FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~   作:えんとつそうじ

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どうも、えんとつそうじです。連投します。


先ほど投稿した話の続きで、その途中のせいか今までよりすごく短いですが、きりがいいので、閑話として投稿します。

暇つぶしにでもお読みください。


閑話 悪意の胎動

 マグノリア大陸北東、港町リオ近くにあるとある海域に、一隻の船が停泊していた。

 

 

 骸骨旗(ジョリーロジャー)が掲げられている、その巨大なガレオン船の姿を見たものは、その表情を嫌悪と恐怖の表情に浮かべながら、こう称すだろう。

 

 

 

 

 

 

 ―――まるで、”海賊船”のようだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――い、以上があの時起こった出来事についての報告になります」

「……そうか」

 

 

 リオ近海に停泊していた海賊船。その一室に二人の男の姿があった。

 

 

 一人は、ユーリがルーシイを救出した際に、逃げ出した誘拐犯たちの最後の一人。その男は、しきりにあたりに視線を彷徨わせながら、目の前にいる、もう一人の男に、あることを報告していた。

 

 

 そして、その報告を受けている男は、目を瞑りながら、黙って男の報告を聞いていたが、男の報告が終わると、男は初めて目を開いて、誘拐犯の男に視線を向ける。

 

 

「それで、お前はその炎の魔導師とかいうガキにまんまとやられて、ルーシイ・ハートフィリアの誘拐に失敗し、まんまと逃げかえってきたというわけか?」

 

 

 冷たく、誘拐犯の男に対してそういい捨てる男。

 

 

 そう、誘拐犯の男がした報告とは、ルーシイの誘拐失敗に対する報告。その失敗と、それまでの経緯を、この男に報告していたのだ。

 

 

 なぜなら、この男こそが、ルーシイを誘拐しようと誘拐犯たちに命じた張本人だったからだ。

 

 

 誘拐犯の男は、自らのボスである男の様子を見て、誘拐を失敗してしまったことで苛立っていると感じ、言い訳をするために、慌てて言葉を続ける。

 

 

「で、ですがボス!あのガキ悪魔みたいに強くて……」

「言い訳はいい。―――お前は、もう用済みだ」

 

 

 そういうと、その男は、誘拐犯の男に向かって片手を向ける。

 

 

 誘拐犯の男は、その男が何をしようとしているのか悟ったのか、顔に恐怖の表情を浮かべると、急いで部屋から逃げ出そうとする。

 

 

「ひ、ひいい!?」

「無駄だ」

 

 

 自身に背を向け、逃げ出す誘拐犯の男に、その男はそれにかまわず片手を差し出しながら何事か呟くと、男の手から光の槍(・・・)が出現し、誘拐犯の男を貫いた。

 

 

「が……は……?」

 

 

 口から血を吹き出しながら、呻き声をあげながら、その場で倒れ伏す誘拐犯の男。

 

 

 そんな、誘拐犯の男の死体を、しかしその男は、冷たく見据えると、先ほどから自分が座っていた椅子に、さらに深く座り込み、机の上にある鈴を一つ鳴らす。

 

 

 すると、その少し後、男の部屋にバンダナを頭に巻いた一人の男が訪れた。

 

 

「よびましたか、船長」

「ああ。そこのゴミをかたずけておけ」

「はい、わかりました」

 

 

 男の命令に従い、バンダナの男は今や物言わぬ死体となった誘拐犯の男のを背負いあげると、部屋を後にする。

 

 

 それを確認した男は、頬づえをつきながら、一つ深々とため息をつく。

 

 

「(ちッ!まさか、この程度の任務も失敗するとはな。せっかく、ハートフィリア財閥総帥の妻と娘が、あの街に訪れるという情報を手に入れたのに、あの役立たずが。―――これでは、娘の身柄と引き換えにハートフィリア財閥の金を手に入れ、それをあの国を手中に収める計画が……)」

 

 

 そう、実はこの男は、元々とある国の名門貴族の息子だったのだが、その生来の強い欲望により王の座を狙い、それが失敗してこうして一海賊船の船長にまでその身を墜としてしまったのだ。

 

 

 だが海賊になった今でも王の座を諦めきれず、だからこそこの男は自身を国から追い出した連中に復習をしあの国を手中におさめることを計画し、そのためにこの男には大量の金が必要なのだったのだ。

 

 

「(……こうなったら、直接私が出向くしかないか。その子供は奇妙な炎の魔法を使うらしいが、俺に勝てるわけがないしな)」

 

 

 一見、傲慢な男の言葉だったが、しかしこの男は、貴族時代にはその天才的な魔法のセンスで、将来を嘱望された男。あながち、いいすぎとも言い切れない。

 

 

 そして男は、おそらくこれからの仕事で自分の前に立ちはだかるであろう、先ほど自分が始末した男がいっていた、炎の魔法を使うという子供の話を思い返す。

 

 

「(炎を食らう炎の魔導師。まさかとは思うが、昔聞いた古の魔法(エンシェント・マジック)の使い手か?だとしたら……)」

 

 

 そして、そこで男はにやりと嗤う。

 

 

 それは、闇に墜ちた者だけにしかできない、禍々しい悪魔の笑みだった。

 

 

「―――そいつしだいでは、私の手駒にするのもいいかもしれないなあ」




どうでしたでしょうか。


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