FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~ 作:えんとつそうじ
本当はこれからのネタばれになるかもしれないから書く気はなかったんですが、こういうのもいいかなーと思いまして。
それでは暇つぶしにでもどうぞ。
港町リオの警備隊詰所に隣接している場所には、拘束した犯罪者たちを止め置くための留置場が存在するのだが、現在その留置場の部屋全てが満員になっており、急遽仮の留置場を別の場所に増設する事態へと陥っていた。
その理由は、突如町を襲撃してきたある海賊団の襲撃。とある少年魔導師の活躍もあり、この町の警備隊はなんとかその海賊たちを撃退し、逮捕拘束したのだが、その海賊たちの数があまりにも多すぎてこのような事態になってしまったというわけなのだ。
そしてそんな留置場の中で、最も厳重な監視体制をとられている一室がある。そこには、今回の事件の首謀者である高額の賞金首が拘束されていたからだ。
その名もシャルバ・ベルゼブル。そう、このリオの町を襲撃した海賊たちの首領にして、少年魔導師ユーリ・クレナイとの戦いにより敗北した魔導師でもある。
彼はユーリとの戦いの最中、自身の魔法のカラクリをユーリに暴かれ、それが原因で自らの劣勢に追い込まれてしまったために、逃げ遅れたのか戦場に現れた子供を人質にとったのだが、それがユーリの逆鱗に触れてしまい、彼の滅悪奥義により敗北。なんとか生き延びはしたが、あまりのダメージに身動きがとれず、そのままこの町の警備隊により逮捕、拘留されてしまったのだ。
ボロボロになりながらも彼はなんとか逃げ出そうとしたが、特殊な錠で頼みの魔法を封じられてしまっては肉体的な強さでは常人並みでしかないシャルバではもはやどうにもすることができず、こうして拘束されているというわけなのである。
彼はいつもの彼とは違い、囚人専用の粗末な服に身を包みながらも、その表情を屈辱の色に染めながら悪態をついていた。
「くそくそくそくそくそ!!なぜ私がこのような目に……」
自らを”選ばれた者”と自称する彼は、ナツメグ王国の公爵家に生まれたこともあり、傲慢なまでのプライドの持ち主として知られており、それは海賊にその身を墜とした今も変わってはいなかった。
だからこそ、彼は今の自分の現状を許せなかった。なぜ高貴なる身分である自分が下賎なやつらに捕らえられ、このような目にあわなければならないのかと。
本来彼が今までやってきたこと思えば当然のことなのだが、恐ろしいまでの自己中心的な性格の彼には、今まで自分がやってきたことを悔いるという選択肢などあり得ず、ただただこのような状況に自身を貶めた他者に恨みの言葉を向け続ける。
そんな彼の脳裏にもっとも色濃くその姿が焼け付いているのが、彼がこのような状況に陥る原因となった紅の色の髪を持つ、1人の少年の姿。自身を破ったユーリ・クレナイの姿だった。
「あのガキさえ、あのガキさえいなければ全てがうまくいったものを……ッ!!」
ユーリの姿を思い浮かべ、思わずといった感じで歯噛みしながらも呪詛を吐くシャルバ。その形相は凄まじく、魔力を封じられているはずなのに、気のせいかその体から禍々しいオーラのようなものが見えるほどだ。
必ず復讐をと誓うシャルバであったが、それと同時彼は理解していた。今のままでは復讐どころか、以前の生活に戻ることもままならないことに。
これから自分は評議委員会に連行され、評議委員会が管理する監獄に収監されることになるだろうが、そこは今自分がいるこの留置場よりもさらに警備が厳重であり、逃げ出すことなどまず不可能。
ならば警備がまだましなこの留置場にいる内に脱走を試みても見てが、いくら警備がましとはいえ、魔法の技能以外特に特殊な技能を持っているわけではないシャルバではそのようなことできるわけがなく、屈辱に身を焼かれそうになりながらも、彼は今の状況を甘受するしかなかった。
「(それにやつが使ったあの魔法。単純な魔法の腕だけならばまだ私のほうが僅かに勝るだろうが、破壊力は私の魔法より断然上。さらにあの戦闘センスならば、次戦えばよほどの準備をしていなければ再び私が敗北してしまうのは確実だろう)」
だからこそ、彼は負の感情で体を満たされていることを感じながらも、渇望した。忌々しいあの子供を上回る力を。この状況すべてをひっくり返せるほどの強大な力を!!
「ああ、私にもっと力があれば……ッ!!」
怨念のままに自身の願望を吐露するシャルバ。
そんな彼の言葉に応える者は誰もいない。
それにそのようなことがなくても、彼はこの場に拘束されてからずっとこのような呪詛ばかり口にしており、そのために、ユーリに敗北した影響で気狂いとなったと思われていたために、彼を気味悪く思う者は多く、彼に近づく者など殆どいなかっただろうが。
だからこそ、彼の言葉に返す者はなく、彼がいる牢獄には沈黙が広がる……はずだった。本来ならば。
『――――力が欲しいのか?』
「ッ!?」
突如聞こえてきたその声に、シャルバは咄嗟にその顔を上げる。
すると、そこにはいつの間にか1人の少年がそこに立っており、シャルバはその少年の姿を見て、思わず驚愕で目を瞠る。それは気配もなくその少年が現れたこともあるが、その少年の顔にシャルバが見覚えがあったからだ。
「貴様はあの時の子供!?いったいどこから入ってきた!!」
そう、彼の目の前に現れたこの少年は、シャルバがユーリとの戦いの最中、人質にとった子供だった。そんな子供が、この監獄でもっとも厳重に監視されている自分の元にやってきたからこそ、彼はここまで驚愕していたのだ。
そんなシャルバの言葉に、しかしその少年は戦いの場で見せた怯えた表情はどこへやら。子供では絶対浮かべないような歪んだ笑みをにやりと浮かべながら、口を開く。
『くくくくく。なに、久しぶりに軽い気持ちで外に出てみたら、闇に染まりかけた魔力を感じたのでな。勧誘に来たのだよ』
「勧誘……だと?」
『うむ、お主力が欲しいのだろう?その歪んだ思想に歪んだ魔力。お主ならば魔法の深淵を探れるなかなかの素質を持っていると見た。ならばワシが与えてやろうではないか。――――あの子供に復讐を果たしたくはないかね?』
そこでシャルバは確信に至る。目の前の子供の形をした
「貴様はいったい……?」
『……おや?そういえばまだ名乗っていなかったか?』
シャルバの言葉に、その子供は初めて少し驚いたような表情を見せるが、やがて再び歪んだ笑みを浮かべると指を一つ鳴らす。
すると、その子供はどんどんと成長していき、やがてその姿を右目に眼帯をつけ、大きな二本の角が付いた兜を被った老人の姿へと超える。
「…な……ぁ!?」
あまりの事態に再び驚愕の表情を浮かべるシャルバ。そんな彼の姿を見て、その老人は満足そうに不敵な笑みを浮かべながらも、再び口を開く。
「――――ワシの名は”ハデス”。とある魔法ギルドのマスターをしておるよ」
さて、というわけでハデス君登場の回。そしてシャルバ君再登場決定回でした。
本当はここで書かずに登場回直前で書こうと思っていたのですが、まあテンプレだから別にいいかなと思い書いてみました。
実は、ハデスの代わりに他のハイスクールD×Dのキャラを(ファンキー爺さんとか)悪魔の心臓のマスターみたいな漢字で書こうと思ったのですが、さすがにそこまでの原作改変はちょっとと考えてハデスにしてみました。
それでは今回はここまで。感想や誤字脱字の報告。そしてアドバイスなどお待ちしております。
……あ、後活動報告でちょっとした質問がありますので、ぜひそちらもよろしくお願いします。