FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~   作:えんとつそうじ

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今回は閑話。ウルティア視点の話になります。


中身は殆ど変えていませんので、前作を読んでくださった方には退屈かもしれませんが、それでもよろしければ、暇つぶしにでもお読みください。


閑話 ウルティア・ミルコビッチの驚愕

 ジェラールがユーリを気絶させて決着がついた彼らの決闘。そんな彼らの結末を見て安堵の表情を浮かべる少女がいた。

 

 

「ふー、これでなんとか予定通りね……」

 

 

 彼女の名前はウルティア・ミルコビッチ。闇ギルド「悪魔の心臓(グリモアハート)」の一員である若き魔導師だ。

 

 

 幼いころ母と別れて違法な魔法研究所に入れられた彼女は、母を恨み続けていたが、それと同時に母を憎んでいなかったころの自分に戻りたいとも願っており、その願いを聞き届けたグリモアハートのギルドマスター、マスターハデスに勧誘されたためにグリモアハートに入り、自らの望みを叶えるために日々ギルドの一員としてこうして活動しているというわけだ。

 

 

 そしてそんな彼女がこの楽園の塔にいるのも、いつもの様にギルドの一員としての仕事のためだった。

 

 

 その仕事の内容とは、「評議会の目を誤魔化すための生贄を用意せよ」というもの。

 

 

 彼らグリモアハートはゼレフを手に入れ大魔法世界を復活させるために日々活動しているのだが、グリモアハートは魔法評議会に最も危険なギルドの一つとしてその行動をマークされている。

 

 

 なので近年ゼレフが死んでいるのではなくただ眠っているだけで、その眠りを解くには”カギ”が必要だというころを知ることに成功した彼らは、これから計画が佳境に入るにあたって邪魔が入らないように評議会の注意を自分たちからそらすための身代わり(スケープゴート)を必要としたのだ。

 

 

 そして選ばれたのが彼、ジェラール・フェルナンデスだった。

 

 

 その不遇な環境からなる世界を憎む心、そして子供ながらに発露しつつあった強靭な魔力は評議委員会の目線をグリモアハート(じぶんたち)から逸らすのにもってこいの逸材だとウルティアは感じたからだ。

 

 

 そしてウルティアは神官たちの拷問により精神が弱っているところにゼレフのふりをして、ジェラールを洗脳したのだ。

 

 

 ジェラールはウルティアの目論見どおり、元々の正義感あふれる性格が嘘のように残酷な性格となりその場にいた神官たちを皆殺しに。それを止めようとした仲間であるはずのエルザにも容赦ない攻撃を加えていたことからウルティアは事が完全に成ったことを確信したのだが、そこで予想外の自体に遭遇した。ユーリ・クレナイの介入だ。

 

 

 ジェラールからエルザを救出したユーリはそのままジェラールと戦闘に入ったが、そこまではよかった。魔法に目覚めたジェラールに、彼が勝てるとは思っていなかったからだ。

 

 

 しかし予想に反してユーリはジェラールを圧倒。あわや勝利するところに慌ててウルティアが介入。彼女の得意とする「時のアーク」により、なんとかジェラールに勝たせることができたのである。

 

 

 ウルティアが先ほどまでユーリとジェラールが戦っていた場所に視線を向けると、そこにはジェラールが気絶したユーリとエルザの二人をどこかに運んでいる姿が見えた。おそらく、そのまま海にでも放り出す気だろう。

 

 

「(彼らを直接仲間に誘ったところからみるに彼らはジェラールにとって特別な存在だったみたいだしね)」

 

 

 洗脳で性格が変わってもそれだけは変わっていなかったのだろう。残虐なことも平気でできるようになったはずなのに、彼らを殺して口封じをしないことからもそれがわかる。

 

 

 本来なら念には念を入れて彼らの命をここで奪い取るのが闇ギルド、グリモアハートの一員として彼女がするべき行動なのだが、彼女はそうしなかった。

 

 

 それはただの気紛れだったのかもしれない。幼いころの自分に重ねたがゆえの同情だったのかもしれない。

 

 

 まあジェラールを洗脳したのはあくまで評議委員の目を逸らすための時間稼ぎであるために、仮に彼らがジェラールの計画を邪魔しようとしても、彼らでは自分たちの計画を阻めることではないという絶対の自信と確信があったからだ。

 

 

 だがそんな彼女にはある一つの懸念があった。ユーリがジェラールの魔力弾をかき消すために使ったあの紅のオーラについてだ。

 

 

「(―――波動の魔法?いやでもあれは才能あるものがそれなりの鍛錬を積んで初めて使える魔法のはず。魔法に覚醒したばかりの初心者が使えるはずがない……)」

 

 

 だがそこでウルティアは思考をやめる。いくら魔力を扱えるからといってもただの子供にここまで警戒するのが馬鹿らしく思ったからだ。

 

 

「(仮に彼らがジェラール並の才能を持っていたとしても、マスターハデスには勝てるとは思えないしね)」

 

 

 そしてウルティアは踵を返すと再び闇の道を歩き出す。

 

 

「―――全ては大魔法世界のために」

 

 

 

 

 

 

 ―――後に、グリモアハートの最高幹部にまで上り詰めた彼女は、後悔することになる。ここで彼らの息の根をとめておけばよかったと。




これで、楽園の塔編は終了となります。次回はある程度書き溜めてからにしたいと思いますので、しばらくの間、またお待たせすることになると思いますが、どうかよろしくお願いします。他の更新もありますしね。


それでは、今回も感想や誤字脱字の報告。アドバイスなどがありましたら、是非よろしくお願いします。

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