戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

はぁ……お仕事再開でごぜーます……。故に、投稿スピードも元の感じになるんじゃないでしょうか。ま、ゆるーく行きましょう。

それで今回は、真が超巨大ジョウントに入る所までで戦闘にはなりません。次回からまた数話かけて、それぞれのシーンを見せるかたちになるかと。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


突入、カエルム・スカラム(強行突破)ですが何か?

 真達が夜明けとともに飛び立ってしばらく、カエルム・スカラムへと通じるジョウントは目の前まで迫っていた。と言っても、対象が巨大すぎて中心部へはまだ程遠い。

 

 ここまで近づいたが、未だに妨害は無し……となると、亡国は真達を招き入れるつもりなのだろうか?9人の内大多数が、そんなはずはないと思っていた……その時の事だ。

 

『IS学園の皆さん、初めまして……亡国機業のスコールよ』

 

「全員、脚は止めなくていいわよ」

 

「そうは言われましても……」

 

「いや、此処は楯無会長に従おう」

 

 突如9名のISの通信機器に、未確認のコンタクトが取られた。強制的に繋がれた回線に、亡国機業のスコールを名乗る声が……。しかし足を止めるだけ無駄だと判断した楯無が、全員に進撃続行の命令を告げる。

 

 一夏やセシリアなど、何名かが足を止めかけたものの……戸惑いながらも再び速度を上げる。お互いがお互いを気にしない状況が出来上がり、スコールは言葉を続けた。

 

『悪いけれど、この中には1人しか招待してあげられないの』

 

「俺か……」

 

「って言うよりは、アイツら……もうあの中なんだな」

 

 一人しか……となれば、自分しか心当たりは無かった。真は小さくぼやいて、一夏は天を仰ぐ。それに釣られた真は、ハイパーセンサーでカエルム・スカラムを見た。

 

 こうしてみると、まるで向こうもこちらを覗きこんでいるかのような……そんな錯覚を感じた。これまた真は小さく下らないと呟くと、移動に集中する。

 

『ああ、ゴメンなさい……最高でも1人って、訂正させてもらおうかしら?』

 

『!? マスター……前方に6つの時空の歪みを感知!』

 

「了解……!来るぞ、お前ら!」

 

バチバチバチバチ!

 

 青子が真に警告を知らせると、超巨大ジョウントの中心部真下あたりに、横一列のジョウントが6つ現れた。そこから現れたのは、オータムを除いた前回襲撃時の面子である。

 

 ザビー、ドレイク、サソードはマスクドフォームで。キックホッパーとパンチホッパーは、ライダーフォームしか存在しないためか、既にアーマーが展開されている。

 

 この中で唯一の人間であるマドカは、何か迷いが一切立ち消えたかのような……自信に溢れた立ち姿であった。機械達は当然だが、無言で並ぶこの姿……威圧感がすさまじい。

 

「チッ!キャノ……」

 

「ダメだよ真!君は彼との戦い以外にエネルギーを使っちゃ!」

 

「…………恩に着る!」

 

「そうそう……たまにはアンタもそうやって、素直にしててもバチは当たらないわよ!」

 

 とりあえず軽快にキャノンをぶっ放そうとした真だったが、展開した時点でシャルロットに咎められた。つまりはソルとの対決を前に、余計なエネルギーを使ってはダメだと言う事らしい。

 

 自分はジョウントに突っ込む事のみを考えなくてはと、エクステンダーの速度をさらに上げた。それに伴って、残った8人は真を警護するかのような陣形へと変わった。

 

「……行くぞ」

 

『『『―CAST OFF―』』』

 

『―CHANGE WASP―』

 

『―CHANGE DRAGONFLY―』

 

『―CHANGE SCORPION―』

 

 これを見たマドカ達が、ついに動き出す。マスクドフォームの3体は、一斉にキャストオフしてライダーフォームへ移行。ホッパーズは凄まじい勢いで跳ねながら真達に接近を仕掛ける。

 

 ホッパーズの到来に、いち早く動いたのが楯無だった。やはり……前回のリベンジをするつもりなのか、それはもう一目散と言った様子である。

 

 姉が2対1となると、簪も黙ってはいられない。隊列から外れると、パンチホッパーの拳に合わせて夢現の刃をぶつける。簪の離脱に、思わず真は振り返った。

 

「弟くん、後よろしく!」

 

「世界を……守って……」

 

「姉貴、簪……。くっ……簪、愛してるからな!」

 

「うん……私も……!」

 

 楯無はバッチリとウィンクを真に送り、その背を見送った。真はだんだんと離れていく簪を前に、耐えられなくなったのか人目を気にせず愛してると伝えた。

 

 しかし真の予想に反して、からかう者は全くいなかった。それも当然だろう……いつもは平和だからこそ茶々を入れるが、今回は……無粋でしかない。

 

「……着いて行かなくて、良かったの?」

 

「彼との決着は……真と彼の因縁だから……。私は……真の邪魔をしたくない……。それに……夫の帰りを待つのも……妻の勤め……」

 

「アララ……本人居なくても惚気ちゃって。羨ましいぞ~この~!」

 

「お、お姉ちゃん……集中……」

 

「そうね、私達仲良し姉妹の力……思い知らせてあげましょう!」

 

 更識姉妹が離脱して、続いて襲って来るのはドレイクの銃撃であった。このレーザー弾の恐ろしさは、セシリアと鈴が身を持って体感している。

 

 狙いはどうせ……真でしょ!と、変則的に曲がるレーザーから真を庇うように、双天牙月でそれを受ける。いくら曲がろうとも、最終的な狙いさえ分かっていれば何とかなる物だ。

 

「真さん!必ずや……戻ってきてください!」

 

「真、負けたりしたら承知しないわよ!」

 

「セシリア、鈴!サンキューな!」

 

 ドレイクは横を通り過ぎて行った真達を攻撃しようとするが、ブルー・ティアーズのレーザーBT4基に阻まれ照準が定まらない。

 

 その間に、鈴もしっかりと攻撃を仕掛ける。これにて、真達は遥か彼方へ……流石のドレイクゼクターと言えど、射程外である。

 

「行った行った……。まずは第一段階をクリアね!」

 

「あら?鈴さんが物事を順序立てるなんて、珍しいですわね。それで、第二段階とは?」

 

「アンタ、相変わらずそこはかとなく馬鹿にして……。まぁ良いわ……って言うか、分かってて聞いてない?」

 

「あのISにリベンジ……ですわね!」

 

「分かってんじゃん!それじゃ……行くわよセシリア!」

 

 次いで迫って来るのはザビーで、その少し後ろを着いてくるようにサソードが控えている。サソードはともかく、ザビーが近接戦闘しか行えないのは割れている。

 

 シャルロットはアサルトライフルを装備すると、ザビーへ向けて乱射した。当然ザビーは回避を行うが、この射撃の目的はあくまでザビーの誘導である。

 

「真、君なら絶対にやれるって信じてるから!」

 

「戦友よ……また会おう!」

 

「おう、ありがとよ!」

 

 シャルロット、ラウラもその場で足を止めて、残された3人の背中を見送った。ザビーは既に臨戦態勢なのか、ボクシングの構えを見せつつ揺れていた。

 

 しかしそれでも……2人が見詰めているのは遥か遠くの真達だった。いい加減にしないとそろそろ不味いと思ったのか、かなり時間がたってようやく、2人はザビーへ興味を示す。

 

「僕らも頑張らないとね!」

 

「ああ、戦友は必ずやってくれるだろうからな」

 

「じゃあ……出迎えの準備をしようか?」

 

「フッ……なら手始めに、うるさい蜂を沈めなければ」

 

 ザビーが遠く離れたとはいえ、すぐサソードが迫って来ているのを忘れてはいけない。サソードヤイバーには、既に毒が滴っていて、3人のハイパーセンサーは、危険信号を発している。

 

 そんな中で、少し前に出たのは箒だ。するとすぐさま空裂を思いきり振って、遠距離攻撃を仕掛ける。サソードは気にする事なく突っ込み、サソードヤイバーで箒の攻撃をかきけす。

 

「行け、真!私達の想い……決して無駄にはするな!」

 

「しっかり受け取ったさ……箒!」

 

 これで残りは、真と一夏の2人に……。置いてきた皆に、不安や心配はある。しかしそれでも……真は前に進まなければならない。それこそ、箒の言葉通りである。

 

 相対する剣士達は、斬り合いの前のような雰囲気を醸し出している。箒は集中しているが、通信が入ってきた。その相手は、自身の姉……篠ノ乃 束。

 

『あ~その~箒ちゃん……。紅椿さ、毒で溶けないように特殊コーティングしておいたから。だから……えっと……』

 

「…………姉さん」

 

『は、はいっ!』

 

「心遣い……有難うございます。これが終われば、お互い腹を割って話しましょう」

 

『うん……頑張ってね!』

 

 真と一夏がジョウントの中央部辺りに差し掛かると、前方から複数のレーザーが襲いくる。サイレント・ゼフィルスの6基のレーザーBTだ。

 

 攻撃対象になっているのは、一夏でなく真らしい。エクステンダーで回避しつつ……一夏に迷惑はかけられないと、距離を置こうとした真だったが……。

 

「真、そっちじゃない!こっちだ!」

 

「いや、全然解んねぇよ!?」

 

「ああっと……とにかく!俺の後ろにピッタリ着いてきてくれ!」

 

 一夏にはマドカが攻撃を仕掛けてくる以前に、どこを狙っているかが直感的に見えている。だからバラけるよりも自分が真を導いた方が安全だと、一夏はそう判断した。

 

 エクステンダーの速度を落として、一夏の背後へと回る。すると面白い様にレーザーより先に一夏は回避を始める。危なっかしいが、真は必死に白式との進路を重ねた。

 

「お前って本当……」

 

「なんか言ったか?!」

 

「いや、頼りになるなって思っただけだ」

 

「そ、そうか……なら、良かった!」

 

 なかなかなチートっぷりを、嫌味たっぷりに指摘しようとした真だったが、誉める方向へ切り替えた。すると一夏は少し嬉しそうに頬を緩ます。

 

 でもそれは一瞬の事で、一夏はすぐさま気持ちを入れ換える。そうすれば、マドカはもうすぐの場所まで近付いていた。真はジョウントへと、突入の準備を始める。

 

「真!」

 

「なんだ!」

 

「貸し一つだからな!絶対返せよ!良いな!」

 

「ハッ……。オーケー相棒!ちょっくら行って来るぜ!」

 

 真と一夏は短いやり取りを交わすと、それぞれの目標へ向けて別れる。真はエクステンダーを縦に傾け天高く上昇して、一夏はそのままマドカへと突っ込む。

 

 自分が行けば、マドカは必ず興味を示すと一夏はそう思っていた。だが何か……やはりマドカの様子がおかしい。そして一夏には『視えた』……真を追撃するマドカが。

 

「真ぉ!もっとスピードあげろ!」

 

「!?」

 

「……ソルの敵……!ソルを邪魔する者は……私の敵……!」

 

ドガガガガガガ!

 

「くっそ……!」

 

 一夏が警告を発した時には、もう遅い。一夏が目の前に迫ってきていると言うのに、マドカは上空へ向けて一斉射撃を開始した。真も普通に一夏と交戦すると思っていたために、盛大に舌を打つ。

 

 真の場合は、一夏と違って見てから回避だ。ハイパーセンサーで見ながらよりも、正面で捉えた方が避けやすい。エクステンダーとガタックの接続を断って、振り返りレーザーを全て回避した。

 

(危ねぇ……)

 

「スマン、真!」

 

「謝る暇あるんだったら、急いで距離を詰めろよ!」

 

「ごもっとも!」

 

 真は一夏にそう告げる頃には、再びエクステンダーに乗って上昇を続けた。真の忠告通りに、マドカは攻撃続行の姿勢だ。それを見た一夏は、瞬時加速で一気にマドカへと迫る。

 

「マドカぁぁぁぁ!」

 

「チッ!」

 

バチバチ!

 

 流石に雪片で斬りかかられては不味いと思ったのか、ようやくマドカは一夏へと向き直る。そのまま冷静にシールドBTで雪片を受けると、すさまじい殺気を放ちながら距離を置く。

 

 これはやはり……マドカと、復讐の対象である自分がそう呼んだからだろうか?しかし……それでも一夏は、マドカを『マドカ』と呼ぶと決めた。いつ攻撃が来ても良いように、どっしりと構える。

 

「もう惑わされん……」

 

「? なんだって?」

 

「私の名……呼びたければ好きに呼ぶが良い!ソルと貴様ではまるで重みが違う!」

 

「……!?」

 

 キャラが合わないと言うか、前回と今回でマドカの印象が全く違う。マドカはカエルム・スカラムを仰ぎ見るようにして、高笑いを上げる。

 

 そしてそれが終わったかと思えば、まるで狂ったかのように『ソル』と呟き続けている。それも何か、悦ぶかのような様子だ……。一夏は引きはしないが、絶句した様子で言葉が出ない。

 

「姉さんも貴様も……もはやどうだって良い!私はソルの為に生き、死ねればそれで良い!」

 

「マドカ……さっきから何言って……」

 

「ソルの邪魔をするのなら殺す……それだけだ。だから死ね、私とソルの世界の礎になるが良い!」

 

「クソッ!全然話は読めねぇけど……今目を覚まさしてやるからな、マドカ!」

 

 一夏と狂気に包まれたマドカが交戦を始めた頃……真は、超巨大ジョウントまで直線距離で残り数100mと言った所か、あちこちから聞こえる爆音を振り払うかのようにさらに速度を上げていく。

 

 その時、真にも束からの通信が入った。何事かと思ったが、かの天才からの通信だ。何か有益な情報があるに違いないと、すぐさま回線をオープンにする。

 

『ねぇねぇま~くん、君さ……あれ突っ込んでどこ繋がるか分かってる?』

 

「あぁ!?どこって……宇宙だろ?」

 

『要するに何も考えて無かったって事だね、おーけーおーけ。……ほいっと!座標変えといたよ、何処か分からないけどカエルム・スカラムの内部には繋がると思うから』

 

「……助かる」

 

 真は勢いそのままだったことを、軽く後悔した。こんな緊張感のある場なのに……恥ずかしくて仕方が無い。なんとか外からカエルム・スカラムへと入れるだろう……程度に思っていたり。

 

 とりあえず、結果はオーライ。あの超巨大ジョウントへ入れば、カエルム・スカラムへ直行だと肯定的な思考へと切り替えた。そして真は、皆の想いを一身に受け……ついに超巨大ジョウントへと突入に成功。

 

(皆……死ぬなよ!)

**********

『あなた……お名前は?』

 

『名……?名など無い。強いて言えば、シリアルナンバーならあるが』

 

『じゃあ私がつけてあげる。あなたは――――』

 

「…………」

 

 いつの間にやら眠っていたか……随分と、懐かしい夢を見た。今日で最後になるからだろうか?だから昔を懐かしんでしまうと……。アレはオレが、最初に『始まった』時だったろう。

 

 二度目は、加賀美に敗北してからだが……どちらの始まりが大切かと聞かれれば、言わずもがな前者だ。これが最後……いや、最期か?どちらでも良い……奴と戦えるのなら、それで……。

 

 しかし……暇だな。こうしてカエルム・スカラムの中心部に居座って、どのくらい経つのやら。ここに居座るのは、他でも無く俺の望みではあるが。

 

「…………」

 

 今の感じは……来たか?奴の気配を、そう遠くない場所に感じる。……殺気でも出しておくか、奴も俺の気配を手繰り寄せてオレの元へ来ればいい。

 

『ソル』

 

「解っている」

 

『そう……なら良いわ。ようやく、貴方の望みが叶うわよ』

 

 望み……望み……か、それは間違いない。俺が望むのは、奴との決着だ。だが……その先は、俺は何を望んでいるのだろうな。前に奴と出会った時にも……半ば指摘された事でもある。

 

 自分を殺した先に、オレの生きる道はあるのか……そう聞かれた。オレは、何も答えられなかった。だけど奴は、オレに生きろと言ったのだ。自分を殺すかもしれない相手に……生きろと。

 

「スコール。計画が終われば、オレは用済みか?」

 

『別に殺しはしないわよ、それがどうかしたの?』

 

「奴に勝ち……最終フェーズを迎えて、計画を終わらしたのなら……自由が欲しい」

 

『自由に生きるねぇ……具体的に聞かせて頂戴』

 

「……そう聞かれて、どう答えて良いのかは分からんが。……マドカと、共に生きていければそれで構わない」

 

 奴との決着は、最優先。しかし……それと同じくらいには、マドカの事も大事だ。奴が生きろと言ったのなら……オレは、マドカと共に生きていたい。

 

 汚れきったこのオレに、女を幸せにする資格があるのかどうかは知らん。だがマドカは、間違いなくオレの……全てだ。今更……手放せるハズも無い。

 

『……好きにしなさい』

 

「恩に着る。それと、もう1つ……万が一オレが負ける様な時があるとすれば、大人しく負けを認めろ」

 

『どういう意味かしら?』

 

「そのままの意味だ。ここまで大事をしたのだから……此処での負けは、組織の負けで良いだろう」

 

 早い話が、ここでオレが負ければもう諦めろと言う事だ。スコールがしつこい女だからこそ、こうやってズルズルと決着が先送りになったという物。

 

 この女がここでYESと答えようと、本心では無かろう。だが……オレも同じ気持ちになっている。オレを倒したのなら、奴には生きて貰わねば寝覚めが悪い。フッ……殺そうとしている者の言う台詞ではないがな。

 

『貴方に、全てを託せと言うのね』

 

「そうだ。そもそもオレは、計画の要……。もはや敗北は許されんし、オレは負けん」

 

『そうね……いい加減に、イタチごっこも飽きてきた所だわ』

 

 ……そこで言葉を切るか。これは恐らく、肯定も否定もしてない……などと言いだすパターンだろうな。ダメだ……最も付き合いが長いが、最初から最後まで好きになれそうもない。

 

 まぁ良い……その場合は、死を持ってしてでも奴を無事で返す。それが……オレに勝った奴への敬意だろう。まぁ……どちらにせよ、オレが勝つのだから問題は無いが。

 

「済まないな、引き留めた。後は……集中させてくれ」

 

『分かったわ。頑張ってね、ソル』

 

 それだけ声が響くと、通信は途絶えたらしい。モニタリングくらいはしているだろうが、別に今度は邪魔はしてこないだろう。と言うよりは、次に邪魔をすれば加賀美と結託してでも貴様を殺すと言っておいた。

 

 流石に……そこまで言えば大丈夫なハズだ……大丈夫なハズだ……。…………まぁ良い……本気で集中せねばならん。それまで立っていた俺は、その場に胡坐をかきつつ座り精神統一を始めた。

**********

「ふむ……やはり、余計な事を考えてますねぇ」

 

 カエルム・スカラムのモニター室に、困ったような声が鳴り響いた。その張本人は、ポリポリと頬を掻きながらモニター越しに移るソルを観察している。

 

 ソルの言葉をもう一度脳内で復唱すると、どうしてくれたものでしょうか……と、わざわざ声を大にして呟く。だが生憎……ここには1人しか居ない。寂しさを紛らわすためか、大きな溜め息を吐く。

 

「困りましたね……彼には、彼の踏み台になってもらわねばならないのに」

 

 これでは本当に勝ってしまいそうです……と、今度はそう呟くきながらそこに置いてあった資料を捲る。内容は……端から見るとさっぱりだ。

 

 しかしなんとなくではあるが、亡国の一連の計画について書かれているのが解る。最後の戦いの前に、やるべき事を再確認しているのだろうか?

 

「まぁ良いでしょう、微々たるズレです。むしろ歓迎しようではありませんか」

 

 資料を優しく閉じると、優しく元の場所へと戻した。すると今度は立ち上がって、まるで演劇の最中かのようにクルリラクルリラと回って見せる。

 

「成長した彼を打ち倒す事は、更なる彼の成長へと繋がるでしょう。あぁ……今から会えるのが楽しみです!」

 

 そう言いながら口元を歪めるが、その笑みは全く邪悪なものではない。むしろとても綺麗な笑みだ。男女性別問わずに、思わず見とれてしまいそうな……そんな表情。

 

 高揚した気持ちが抑えられないのか、鼻歌交じりにモニターへ真を映し出す。あちらでもない……こちらでもないと、ソルを捜す真の様子を楽しそうに観察するのであった。

 

 

 




八章でも、だいたい同じパターンだった気がしなくも……。

まぁそんなこんなで、真は皆のおかげで無事にカエルム・スカラムへ突入成功です。さて、これで数話……真の出番はないですね!

それこそ八章と同じパターンで、戦闘回にするつもりです。順序としては……ザビー、ドレイク、サソード、地獄兄弟、マドカの順でしょうか。

上手い事やっていかないと……一夏VSマドカだけ異様に長くなるのが目に見えて……ブツブツ……。お、おっとスミマセン、独り言です。

ってな訳で、次回はシャルロット&ラウラVSザビーからお送りしていこうかと思います。尺の都合で色々と変わるかもしれませんが、まぁ一応……。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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