戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

私ごとですが、ガタックゼクターのコンプリートセレクションの予約をさせて頂きました。発表から……受注受付までが長かったです……。

いやぁ、主人公のISがガタックな二次創作を書いているだけに……何やら感慨深いものです。この小説を書いてる間に、私の手元に届かない物か。

と、言いつつも……サソード戦に入ると言う事で、この辺りで折り返しですね。クライマックスが差し迫っていますが、もう少しお付き合いくださいね。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


VSサソード(リベンジ)ですが何か?

「…………」

 

『――――――――』

 

 他のメンバーは、既に戦闘を開始していたが……箒とサソードの居るこの空域のみ気味が悪いほど静かだ。余計に他空域の喧騒が、騒がしく聞こえてしまう。

 

 しかしだ……箒としては、自分の心臓の音が五月蠅くて仕方が無い。箒並にしっかりと剣の道を嗜なければ解からない緊張感を、サソードが放っていたのだ。

 

 常人から見れば、サソードは剣も構えずに浮いているとしか思えないだろう。そんな考えは、甘い……。迂闊に近づこうものならば、問答無用で叩き斬られる。

 

 それを理解している箒は、様々な考えが錯綜していた。攻めに出るか、向こうの出方を待つか……何を弱気な、だがここは慎重に……。そんな感じで、自分の頭の中で侃々諤々を繰り返す。

 

(くっ、以前とまるで雰囲気が違う……!)

 

 今回のサソードを人間的に例えるならば、本気……。機械に『遊び』と言う概念は存在しないが、前回のソルから命令された内容はあくまで時間稼ぎでしかなかった。

 

 しかし今回は、対象の排除……つまるところ箒の抹殺である。それを感知出来てしまう達人っぷりが、完全に裏目へと出てしまっていた。

 

 今まさに、命のやり取りが行われようとしている最中に箒は……決して呑まれてはいない。臆しかけていたのは確かだが、それを心地よい緊張へと変えていく。

 

(いつだったか、真に言われたな……。私の気迫は少し怖いと)

 

 もちろん真はそんなにストレートでなく、盛大に皮肉ってそう言った訳だが。当初の箒は少しムッとなったが、ここに来て……意識して気迫を出してみる事にする。

 

 今の箒の気迫を視覚化する事が出来たのだとするならば、それはもう……とんでもない物だろう。本人に言えば切って捨てられそうだが……一言で例えるなら、修羅だ。

 

(ようやく、気持ちが追いついた……)

 

『――――――――』

 

「いざ、勝負!」

 

 強気な精神状態を保ったままで、箒はサソードへと突っ込んで行った。サソードもだらり……と下へと持って来ていた腕に力を込めて、サソードヤイバーを構える。

 

 距離を詰めないと言う事は、箒を待ち構える姿勢らしい。そのドッシリとした様子は、野武士を思わせる。そしてサソードは、箒の襲来に合わせて剣を振る。当然箒もそれに合わせた……つもりだった。

 

ザァン!

 

「な……に……!?」

 

『――――――――』

 

 実際は、サソードの剣を振るスピードに合わす事すらかなわなかった。箒は単に、すれ違い様に腕部を斬られただけとなる。束が施したらしいコーティングのおかげか、溶解はしていない。

 

 だが、ダメージは普通に通る。振り返った箒は、空裂と雨月構え直した。気持ちも落ち着け、さっきのはたまたま見えなかっただけだと言い聞かせ……。

 

「やああああっ!」

 

『――――――――』

 

ガギン!

 

(よ、よしっ……!なんとか……!)

 

 第二トライも反撃の体勢を取るサソードだったが、今度はしっかりと刃と刃がカチ合った。しかしやはり振りは速い……鞘も無いのに、居合抜きのような速度だ。

 

 箒が心の中で呟いたように、なんとか合わせる事に成功だ。つまりは少しでも油断をすれば斬られる可能性は十分にある。だからこそ、攻め手に回らねば不利となるだけ。

 

「はあっ!」

 

『――――――――』

 

キィン!ガッ!ガギィ!

 

 箒は空裂と雨月の二刃流の手数の利点を遺憾なく発揮する。難なくか、それともギリギリなのかはわからないが、サソードはとにかく防御しかしてこない。

 

 見た限りでは、一進一退の攻防……。だがその実、箒の不利は全く変わっていない。今もサソードは防御しているだけでなく、しっかり反撃の隙を窺っているのだ。

 

「そう簡単に……!」

 

ガン!ギャリィ!

 

 箒は隙を見せれば即反撃で、サソードはいずれ押し切られるだろう。この攻防……どちらに傾くかが、全く予想がつかない。単純に、機械であるサソードの方が集中力で勝る可能性は大きい。

 

 しかし箒は、失った誇りを取り戻すためにサソードと斬り合っているのだ。冬休みの間も鍛錬を怠らずに、ただこの一戦だけをイメージして過ごしてきた。

 

「私は、負けられん!毒なんぞを刃に乗せる貴様には……二度と!」

 

ギャン!ズン!

 

『――――――――』

 

 箒は雨月を下から潜り込ませて、切り上げを行う。それによって、サソードヤイバーを上へと弾く事に成功した。そのまま流れるような動きで、空裂で横一閃にサソードを斬りつける。

 

 他のライダー型ISと比べるのならば、サソードは最鈍足だ。もとよりガタックでも既存の第三世代型と比べても遅い方なのだから、紅椿とでは比べ物にならない。

 

「まだだ!」

 

ギン!ガン!ガキィ!

 

『――――――――』

 

 一度攻め立た隙を、逃す手は早々ない。箒は怒濤の連続斬りをサソードへと浴びせる。それももちろんやたらめったらに刃を振るのではなく、とても綺麗な動作だ。

 

 自分の隙を心配しているのだろうが、サソードから見ればあまり意味の無い行為であった。とはいえ即反撃は無理らしく、サソードはタックルで箒の体勢を崩しにかかる。

 

ドガッ!ズバッ!

 

「ぬぅ……!ぐあっ!」

 

 体勢を崩せば、待っていたのはサソードの斬撃だ。身を屈めながら振られたサソードヤイバーは、箒の腹部へと当たった。絶対防御のおかげで無事だが、まずい事になってしまう。

 

 箒の腹部に付着しているのは、紫色のドロリとした液体……ポイズンブラッドだ。それこそ絶対防御で肉体は溶けはしない。しかし……このままでは継続的に絶対防御が発動してしまう。

 

(ISでなければ、どうなっていた事か……)

 

 考えるだけでも恐ろしいが、その時点で箒はお陀仏だったろう。しかしこれで、箒には制限時間が課せられた様な物だ。唯一の救いがあるとするなら、紅椿が絢爛舞踏を使えるという事。

 

 装甲さえ溶けなければ、後はエネルギーの問題となる。そう考えれば、逆にサソードの相手が箒と紅椿で良かったとも言えるだろう。だが、絢爛舞踏も成功率は高くない。どちらにせよ、迅速な戦闘が求められる。

 

(善は急げ、だな)

 

『――――――――』

 

「たあっ!」

 

 箒はサソードがポイズンブラッドを散らす様な仕草を見守って、攻めを続ける。とにかくこれ以上のポイズンブラッドの付着は避けたいところだ。

 

 だが空裂、雨月とサソードヤイバーがぶつかり合う度に、火花のついでと言わんばかりに毒も飛び散る。小さな水滴のような感じだが、触れればそれはダメージでしかない。

 

(このままでは……!)

 

 純粋に剣技も強く、こうしてスリップダメージも入るとなると厄介としか言い様がない。これといった対策も取れないとなると、やはり強引に倒すしか箒には手立てが見出だせないでいる。

 

『――――――――』

 

ガキィン!

 

「し、しまった!?」

 

 考え事のせいで隙が大きく現れたようで、サソードは動きを見せた。サソードヤイバーを箒へ押し込む様にして、その反動で中距離ほどの間合いを空ける。

 

 そしてサソードヤイバーに電撃が走ったかと思えば、サソードはその刃を3連続で振る。すると以前のライダースラッシュほどでは無いが、紫の斬撃が飛んで来た。

 

バチ!バチ!バチィ!

 

「今のは……!?」

 

 箒は攻撃を喰らった事で、あるものを連想させた。それは、ガタックハイパーフォームだ。ロングカリバーにイオンエネルギーを乗せ振ると、同じように青の斬撃が飛ぶ。

 

 連想通りに原理としては、全く同じものである。相違点は、威力が圧倒的に低い事と、毒の有無といったどころか。サソードの放った飛ぶ斬撃は、中~遠距離用の攻撃手段と言っても良いだろう。

 

「そちらがその気ならば!」

 

 サソードが距離を離す戦法をとってきたのだとすれば、それは罠である可能性が高い。誘いに乗って近づいたところを両断されてしまうだろう。

 

 紅椿の空裂と雨月も、サソードヤイバーと同じ様な事ができる。距離を詰めるのなら、攻撃しながらの方が良いに決まっている。箒はそれぞれ斬りと刺突にて、エネルギーを飛ばした。

 

『――――――――』

 

ザン!ザン!ザン!

 

 仕掛けたのがサソードなだけに、ポイズンブラッドの斬撃を紅椿の攻撃を迎撃する為に飛ばす。両者勝らずとも劣らず、2つのエネルギーは空中でぶつかり相殺した。

 

 どうやら通常のポイズンブラッドならば、空裂と雨月でも十分に対応可能らしい。そうと分かれば、箒はスピードで翻弄する作戦に出る。

 

「あ、あいつ!」

 

 箒が縦横無尽に飛び回り始めた途端に、サソードはピタリと動きを止めた。戦闘開始直後と同じく、完全に待ちの姿勢である。これに箒は、流石にカチンと来たらしい。

 

 箒が直接攻撃を仕掛けても、迎撃可能。遠距離攻撃もポイズンブラッドで相殺可能。となれば、別にサソードは無理に逃げる必要は何処にも無いのだ。

 

「おのれ……目に物見せてやろう!」

 

ドン!ドン!

 

『――――――――』

 

ガァン!ガギッ!

 

 先ほどとは打って変わって、サソードは華麗な動きで空裂・雨月のエネルギーを防いでゆく。持ち前の鈍足もあってか、何発かは命中が見受けられる。

 

 このままダメージを蓄積させていくのも良いが、生憎箒には時間が足りない。こうやって高速移動を続けるのは、それだけ紅椿の寿命を縮めているのだから。

 

(穿千ならば……)

 

 箒の考えている通りに、穿千ならば大ダメージを与えられる可能性はある。しかし箒は、前回見事に穿千を撃ち破られたイメージが、強く頭に残っていた。

 

 実質のところ、最大エネルギーで撃っても怪しいだろう。それならば、どうやってサソードへとトドメをさすべきか……。またしても箒の手は、一瞬だけ緩む。

 

『――――――――』

 

ガギン!

 

「うぅっ!?」

 

 相変わらずサソードは、全く隙を逃してはくれない。またしても剣技を荒々しいものへと切り替えて、箒の胴体を斜めに切り裂いた。生身の部分に、大量のポイズンブラッドがこびり付いてしまう。

 

 紅椿のエネルギー減少は、目に見えて加速をした。そもそもの残存エネルギーもあとわずかだったと言うのに、こうなればもはや……箒と紅椿に残された手段は一つ。

 

(絢爛舞踏しか!ええい、成功率など知った事では無い!)

 

『――――――――』

 

「頼む、紅椿!」

 

『――――――――?』

 

 気合を入れて絢爛舞踏を発動したはいいが、特に何も変化はない。何が来るかと身構えていたサソードも、拍子抜けと言った風で攻撃を再開した。

 

 よりにもよって、こんな時に発動しない。その事に箒は、多大な焦りを募らせるばかりだ。何故発動しないのかと自分に問いかけてみるが、答えは返ってくるはずも無く……。

 

(なぜだ、紅椿!?私は……負ける訳にはいかんのだ!皆の……友の為に!)

 

 そこまで考えて、箒はハッと何かに気が付いた。箒はサソードと、いつの間にか自身の誇りを取り戻すための戦いをしている。その時点で、誇りなんてものは失われたも同然。

 

 なんと愚かな……。そうやって、自嘲した笑みを箒は浮かべた。そんな事は二の次三の次……紅椿がへそを曲げるのも頷ける。そうだ……自分が戦っているのは、ただ友の為に……それ『だけ』で良いに決まっている!

 

「絢爛……舞踏!」

 

ゴオッ!

 

『――――――!?』

 

 箒が再度絢爛舞踏を発動させると、紅椿が金色に輝き始める。その輝きは、以前までとは比べ物になら無いほどのものだ。それも箒の気持ちの問題か、正解は定かではないが。

 

 とにかく紅椿の残量エネルギーは、急激に回復を始めフルの状態まで戻った。箒は一安心した様子で自身の友人と紅椿に感謝し、後1人には……自分の声で伝える事にしたらしい。

 

「姉さん、聞こえていますか」

 

『ふぇっ!?な、なになに?ど、どうかしたの……?』

 

「不出来な妹で、申し訳ありません。私はいつも……姉さんに都合のいいことばかりを言って……。姉さんは私の事を大切に想ってくれているのに、私は……姉さんに心を開こうともしないで……」

 

『そっ……そんなこと謝らないでよ!私だって、お姉ちゃん出来てないもん!』

 

 急に箒から通信が来て、束はオドオドしながら応対した。どんな言葉が飛んで来るかと思っていたら、いきなりネガティブな発言だ。束からすれば、筋の違う話である。

 

 もちろん箒は、束の諸々は決して許せてはいない。それでも……友の為に戦う力を授けてくれたのは、紛れも無く束なのだ。だからこそ箒は、感謝せざるを得なかった。

 

 それが都合の良い事なのかもしれない。それでも箒は、必死に姉へと歩み寄ろうとしているのだ。迷いはもうない……後は、言葉にするのみ。

 

「それでも、良いんです……。姉さん、ありがとうございます。姉さんがくれたこの力……必ずや、友と世界を救うために役立てて見せます!」

 

『ほ、箒……ちゃん……』

 

「話は変わりますが、姉さん。姉さんから見て、私の人より秀でている点は何処でしょう?」

 

『グズッ!う~ん……おっぱ……いや、何でも無いよ!やっぱり……ぱっと思いつくのは剣道かなぁ……?』

 

「ふっ、そうですか……それは、より自信が持てそうです」

 

 箒は束とそういったやり取りを交わすと、雨月を鞘えと収めた。残された空裂一本を……本当に『剣道』としか言いようのない所作で構える。

 

 その様子を一言で表すなら、美しい。一目で箒が、この構えを何百回、何千回と行って来たかが一目でわかるほどだ。サソードは様子の変わった箒に、何か危機感を覚えたようだ。それまで反撃が主な攻めであったのに、自ら箒へと接近してゆく。

 

(不思議だ……先ほどまでは速かった奴の動きも今は……)

 

ギャリッ!

 

『――――――!?』

 

(止まって見える……!)

 

ガァン!

 

『――――!?!?』

 

 箒はまるで邪魔な物でもどけるかのように、チョイっとサソードヤイバーを払いのけて見せた。そして防御ががら空きになった所に、強烈な面を見舞う。

 

 サソードの頭部にあるチョンマゲのような蠍の尻尾は、その一撃で切断された。たかだか日本刀型の物理ブレードに、そんな威力があるはずが……と、サソードは急いで後退して見せる。

 

「やはり私には、『これ』しかないらしい。今となっては……うむ、誇らしい事だ」

 

『――――――――』

 

「さぁ来い蠍!貴様を……斬る!」

 

 来いとは言いつつもサソードが動かないため、箒の方から距離を詰めた。それも一気にではなく、剣道の様にジリジリ……と、慎重さも兼ね備えている。

 

 やがてその距離はどんどん詰まり、互いに十分な射程圏内へと入った。その間も箒は、空裂の剣先をサソードヤイバーに細かく当てて、牽制を忘れない。

 

『――――――!!』

 

キィン!

 

「胴おおおおっ!」

 

ギャリン!

 

 頭上から振り上げられたサソードヤイバーを、箒はいとも簡単に防ぐ。すぐさま攻撃へ転じて、後ろに下がりつつ強烈な胴をサソードへと喰らわせた。

 

 やはり間合いの取り方から何まで、全てが剣道の動きだ。もしかするとこれが……箒にとって辿り着くべき形態だったのかも知れない。研鑽を積み辿り着きし境地……それは、自慢の父から学んだ基礎であった。

 

(まるで剣の達人だ……。いや、まだまだ私は未熟。この程度で満足してどうする)

 

『――――――――』

 

「むっ……来るか!」

 

 今度こそサソードは、箒へと突っ込んで行く。素早い剣さばきで連続斬りを繰り出すが、いずれも箒へはマトモに当たらない。どころか、むしろ反撃を喰らう。

 

 立場が完全に逆転しているこの状態……サソードは、痺れを切らして更なる形勢逆転をはかる。サソードヤイバーに張りついているゼクターの尻尾部分を、一度手前に引いて再度押し込んだ。

 

『―RIDER SLASH―』

 

 電子音と共に、サソードヤイバーへイオンエネルギーが満たされていく。ポイズンブラッドがボタボタと垂れるどころか、滝の様に流れ出てゆく。この様子を見るに、斬撃タイプのライダースラッシュだろう。

 

 箒はこの光景に、思わずたじろぐ。もしかすると、一種のトラウマになっているのかも知れない。それでも自分はやらねばならない。そう思い穿千を展開しようとした時、何やら様子が違う事に気がつく。

 

(これは……新形態か!?『魑斬』……?)

 

 展開装甲に新たなバリエーションが増えたようで、ネーミングは魑斬。名前からして、魑魅魍魎を斬るのと、約束の意味の契りをかけているのだろう。

 

(四の五の言っている暇は無い!)

 

 箒が魑斬の展開を選択すると、紅椿のウィングスラスターが一気に稼働を始めた。右腕方向へスライドして行き、骨組み部分が開きながら一本へと連結した。

 

 どうやらこれは……とてつもなく巨大や刀のようだ。刃の部分は物理ブレードではなく、紅い光と電撃を放つエネルギーブレード……。これならライダースラッシュにも負けないはずだ。

 

(これだけ巨大なのに、重い感じは全く無いな)

 

 ブンブンとその場で数回素振りをしながら、魑斬の感覚を確かめる。しかし箒は、サソードを見てその手を止めた。調度良いところに、試し斬りの相手がいるではないか。

 

「さぁ……これで最後だ!」

 

『――――!!!!』

 

ドジュウウウウウウ!

 

「でやああああッッッッ!」

 

ギャリリリリリリ!

 

 魑斬はポイズンブラッドを物ともせずに、ライダースラッシュと拮抗している。いや……それどころの話ではなさそうだ。箒自身が新たな境地を得たおかげか、魑斬はライダースラッシュをいとも簡単にかき消した。

 

バリィ!

 

「貴様にも感謝する……。おかげで私はまた一つ……強くなれた!」

 

『――――――!!』

 

「一刀で、斬り伏せる!!!!」

 

 絢爛舞踏でエネルギーをフルまで回復させた紅椿は、まだまだ余力は十分と言った所か。魑斬の出力をオーバーフロー寸前まで引き上げて、サソードへ袈裟斬りを見舞う。

 

 サソードは最後の抵抗のつもりか、サソードヤイバーを斜めに構えて防御の姿勢を取る。しかし巨大な刃は勢いが留まる事を知らず。サソードヤイバーごと、サソードのボディを数割斜めに斬ると言うよりかは……消し去った。

 

ズン!!バリリリリ……!!!!

 

『――――!!!!』

 

ズドオオオオン!!

 

「……よしっ!」

 

『箒ちゃん、まだまだ!ゼクター……ゼクターも壊さないと!』

 

「はっ!?しまった!」

 

 体の大半が消え去ったサソードは、もがく姿も見せずに即爆散した。勝利を噛みしめる箒だったが、束の言葉で我に返ってハイパーセンサーを確認する。

 

 そうすると、海へ向かって落下していくサソードヤイバーが見えた。いつもの紅椿ならば十分に手の届く範囲ではあるが、問題点があった。

 

「魑斬を元に……って!こんな事をしている暇は……!」

 

 紅椿の羽を変形させて、刀にしていたのだから……トップススピードどころかろくな移動も出来ない。そんな事をしている合間に、サソードゼクターはピョインと刀身から離脱……ジョウントの中へと消えてしまった。

 

「くっ、迂闊な……。姉さん、奴のゼクター……ワープの妨害は!?」

 

『そ、それがさ……。なんか今までと演算が全く違うくて……って言うか、コレ……?妨害されてる?この束さんが押し負けるハズ……』

 

「姉さん……?」

 

『あっ……えっと、反応はもう『アッチ』に行っちゃってるね……ゴメン』

 

 箒は自分の迂闊さを悔やみつつも、サソードゼクターが何処へ向かったのかを束に確認した。どうやらワープの妨害は試みたらしいが、何者かの手によって失敗に終わったらしい。

 

 ワームのワープは妨害できたところを見ると、束からすれば不自然極まりなかった。それこそ自他共に認める天才ゆえ、単純なミスとも思えない。

 

「姉さんが謝る事ではありません。責任は全て私にあります」

 

『……ナンセンスだね、この話は止めとこうよ。多分……無限ループになるから』

 

「……そうですね」

 

 箒も束とのやり取りを行いながら、厳しい表情を浮かべていた。姉がそんなミスをしないとなると、他に糸を引いている者が……?だとすれば、ソルや残ったスコール以外にも……誰かが……。

 

(……気を付けろよ、真。なにやら……キナ臭くなってきた)

 

 真への申し訳なさもあるが、箒としてはそちらが気がかりなようだ。カエルム。スカラムを見上げると、どうにも嫌な予感がしてくる……。だが、それらは自分の勘でしかない。

 

 嫌なイメージは振り払って、精一杯のエールを心の中で送った。しかし……後に箒は知る事となる。その勘こそが、最も真にとって大きな『敵』であった事を……。

 

 

 




サソードでなく、紅椿の方が新武装……。

いやね……色々と事情があるんですけれども。まず第一に、サソードを倒すにはブレードでやってほしかったんです。なんかもう……サソードが剣士なだけに、遠距離攻撃でトドメはちょっと違うなと……。

それと、紅椿にはまだまだ可能性があると言う事です。他の第三世代に相当する専用機は、どこか完成を尽くされた感がありますけれど……。第四世代だから良くね?……と言う安直な発想です……スミマセン。

まぁ……そんなこんなで、サソード戦でした。次回は、更識姉妹VS地獄兄弟です。ぶっちゃけ、姉妹・兄弟対決はやりたかった!

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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