FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~   作:えんとつそうじ

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どうも、えんとつそうじです。


今日は、久しぶりに一日休みとなったので、せっかくだからと急いで話を作り上げて投稿しました。


急ピッチでやったので、いろいろ問題があると思いますが、そこらへんはどうかご容赦を。


それでは、暇つぶしにでもお楽しみください。


第十六話 VS誘拐犯。唸れ、怒りの炎!!

 ユーリは激怒していた。

 

 

 街中で出会った、ハートフィリア家のメイド、スペットから、ルーシイの特徴を聞いたユーリは、町中を探し回っている途中、通りすがりの人物から、最近倉庫街の使われなくなったはずの倉庫に、怪しい人が出入りしているという話を聞いて、ここまでやってきた。

 

 

 そして、目撃証言通りに人相の悪い男たちが、倉庫を占拠しているのを確認した俺は、狩りで培った隠密術を駆使し、こっそり忍び込み、そこで、聞いた特徴どおりの少女が捕まったいることを確認し、この男たちが誘拐犯だと判断したのだ。

 

 

 それを確認したユーリは、誘拐したということは、しばらくの間、ルーシイに危害を加えないだろうと、一旦脱出し、街の警備兵を呼んでこようと考えたのだが、その時ちょうど先ほどの男がルーシイを襲おうとしたことに気づき、急いで彼女を助けるために、こうして飛び出したのだ。

 

 

 そして、思いがけず、誘拐犯たちと単独で対峙することとなったユーリであったが、しかし、今彼を支配しているのは、突然の事態に対する困惑や焦りではなく、ただ一つ。怒りの感情、それだけだった。

 

 

「(こいつら、まだこんな年端もいかない子供を襲って……ッ!それだけじゃねえ、他の奴らもそれを見て、おもしろそうに笑ってやがった。こいつらは、妹を襲ったあいつら(・・・)と同類の連中。ならば、絶対に許すわけにはいかねえ!!)」

 

 

 そう、それこそが、彼が怒りの感情に支配されている理由。彼は男に襲われていたルーシイの姿を、前世の妹に重ねていたのだ。

 

 

 それは、前世で妹が中学生の時に起こった事件。

 

 

 妹は、その類稀なる容姿から、地元の不良集団に浚われ、暴行を受けかけたことがあったのだ。

 

 

 幸い、その時は、その現場を偶然見かけた人が警察に連絡してくれたので、なんとか間に合うことができたのだが、それ以来、彼は妹の危機に駆けつけられなかったことを悔い、それ以来、女性。しかも子供に乱暴を働く人間を見ると、彼は怒りを抱き、真っ先にその被害者たちを助けに行くようになっていた。

 

 

 そんな彼の怒りの眼差しを、正面から受けた誘拐犯たちは、初めは硬直していたが、相手がまだ年端もいかない若造だと知ると、未だ体を引き攣らせながらも笑いだす。

 こんなのただの子供じゃないか。先ほどの威圧感(プレッシャー)は気のせいだった。……いや、気のせいだと、無理やり自らに思いこませようとするかのように。

 

 

「は、ははははは。何が、炎の魔導師だ。ただのガキのくせに」

「そうだぜ!」

「正義の味方気取りか?いきがりやがって!!」

 

 

 口ぐちに罵声を上げる誘拐犯たちだったが、それを浴びせられている当の本人であるユーリは、そんな彼らの言葉などどこ吹く風と、ソッポを向いて、明らかに聞いていないとでもいうように、耳の穴をほじっていたが、やがて、男たちの言葉が尻すぼみに少なくなっていき、とうとう何も聞こえなくなると、今やっと気づいたとでもいうように、男たちの方に、つまらなそうに視線を戻す。

 

 

「……で?それで終わりか?」

「なんだと!?」

「ぎゃーぎゃー。ぎゃーぎゃー、一々うるせえんだよ、これといって特徴もないコンパチづらが。どーせ、何いっても変わらないんだろ?―――なら、さっさとかかってこいよ」

 

 

 そして、ユーリは挑発なのだろう、片手を誘拐犯たちの方へと向けて、くいくいと手元に引き寄せる仕草を見せた。

 

 

 そして、それで誘拐犯たちは我慢の限界に来たのだろう。各々凄まじい形相で、ユーリに襲いかかった。

 

 

「上等だ!!」

「何が炎の魔導師だ」

「魔法を使えるのはお前だけじゃねえんだぜ、このクソガキいいいいいい!!」

 

 

 その言葉と共に、誘拐犯たちの幾人かが、片手をユーリに向けて掲げると、そこから炎の玉が出てきて、ユーリへと直撃する。

 

 

「くきゃきゃきゃきゃきゃ!!」

「いいざまだなあ、ガキ」

「大人を舐めるから、そう……な……?」

 

 

 ユーリがやられたと思い、誘拐犯たちは喜びの声を上げようとするが、炎で発生した煙が晴れた先に見た光景に、その声を驚きで止める。

 

 

 それはなぜか。魔法の炎で焼き尽くしたはずのユーリが全くの無傷。いや、それどころか、彼を傷つけるつもりで放った炎を、ユーリが食べていた(・・・)からだ。

 

 

 そう、これこそが、スレイヤー系魔法の特性。適正属性の魔法を無効化し、その魔法を吸収し、自分の力とするのだ。

 

 

 ユーリは、誘拐犯たちの炎の魔法を全て吸収すると、その場で口を拭う。

 

 

「ふん、やっぱり下種の炎だな。不味くて不味くて仕方ねえ」

 

 

 誘拐犯たちを、汚物を見るような目で見ながら、そう、吐き捨てるユーリであったが、誘拐犯たちは、そんな彼の挑発的行動にも、今度は何も反応を返すことができない。

 それほど、彼らにとって、今の彼の行為は衝撃的だったのだ。

 

 

「それじゃあ、今度は俺からいくぞ」

 

 

 そういうと、ユーリは頬を膨らませながら、その首を一旦振りかぶると、誘拐犯たちに向かって、大量の紅炎を吹き出した。

 

 

「”炎魔の激昂”!!」

 

 

 ユーリの口から放たれた、獄炎の息吹(ブレス)。そのあまりに凄まじい威力により、誘拐犯たちは纏めて吹き飛ばされる。

 

 

「なあッ!?」

「ぎゃあああ!!」

 

 

 だが、ユーリも、未だ悪滅魔法を会得して、日が浅い。

 制御が甘いためか、誘拐犯たちの内の何人かが、炎から逃れ、武器を持って、ユーリへと襲いかかる。

 

 

「魔導師なら!!」

「懐に潜り込まれたら、どうしようもねえだろ!」

「くらいなあ!!」

 

 

 ユーリへと襲いかかる、誘拐犯たちの魔の手。

 

 

 だが、ユーリも、それを予想していたのか、片手に炎の剣を出現させると、誘拐犯たちが持っていた全ての武器を切り払う。

 

 

「なッ!?」

「これはッ!」

 

 

 驚愕の声を上げる誘拐犯たちの滑稽な姿に、ユーリは僅かに口の端を歪ませる。

 

 

「”炎魔剣”。獄炎の刃は、てめえら程度の安物の武器程度じゃ、耐えられないだろ?」

 

 

 そして、ユーリはその言葉と共に、誘拐犯たちに向かって、炎を纏った脚で、後ろ蹴りを放った。

 

 

「これで、最後だ。―――”炎魔の大斧”!!」

 

 

 炎魔の大斧。それは、彼が生前、そして現在も最も得意な空手の技である、後ろ回し蹴り。それに獄炎を纏わせて放つ技で、彼の脚から放たれた炎の衝撃波は、残りの誘拐犯たちを纏めて吹き飛ばす。

 

 

「うあああああああ!?」

「ぎゃあああああ!!」

「ぐあああああ!!!」

 

 

 そして、黒い煙をぷすぷすと立てながら、誘拐犯たちは、その場で倒れ伏す。

 

 

 それを確認した、ユーリは、最後に残った、誘拐犯の男を睨みつける。

 

 

「………で?まだやるか?」

「ひ、ひいいいいいいい!?!」

 

 

 ユーリの人睨みにより、男は悲鳴を上げながら、ユーリの魔法で半壊した倉庫から、逃げ出して行った。

 

 

 それを確認してから、ユーリはホッと息を吐き出す。

 

 

「(やれやれ。どうやら、無事に助け出せたようだな)」

 

 

 ―――そして、ユーリの炎の悪滅魔導師としてのデビュー戦は、こうして終わりを告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「(すごい……)」

 

 

 ルーシイ・ハートフィリアは、目の前の光景に感動していた。

 

 

 自分のピンチに、颯爽と現れて、助けてくれた黒髪の少年。その少年が放つ魔法は、自分ならば絶対に太刀打ちできない悪者たちを、あっという間に倒していく。

 

 

 ルーシイは、まるでヒーローのような、そんな彼の姿に、憧れを覚えた。

 

 

 魔法を使い、勇敢に悪者と戦う、彼の姿に。

 

 

「(……いつか、きっと私も彼みたいに)」

 

 

 これが、ルーシイ・ハートフィリアが、魔導師を志すきっかけとなったのだった。




どうでしたでしょうか。あいかわらず短くて申し訳ありませんが、お楽しみいただけたなら幸いです。


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