FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~ 作:えんとつそうじ
今日は、久しぶりに一日休みとなったので、せっかくだからと急いで話を作り上げて投稿しました。
急ピッチでやったので、いろいろ問題があると思いますが、そこらへんはどうかご容赦を。
それでは、暇つぶしにでもお楽しみください。
ユーリは激怒していた。
街中で出会った、ハートフィリア家のメイド、スペットから、ルーシイの特徴を聞いたユーリは、町中を探し回っている途中、通りすがりの人物から、最近倉庫街の使われなくなったはずの倉庫に、怪しい人が出入りしているという話を聞いて、ここまでやってきた。
そして、目撃証言通りに人相の悪い男たちが、倉庫を占拠しているのを確認した俺は、狩りで培った隠密術を駆使し、こっそり忍び込み、そこで、聞いた特徴どおりの少女が捕まったいることを確認し、この男たちが誘拐犯だと判断したのだ。
それを確認したユーリは、誘拐したということは、しばらくの間、ルーシイに危害を加えないだろうと、一旦脱出し、街の警備兵を呼んでこようと考えたのだが、その時ちょうど先ほどの男がルーシイを襲おうとしたことに気づき、急いで彼女を助けるために、こうして飛び出したのだ。
そして、思いがけず、誘拐犯たちと単独で対峙することとなったユーリであったが、しかし、今彼を支配しているのは、突然の事態に対する困惑や焦りではなく、ただ一つ。怒りの感情、それだけだった。
「(こいつら、まだこんな年端もいかない子供を襲って……ッ!それだけじゃねえ、他の奴らもそれを見て、おもしろそうに笑ってやがった。こいつらは、妹を襲った
そう、それこそが、彼が怒りの感情に支配されている理由。彼は男に襲われていたルーシイの姿を、前世の妹に重ねていたのだ。
それは、前世で妹が中学生の時に起こった事件。
妹は、その類稀なる容姿から、地元の不良集団に浚われ、暴行を受けかけたことがあったのだ。
幸い、その時は、その現場を偶然見かけた人が警察に連絡してくれたので、なんとか間に合うことができたのだが、それ以来、彼は妹の危機に駆けつけられなかったことを悔い、それ以来、女性。しかも子供に乱暴を働く人間を見ると、彼は怒りを抱き、真っ先にその被害者たちを助けに行くようになっていた。
そんな彼の怒りの眼差しを、正面から受けた誘拐犯たちは、初めは硬直していたが、相手がまだ年端もいかない若造だと知ると、未だ体を引き攣らせながらも笑いだす。
こんなのただの子供じゃないか。先ほどの
「は、ははははは。何が、炎の魔導師だ。ただのガキのくせに」
「そうだぜ!」
「正義の味方気取りか?いきがりやがって!!」
口ぐちに罵声を上げる誘拐犯たちだったが、それを浴びせられている当の本人であるユーリは、そんな彼らの言葉などどこ吹く風と、ソッポを向いて、明らかに聞いていないとでもいうように、耳の穴をほじっていたが、やがて、男たちの言葉が尻すぼみに少なくなっていき、とうとう何も聞こえなくなると、今やっと気づいたとでもいうように、男たちの方に、つまらなそうに視線を戻す。
「……で?それで終わりか?」
「なんだと!?」
「ぎゃーぎゃー。ぎゃーぎゃー、一々うるせえんだよ、これといって特徴もないコンパチづらが。どーせ、何いっても変わらないんだろ?―――なら、さっさとかかってこいよ」
そして、ユーリは挑発なのだろう、片手を誘拐犯たちの方へと向けて、くいくいと手元に引き寄せる仕草を見せた。
そして、それで誘拐犯たちは我慢の限界に来たのだろう。各々凄まじい形相で、ユーリに襲いかかった。
「上等だ!!」
「何が炎の魔導師だ」
「魔法を使えるのはお前だけじゃねえんだぜ、このクソガキいいいいいい!!」
その言葉と共に、誘拐犯たちの幾人かが、片手をユーリに向けて掲げると、そこから炎の玉が出てきて、ユーリへと直撃する。
「くきゃきゃきゃきゃきゃ!!」
「いいざまだなあ、ガキ」
「大人を舐めるから、そう……な……?」
ユーリがやられたと思い、誘拐犯たちは喜びの声を上げようとするが、炎で発生した煙が晴れた先に見た光景に、その声を驚きで止める。
それはなぜか。魔法の炎で焼き尽くしたはずのユーリが全くの無傷。いや、それどころか、彼を傷つけるつもりで放った炎を、ユーリが
そう、これこそが、スレイヤー系魔法の特性。適正属性の魔法を無効化し、その魔法を吸収し、自分の力とするのだ。
ユーリは、誘拐犯たちの炎の魔法を全て吸収すると、その場で口を拭う。
「ふん、やっぱり下種の炎だな。不味くて不味くて仕方ねえ」
誘拐犯たちを、汚物を見るような目で見ながら、そう、吐き捨てるユーリであったが、誘拐犯たちは、そんな彼の挑発的行動にも、今度は何も反応を返すことができない。
それほど、彼らにとって、今の彼の行為は衝撃的だったのだ。
「それじゃあ、今度は俺からいくぞ」
そういうと、ユーリは頬を膨らませながら、その首を一旦振りかぶると、誘拐犯たちに向かって、大量の紅炎を吹き出した。
「”炎魔の激昂”!!」
ユーリの口から放たれた、獄炎の
「なあッ!?」
「ぎゃあああ!!」
だが、ユーリも、未だ悪滅魔法を会得して、日が浅い。
制御が甘いためか、誘拐犯たちの内の何人かが、炎から逃れ、武器を持って、ユーリへと襲いかかる。
「魔導師なら!!」
「懐に潜り込まれたら、どうしようもねえだろ!」
「くらいなあ!!」
ユーリへと襲いかかる、誘拐犯たちの魔の手。
だが、ユーリも、それを予想していたのか、片手に炎の剣を出現させると、誘拐犯たちが持っていた全ての武器を切り払う。
「なッ!?」
「これはッ!」
驚愕の声を上げる誘拐犯たちの滑稽な姿に、ユーリは僅かに口の端を歪ませる。
「”炎魔剣”。獄炎の刃は、てめえら程度の安物の武器程度じゃ、耐えられないだろ?」
そして、ユーリはその言葉と共に、誘拐犯たちに向かって、炎を纏った脚で、後ろ蹴りを放った。
「これで、最後だ。―――”炎魔の大斧”!!」
炎魔の大斧。それは、彼が生前、そして現在も最も得意な空手の技である、後ろ回し蹴り。それに獄炎を纏わせて放つ技で、彼の脚から放たれた炎の衝撃波は、残りの誘拐犯たちを纏めて吹き飛ばす。
「うあああああああ!?」
「ぎゃあああああ!!」
「ぐあああああ!!!」
そして、黒い煙をぷすぷすと立てながら、誘拐犯たちは、その場で倒れ伏す。
それを確認した、ユーリは、最後に残った、誘拐犯の男を睨みつける。
「………で?まだやるか?」
「ひ、ひいいいいいいい!?!」
ユーリの人睨みにより、男は悲鳴を上げながら、ユーリの魔法で半壊した倉庫から、逃げ出して行った。
それを確認してから、ユーリはホッと息を吐き出す。
「(やれやれ。どうやら、無事に助け出せたようだな)」
―――そして、ユーリの炎の悪滅魔導師としてのデビュー戦は、こうして終わりを告げるのだった。
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「(すごい……)」
ルーシイ・ハートフィリアは、目の前の光景に感動していた。
自分のピンチに、颯爽と現れて、助けてくれた黒髪の少年。その少年が放つ魔法は、自分ならば絶対に太刀打ちできない悪者たちを、あっという間に倒していく。
ルーシイは、まるでヒーローのような、そんな彼の姿に、憧れを覚えた。
魔法を使い、勇敢に悪者と戦う、彼の姿に。
「(……いつか、きっと私も彼みたいに)」
これが、ルーシイ・ハートフィリアが、魔導師を志すきっかけとなったのだった。
どうでしたでしょうか。あいかわらず短くて申し訳ありませんが、お楽しみいただけたなら幸いです。