FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~   作:えんとつそうじ

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どうも、最近新しくイグナイトのデッキを作ろうと画策しているえんとつそうじです。

動画見ている限りでは結構強そうですし、ヒーローデッキからブレイズマンがあぶれてしまったのでちょうどいいかなーと思いまして。

さて、今回のお話はシャルバが使う魔法の弱点。そして決着編です。暇つぶしにでもどうぞ。


第二十一話 光の弱点。そして決着。

 港街リオ。海賊シャルバとユーリの戦いはいまだ続いていた。

 

「炎魔の轟拳!!」

「がはッ!?」

 

 炎を纏った拳でシャルバはそのまま殴り飛ばされる。

 

 戦いが始まった当初はシャルバの魔法により、その戦闘経験の差もあり一方的にユーリが追い詰められていたのだが、ユーリが弱点を発見したという発言からそれは一転。逆に戦いはユーリが圧倒的有利に進めている。

 

「(なぜだ!なぜこんなことに!!)」

 

 吹き飛ばされた先でなんとか体勢を立て直したシャルバであったが、しかし彼は内心混乱していた。なぜ目の前にいるこの子供は、自分に攻撃を当てることができているのかと。

 彼は今まで最速の造形魔法である光の造形魔法と光の屈折を操り自身の位置情報を誤魔化す偏光魔法(トリックアート)。この2つの魔法を兼ね備えていた彼は海賊になってから誰にも負けることなく不敗を誇っており、そのためか自身の実力に絶対の自信を持っていた。

 今まで誰一人彼に傷一つつけることができなかったという事実が、彼に自らは無敵の魔導師であるという自負をその身に与えていたのだ。

 

 一見自信過剰にも見えるが、しかし彼がそのような自信を持つのも頷ける。光の造形魔法はともかくとして、トリックアートにより、彼に攻撃を当てることは誰にもできないはずなのだから。

 

 だからこそ、ユーリがシャルバの魔法には弱点があるといったとき、彼はそんなユーリの言葉を嘲笑った。彼には自分のその傲慢なまでの自信の根拠となっている魔法に、弱点など絶対にあるはずがないと考えていたからだ。――――だが、現実は違った。

 

 シャルバはユーリの拳の一撃を確実に避けたはずなのに、ユーリはそんなシャルバに自分の攻撃を当てて見せたのだから。

 

 初めはただの偶然だと思った。いや、シャルバは偶然だと思い込もうとしていたのだが、しかしそれからもユーリはシャルバに向かってその攻撃をどんどんと当てていき、自慢の魔法が破られた混乱が収まりきっていないということもあり、彼はこうしてユーリに追い詰められているというわけなのである。

 

「(くそ、くそお!!私が、私がこんな子供にここまで追い詰められるなどあってなるものか!!)シャインメイク”(タイガー)”!!」

 

 やぶれかぶれに光の虎を造形したシャルバは、そのままその虎にユーリを襲わせるが、ユーリは慌てず口からブレスの攻撃を放ち、その虎を吹き飛ばす。

 

「炎魔の激昂!!」

 

 ユーリの口から放たれた獄炎の炎は、シャルバが生み出した光の虎を吹き飛ばすと同時に、そのままシャルバへと襲いかかる。

 

「ぐ、ぐあああああああ!?!」

 

 体のあちこちから黒い煙を上げながらも吹き飛ばされるシャルバであったが、空中でなんとか体勢を立て直す。

 

「はあ…はあ…はあ…はあ……」

 

 息も絶え絶えになりながらもユーリを睨みつけるシャルバ。憤怒の表情になりながら怒りのままに叫び出す。

 

「なぜだ、なぜ貴様にはトリックアートが効かない!?貴様はいったい何をしたのだ!!」

 

 絶対の自信の源となっていた自身の魔法を破られ、凄まじいまでの激昂を見せるシャルバ。しかしそんなシャルバの怒りにもユーリは全く動揺を見せることなく、むしろ笑みすら浮かべて答える。

 

「別にそう難しいことじゃない。確かにあんたの実力は大したものだ。傲慢で油断もあるが、高い戦闘経験に、バランスのいい2つの強力な魔法。そこいらの魔導師なら、手も足も出ずにやられてしまうだろう」

 

 ただでさえ最速の造形魔法と名高い光の造形魔法は強力な魔法だ。それに加えてトリックアートという相手の視覚に直接訴えて自身の位置情報を誤魔化す能力。

 この二つの魔法を攻守バランスよく使いこなすことにより、シャルバは評議員会の軍隊すら殲滅してのけたのだ。これでシャルバの実力が低いなどというものなど、普通の魔導師ならばまずいないだろう。

 

「だが、そのトリックアート。確かに便利な魔法だろうがあんたは気づかなかった。――――相手の位置を探るには、別に視界のみを頼る必要はないということに」

 

 例えば匂い。例えば音。確かに普通に視界に頼るよりかは厳しい、または特殊な手段になる場合もあるが、しかし相手の位置情報を確認するには視覚以外にも手段は多数ある。

 

 そして、ユーリがシャルバの位置情報を探るのに使った手段は”熱”であった。

 

「火の魔導師は火を扱う関係上、熱を察知する感覚が自然と高くなる。特に俺の場合はそれがかなり強くてな?それであんたの体温を探って位置を捕えていたんだよ」

「ばかな、そんな手段で私の魔法が……?」

 

 ユーリの言葉に愕然とするシャルバ。

 

 しかしそれも仕方ない。確かに火の魔導師は熱の探知に対する感覚が鋭くなるが、しかしそれもそれほど高い物であることが殆ど。ましてや位置がお互い激しく移動する戦闘の最中で相手の体温を感知し瞬時に行動を起こすなど、並みの人間のできることではない。このことからユーリの高い戦闘センスが理解できる。

 

 そして、ユーリの言葉によって自身の魔法が完全に通じないことを理解したシャルバは、内心ひどく焦り始める。

 

「(まずいまずいまずい!こ、このままでは私の野望が!!)」

 

 確かに光の造形魔法は最速の造形魔法。しかし最速であると共に、質量が足りないために威力も他の造形魔法より低め。殆どの魔法が決め手に欠ける。

 

 だからこそ、シャルバは光の造形魔法と共に防御手段としてトリックアートを習得し、その2つを合わせることによって、評議委員会の軍隊すら全滅させることができるほどの実力を得ることができたのだ。

 

 しかし、その片方であるトリックアートを破られたことによりシャルバはその戦力を半減させてしまい、またユーリの実力は軽く見積もってもシャルバと同等以上の魔力量を察することができ、経験は少なそうではあるが戦闘センスは天才クラス。

 確かにシャルバの方が高い戦闘経験を誇りはするが、それで覆せないほどの差をシャルバはユーリに感じたからこそ、シャルバはここまで焦っているのだ。

 

「(なにか、なにか手段……ッ!!)」

 

 その時だった。シャルバとユーリ、2人の戦場にその声が聞こえてきたのは。

 

 

 

「ママー、ママどこー?」

「「ッ!?」」

 

 

 

 突如聞こえてきたその子供の声に、シャルバとユーリの2人は思わずそちらに振り向くと、そこにはおそらく非難し損ねたのだろう。瞳から大粒の涙を流しながらも母を探す幼子の姿があった。

 

 そしてその姿を視界に収めたシャルバは、ある逆転の一手を思いつき、にたりと歪んだ笑みを浮かべると、その子供に瞬時に走り寄る。

 

「ま……ッ!?」

 

 初めは突如戦場に登場した子供の姿に、驚きのあまり硬直してしまったユーリであったが、シャルバの目的がなんであるかを理解すると、子供に近づこうとするシャルバを妨害しようと動き出すが、しかしそれも間に合わず、シャルバは子供を捕まえると、その子供の喉元に光の剣を突き付ける。

 

「ひッ!?」

「動くな!!」

 

 そう、シャルバはその子供を人質にしてこの場を乗り越えようとしたのだ。

 

 確かにこのまま行けばシャルバは敗北する可能性が高い。ユーリはシャルバ自身にそう思わせるほどのポテンシャルをこの戦いで見せていた。

 

 しかし、シャルバにとって戦いの結果など正直どうでもいいのだ。確かに敗北は屈辱ではあるが、彼にとって重要なのは自分の復讐なのであって、例え敗北したとしても生きてさえいればいい。今度はさらに力をつけて勝利すればいいのだから。

 

 例え自身の身柄を確保するためにシャルバが追って来たとしても、子供が人質にした状態ならば相手も手を出しづらいであろうし、なによりその隙に逆襲も可能になるかもしれない。

 

「貴様……ッ!!」

「おっと、動くなよ。動けばこの子供の命はない!!」

「くッ!!」

 

 ユーリはもちろんそのシャルバの卑劣な真似に怒りを見せるが、しかしシャルバが子供を盾にしてしまっているがために、ユーリは動くことができずに、その悔しさで思わず歯噛みする。

 

 そんな彼の姿を見て、シャルバは思わず勝利の笑みを浮かべた。

 

「(よし、これでいい。後はこいつを人質にして船まで戻り、出港してからこのガキは海に捨てて魚の餌にでもすればいい。このガキへの報復はまた今度、力を貯めて確実に行えば問題ない!!)」

 

 だが、シャルバは気づかなかった。

 

 

 

 ――――自身の行動が、ユーリの持つ『逆鱗』に、完全に触れてしまったことに。

 

 ユーリはシャルバの言葉に、しばしそのまま俯いて沈黙を保っていたのだが、やがて感情を無理やり抑え込んだかのような抑揚のない声で言葉を紡ぐ。

 

「……なるほど。なら、仕方ないな」

 

 そういうと、ユーリはゆっくりとシャルバに向けて片手を向ける。手の形は所謂指鉄砲になっており、もしそれが本当の銃ならば、シャルバに銃口を向けている感じになるだろう。

 

 そんな彼の行動に、シャルバは訝しげに眉を潜める。もしかしたら魔法で何かするつもりなのかと考えたが、魔力の高まりは(・・・)全く感じられず、それ故に彼が何をしようとしているのかを理解できなかったからだ。

 

 だからこそ、シャルバは警戒しながらも何をしようとしているのかユーリに問い詰めようとした――――その時だった。

 

「がッ!?」

 

 突如肩口に衝撃と共に激しい痛みと熱を感じたシャルバは、思わずその痛みにより人質にとっていた子供を離してしまう。

 

「う、うわあああああ!!」

 

 解放された子供は、よほど怖かったのか解放された途端に泣き叫びながらもどこかへ去ってしまうが、突如感じた痛みにそれどころではなかったシャルバは、いったい何が起こったのかと痛みを感じた場所である自身の肩口へと視線を向ける。

 

「なッ!?これは!!」

 

 肩口の状態を見た彼は、思わず驚愕の声を上げる。なぜならそこには肉が大きく抉れ、血を吹き出している姿があったのだから。

 

「(なんだこれは!!いったいあいつは何をしたんだ!?)」

 

 シャルバが見ていた限り、ユーリが不審な行動をしていた様子はなかった。いや、不審な行動自体はあったが、魔力の高まりは一切感じられず、だからこそその行動で自身に何かを行ったとはシャルバは考えることはできず、もう何度ともしれない混乱に陥る。

 

 

 

 ――――そして、ユーリがそんなシャルバの隙を見逃すことはなかった。

 

「考え事とは余裕だな」

「なッ!?」

 

 シャルバが気づいた時には既に時遅し。ユーリはいつの間にかシャルバの懐に潜り込むと、シャルバをその場から打ち上げるように上空に蹴りあげる。

 

「ぐううッ!?」

 

 シャルバは咄嗟にガードすることによりなんとか致命傷を防ぐことはできるが、しかしユーリの蹴りがあまりに凄まじかったためにそのまま空高く打ち上げられ、蹴りの衝撃もあり全く身動きできない状況に陥ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――そして、この状況こそがユーリが狙った展開でもあった。

 

 ユーリは上空でどこか唖然とした表情をしているシャルバを冷たく睨みつけながらも、それとは真逆に魔力を極限までに高め、体に白く輝くまでに高められた煉獄の炎を身に纏う。

 

「まさか、呪法まで使うことになるとは思わなかったが、これで終わりだ」

 

 そしてユーリは自身の魔力の凄まじいほどの高まりに顔を蒼く染めているシャルバに向かって放つ。自身が今持ちうる最大の一撃を。

 

「くらいな、滅悪奥義――――“煉獄の王(メギド)”!!」

 

 メギド。

 

 それはこの世界のある神話に登場する、煉獄を司る、巨大な獣の姿をした魔界の王の一柱。

 

 奇しくもユーリと同じく獄炎を扱うことを得意とするその王の名を冠する奥義が、ユーリの言葉と共にシャルバに向かって放たれる。

 

「…ば……ばかな。こんなはずでは。……こんなはずではあああああああああああああああああああ!!?」

 

 リオの街の空に、巨大な炎の爆発が広がり、それに直撃してしまったシャルバは断末魔の叫びを上げる。

 

 

 

 ――――そして、海賊シャルバとユーリの戦いはユーリの勝利で決着が着くのであった。

 




ということでどうでしたでしょうか。ちなみにわかる人はわかると思いますが、このトリックアートという魔法はとある科学の電磁砲に出てくるとある人物の超能力を丸パクリしてものです。なぜか光といったらこれが思いついたものでww

それでは、感想や誤字脱字。それにアドバイスなどがありましたらどうかよろしくお願いします。

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