タイトル通り今回はザビー戦ですね。しかし……想定と違って中途半端になってます。くそうぅ……ザビーから地獄兄弟戦あたりまで、ソルの過去編でも書こうと思ってたのに……。
まぁ……需要があるかどうかは分かりませんが、個人的には書きたい部分なので。だからどうしても挟むのが無理そうな場合は、最終回後に番外編でブッコむ事にしましょう。
うん……個人的にですね、ソルの過去も私の頭の中では存在する過去が色々と……。だからきちんと、文章って形にしたいんですけど……。……気にするのは、最終回後と言う事にしておきましょう。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。
以前は、ソルがパーフェクトゼクターへ集合をかけた『おかげ』で見逃された。だが……今回に関しては、見逃されると言う事はまずありえないだろう。
見逃された面子は、なぜあの時に目の前からいなくなっていたのか知る由も無いが……。とにかくひとしおにリベンジを誓っていたのだ。
「では、行くぞ!」
「うん!」
シャルロットとラウラは、リベンジの対象であるザビーへと攻撃を開始した。2人は同時に、リボルバーカノンとアサルトライフルを撃つ。
しかし基本的に直線運動しかしない弾丸は、ライダーフォームのザビーに対してはほぼ当たらない。まるでボクサーがキュッキュッとステップを踏むかの様にして回避された。
「当たれば、大ダメージなのに……」
「焦るなシャルロット。戦いはまだ始まったばかりだ」
マスクドフォームならば、当ててもほぼダメージは通らない。ライダーフォームならば、当てれば大ダメージを狙えるが……攻撃が当たらない。
どちらに転んでも良いだけに、やはり余裕があるのはザビーの方だろう。だがラウラの言う通りに、焦れば焦るほどよりザビーへアドバンテージを与える事となる。
「そうと決まれば、まず当てる事を第一に考えようか?」
「ああ、大ダメージを意識するよりはマシだろう」
そう言ったシャルロットだったが、むしろ当たればラッキーくらいの思考回路へと切り替えている。気楽に気楽にと、自分に言い聞かせている節もうかがえるが。
なんにせよ、2人は役割分担をする事に。当然ではあるが、ラウラが前衛でシャルロットが後衛の形となる。ラウラがレーザー手刀を出現させると、シャルロットも身構えた。
「……任せたぞ」
「うん……!」
ラウラはシャルロットに背中を見せたままそう言うと、シュバルツェア・レーゲンのトップスピードでザビーへと肉薄する。対してザビーもラウラへと接近を開始した。
ザビーからして見れば、近接攻撃を仕掛けてくる敵は格好の餌でしかない。ISは基本的に人より大きいサイズである。人間サイズのザビーは、小回りが利いて相手の懐に潜り込みやすい。
「喰らえ!」
『――――――――』
ラウラも潜り込まれたらアウトと言うのを理解しているのか、なるべくコンパクトにレーザー手刀を振るう。しかしその努力も虚しく、身を翻す事で簡単に回避されてしまった。
待っているのは、ザビーのラッシュパンチだ。短い秒間に、凄まじい数の拳がラウラを襲う。とにかく絶対防御の発動は避けて、胴体部への攻撃は避けてはいるが……。
やはり密着されると回避がし辛いのか、シュバルツェア・レーゲンの装甲は確実に悲鳴を上げていた。そしてまた一つ、強力なストレートパンチが襲い来る。
ズガガガ!
『―――――――!』
「……やった!」
「フッ……良いぞ、シャルロット!」
ズガン!
『――――――!!』
ラッシュ中はパンチの出が速くて妨害が出来ないでいたが、ストレートパンチを放つ際の一瞬の『タメ』をシャルロットは確実に捉えた。
狙ったのは、ザビーの右腕。弾丸を喰らったザビーの右腕は、下方へと逸らされる。口にするまでも無く、絶対的な好機であった。ラウラはしっかりとそれを逃さずに、リボルバーカノンを至近距離からブチ当てる。
やはり全体的な重量が他のライダー達よりも軽いのか、ザビーは大きく吹き飛ばされた。さらに言えば、目測でも装甲が重度のダメージを負っているのが分かる。
(とは言え、まだまだ油断はできん。なにせ奴は……)
『――――――――』
バチバチバチバチ!
「あぁ……やっぱりまた出ちゃうんだね……」
ザビーが以前の様に右腕を上げるような仕草を見せると、ジョウントの出現と共に10数体のワームが出現した。これにシャルロットは、思わず表情が硬くなる。
そもそもザビーがワームを従えるのは、脆弱な防御力を補うためのものなのかも知れない。とすれば、本当に……本当に重い一撃を与える事が出来れば、そこに勝機は見えて来る。
「聞け、シャルロット。私にも蜂にも構うな、お前はワームだけ狙え」
「え……?ダメだよ、そんな……援護なしで突っ込むなんて!」
「……お前がワームを減らせれば、私の生存率も格段に上がる」
「……危ないって思ったら、すぐ助けに入るからね」
シャルロットの言葉に、ラウラは短く『それで構わん』と答える。それと同時に、ザビーとワームが一斉に2人へ襲い掛かった。ワームの過半数は、シャルロットへ向けて進路を進める。
持ち前の優しい性格からか、取り囲まれてると言うのにラウラの事が気になって仕方が無い。しかしラウラは、自分を信頼してあんな事をいったのだと気持ちを切り替える。
「このぉ!」
ズガガガ!
ラピットスイッチで武装を様々に切り替えて、ワームの猛攻へ応戦する。とは言え、やはり数の暴力は解りやすく単純な『強み』だ。
ワームを一個体づつで見るのならば、全く持って大したことは無い。しかしそれが複数体存在するとなれば、その限りで無くなる。
現にシャルロットも盾で攻撃を受けきれないどころか、胴体に射撃を喰らって絶対防御を発動させてしまっている。それでも数は減らせているが、一方のラウラはと言うと……。
「ぐっ……!ちぃっ……!」
現状は、あまり芳しくは無いと言えよう。襲撃しているワームの総数は、シャルロットの半分以下だ。だがザビーが付近に居る事で、指示はより的確である。
先ほども数体のワームが射撃で牽制し、その隙を接近したワームが鉤爪で攻撃。さらにその近接攻撃が通った隙を、ザビーがジャブで追撃をした。
「フッ、フフフフ……。この感じも久しぶりだな、戦いはやはり試合とは違う!」
ラウラはそう呟くと、AICを発動してある程度の数のワームを引っかける。それもほんの一瞬だが、隙は十分だ。もちろん反撃は貰いつつ、一気に距離を詰める。
そしてすれ違いざまに、AICに引っかけた2、3体のワームをレーザー手刀にて切り裂いた。しかし未だに多勢に無勢の状況は変わらない。残されたワームが、ラウラへと追撃を……仕掛ける前に爆散した。
ドゴォ!
「お待たせ、ラウラ」
「うむ、まぁ想定内だ」
自分の分をすべて片づけたシャルロットは、ラウラ周辺にいたワームを全て撃ち抜いた。想定内だと言った通りに、無茶な動きをしたのはタイミングを読んでいたのかもしれない。
それの裏返しか、ラウラは既にザビーへと向かっていた。ザビーは追加人員のつもりなのか、またしても右腕を上げるような仕草を見せたが、ジョウントは現れない。
『――――――??』
『あ~あ~……聞こえてる?』
「こっ、これ……篠ノ之博士の声!?」
『ジョウント機能の妨害は任せて、思い切りやりなよ。今ごろ座標のズレでとんでもない場所に出てるだろうから』
突然のサポートに困惑する2人だったが、ケタケタと楽しそうな様子でそう言う束に単なる気まぐれだと判断する事に。本人は至って協力的なのだが、オオカミ少年が如く解っては貰えない。
とは言えこれで、ワームの猛攻は無くなったと思っていい。ラウラは幾分か、ザビーに突っ込むプレッシャーが立ち消えるのを感じる。
「おおおおっ!」
『――――――!!』
ザビーはラウラへとは向かって行かずに、待ち受ける体勢を取る。それでもユラユラと揺れているあたり……避ける気は満々と言った所だろう。
そんな事にはかまわずラウラはザビーの頭部目がけて、レーザー手刀を突き入れる。ザビーの方も顔面を狙ってか、ライダースティングではないがゼクターの針をパンチに乗せた。
ギャリィ!ブチン!
「くっ!」
互いの攻撃は、互いの顔面を掠めた。ラウラは眼帯の紐が切れ、ザビーはコンパウンドアイに傷が刻まれる。とは言え、視覚的情報を奪った事にはなら無さそうだ。
ザビーはすれ違う勢いそのままに、今度は標的をシャルロットへ移した。ラウラの後方で射撃体勢に入っていたシャルロットは、狙いを定めて引き金をひく。
「これでどう!」
ズガガガ!
『――――――――』
やはりザビーはキュキュッと細かな進路変更を行って、ロクに攻撃を当てさせてくれない。この光景は、何度やっても歯痒いものだ。そしてこの感じ……ザビーを追っているラウラには見覚えがあった。
前回に、シャルロットがライダースティングを受けた際の光景である。となれば……ザビーは狙っている可能性が大きい。そしてラウラの想像通りに、ザビーは左手首に手を添えた。
「シャルロッ……!」
「ラウラ!……僕を、信じて!」
「!? ……承知した!」
どうやらシャルロットも、ザビーが狙ってい居た事を悟っていたらしい。注意を促そうとしたラウラだったが、名前を呼びきる前に遮られてしまう。
そしてシャルロットの放った信じろという言葉……それすなわち、何か策があることを示唆していた。いや……なくてもラウラは、こう言われれば従っていたかもしれない。
『――――――――』
『―RIDER STING―』
そうこうしている間に、ザビーはいよいよ必殺技を発動した。黄緑色のイオンエネルギーが、ザビーの左腕へと満たされていく。ガタックやカブトのキックとは違って、一点集中となっているために見た感じの威力はさほどなさそうに感じられる。
しかしライダースティングの威力を、シャルロットは身を持って体感している。それだけに……とある策が浮かんでいたのだ。成功率が高いとは、お世辞にも言えないが。
(シャルロット……なぜ何も行動を起こさない!?)
そう……何か策があるらしいのに、シャルロットはピクリとも動かないのだ。それどころか、射撃さえもぱったりと止めてしまっている。
ラウラは声を大にして叫びたかったが、先ほどの信じてという言葉が脳裏をよぎる。ここでザビーを止めに入ると言う事は、その信頼を裏切ると言う事……ラウラはそう考えた。
そうして、開きかけた口を堅く閉ざした。そうやってラウラが葛藤している間に、ついにザビーはシャルロットに腕の届く所まで到達している。そこまで来れば、以前と同じように左フックパンチをシャルロットへ見舞う。
ズゴシャァ!
「えへへ……前回は焦ってたかもだけど、それでもやっぱりギリギリだったよ」
「シャルロット?!」
「このくらいなら……貫いてくれると思ったからね!」
シャルロットはライダースティングの当たる寸前に、パイルバンカー内蔵型の物理シールドでそれを受けた。ライダースティングの見事な貫通力にて、盾はいとも簡単に貫かれている。
しかしそれこそがシャルロットの狙いで、むしろ貫いて貰わねば困るほどだったのだ。現にこうしてザビーは、盾を貫いた左腕が抜けずに、身動きが出来なくなっている。
一見チープな策ではあるが、しっかりとザビーを観察しての事である。ザビーと他のライダー型ISの相違点……それは、必殺技に唯一ゼクターの一部分を使用するという点だ。
ガタックやカブト、そしてサソードも直接攻撃ではある。しかしそれぞれキックや剣にイオンエネルギーを乗せる事で、必殺技が成立しているのだ。
だがザビーには、唯一そういったゼクター以外の充填先が存在しない。それ故に、ゼクターでの攻撃を強いられる。そこでシャルロットは考えた……もし腕を捉えれば、それは絶好のチャンスだと。
「今だよ、ラウラ!」
「了解した!」
ザビーの背後まで迫っていたラウラは、天高く舞い上がるとそこから急降下する。そしてそのままザビーゼクターを狙ってレーザー手刀を振り下ろした。
ギャリリリリ!
『――――――!!』
ザビーのハイパーセンサーは、警告音を発していた。それもそのはず……ゼクターは、ライダー型IS最大の弱点である。真もソルとの初戦で、それが要因で敗北したとも言えるだろう。
それだけに真は皆がライダー達と戦ったと聞いて、狙うなら真っ先にゼクターである事を伝えておいたのだ。そのためにラウラは、ザビーゼクターを真っ二つにせんと腕に力を込める。
「これさえ斬れば、全てカタが……!」
『――――――!!』
機械にこの表現は些かナンセンスではあるが、ザビーは気合で左腕をリヴァイヴの盾から引き抜いた。ラウラはしまったという表情だが、シャルロットはこの辺りまで想定内だったらしい。
つまりはゼクターの完全破壊が目的で無く、こうして腕を引き抜いた後の隙こそが……真の好機!シャルロットはラウラを押しのけるようにして、ショットガンをザビーの胸部装甲へ押し当てる。
「うわああああッ!」
ズガン!ズガン!ズガン!ズガン!
近距離で絶大な威力を誇るショットガンを、とにかく我武者羅に連射した。装甲の薄いザビーには効果覿面で、胸部装甲へは徐々に亀裂が走りはじめる。
バキィッッッッ!
そしてついには、胸部装甲が砕け散った。ザビーの中身である人型アンドロイドの無機質な胸部が露出して、そこから白煙が上がる。しかしショットガンの弾丸は、装甲が砕けると同時に打ち止めだった。
「変われ、シャルロット!」
「了解!」
ラウラはシャルロットと交代すると、アンドロイドの胸部へレーザー手刀を突き入れる。アンドロイド自体はあまり強固に設計されていないのか、ラウラはまるで豆腐の様な感覚でレーザー手刀が刺さったと感じた。
これにはラウラもかなりのお粗末さを感じると共に、装甲が薄くて助かったと言う感情を覚える。そして突き刺さったレーザー手刀を引き抜くと、胸部へ向けてリボルバーカノンを撃った。
「これで、さよならだ!」
ズガン!
ラウラの宣言通りにリボルバーカノンの弾丸は、アンドロイドの胸部をいとも簡単に貫通して風穴を開けた。胸から向こう側の空が見えて、ようやく2人は機械であったことを思い知らされる。
それだけにザビーの動きが人間的であった印象を受けたらしい。今まさに胸部へ風穴が開き、悶え苦しむ様な仕草などもまさに人間がする『ソレ』だ。
バチチチチチチ!!
『――――!!!!』
ズドオオオオン!
しばらく苦しむ様子を見せると、ザビーはアンドロイドごと派手に爆散した。ラウラの開けた風穴が決め手となったのだろう。
コレと同時に、何とか勝てたと安心した表情のシャルロットだったが……ラウラの表情は苦い。なぜなら見た気がするからだ……爆発に紛れて逃げる『ザビーゼクター』を。
「ラウラ、どうかしたの……?」
「……ゼクターを、逃したかも知れん。くっ……!やはりゼクターを最優先にすべきだったか……!」
ラウラは、悔しそうに拳を握った。それも全て、パーフェクトゼクターの存在を知っているがためだ。ソルのコアシンクロ……それの妨げに、少しでも尽力できればと思っていたのだ。
悔しそうに超巨大ジョウントを見上げるラウラに、シャルロットがそっと優しく肩へ手を置いた。その行為だけで、何も気にする事はないと言いたいのは理解が出来るが……。
「シャルロット……私は……!」
「ラウラは、僕を信じて全部任せてくれたんでしょ?それなら、僕のせいなんじゃないかな」
「それは無い!シャルロット、お前は頭の固い私と違って……奴を倒す手段をくれた!乗った私も同罪だ!」
「それなら、僕達どっちも悪い……って事で良いよね?」
シャルロットはもとより自分を責めるつもりも、ラウラを責めるつもりも毛頭なかった。もちろんゼクターの完全破壊が出来なかった事に責任は感じているが……誰が悪いと言う事も無い。
だからせめて、ラウラがこうでもしないと納得しない……という言葉を選んだのだ。ラウラは容赦ない時はあるにしても、根本的には優しい。こう言ってえば、ラウラは同意せざるを得ない事を知っているからこその一言だった。
「きっとラウラは、真に申し訳ないって……そう思ってるんでしょう?それなら真が、なんて言うか想像してみようよ」
「…………。ハッ……んなモン気にする暇があるんだったら、お前の発育でも心配しなよ。……と言った所か」
「ハハハ……。うん!だいたいそうなるだろうね。だから謝るのは、真に……それでいて、心の中でって事にしておこうよ」
それが甘えである事など、シャルロットは重々承知していた。しかし……それでも心から信じているのだ。心の底から……あの皮肉屋が、帰って来るなり皮肉を呟く事を。
シャルロットの言葉に、ようやくラウラは納得したように首を縦に振った。後は、2人そろってカエルム・スカラムを凝視する。あの中で、人生の因縁であろう相手に……勝つことを信じて。
(スマン、戦友よ……蜂の完全破壊には至らなかった。だがどうか、無事でいてくれ……)
(真……僕らは勝ったよ、一応……だけどね。君も……一応でもなんでも良いから……どうか、帰って来てね)
2人は祈る……世界がどうこうでは無く、ただ1人の友人……仲間の帰還を。たとえ遠く離れていても……祈りは届き、仲間の力となると、そう……信じて。
シャルロット&ラウラ……無事に勝利!
1年生2強組は、比較的に簡潔に勝利して貰う予定でした。それこそシャルロットとかラウラが、同じ轍を二度踏むのとか想像し辛いですし……。
それと、ライダースティングに突っ込みを入れたら負けです。本来ゼクターの針を突き刺しタキオンを送り込んで敵を内部から爆散させるって技ですが……。
そんなのしたら、いくら絶対防御はあれどなんかマズイ気がしたのでNGです。そもそも初期から読んでくれてる方は解ると思いますが、基本的にエネルギーはタキオンじゃなくてイオンに改編してますしね……。
さて、次回はセシリア&鈴VSドレイクです。このザビー戦の勢いで、一話まるまるドレイク戦に使えれば良いんですけども……。
それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。