチィ!バチィ!バチィ!バチィ!
「ぐっ!ぬぅぅうう……!離れろ!」
「うおわっ!?」
イオンブレードの効力が続く限り、思いのままにハイパーカリバーを振り回す。密着されてマトモにガードも出来なかったソルだが、パーフェクトゼクターを力の限り振った。
刃は俺には当たらなかったが、例の剣圧で発生した突風に巻かれて吹き飛ばされる。しかし反撃は忘れんぞ!俺はまたハイパーカリバーをロングカリバーに。
そしてイオンブレードを纏わせると、ブンブンと回してから勢いよく二度に渡って振る。すると、イオンブレードが斬撃となって飛んだ。これは多少ホーミングする……ソルに向かって飛んでいくはずだ。
「…………!」
(避けないのか!?)
「はああああっ!!!!」
ガギン!!!!バキャァ!!!!
「うっそ……だろオイ!?」
雄叫びを上げて、ソルはパーフェクトゼクターを斬撃に合わせた。するとどうだ……あろう事か、斬撃の進行方向は反れて……あらぬ方向へと飛んでいく!
かなり出力は抑えたとは言え……代名詞でもあろう攻撃を反らされたのは精神的ショックが大きい。い、いや……んな事言ってる暇はねぇ!次だ次ぃっ!
「…………集え……!」
(!? アイツ……とばし過ぎじゃねぇのか!?)
次の攻めに入ろうとすると、ソルはパーフェクトゼクターを天高く突き上げて、3種のゼクターへ集合をかける。すると、黄、水色、紫の3色の光を放ち……各ゼクターがパーフェクトゼクターへ合体した。
ソードモードのまま……ってなると、タイフーンの方か!距離からするに、既に発生を止める事は不可能だろう……。それなら、迎え撃つまでだ!俺はロングカリバーを解除して、ハイパーゼクターの顎を倒す。
『―MAXIMUM RIDER POWER―』
『―KABUTO THE―BEE DRAKE SASWORD POWER―』
『―All ZECTER COMBINE―』
「マキシマムハイパーハリケーン!」
「マキシマムハイパータイフーン!」
『―MAXIMUM HYPER HURRICANE―』
『―MAXIMUM HYPER TYPHOON―』
バリリリリリリリリ!!!!
技名を叫びながらハイパーカリバーを鋏の形態に移行すると、クワガタの顎を模した凄まじいエネルギーがカリバーの刀身から放たれる。
ソルの方も、同じような物だ。パーフェクトゼクターのトリガーを引くと、刀身からカブトムシの角を模したエネルギーブレードが生成された。しかし……俺の方はそれだけじゃないんだぜ!
「むっ……?」
「悪いが……俺のは特殊効果付きだ!」
「そうか、重力場……だったか?ならば……利用させてもらうまで!」
(あ~……その手があったか~……)
そうか……せっかくの重力場でもだな、マキシマムタイフーンなら対抗できる訳で……。そうなりゃ、引かれる勢いを突進する勢いに変えちまえば良い訳だ……なるほどなるほど……。
……感心してる場合じゃねええええ!?イカンぞ、基本的に挟む技だから……待ち構えるしかできない!クソが……両肩脱臼するくらいのつもりで挟み込んでやらぁ!
「おおおおおおおおっ!」
「どらああああああっ!」
ガギン!バチィイイイイ!!!!
ぬぅっ……超弩級のエネルギーのぶつかり合いで、目が開けてられねぇくらいの光だ……。それよりも……マキシマムタイフーンの威力……ハンパじゃないな……。
マキシマムハリケーンが挟んでいるのは、パーフェクトゼクターの刀身だ……押し負けりゃその時点でアウトだろう。上等……そのままパーフェクトゼクターの刀身をポッキリ……。
『マスター!これ以上の接触は危険です!』
『あん?じゃあどうやって離脱しろってんだ!?』
『そ、それはそうですが……』
『解ってたら黙ってな!退くって言葉が出ちゃ……勝てねぇ相手だ!』
(とはいえこいつぁ……!)
このまま拮抗しっぱなしとなると、前みたいに大爆発だろうよ。ソルもきっとそれは解ってるハズ。となると、自爆覚悟か……?オーケー……そうなるまで付き合うぜ。
バリリリリ……ズドォオオオオン!!
「くっ……!」
「ぐ……おっ!」
そう考えていた数瞬後の事だった。俺とソルの近接系マキシマムは、凄まじい衝撃波と爆発を生んで相殺した。それと同時に、かなり後方へと吹き飛ばされる。
チッ!やっぱこうなるか……。次はどう出る……?今日のアイツは、いつも以上に待ってくれやしねぇぞ。……姿は確認できねぇ……けどなんだ!?この嫌な感じは……!
『―KABUTO THE―BEE DRAKE SASWORD POWER―』
「!? マジかアイツ……!!」
『―MAXIMUM RIDER POWER―』
『―All ZECTER COMBINE―』
この煙の中で、パーフェクトゼクターの電子音が鳴り響く。どっちか解かんねぇが……マキシマムハイパーを連発する気だ!俺はすぐさま鋏を解除して、再度ハイパーゼクターの顎を倒す。
今度は、鋏形態ではなくロングカリバーへ変形させる。そして更に目の前で回転……。さて、マキシマムテンペストを撃つ準備はできた。いつでも来いや……!
『マスター!真正面です!』
「マキシマムハイパーテンペスト!」
「マキシマムハイパーサイクロン!」
『―MAXIMUM HYPER TEMPEST―』
『―MAXIMUM HYPER CYCLONE―』
バリバリバリバリバリ!!!!
前回はハイパークロックアップ中だったから解からなかったが、マキシマムテンペストも衝撃を殺すためにクワガテクターが展開されるようだ。
空中でぶつかり合う2つのエネルギー波は、やはり拮抗……。もちろん俺だって本気でやってらぁ……。つまりはアイツも俺も……同じような気合の入れようって事か。
ドゴオオオオン!!!!
同じ気合の入れようの結果がこれじゃあ世話ねぇわ。しかしこうなると……マキシマムハイパーはお互いに無意味であるという認識になったろう。
「だったら……!この間の続きと行こうぜ……ソル!」
「同感だ!」
「「おおおおっ!」」
ザァン!ガギィ!
どうやら同じ事を考えていたようで、お互いに煙を突き抜けながら姿を見せた。ここまで完璧に前回と同じシチュエーション……違うとすりゃ、ソルが攻撃を止めないってところだろう。
俺とソルは、互いの腹部へ一太刀入れるとすぐさま振り返る。そのままパーフェクトゼクターとロングカリバーで、つばぜり合いを始める。
ガギギギギ……!
「やはり誤魔化し様が無いな……!貴様とこうしているのは、血沸き肉躍る!」
「そりゃ気が合うな……!命とか諸々かかってんのによぉ……やっぱ楽しんでる俺が居るぜ!」
「ハハハハ……。良い……それでこそだ加賀美ぃ!だが、勝つのはオレだああああっ!」
「寝言は寝てからだぜ、ソル!俺は負けねええええっ!」
**********
「むっ……おい、嫁が帰って来たぞ!」
「これで真さん以外は揃いましたわね……」
「みんなも勝ったんだな!」
既に勝利を収めた真を除いた専用機持ちは、飛び立った地点に集合していた。必ず戻ってくると言う意味を込めて、ここを合流地点にしようという事になったのだ。
最後に帰って来たのは、一夏だ。その手に抱えているマドカに関して追及されるが、今はそれどころでも無いのも確かだった。一夏はマドカをそこらの木へもたれかからせると、皆の輪の中へ入る。
「真の状況……解からないのか?」
「うん……あらゆる回線が……通じない……」
「そうだ!姉さんならば……」
向こうからは無理やりにでも回線を繋げてきたのに、外部からの通信は遮断する仕組みらしい。流石に真の状況を全く知れないと言うのは、歯痒いだろう。
すると箒が思い出したように、自身の姉ならばと連絡を取る。どうやら調べものをしていたようで少しテンポが遅れたが、なんとか通じた。
『あの中の様子?おっけぇいカエルム・スカラム内のカメラで……ほいっと!』
「映った!……って……コレ。なんて修羅場よ……!」
「弟くん……」
空間投影型ディスプレイに映し出された映像は、真とソルが『前回の続き』を行い始めたあたりだった。2人は……ほとんどノーガードの斬り合いをしている。
ガタックとカブトの装甲は、削れ、抉れ、焦げ……とにかく酷い有様だ。あまりに凄惨な斬り合いに、8人は思わず声を失う……。が、目に余る光景だったのか、逆にシャルロットが口を開く。
「ハイパーガタックの装甲って……リヴァイヴのショットガンでもビクともしないのに……!それが、こんな……」
「そ、それよか……真の奴……何で笑ってんの……?」
「戦友のクローンの方もだな……。とても楽しそうだ……」
真とソルは、お互いの攻撃を入れられても……笑ってみせていた。この2人は……そろそろ互いの目的も忘れて、今この時間を……この命の削り合いを心から楽しんでいた。
そんな2人の心境が理解不能なのか、顔を青くしながら軽く引いている。それどころか、あまり見ていられないのか……真が斬られる度に顔を背けてしまう。
「か、簪さん。その……大丈夫でしょうか?」
「私もセシリアと同意見だ……。無理して見る必要はないぞ」
「ううん……。私は……大丈夫……。真は勝って……信じてるから……」
(……簪ちゃん)
そう言う簪の表情は明るいが、皆の見えない所で両手に目いっぱいの力を籠めていた。幸いそれを察知できたのは、楯無だけだ。しかし楯無は、解ってしまっただけに……何も言えなかった。
妹が気丈に振る舞っているのだから、それを無に帰すような事を楯無は出来なかった。だからせめて楯無は、黙って簪に寄り添った。もっとも……それで不安がっているのがバレたのだなと簪は思う。
それからは一様にして、ただただ真とソルの斬り合いを眺める。画面の向こうの真は楽しそうだが、残された8人は気が気でない……。映像では、互いの武器が同士討ちの形で弾かれる場面から続いてゆく。
**********
「だらぁっ!」
「せぇいっ!」
ガギン!ブンブンブン……!
「「!?」」
しまったと思ったが、結果オーライか?ロングカリバーとパーフェクトゼクターがカチ合った際に、俺達の手から離れて地面へと回転しながら落ちてゆく。
結構な高さから落ちた上に勢いもあったせいか、互いの武器はカエルム・スカラムの床へと突き刺さった。取りに行ってる暇ねぇだろうし……。つか、アレだ……ボロボロだな俺ら。
「はぁっ……!はぁっ……!」
「ふーっ……!ふーっ……!」
俺もソルも、完全に手が止まってしまった。そりゃそうだ……さっきからバリア貫通しまくってっから、それなりにダメージの蓄積が……って、アイツ痛みとか感じないんだっけ?
ったく、フェアじゃねぇなぁ……。だが見た限りでは疲労している……となると、限界はあるらしいな。それなら、奴を限界まで導くとすりゃ……ハイパーキックか?
「ハイパー……クロック……」
(……詰んだかもしれん)
本日2度目のその手があったか……だ。奴がハイパークロックアップを使ったとなれば、俺はそれに乗らないと確実にやられる。
だが俺もハイパークロックアップを使ったとして……それが終わると、いつものリスクが発動するわけだ。それが発動すれば……有利なのは間違いなくソルだろうよ。
俺はボロボロの状態に、リスクを上乗せ……。ソルはリスクも背負うが、痛みは感じない……。あ~……マジでどうすりゃ良いよ?なんとかアイツのドタマに一発ガツンと入れて、気絶までもっていけりゃ……。
あ……良い事を思いついた。…………だが、それこそ失敗したら負け確定……とんでもなく酷でぇ博打になる。スマンな、簪……お前の所に帰れないかもしれねぇや。
「アップ……!」
「ハイパークロックアップ!」
『『―HYPER CLOCK UP―』』
とりあえず……ソルに合わせてハイパークロックアップを使わないとお話にならない。ガタックとカブトの装甲は、同時に展開して黄金と白銀の羽根が現れる。
そしてソルはそれと同時にタキオンブースターを利用して、俺の周囲をグルグルと旋回し始めた。俺に的を絞らせない狙いだろう。だが……そっちの方が好都合だったりするんだよ。
『『―MAXIMUM RIDER POWER―』』
『『―ONE TWO THREE―』』
俺とソルは、いつでもハイパーキックを撃てるように準備を始める。よしよし……ここまでは良いんだ。後は……全部俺次第となる。これで上手くいこうといかまいと、どちらにせよ大ダメージは避けられない。
それならば、いつも以上に気合いを入れるまで!俺が何度死の淵から蘇った事か。今回も……その中の一部でしかない。さあ……いつでも来やがれ、俺の準備はできてるぜ……!
「っ!そこだああああ!」
(ああ、そりゃ『そこ』だろうよ!)
ソルは俺の隙を見つけたらしく、俺の右斜め後方から飛び蹴り式のライダーキックでこちらへ向かって来る。そうだ……そいつを待っていたんだ!
『―RIDER KICK―』
ドゴォォオオン!!!!
「ぐがっ……はっ!?」
(獲った!)
「ぐふっ……!つ~かまえた~っと……!」
「!?なんだと……!まさか貴様……わざと喰らったな!?」
俺は瞬時にソルの方へ振り返って、ハイパーキックをその腹部で受け止めた。その際に吹き飛ばされないように、タキオンブースターを噴射。これによって、俺はキックの勢いを完全に殺す。
そしてそれと同時に、ソルの右足をガッチリとロック……!後は……俺もキックを放つだけ……!意識が遠退きそうになる最中……俺は、ガタックゼクターの顎を引いた。
「うおああああっ!ハイパーキック!!!!」
『―RIDER KICK―』
ゴシャアッッッッ!!!!
「ぐわああああああああ!!!!」
ズドオオオオオオン!!!!
俺はソルの右足をパッと離すと、タキオンブースターを吹かしつつソルへと接近した。そしてその頭に全身全霊をかけた渾身のボレーキックを喰らわした。
これまでにない威力の出たハイパーキックは、ソルの頭部へとクリーンヒット!手応えも充分だ。そしてソルは、錐もみ回転しながらカエルム・スカラムの床へと吹き飛んでいった。
ソルが墜落した衝撃を物語るように、そこら辺りに白煙が舞った。俺が息も絶え絶えな様子で佇んでいると、ついに……その時が訪れてしまう。……耐えろよ、俺……じゃないと全部水の泡だ。
『『―HYPER CLOCK OVER―』』
「ぐがああああああ!?!?」
ドタン!
身体中に激痛を覚えてしばらく、背中へと衝撃を感じる。どうやら俺は、あまりの痛みに数秒間だけ気を失っていたらしい。それで飛んでいられずに、地面へと激突か……。
と言うよりゃ今も……意識が朦朧と……。まるで、気絶と復帰を繰り返している様な感覚だ……。耐えろ……耐えろ……!後は、ソルがぶっ倒れているのを確認するだけなんだ……!
「あお……こ……。ソルの野郎は……ゴハッ!」
『…………』
「…………。おい……。なんか、答えろ……って……。ゴホッ……!」
『…………』
おかしい事に、俺がいくら呼び掛けても青子は反応を示さない。仕方がないので仰向けの状態から転がって、うつ伏せの状態になった。激痛のおかげで立ち上がれないが、これなら自身の両の目でソルを視認できる。
そうしてググググ……っと、ゆっくり頭だけをソルが吹き飛ばされた方向へむけた。そこでようやく俺は、なぜ青子が何も答えなかったかを理解する。確かに……報告できるハズがあるか……。
「チ……クショウ……!チクショウ!チクショオオオオッ!」
「…………」
俺がその目で見たものとは……無言で俺の事を見下ろしているソルだった……。それは同時に、俺の敗北を決定付ける……。俺の悔やむ叫び声は、虚しくも決戦場内へと響き渡るのみ……。
申し訳ないですが、完全決着は次回で……。
引っ張るでしょう?ええ、そりゃ引っ張りますとも!あまり言えないですけど、ここからが個人的に大事なシーンなのですから!
しかしなんだろうか……演出に妙に文字数を取られた気もします……。文字数にすると、一番長くなる演出って、やっぱりカブト勢なんですかね?
特にハイパーマキシマム系……今回は真とソル合わせて計4発の大盤振る舞いですからねぇ……そりゃ長くなるわ……。
まぁ……それは置いておいてですね。次回……真VSソルの完全決着でございます!そして……この小説最後の超展開が!?
それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。