凛と凛   作:イオリス

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今回は、凛ちゃんと花陽ちゃんが、学校をサボるお話です。

そして、やっと真姫ちゃんが出てきます。

μ'sのキャラクターが、学校をサボるお話って、今までになかったかも。


第6話 サボタージュ

凛が悪夢を見た翌朝。

 

「凛、早くしなさい」

 

「ふぁーい…」

 

凛が母親にせかされて高校に行く準備をする。

昨日の悪夢のせいで、凛は眠れなかったのだ。

 

凛が遅刻ギリギリで出た頃、花陽も同様のタイミングで出てきた。

 

「凛ちゃん……」

 

「かよちん……」

 

 

二人ともお互いがどのような状況かは察することができた。

 

(かよちんも、悪夢にうなされてたんだね)

 

花陽も凛と同様に生気が抜けた状況だった。

 

「行こうか……」

 

「うん……」

凛と花陽が学校に向かうが

 

「かよちん……」

 

「なあに、凛ちゃん?」

 

凛も花陽も話し方に生気が感じられない。

 

「このまま学校に行く?」

 

「他にどこに行くの?」

 

「公園とかどうかな……、制服の上着を隠せばわからないにゃ」

 

凛からサボりのお誘いがかかる。

 

「そうしようか……」

 

いつもの花陽なら、慌てて断るところだ。

しかし、今は花陽も寝不足などで判断力が低下している。

 

結局、二人は学校をサボって公園のベンチに行くことにした。

 

 

一方、学校では

 

「あれ、星空さんと小泉さんがいないね」

 

1年生の担任がホームルームで2人が来ていないことを確認した。

 

(何やってんのよ、あの2人)

 

クラスメートにして、2人と同じ部活動をしている西木野真姫が心配していた。

 

一時間目終了後、真姫が凛と花陽のスマートフォンに電話をかけ

 

「2人とも出ない。イミワカンナイ!」

 

真姫は電話を切り、次の授業に臨んだ。

 

 

その頃、公園では

 

「「ZZZZZZZ」」

 

昨晩の寝不足を補うように2人ともうたた寝をしていた。

学校では、2時間目の後の3時間目・4時間目は音楽の授業のため、音楽室に移動。

結局、真姫は昼まで確認の電話はしなかった。

 

 

公園では、ようやく花陽が目を覚ました。

 

「……うん……。いつの間にか寝ちゃった……。時間は……10時45分か……。」

 

学校では3時間目が始まったくらいだ。

 

「ZZZZZ」

 

凛は絶賛爆睡中だ。秋の始めの柔らかな日差しが心地よいようだ。

 

(学校をサボったのは、産まれて初めてだな)

 

花陽は、寝起きのもうろうとした感覚にふけっていた。

 

「凛ちゃん、昨日は酷い夢を見たんだろうな」

花陽は、こういう凛を何回か見たことがある。だから、わかるのだ。

 

「……ちゃん、……い、女の子ら……と思わないから、許……」

 

凛の寝言だった。

 

(夢の中でも女の子らしさを否定されているの!?)

 

花陽は悲しくなった。

 

花陽が起こせないまま、凛が目を覚ました時は、すでに11時半だった。

 

 

「あーあ、よく寝た♪……どうしたの、かよちん?」

 

目を覚ました凛が花陽の表情を見て、怪訝に思う。

 

「な、何でもないよ。それより、お昼にしない?」

 

花陽は以前凛に指摘された、嘘つく時に手を合わせるクセが出た。

 

 

 

「そうだね、着替えて秋葉原にでも行こうよ」

 

しかし、寝起きで判断力の低下した凛は、それにうまくごまかされてしまう。

 

 

二人はトイレで練習着に着替えてから秋葉原に行くと、そのまま空いているテーブルでお弁当を食べた。

 

 

「午後どうしようか?」

 

「どうせだから、秋葉原で遊ばない?まさか、スクールアイドルがこの時間に遊んでいるなんて思わないにゃ」

 

「……そうしよう」

 

凛の提案に花陽は乗ってしまった。 その頃、学校では4校時が終わり、昼休み時間に入った。

真姫は、再びスマートフォンで凛に電話をかける。

今度は電話に出た。

 

「あ、真姫ちゃん?」

 

「真姫ちゃんジャナイワヨ!あなた今どこにいるのよ」

 

「今、秋葉原だよ」

 

真姫の詰問に、凛は悪びれずに答える。

 

「ヴェェェェ。何でそんなところにいるのよ」

 

「公園のベンチで休んだ後、遊びに行こうかな、と言うことで。エヘヘヘ」

 

この凛の声を聞いたのが男なら、完全に毒気も抜かれるだろう。

 

 

「ハァー……、それで花陽はいるの?」

 

「かよちんもいるよ、変わろうか?」

 

「お願いするわ」

 

真姫は、二度目のため息をついた。

 

「かよちん、真姫ちゃんからだよ」

 

凛は花陽にスマートフォンを渡した。

 

 

「ま、真姫ちゃんゴメンね。心配かけて」

 

花陽は変わった途端、真姫に謝罪した。

 

「謝るくらいなら、こういうことはしないでほしいわね。」

 

「うん……」

 

「今日は部活で会議なんだけど……、来られるの?」

 

「今日は……無理かな……」

 

花陽が苦笑いしながら返事をする。

 

「休む理由はどう説明すればいいの?」

 

「うん……、正直に言ってくれていいよ……」

 

「こんなこと、今日で終わりにしなさいよ」

 

真姫は、花陽が「うん」と言うのを聞き、電話を切った。

 

 

真姫からの電話を終え、花陽が凛に内容を伝えると

 

 

「それじゃ、お許しも出たし、今日は遊ぶにゃ」

 

凛に、反省の色はなかった。

 

「きょ、今日だけだよ!」

 

花陽は凛に釘を刺した。

 

 

2人は秋葉原を歩くことにした。

 

「あ、○マ屋だ」

 

秋葉原には、○ーマーズの本店や、△ニメイト、◇らのあな、などのアニメに関する店がたくさん並ぶ。

 

「アニメ好きのアイドルが今ここを通ったら、面白いことになるにゃー♪」

 

凛は花陽を見ながら言う。

 

「アニメが好きそうなアイドルはいるけど……、そんな都合よくは……」

 

ゴン

 

「きゃ」

 

誰かが花陽がぶつかって、転倒する。

 

 

(黄緑色の髪とオレンジ色の髪のショートヘアーの娘!?)

 

「ゴ、ゴメン」

 

ぶつかった側の人物は走りながら謝っていく。顔と声からしてそう年はとっていない女性と判断される。

 

 

「かよちん、大丈夫。……そこ、待てー」

 

凛は先ほどぶつかった女の後を追いかける。

 

「くっ」

 

女はスピードをあげた。

「逃げるにゃー」

 

「『逃げるな』と言われて、逃げない奴はいないよ」

 

女と凛の追いかけっこだったが

 

 

「わっ」

 

「捕まえた♪」

 

凛の足の速さにはかなわず、女は捕まった。

 

「は、離せ!」

 

「往生際が悪い!ちゃんとかよちんに謝罪して」

 

凛が暴れる女を押さえつける。

 

「わ、わかった!せめて路地裏に行こう、な」

 

そうして、路地裏に行く2人。

 

 

しばらくすると

 

「……はぁ、…はぁ、…。凛ちゃん……、あっ」

 

凛が顔を半分だして手を振っている、のを見つけた花陽はそちらにむかう。

 

 

 

「私が悪うございました!」

 

路地裏で半ばヤケクソ気味に礼をして謝る女。

 

「あれ?」

 

「どうしたの、かよちん?」

 

「あ、あの……、もしかして、……あなたは神谷……奈緒さん……ですか?」

 

花陽が言葉にした神谷奈緒は、もちろん今をときめく人気アイドルの一人だ。

 

「……ち、ち、違う!」

 

「なんか、怪しいにゃー」

 

否定した女に対して、ジト目で見る凛。

 

「な、何だよ!その目は」

凛のジト目に驚く女。

 

「その顔立ち、身長などの体型、反応。アニメ好きと思われる行動から神谷奈緒さんだと思ったのですが……」

 

アイドルオタクの花陽だけあって、特徴から神谷奈緒と判断したようだ。

 

(おかしいな、アタシの変装は完璧だったとプロデューサーからお墨付きをいただいたはずなのに……)

 

女の正体は、花陽が指摘した通り、神谷奈緒だった。

 

「ヒ、ヒトチガイジャナイカ。ヨクイワレンダ、ソノヒトニニテルッテ」

 

奈緒は棒読みで否定する。

 

「顔立ちや背格好はまだしも、趣味まで一致しているなんて、できすぎだにゃ」

凛はジト目で見続ける。

 

 

「べ、別にアタシは……」

 

「興味がないなら、何で○マ屋の辺りを歩いていたにゃ」

 

「うっ」

 

「それに、かよちんにぶつかった後のあの反応。明らかにおかしかったよ。ぶつかる前は急いでいるような足音がしなかったのに」

 

星空凛とは思えないほどの推理力だ。運動に関する知識や経験を洞察力に変えていたのだ。

 

 

「確かに、急いでいたのなら足音は大きくなるね。接近していたのなら余計に」

 

花陽が凛の説明に納得する。

「……」

 

(おい、凛。話が違うじゃないか!)

 

奈緒は、この2人についての情報を渋谷凛から聞いていた。だから、騒ぎにならないように逃げたのだ。

 

ちなみに、奈緒が得ていたオレンジ色のショートヘアーの少女……、つまり星空凛は頭がよろしくないと言う内容だった。

 

まあ、○×生花店での凛の行動(第1話)を見れば、頭が良いとは思わないだろう。

 

「さて、そこの不審人物さん?あなたの行動をどう説明するの?」

 

凛が奈緒を不審人物呼ばわりする。

 

「凛ちゃん……言い過ぎだよ……。でも、私達を見て逃げ出したのは、怪しまれてもしょうがないですよね」

 

「わかったよ、アタシの負けだ。アタシはアンタ達の言う通り、神谷奈緒だよ」

 

奈緒は観念し、正体を明かす。

 

「やっぱり、本物だったんだ……」

 

花陽は、目の前に人気アイドルがいると知って、目を輝かせる。

 

「なるほど、……あと、何で凛達を見て逃げ出したの?」

 

凛は、奈緒への追及の手を緩めなかった。

 

「それはな……、……渋谷凛からアンタ達の話を聞いたからだよ」

 

奈緒は誤解を招かないように、渋谷凛をフルネームで呼んだ。

 

「確か、神谷さんも、渋谷さんと同じトライアドプリムスの一員でしたね。」

 

アイドルオタクの花陽が口をはさまない訳はなかった。

 

「やっぱり、緑髪のアンタは詳しいな。凛……渋谷凛から話を聞いていたぜ」

 

奈緒は、いつもの習慣で、普段呼びなれている『凛』と呼んでしまいそうになる。

 

「……もしかして、○×生花店でのできごとを渋谷さんから聞いて、それで……」

 

花陽が、渋谷凛の家で経営している花屋でのできごとを思い出す。

 

「こっちも、変に騒がれるとトラブルになると思ったからな。悪かったよ」

 

奈緒に限らず、芸能人とはプライベートまで注目される存在だ。トラブルを避けたいと思っても不思議ではない。

 

 

「アタシは仕事のために今日は高校を休みにしてもらってるわけ。その帰りに、ここに寄ったんだけど……」

 

「ところで、アンタ達って見た感じ中学生か高校生みたいだけど……、学校は……?」

 

奈緒は冷静になった途端に鋭い指摘をする。

 

「ああ、今日は……公欠って奴にゃ」

 

凛がとっさの言い訳を考える。

 

「へぇ〜、どんな用事だ?」

 

奈緒はさらに突っ込む。

 

「え、えーと……かよちん?」

 

「ワ、ワダジニフッヂャウノォ!?」

 

凛は花陽に振るが、当然花陽も言い訳を思い浮かばない。

 

「つまり、サボりってことか」

 

奈緒はドヤ顔をする。

 

「は、はい……。どうか、このことは内密に」

 

花陽がしょげる。

 

「それがお互いのためだな」

 

奈緒もわざわざプライベートを明かしたくはないようだ。

 

「ありがとう、神谷さん」

 

凛が奈緒にお礼を言う。

 

「いいってことよ。アンタ達もこのことは話すなよ」

 

奈緒も凛にはにかんだような笑顔を返す。

 

「素敵な顔……」

 

花陽はその顔を見て、恍惚とした表情になる。

 

「それじゃ、これから3人で遊びに行くにゃ」

 

凛が腕を高くあげながら、元気に言う。

 

「それは無理だな」

 

「どうして?」

 

奈緒の回答に凛が文句を言う。

 

「だって、アンタ達サボってるんだろ。そんな奴と一緒には遊びに行って何かあったら困るもん」

 

奈緒の言うことは正論だ。

 

「……しゃ、写真だけでもダメですか?」

 

花陽がスマートフォンを出す。

 

「まあ、写真だけならいいよ。そっちの子の分はな」

 

奈緒は、花陽のスマートフォンに撮るのは認めたようだ。

 

「凛はダメなのぉ?」

 

「アンタは口が軽そうだからな……」

 

 

結局、花陽のスマートフォンに、3人で写ったものと、花陽と奈緒のツーショット、奈緒一人が写ったものができた。

 

 

「宝物が増えました……」

 

花陽は目を輝かせる。

 

「じゃあ、アンタ達も気をつけて帰れよ」

 

奈緒はそう言って去っていった。

 




ようやく、神谷奈緒とりんぱなの顔合わせが達成されました。「ユメノトビラ」イベント前に達成できてよかった。

これがないと、奈緒が仲間外れになりますからね。

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