凛と凛   作:イオリス

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今回は、コラボイベントが音ノ木坂学院高校に伝わる話です。

「凛と凛」なのに、中盤以降は完全に花陽回になりました。

花陽は、トライアドプリムスの担当プロデューサーが自分の兄(24)であることを知っております。



追加設定:UTX学院は共学と言うことにします。そうしないと、花陽の兄が性転換手術でもしない限り、母校になりませんので。


また、登場人物紹介の欄に、花陽の兄、小泉英一の年齢を24歳と明記しましたので、そちらをどうぞ。


第3話 花陽とアイドル

渋谷凛がコラボイベントの話を知った翌日、音ノ木坂学院高校では、アイドル研究部の部室に全メンバーがいた。

 

 

〜〜〜凛side in〜〜〜

 

 

「今日は重大発表があるわよ」

 

部長のにこちゃんが、真剣な表情になる。

にこちゃんが真剣になっても、みんな割とのんびりとしている。まあ、今までが今までだったからね。

だからこそ、今日の話は本当に衝撃的だった。

 

 

「アイドルとスクールアイドルとのコラボ!?」

 

声をあげたのは穂乃果ちゃんだけど、凛も含めてみんな驚いているのは間違いない。

 

「そうよ、私達がついに本職と共演するのよ。共演!」

 

 にこちゃんが目を輝かせている。

 その輝き具合がすさまじいよ。

 

 

「そして、そのコラボする相手のアイドルは、『トライアドプリムス』と言う3人組のユニットよ」

 

 『トライアドプリムス』…確か、あの渋谷さんがいたところじゃない?

 

「メンバーの一人で第3回シンデレラガールズ総選挙で第1位に輝いたのが、『渋谷凛』と言うアイドルよ。凛」

 

 にこちゃんが、凛の方を見ながら渋谷さんの名前を口にする。正直……

 

「ちょっとウザいよ」

 

「何ですって!?」

 

 本音を口に出してしまったせいで、にこちゃんがこちらをにらむ。

 

「凛ちゃんと同じ名前の子か…」

 

「凛、イベント会場では名前に反応しないようにして下さいね」

 

「あは……確かに、それは注意するべきだね」

 

 2年生トリオから注意を受けちゃったけど、確かにこの間、『凛』で反応しちゃったからね。

 

 でも、渋谷さんって、ホント『凛』と言う名前がしっくり来そうな人だったよ。

 

 

 ……あれ、そういえばかよちん、さっきから黙ったまんまだよ。

 

 

「かよちん、どうかしたかにゃ?」

 

 他のメンバーに聞こえないように、小声で呼びかけてみた。

 

「え…?ああ……、ごめん、何でもないよ」

 

 その反応が何かあったとしか思えないよ。かよちんの大好きなアイドルの話なのに。

 

まあ、いいか。ここでかよちんをこれ以上追及するのもかわいそうだし、止めておくね。

 

 

「それに、あのA-RISEもコラボに参加するそうよ。」

 

 にこちゃんの口からA-RISEと言う言葉が出たとたん、みんなの顔つきか変わった。スクールアイドルの頂点に立つ存在は違う。

 

 

「みんな負けないように、コラボイベントに取り組まなければいけないわね」

 

 こんなに部長らしい発言をするにこちゃんは珍しい。最後だと思うと、気合いが違うんだな。

こうして今日も練習が始まった。

 

 

〜〜〜凛side out〜〜〜

 

 

その日の夜、花陽は兄の英一に電話をかけていた。

 

「どうした、花陽?」

 

「……どうして、コラボイベントの件を教えてくれなかったの?いつも、前もって教えてくれていたのに」

 

花陽が英一に問い質す。

 

ちなみに、普段の英一は妹にアイドルのイベント情報をこっそり教えたり、自分が所属する☆☆☆プロダクションのアイドルが出演する時には、妹に必ずチケットを送る、アイドルオタクの花陽には欠かせない兄だ。

 

 

「ああ、そのことか。別に伝える必要はないと思ったからな」

 

英一は、抑揚のない声で返事をした。

 

「え?そんな……」

 

花陽は、兄の返答に戸惑いを隠せなかった。

 

 

「だって、スクールアイドルと言ったって、お前達のは遊びだろ。素人レベルにしてはよくやっていると思うけど」

 

英一は、基本的に抑揚のない声で返答する。

特に花陽に対してはそれが多い。

 

「遊びなんかじゃないよ!」

 

花陽が強い語気で否定する。

 

「信じられんな」

 

英一の口調は相変わらずだ。

 

「そんな!!」

 

「俺は、お前が子供の頃から見てきたけど、とてもそんなにやる気があるようには見えなかった」

 

 

「本当にやる気があるなら、経済的事情や学力の問題がない限り、環境を大事にするはずだかな」

 

英一は、花陽がUTX学院に行かなかったことを言っている。

 

「……。」

 

花陽は、悔しそうな表情で押し黙った。

 

 

 

「お前は分相応にスクールアイドルを楽しんでればいい。何も、本格的にやることはないんだ。じゃあ」

 

英一は、話を切ろうとする。

 

「あ、まっ……」

 

ピッ

 

英一は、花陽の返事も待たずに回線を切った。

 

 

(花陽……。チャンスはいくらでもあったのに、お前は選ばなかった。その時点で、お前の負けだ。)

 

英一は、スマホを横に置いた。

 

 

 

その次の日も、花陽は元気がなかった。

そして、また放課後を迎える。

 

 

 

 

〜〜〜凛side in〜〜〜

 

 

まずはいつも通り柔軟。ちょっと前までは結構苦手だった。今も、そこまで得意じゃないけどね。

その後イベント前の予選で歌う、『ユメノトビラ』と言う曲のダンス練習がある。

 

 

ーーーーー練習中ーーーーー

 

 

そして、今日も練習が終了した。

凛は、今日もかよちんと一緒に帰る。それにしても、今日もかよちん、元気なかったな。

 

「ところで、かよちん?」

 

「え…?な、何、凛ちゃん」

 

ほら、こんな調子。それじゃ、かよちんの名前『花陽』が泣くよ。

 

「さっきから元気ないもん。にこちゃんから、アイドルとのコラボイベントの話があった時からずっとだにゃ」

 

アイドルとのコラボイベントなんて、かよちんなら感動のあまり、ヒートしちゃうイメージがあったからね。

 

「……、ねえ、凛ちゃん」

 

「かよちん?」

 

怖いくらい真剣な顔のかよちん。

 

「私は、アイドルとしてやっていけているのかな?」

 

「え?」

 

どうしたの、かよちん。いきなり、そんなことを。

 

いつものかよちんになら、軽い口調で言ってあげるけど、今日は全く違う。本気で思い詰めている感じ。

 

「……かよちんは、普通にアイドルとしてやっていけていると思う。だから、自信を持って欲しい」

 

かよちんは、スクールアイドルについてではなく、プロとしてのアイドルについて真剣に考え始めているように思えた。

 

「……凛ちゃん」

 

少しかよちんの表情が明るくなった。

 

「かよちん、本当にプロのアイドルになりたいなら、笑顔を忘れてはいけないにゃ」

 

「うん……」

 

かよちんに笑顔が戻って、良かった。

 

 

「凛ちゃん……、私は世の中から認められるアイドルを目指すから、見ていてね」

 

かよちんが、こんなに強い意志を表したのは、初めて。

 

でも、何かもの悲しさを感じる。まるで、何か手に負えない相手と戦わされそうになっているかのような。

 

そうして、かよちんと一緒に歩き続ける。昨日と同様、話題もないまま。こんな辛気くさい雰囲気は嫌だよ。

 

 

気がついたら、かよちんの家の前に来ていた。

 

「それじゃ」

 

「待って、かよちん」

 

凛は、今大切なことを言わなくてはいけない。

 

 

 

「かよちん、今日のことは凛の胸にしまって置くよ。それと……」

 

 

一呼吸おいてから言った。

 

「μ'sのみんなに頼ることも忘れちゃダメ。みんな、きっとかよちんの味方になってくれるから」

 

かよちんに見えている壮大な敵は、かよちん1人で乗り越えられるとは限らない。

 

「1人でがんばって潰れるのはナシだからね」

 

だから、みんなでかよちんを支えていけることを、いつも忘れないでね。

 

 

「うん!!」

 

かよちんは、明るい笑顔でお家に入っていった。メデタシメデタシ……だといいな。

 

 

〜〜〜凛side out〜〜〜

 




今回は、花陽と花陽の兄が電話で口論するシーンを作りました。


英一は、妹を嫌いなのではありません。ただ、アイドルとして妹を認められないだけです。

あと、トライアドプリムスでは、ここまで渋谷凛しか出ていませんので、次の話では必ず神谷奈緒と北条加蓮も出します。
あと、真姫ちゃんも。

ちなみに、今回は完全に花陽回ですね。

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