城崎を自室に連れて来たら急にソワソワし始めた。
「私とうとう食べられちゃうのね。恩人だしカッコイイ人だし求められたら断りきれない。・・あぁ、お父さん、お母さん。こんな娘を許してください。」
うん、ソワソワじゃ無くてエキサイトしてた。つっこむ気力も無くなるよ。
「誰が食べるか!・・・そうじゃ無くて城崎はいつから武偵校に転校するんだ。」
否定した瞬間にものすごい悲しそうな顔をされた。
なんでだ、それはおかしいだろ!
「城崎じゃなく真理とお呼び下さい。予定では来週から転校のはずです。それが何か?」
「じゃあ真理と。真理、君が一週間の間に何かしら城崎家か篠神家の技を一つ会得しないと真理をこの任から外す。」
「何故ですかっ!!」
「いいか、武偵校の卒業率は97%だ。3%は
「会得出来なかったら見込みなしでお役目御免ですか。」
「そうだ。ちなみにコレを戦妹の試験にしようと思う。」
「っ!!」
うん、雰囲気が変わったね。すごい、久々にこんな真っ直ぐな目をする人を見たよ。これなら可能性はあるかな。
「今回君に会得してもらうのは"平突き”。日本刀を使った技の一つだ。実際に見せよう。」
そう言って真理を引き連れて近衛の使用する道場へと赴いた。木刀を一本拝借して道場裏のカカシが立ってるエリアに移動する。
「そこで見ていて。」
腰を落とし刃を地面と水平におく。間合いを測り一気に駆け出す。最後に前に低く早く飛び込みながら腰を捻る。そして・・・
「一式剣術、牙突壱式!」
速度と腰の捻りを加えられた渾身の突きは藁でできたカカシを粉砕した。
「ふむ、只の案山子ですな。」
「えぇ!何ですか今の!」
「え?真理に覚えて貰う予定の技。」
「何でるろ剣の技名叫んでるんですか!」
あっ、ネタ知ってるんだ。まぁ、そんな事より始めさせますか。そう思い使った木剣を真理に渡す。
「はい、これあげる。好きに練習してもいいよ。やり方は腰を落として刃を地面と水平におく。この時に腰を後ろに捻ってタメを作る。そのまま走り込んでココだと思うタイミングで前に飛び込みながら腰の捻りを戻しながら打ち抜く。ね、簡単でしょ?」
「そんなんで藁の案山子が爆散してたまりますか。」
「まぁ、そんな事言ってる暇があったら練習を始めたらどうだい?」
「くっ!」
さて、帰る準備でもしますかね。明日はアリアとの模擬戦もあるし。
「あぁ、うちの近衛にコツを聞いてもいいよ。初心者がいきなり出来るとは思わないから。」
「むー、何ですかそれ。絶対会得してやりますからね。」
真理に一声かけてから道場を立ち去る。自室に至る途中で日向に会う。
「英介様、御当主がお呼びです。」
「用件は?」
「申し訳ございませんが聞いておりませんのでわかりかねます。」
「分かった。」
行き先を変更して母親の部屋に赴く。声をかけてから中に入る。
「よく来ましたね。」
「一体何の用だ。あまりゆっくりも出来ないんだが。親子の心温まる会話ならまた今度の機会にしてくれ。」
「私が一度でもそのような会話をしましたか?まぁいいです、本題に入りましょう。神崎・H・アリアに関わるのはやめなさい。」
「・・・・・それは個人としてですか、それとも家としてですか?」
「当主としてです。伊・Uは貴方が手を出すには強大すぎる。それは許しません。」
「家としてではなくて武偵としてならどうです。武偵活動には干渉しないバズですが?」
「・・・・私達は武偵にまで干渉する権限はありません。」
「ありがとうございます。話はコレだけですか?」
「えぇ、話はお終いです。・・・くれぐれも無茶はしないで下さい。」
「失礼します。・・あぁ、最後に城崎真理についてですが彼女をこの任から外した後の扱いはどうなるのですか。」
「この家のことを知ったのです。これ以上は言わなくても分かりますね?」
「愚問でした。失礼します。」
部屋を退出し、さっきの発言の意味を考えながら自室までの道程を歩く。
確実に最後のは殺すつもりだな。暗にそうされたく無かったらお前が面倒を見ろと言ってきたのだ。厳しいのか優しいのか分からんな。
それよりも謎なのが伊・Uの事だ。うちの調べでもあまり詳しいことは載ってなかった。それなのに当主として接触を禁止された。恐らくは俺に接触されると家に何かしらの損害を被るか被る可能性があるかだ。そこまでは推測できる。ただ、それならば武偵としての接触も禁止するはずだ。それを禁止しないとなると・・・
「家としては不干渉もしくは存続を望むが個人的にはあの組織の壊滅を望んでるか、か?どちらにしろロクな理由じゃ無いだろうな。」
「何がロクな理由じゃ無いんですか?」
「え?うわっ!」
いつの間にか真理が俺の隣で可愛らしく首を傾げていた。
少し考え事に集中しすぎだな。
「いや、なんでも無いよ。ちょっとした考え事。」
「女の子にウソは感心しませんよ、先輩?まぁ、先輩は名家の御曹司で対する私は代えの効く愛人ですからね。言えないことの一つや二つあるでしょうね。」
ヒヨコみたいに口を尖らしてどことなく拗ねた様子で喋る。
「そんなこと言わないでくれ。真理の事も大切に思ってるから。」
「そんなこと言ったってどうせ先輩に好きな人ができたら私なんてポイされちゃうんですよ!」
なんか知らないけど一人でエキサイトしていらっしやる。なんか少し怖いので頭を一撫でしてから自室に逃げ込む。
さっきの事は忘れて帰る準備しよ。
それからしばらくは平穏な時間を過ごせた。
コンコン
「どうぞ。」
扉を叩かれたので入室を促す。入って来たのは真理だった。
「先輩、そろそろ帰る時間じゃ無いですか?」
「え?」
そう告げられ壁の掛け時計を見ると六時を回っていた。知らない間に熱中していたらしい。
「何してたんですか?」
「ん、俺が過去に受けた依頼書の整理。」
「はぁ〜、スゴイ量ですね。」
手元のファイルを元の場所に戻して立ち上がる。
今気づいたのだが、真理も何なら荷物を持っていた。
俺の視線に気が付いたのか嬉しそうな顔をする。
「えへへー、先輩と同じ新幹線ですよ。」
「・・・まぁ、いいけどさ。ほら、行くぞ。」
「は〜い。」
近衛の一人に車を出してもらいJR京都駅まで送ってもらう。
行きに迎えが無かった理由はしらん。銀閣寺からのルートを指定したのはあの人だからな。息子の俺でさえあの人の思考回路は分からん。恐らく理由があるのだろうが。・・・あったらいいな。
そんな不満をつらつらと心の中で述べてたら京都駅に着いていた。
「12番ホームですって。早く行きましょ先輩。」
「その前にお土産買わないと。真理は何か買わないの?」
「それもそうですね。京都と言ったらなんですか?」
「和菓子かな。俺は特に八つ橋が好きだけど。」
そう言いながら自分の分を含めて5箱ほどカゴに突っ込む。真理が一個紛れ込ませたけど見て見ぬ振りをする。
お会計を済ませてホームへと移動する。ちょうど乗る予定の電車が入線しているところだった。
二人仲良く隣同士の指定席に座る。
「はいこれ、真理のでしょ。」
そう言って真理が駅のお土産屋で紛れ込ませてた物を手渡す。
「あはは、ばれてましたか。今払いますね。」
「いや、いいよ。俺からのおごりで。」
「ありがとうございます、大切にしますね。」
お土産に大切にするも何も無いと思うのだが、悪い気はしないので放っておく。
「ふわぁ、先輩。名古屋に着いたら起こしてください。慣れないことしたんで眠いです。」
「ん、分かった。お休み。」
「はい、お休みなさい。」
暫くはもぞもぞ動いてたけど落ち着く体勢になったのかすぐに寝息を立て始める。
そのまま名古屋まで静かに過ごせた。真理を起こす時に一悶着あったが、まぁいいだろ。電車は時刻通りに東京駅に着き、俺はキンジの部屋の前に立っている。
「キンジよ、私は帰ってきた!」
そんな事をほざきながら部屋に入ると少しやつれたキンジが出迎える。
「お前は一体何をしにここに来たんだよ。自分の部屋に帰れ!」
「え?帰れないからここに来たんだよ。で、アリアはどうしたんだ?」
「帰った。一回だけクエストを一緒に解決する約束で帰らせた。」
「ふーん。・・・お前そのクエスト真面目にやる気無いだろ。いや、違うか。スーパーモードで解決する気がないだろ。」
「・・・・・悪いかよ。」
「悪くなんてない。俺は横浜の時を知ってるからな。だがクエストは人命がかかってる時だって有るんだ。時には割り切れ。さもないと救える命が救えなくなるぞ。」
キンジは押し黙った。今思っているのはお兄さんの事か、それとも別の事か。まぁ、俺には分からんが。
「俺は明日に向けて寝るけど。まぁ、そこんとこよく考えるんだな。」
そう言って勝手に借りてる部屋に入ってさっさと寝る。
エ○ァ風のタイトルに
・・・ネタがね・・・
そんなこんなで毎回見てくれてる人ありがとうございます
あともう一話オリジナルを挟んでAAの内容になります
これからも読んでいただけると幸いです