遊戯王GX~Ritual Story   作:ゼクスユイ

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第6話 光の魔女

-星奈のターン-

「私のターン。ドロー!

魔導騎士ディフェンダーを守備表示で召喚。

魔導騎士ディフェンダーが召喚に成功したことで魔力カウンターを1つ乗せるよ(0→1)」

 青い甲冑を身に着けた騎士が自分の身長ほどの大きさを持つ巨大な楯を構える。魔力カウンターが増えたことで盾の中央にある赤い宝石が赤く光る。

 夜光は厄介なモンスターだと思いながら、星奈がどのような手を打つかを見る。

「フィールド魔法、魔法族の里を発動」

「げげっ!?」

 夜光が考え得る中で最悪のカードが星奈の手によって発動される。

 

魔法族の里

フィールド魔法

自分フィールド上にのみ魔法使い族モンスターが存在する場合、

相手は魔法カードを発動する事ができない。

自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在しない場合、

自分は魔法カードを発動することができない。

 

 木々が生いしげ、どんぐりのような形の家が立ち並ぶ。

「これで夜光君が魔法使い族を召喚しない限り、魔法は封じられる」

「それじゃあ、夜光君は儀式召喚を封じられたのも同然。卑怯ッス!」

 星奈が発動したフィールド魔法の説明を聞いた翔は星奈を罵ろうとする。それを見た夜光は翔の方を振り向く。

「卑怯じゃねェよ。ロック戦術は昔から考えられているし、禁止カードも使っていない。

卑怯と罵っていいのはルールを破っている奴だけだ。

それに魔法族の里は魔法使い族がいなくなったら、自分の魔法を封じられるデメリット効果がある。それに見合った戦術を使うのは当然だ」

「ごめんなさい」

 翔は夜光の注意を聞いて思わず感情的になってとんでもないことを言ったことに気づく。自分の過ちに気づいた翔は反省した様子で星奈に謝る。

「うん、別に気にしていないから。

デュエルの続きだね。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

手札:3枚

場:ディフェンダー(DEF2000)

魔法・罠:伏せ1枚

フィールド魔法:魔法族の里

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!」

(俺の手札に守備力2000のディフェンダーを倒せるカードは無い。今は耐えるだけか)

「俺はガーゴイルパワードを守備表示で召喚。

カードを2枚伏せてターンエンド」

 破壊耐性を持っているうえに守備力の高いディフェンダーをこのターンで突破する術がなかった夜光は守備を固めることにする。

 だが、守備を固めた夜光に追い打ちをかけるかのように星奈は伏せカードを発動させた。

「エンドフェイズ時に王宮のお触れを発動」

「しまった!? 罠も封じられた」

 魔法・罠を封じられた夜光はモンスター効果のみで星奈のモンスターたちに対抗しなければならない。そのため、夜光は冷や汗をかいている。

 この絶望的な状況を見た翔は心配そうな目で夜光を見るが、先ほどとは違って星奈の戦術を非難するようなことはしない。

 

手札:4枚

場:ガーゴイルパワード(DEF1200)

魔法・罠:伏せ2枚

 

-星奈のターン-

「私のターン。ドロー!

高等儀式術を発動。デッキのレベル4ホーリーエルフとレベル3封印師 メイセイを墓地に送って救世の美神ノースウェムコを儀式召喚するよ」

「遂にお出ましか。ノースウェムコ……ガーランドルフと対になる儀式モンスター」

 

救世の美神ノースウェムコ

儀式・効果モンスター

星7/光属性/魔法使い族/攻2700/守1200

「救世の儀式」により降臨。

このカードが儀式召喚に成功した時、

このカードの儀式召喚に使用したモンスターの数まで、

このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するカードを選択して発動する。

選択したカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

このカードはカードの効果では破壊されない。

 

 太陽を模した彫刻が付いている杖を持ち、黒いロープを着た美女が雷鳴と共に現れる。

 それを見た翔は鼻の下を伸ばして「浮気はダメだ。僕はブラックマジシャンガール一筋だ」と言い聞かせている。

「ノースウェムコが儀式召喚に成功したことで効果が発動。私は王宮のお触れと魔法族の里を選択。

選択したカードが除去されない限り、ノースウェムコはカード効果では破壊されない」

「この勝負、星奈の勝ちね」

「まだ勝負はわかんねぇだろう」

「十代も分かるでしょう。魔法・罠を封じられた上にカード効果では破壊されないアタッカー。この状況を抜け出せる術なんてない」

 明日香は十代に反論する。モンスターを魔法・罠で補助して戦わせるのがデュエルモンスターズの基本である。そのため魔法・罠の補助なしに攻撃力2700のモンスターを除去することは容易ではない。

「いいや、夜光の目はまだあきらめていない!」

 十代は夜光の目に諦めの色が無いことを言う。しかし、明日香は諦めなくともこの状況を打破するすべはないと思っていた。

 

「クルセイダー・オブ・エンディミオンを召喚。

ディフェンダーを攻撃表示に変更。ディフェンダー(ATK1600)でガーゴイルパワード(ATK1200)に攻撃」

 ディフェンダーがその巨大な楯でガーゴイルパワードを叩き潰す。腰につけているナイフは飾りなのだろうか。

「クルセイダー・オブ・エンディミオン(ATK1900)とノースウェムコ(ATK2700)でダイレクトアタック!」

 蒼い甲冑を身に着けた魔導師が無抵抗の夜光を殴り飛ばす。

 夜光にとどめを刺そうとノースウェムコが呪文を唱え、雷撃を放つ。十代を除く誰もが夜光の敗北を確信する中、夜光は手札のカードを発動させる。

「手札からクリボーの効果発動。このカードを捨てることでノースウェムコからのダメージを0にする」

 

夜光LP4000→2100

 

 無数の小さく可愛らしい悪魔が雷撃を受けて爆発する。

「「「クリボー!? 」」」

「デュエルモンスターズ史上最弱のモンスターカードを入れているなんて……」

 弱小モンスターの代表ともいえるクリボーを見て驚きの声をあげるブルー女子たち。ステータスの高いモンスターが強いという固定観念を持つ彼女たちにとってはクリボーは使えないカードだと思っているからだ。

「伝説のデュエリスト武藤遊戯も使っている。ただの弱小カードじゃないぜ。このカードが星奈のコンボを打ち砕く一手だ」

「そんなことできるはずが……

ターンエンド」

 無いと言いたかったが、無いとは言えないのがデュエルモンスターズの醍醐味である。星奈は夜光がなにか仕掛けてくると考え直す。

 

手札:1枚

場:ディフェンダー(ATK1600)

  ノースウェムコ(ATK2700)

  クルセイダー(ATK1900)

魔法・罠:お触れ

フィールド魔法:魔法族の里

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

トランスデーモンを召喚。

トランスデーモンの効果発動。手札の未熟な悪魔を捨てて、エンドフェイズまでトランスデーモンの攻撃力を500ポイントアップさせる。(ATK1500→2000)」

 チュパカブラのような異形の悪魔が未熟な悪魔をむしゃむしゃと食べる。未熟な悪魔の生命エネルギーを吸収したトランスデーモンはさらなる力を身に着け、星奈を睨み怯えさせる。

「これで準備は整った。行くぜ!俺は墓地の3体の悪魔族、ガーゴイルパワード、クリボー、未熟な悪魔を除外してダーク・ネクロフィアを特殊召喚する」

 頭の割れた子供の人形を抱く女性が夜光の場に現れる。

 その不気味な姿に多数の女子たちから「気持ち悪い」「気味が悪い」と評され、何人かは女子寮に帰ってしまう。

 夜光は「何処が気持ち悪いんだよ……」とぼやきながら、デュエルを続行する。

「トランスデーモン(ATK2000)でクルセイダー・オブ・エンディミオン(ATK1900)に攻撃!」

 トランスデーモンがクルセイダーの背後に回り込み、甲冑ごと肉をむさぼる。その様子を見た女子たちが次々と気分が悪くなり、ギャラリーにいる女子は明日香しか残っていない。

 

星奈LP4000→3900

 

「ダーク・ネクロフィア(ATK2200)でノースウェムコ(ATK2700)に攻撃!念眼殺」

 ネクロフィアが目から赤い光を放ち、詠唱中のノースウェムコに攻撃するが魔力を帯びたロープにはじかれてしまう。ネクロフィアがもう一度光を放とうとしたとき、詠唱が終わったノースウェムコが杖から雷撃を放ちネクロフィアを破壊する。

 

夜光LP2100→1600

 

「思い出したわ。あれは伝説のデュエリスト武藤遊戯と戦った獏良了が使ったエースモンスターよ」

 明日香がようやくダーク・ネクロフィアのことを思い出す。

 ダーク・ネクロフィア専用のフィールド魔法や罠があるとはいえ、召喚する際には墓地に悪魔族を3体も送らなければならないことから手間がかかり一般的なデュエリストからは『使えないカード』と評価されてきた。そのため、効果を思い出すのに時間がかかってもおかしくはない。

「どんな効果を持っているんだ?」

「十代、すぐにわかるぜ。ターンエンド。エンドフェイズ時に破壊されたダーク・ネクロフィアの効果発動。ノースウェムコに怨霊が取りつき、そのコントロールを奪う!スピリット・バーン」

「ウソ!? 私のノースウェムコが…………」

 破壊されたネクロフィアが落とした人形がケタケタ笑いだすと人魂のようなものが飛び出す。人魂がノースウェムコに憑りつくとノースウェムコは苦しみながら夜光の場に移動する。

 このコントロール奪取により、夜光の場にも魔法使い族が存在するため魔法カードが使えるようになった。

 

手札:1枚

場:トランスデーモン(ATK1500)

  ノースウェムコ(ATK2700)

魔法・罠:ネクロフィア(ノースウェムコに装備)

     伏せ2枚

 

-星奈のターン-

「私のターン。ドロー!」

「スタンバイフェイズ時にライフを500払ってツイスターを発動。王宮のお触れを破壊する。これで罠も使えるようになった」

 

夜光LP1600→1100

 

「たった1ターンであのコンボを打ち破った!?」

 明日香が驚きと賞賛が混じったような声をあげる。明日香が知る限り今まで破ったものいないコンボをわずか数ターンで破ったのだから当然ともいえる。一方でエースモンスターを奪われ、コンボを破られた星奈の表情には驚愕と動揺の色が見え隠れする。

「ディフェンダーを守備表示に変更。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

手札:1枚

場:ディフェンダー(DEF2000)

魔法・罠:伏せ1枚

フィールド魔法:魔法族の里

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

俺は高等儀式術を発動。デッキにあるレベル3ガーゴイルとレベル4ウィップテイルガーゴイルを墓地に送り、破滅の魔王ガーランドルフを儀式召喚!」

 闇の瘴気の中からガーランドルフが現れ、黒い波動を辺りにまき散らす。強力な攻撃から身を守る術を持たないトランスデーモンが破壊される。

「ガーランドルフの効果でディフェンダー、ノースウェムコ、トランスデーモンを破壊する。ノースウェムコは自身の効果で破壊されないけどな」

「ディフェンダーの効果発動。破壊される代わりに魔力カウンターを1つ取り除いて破壊を防ぐ(1→0)」

 ディフェンダーが盾に蓄えられた魔力を使い、バリアを張ってガーランドルフの攻撃を何とか防ぐ。だが、魔力を使い果たしたディフェンダーに次の攻撃を防ぐ手段はない。

「破壊したモンスターは1体、よってガーランドルフの攻撃力は2600に上がる。

さらに破壊されたトランスデーモンの効果で除外されているガーゴイルパワードを手札に加える」

 回収したガーゴイルパワードを召喚しようとカードに手をかけたとき、星奈が「ちょっとタイム」と言ってカメラを持ってガーランドルフ達の写真をとる。

 

「……何しているんだ?」

「いや~、やっぱり対になるモンスターが並んでいると眺めがいいよね」

「プロになったら写真撮っている暇はないと思う」

「私はデュエルできるカメラマン希望だから大丈夫」

 一般的にアカデミアの生徒はプロデュエリストを希望する者が多いが、カードデザイナーや記者といったデュエリスト以外の職業を希望する者も少数派とはいえ存在する。それならアカデミアではなく別の学校に行けば良いのではと思うかもしれないが、デュエルに関係なさそうな職業でもデュエルの腕が重要視されている企業は数多く存在している。

 そのため、デュエルの腕を磨くという目的でアカデミアに来る者がいる。星奈もその中の一人である。

 星奈が満足するまで写真を撮った後、夜光たちはデュエルを再開する。

「ガーゴイルパワードを召喚。

ガーランドルフでディフェンダーに攻撃」

 ガーランドルフがディフェンダーの頭を掴み持ち上げる。力を思いっきり入れられたことでディフェンダーの頭部がトマトのようにつぶされる。それを見た翔は吐き気を催し、口を手で押さえる。

「ガーゴイルパワードとノースウェムコでダイレクトアタック!」

「私の切り札にやられるわけにはいかない!

ノースウェムコの攻撃時にガードブロックを発動。戦闘ダメージを0にして1枚ドロー!」

 

星奈LP3900→2300

 

 夜光の猛攻に紙一重で耐えた星奈。しかし、星奈の場はがら空きとなってしまう。

「星奈の場に魔法使い族が居なくなった。

これで星奈は魔法カードを使うことができない。ターンエンドだ」

 

手札:0枚

場:ガーランドルフ(ATK2700)

  ノースウェムコ(ATK2700)

  ガーゴイルパワード

魔法・罠:伏せ1枚

 

-星奈-

「私のターン。ドロー!

私はフィールド魔法をセットすることで魔法族の里を破壊する。

魔法カード、時の魔術師を発動」

 

時の魔術師(原作カード)

通常魔法

ルーレットを回転する(当たる確率は3分の1)。

当たった場合、フィールドの時を進める。

外れた場合、自分フィールド上に存在するモンスターを全て破壊し、

自分は破壊したモンスターの攻撃力を合計した数値の半分のダメージを受ける。

 

「あれは伝説のデュエリスト、城之内克也が使っていたレアカードの時の魔術師!

ビデオとかDVDとかじゃなくて生で見れて最高だ!」

 星奈の場に身体が時計でできている小さな魔術師が現れる。それを見た十代はうれしそうな声をあげる。

 時の魔術師がタイムマジックと言うと、手に持っている杖のルーレットが回りだす。

「タイムマジックによる一発逆転……それに対抗する手段はすでにある。

時の魔術師にチェーンして闇次元の解放を発動。除外されている未熟な悪魔を特殊召喚!」

「「えっ!?」」

 意外すぎるカードに星奈だけでなく明日香も驚きの声をあげる。星奈たちからすれば、魔法・罠を無効にするカウンター罠だろうと思っていたからだ。

 

 そんな二人を尻目に時の魔術師のルーレットのスピードがゆっくりとなっていく。そしてルーレットの針は『当』を示す。

「タイムルーレット成功!フィールドの時を100年進める。タイム・マジック!

100年の時が進んだことで夜光君の場のモンスターたちは封印される。

夜光君の場ががら空きになったところでブレイカーのダイレクトアタックがきまれば、私の勝ちよ」

「それはどうかな。未熟な悪魔は100年の時が進んだことで上級悪魔に成長する。

出でよ、デーモンの召喚!」

 時の魔術師の効果が成功し、ガーランドルフ達が球体に封印されたことで勝利を確信した星奈。しかし、夜光の場に不意打ちで現れたデーモンに驚きを隠せない。

「あんな誰もが持っているような弱小モンスターが……」

「悪魔族の中でも五指に入るレアカード、デーモンの召喚に……」

「「「「成長した!?」」」」

 時の魔術師の効果は味方を有利にする効果だけではない。使い方を間違えれば相手を有利にすることもある。それを知らなかった星奈たちはただ驚くだけである。

「ブレイカーを守備表示で召喚。ブレイカーは召喚時に魔力カウンターを1つ置く。

ターンエンド」

 しかし、星奈は最後まであきらめない。デュエリストが諦めるのは自分のライフが0になったときだからだ。

 

手札:0枚

場:ブレイカー(DEF1000)

魔法・罠:なし

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

契約の履行を発動。ライフを800払って墓地のガーランドルフを特殊召喚する。

ガーランドルフ(ATK2500)でブレイカー(DEF1000)に攻撃!」

 ガーランドルフが先のディフェンダーと同様にブレイカーの頭部を握り破壊する。ついに耐えきれなくなった翔は湖に向かって吐いた。

「デーモンの召喚(ATK2500)でダイレクトアタック!魔降雷」

 デーモンが雷を辺り一面に落とし、星奈のライフを奪う。何処からともなくクロノスの叫び声が聞こえるが、気のせいだろう。

 

星奈LP2300→0

 

「私の負けか。でも今度は負けないからね」

「あ……ああ。今度は人質のやり取り無しの真剣勝負だ」

 顔を少し赤くした夜光は星奈と互いに約束を交わし握手をして別れる。翔を無事に助けることができた十代たちは寮の管理者である先生に見つからないことを祈りながら帰路につく。

 翌日、クロノスはガーランドルフの流れ弾に襲われたことで顔が腫れ、明日香が湖を凍らせたことで風邪をひくのであった。




星奈のデッキは光属性中心の【魔法使い族】でした。
時の魔術師でデーモンの召喚を呼び出しているのは昔のゲームで
未熟な悪魔+時の魔術師=デーモンの召喚
という融合パターンがあったためです。
OCGでは融合モンスターになった千年竜と同じ扱いで原作風に召喚させてみました。

ラストターンでブレイカーを召喚してから時の魔術師を使えば勝っていたと思うかもしれませんが、時の魔術師の効果を失敗した場合に壁モンスターが居なくなるのを恐れたからです。

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