凛と凛   作:イオリス

5 / 12
今回は、「トライアドプリムス」奈緒と加蓮が登場します。

メインは「ラブライブ!」のはずなのに、完全に「アイドルマスターシンデレラガールズ」回になりましたね。


次回とその次は、「ラブライブ!」回にしますので、ご容赦下さい。


第4話 トライアドプリムスの日常

☆☆☆プロダクションでは、アイドル達が活動していた。特に、土曜日なんかはドラマやバラエティー番組、モデルのオーディションや仕事、売れっ子のアイドルには仕事が付き物だ。

 

 

「今日も疲れたなー」

 

☆☆☆プロダクション所属の神谷奈緒も、今や忙しい部類のアイドルに入る。

今日は、バラエティ番組や、音楽番組の収録、ドラマの撮影の打ち合わせ、とたくさん入っていたのだ。

 

「お疲れさま、神谷君」

 

英一は、飲み物を何種類か持ってきた。

 

「いやーっ、ホント疲れたよ。でさー……。」

 

奈緒は、炭酸飲料を選ぶと、英一に仕事の愚痴をこぼす。 英一は、要所要所で相づちを打つ。 もちろん、これもプロデューサーの仕事だ。

内容が合理的なものであれば、先方にも要望することはあるし、それができなくてもアイドルの不快感を和らげることができる。

 

反対に合理性がなければ、なるべく機嫌を損ねずに受け流したりするのが基本である。

 

とにかく担当アイドルとの綿密なコミュニケーションは、プロデューサーには欠かせないものの一つだ。

 

 

「なるほど、よし。じゃあ、これについてはそれとなくあのスタッフさんに気を付けるように言っておくよ。俺は書類仕事もあるから」

 

「うん、わかったよ」

 

英一は、メモを取り終えると、自分のデスクに戻った。

プロデューサーの仕事は多々ある。

アイドルのスカウト、仕事の獲得・打ち合わせ、オーディションの指導、仕事やレッスンなどスケジュールの管理、経費の計算……そして、日頃の会話からアイドルの不満な点を洗い出すコミュニケーションとなる。

 

 

(今日もスタドリが欠かせないな)

 

英一は、スタドリを売る仕事を兼ねているちひろの顔を思い浮かべた。

 

 

一方、奈緒の元には同じトライアドプリムスのメンバーである北条加蓮も戻ってきた。

 

 

「戻ったか、加蓮。」

 

奈緒は加蓮の座っている目の前に、先ほどプロデューサーが購入しておいた飲み物の残りを何本か置いた。

 

「サンキュ」

 

加蓮は奈緒に礼を言うと、炭酸の入っていないグレープジュースを選んだ。

 

「加蓮、今日の仕事はどうだった?」

 

今度は奈緒が加蓮の愚痴を聞く。

 

「うん……。」

 

加蓮が話しはじめる。

 

加蓮が話終わると

 

「じゃあ、このメモを後で小泉さんに渡すからな。」

 

メモには加蓮の愚痴的な内容が書かれていた。

 

 

「奈緒ったら、小泉さんの代わりに愚痴メモを取ることもあるもんね」

 

加蓮はグレープジュースの缶を持ちながら、クスッと笑った。

 

「そうだよな、あの人にも困ったもんだよ、やれやれ」

 

「とか言いながら、小泉さんの役に立てて内心嬉しい奈緒でした」

 

加蓮がナレーション風に言った。

 

「……バ、バカッ!こ、こ、こ、これっぽっちも嬉しくねーよ」

 

奈緒は顔を赤くしながら否定する。

 

「怪しー」

 

加蓮はニヤリと笑う。

 

「な、何だよもうっ!」

 

奈緒は顔を真っ赤にしながらすねる。

 

 

「神谷君、終わったかい」

 

そこにひょっこり英一が出てきた。

 

「あんたも図ったように出てくるんじゃない!」ブンッ

 

奈緒は、そこにあった枕を英一に枕を投げつける。

 

「わっ」

 

枕は、英一の頭に命中した。

 

 

「プッ、アハハハハハハ。」

 

加蓮はそんな二人の様子を見て笑ってしまった。

 

「笑うなあ!!」

 

奈緒が顔を真っ赤にしながら言ったが、効果がなかったのは言うまでもない。

 

 

「むう」

 

奈緒のふくれっ面も含め、どこかで見たような光景である。

 

 

 

しばらくし、3人とも冷静な状況に戻る。

 

 

「ほら、小泉さん。頼まれたもんだよ」

 

奈緒は顔を下に向けながら、英一に渡す。

 

 

「いつもありがとう、神谷君。」

 

英一が礼を言い、受けとる。

 

「ホントにしょうがないプロデューサーだな。」

 

(こういう要件なら、むしろ頼んでくれよ。あんたの過労が心配なんだからさ。)

 

奈緒は、表情から感情を悟られないように顔を下に向けたのだ。

 

 

「ふふっ」

 

奈緒の様子を見てまた笑う加蓮。

 

「何がおかしい!?」

 

奈緒が加蓮をにらむ。

 

「別に」

 

加蓮は笑いながらシラをきった。

 

「コラコラ、お前ら。同じチームでケンカするな」

 

英一が止める。

 

「はーい」

 

加蓮が返事した。

 

「全く」

 

奈緒は、加蓮の調子の良さにあきれながらも、にらむのを止める。

 

 

 

「ただいま」

 

ようやく渋谷が戻ってきた。

 

「凛、お帰り」

 

「帰ったか、凛。お疲れ」

 

加蓮と奈緒が出迎える。

 

「お疲れさま、渋谷君。ありがとうございます、千川さん」

 

ちひろが渋谷を送迎したのだ。

ちひろは会釈をしながらねぎらった英一に笑顔で会釈し返す。

 

 

 

 

「ただいま、3人とも」

 

 

渋谷は、3人にあいさつした後で、奈緒や加蓮が座っている椅子に座った。

 

 

「渋谷君、今日の仕事は……」

 

「ちょっと待った!」

 

英一が渋谷に声をかけようとすると、奈緒が止めに入った。

 

 

「どうした、神谷君。」

 

「プロデューサー、他の仕事は終わったのか?」

 

奈緒が真剣な表情で聞いてくる。

 

「あと少しだけあるけど……。」

 

英一に仕事が残っているのは事実だ。少しは、あくまで本人談だが。

 

「それなら、仕事を片付けてきてよ。私もついて行くから」

加蓮が、さっき奈緒が書いていたメモを取ろうとする。

 

 

「加蓮、これはアタシが渡すから」

 

「私はまだ小泉さんに直接報告していないのよ。そのついでに渡せるでしょ。奈緒は凛の話を聞いておいて」

 

加蓮の言っていることは正論だった。

 

「む」

 

沈黙する奈緒をよそに、英一のもとに向かう加蓮。

 

 

「凛、こっちもさっさと終わらせようぜ」

 

不機嫌な顔で言う奈緒。

 

「わかったよ、奈緒」

 

それに対し、凛は少し笑ったような表情を見せる。

 

 

 

一方、英一が仕事をしていると

 

 

「小泉プロデューサー」

 

加蓮がやってきた。

 

「どうした、北条君」

 

パソコンに向かったまま、対応する英一。

 

「奈緒が書いたメモ、持ってきたよ」

 

「そうか」クルッ

 

英一は手を休めて、加蓮の方をむく。

 

「ありがとう、そこに置いてくれ」

 

 

「わかった」

 

加蓮が英一の指定した位置に置く。

 

しばらく英一が

 

 

「ところで、プロデューサー、仕事しながらでいいから聞いてほしいことがあるの」

 

「何だい?」

 

「お仕事、どのくらいかかるの?」

 

加蓮が気になったのか聞いてくる。

 

 

 

「大したことないよ、あと2、3時間ってとこだな。8時くらいには終わるよ」

 

8時まで残るのは珍しい方ではない。10時までかかることもあるし、日をまたいだため、宿直になることもあるのだ。

 

 

「どこが大したことないのよ、過労で倒れちゃうんじゃないの?」

(ブラックもいいところじゃない)

 

加蓮がため息をつく。

 

「心配するな、こう見えても体は丈夫だ」

 

「……やっぱり心配だな、ねえ、私にやれる仕事はない?」

 

「いいよ、倒れられると困るし」

 

「昔の病弱な私と違います!……少しくらいは役に立ちたいの」

 

加蓮がむくれた後、少し顔を赤くした。

 

「そうか、なら、お言葉に甘えよう」クルッ

 

英一は加蓮の方を向くと、パソコンを示し、

 

「今度のコラボイベントの書類で、高校のスクールアイドルの紹介があるから、原稿を見ながら適当に打ち込んでおいてくれるかい?」

 

英一は、加蓮に必要な書類を渡す。

 

「え、適当でいいの?」

 

「UTX学院以外に大したところはないから、多少できが悪くても問題はない。そこはメリハリをつけた方がいいから」

 

英一が加蓮に説明する。

 

「わかった、やっておくね」

 

加蓮が資料をパソコンに打ち込みはじめる。

一校目をうち終わり、二校目が音ノ木坂学院高校だった。

 

(ふーん、μ'sか……。……あら、……西木野……?)

 

加蓮は西木野真姫の名前を見て、手が止まった。

 

(あの西木野総合病院と関係があるのかしら?……院長には一人娘がいたと聞いたことがあるけど……)

 

加蓮は昔、御茶ノ水駅の近くにある西木野総合病院に通院していた。

 

そこで、自分と同じくらいの年頃の、お嬢様と呼ばれている少女を見かけているのだ。

(つり目でキレイな顔をしていたわね。真っ赤な髪がそれをさらにひきたたせていたわ)

 

加蓮は、自分と違う世界の少女に羨望を抱いていた。

 

 

 

「小泉プロデューサー、いる?」

 

渋谷と奈緒がやってきた。

 

「2人とも、話は終わったのか」

 

英一は手を休め、渋谷と奈緒の方を向いた。

 

 

「おう、これは凛の分だ」

 

奈緒が、渋谷の要望についてのメモを渡す。

 

「ありがとう、奈緒。お前のメモは役に立つな」

 

「まあ、いいってもんよ」

 

ちょっと硬い表情でドヤ顔っぽくしようとする奈緒。

 

 

(素直じゃないなあ)

 

渋谷は、奈緒に見えないように笑う。

 

 

「あれ、加蓮。パソコンで何やってるんだ?」

 

奈緒が加蓮の方を見る。

 

「小泉プロデューサーの仕事を手伝っているの。スクールアイドルとのコラボ書類を打ち込んでいるんだ」

 

加蓮が説明する。

 

 

「これ、打ち終わった分、プロデューサーの机に置いてくれる?」

 

加蓮が凛に資料を渡す。

 

 

「どれどれ……、あれ……、この子、私と同じ名前だ」

 

渋谷は、『星空凛』の名前を見つける。

 

「漢字も一緒だな」

 

奈緒も驚いたような顔をする。

 

 

 

(この間、店にきた3人のうち、1人が『凛』と言う名前に反応していたな……。しかも、私の正体まで見破るほどの人もいたし。)

 

渋谷は、実は先週の土曜日、実家の○×生花店で『星空凛』に遭遇していたのだ。

もちろん、そんなことを知るよしもない彼女だったが。

 

 

「ところで、プロデューサー。仕事はあとどのくらいかかるんだ」

 

奈緒が加蓮と同じ質問をする。

 

 

「加蓮が手伝ってくれているおかげで、あと2時間もあれば確実に終わるよ」

 

「まだそんなにかかるの?小泉プロデューサー、使える書類とあそこの空きパソコンを借りてもいいかな」

 

渋谷が、カバンをなが机に降ろした。

 

「お前も疲れているのに、無理するなよ」

 

「プロデューサーにだけは言われたくないよ」

 

そうして、渋谷も手伝うことになった。

 

残った奈緒は、3人にお茶を出すことにした。

 

 

「いやーっ、君達のおかけであと少しで終わりそうだ。ありがとう」

 

書類を手伝ってもらったため、一気に仕事が進んだ。

ちなみに、この☆☆☆プロダクションの名誉のために言うと、アイドルが仕事を手伝うのは今日が初めてであり、これは日常ではない。

 

「別にいいよ、私はパソコン作業も得意だし辛くないよ」

 

凛は何でもそつなくこなす。情報科目の授業で一番にWordの課題を仕上げたこともあったのだ。

 

 

「3人とも、じゃあな」

 

英一は、3人を見送った後、数十分で仕事を終えた。

 

(急ぎじゃない奴も何とか終わらせたな……)

 

最後に出る英一は、事務所の入り口に鍵をかけた。

 




次回は、りんぱな回です。この作品はクロスオーバーであっても、あくまでも「ラブライブ!」メインであることを忘れないようにしたいと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。