「こんなところに秘密ラボがあるのか、十代」
「にわかには信じがたいノーネ」
「でも、探していないところってなると廃寮くらいだろ?」
十代の言うことが信じられない万丈目とクロノスが疑問を持ちながらも、錆びついている廃寮の扉を開ける。朝方と言うのに薄暗い廃寮の中を歩いていき、十代が吹雪の絵を軽く推すと壁がくるっと回転し、隠し通路が開かれる。
「こんな仕掛けがあったとは……!?」
この大がかりな仕掛けにはカイザーをはじめ、教師であるクロノスですら目を見開く。これほどの大仕掛けを誰も知らさずに作る大徳寺先生はいったい何者なんだと思うほどだ。そして、コツーンコツーンと足音を響かせながら階段を下りていき、隠しラボの部屋と入っていく。
誰もいないせいか電気が付いておらず、近くに電灯のスイッチ見当たらないため、持ってきた懐中電灯であたりを照らす。懐中電灯の明かり頼りになっているせいか、不気味な雰囲気を醸し出し、作業台の上はビーカーや薬品が散乱し、棚にはさまざまな錬金術に関する本が所狭しと並べられている。しかし、前来た時には無かった人ひとりは入れるくらいの大きな棺が異様な光景を際立たせている。
「な、なんだろう……このドラキュラ城にでも出てきそうな棺桶は?」
「まさかカミューラが中に入っているなんていうことはないでしょうね」
「とにかく開けてみようぜ。もしかしたら大徳寺先生が中に入っているかもしれない」
十代たちがゴゴゴと地響きを立てながら棺を開けると、そこには干からびたミイラが入っていた。それをみた翔や明日香は悲鳴を上げる。
「なんでこんなところにミイラが?」
「……!? これを見ろ!」
カイザーが何かに気付いたのか左胸のポケットにライトを当てる。光が当てられた先にはネームプレートがあり、そこに書かれていたのは大徳寺先生の名前だった。
「まさか……そんな!」
「このミイラが大徳寺先生だというのか!」
「信じられない。このミイラの保存状況からして、死後数百年は経過しているはず。だが、大徳寺先生が消えたのはついさっきのことだ。きっとこれはセブンスターズが俺たちに動揺を誘うための罠だ」
三沢が手に持っていた手帳に無数の数列を書き、導き出された答えを皆に言う。だが、ミイラの容姿に大徳寺先生の面影が残っていることから、三沢の言うことをすんなりと受け止めることができない。そんなとき、部屋の電灯が付き、覆面の男が十代の前に立ちふさがる。
「ようこそ、七星門の鍵を持つ者たちよ。私が最後のセブンスターズ、アムナエルだ」
「最後?」
十代がアムナエルに聞き返す。これまで戦ってきたセブンスターズはダークネス、カミューラ、タニヤ、黒蠍盗掘団、アビドス三世の5人。よって、アムナエルは十代たちから見て6人目のセブンスターズだ。なぜ、アムナエルが7人目を名乗っているのかの答えは突如起こった大きな地震によってもたらされた。
「すでに6人目は君たちの仲間と戦っているようだな」
「ここにいない七星門の鍵の所有者って……」
「夜光の用事って……セブンスターズと戦うことだったのか!」
十代がつい先ほどの夜光のやり取りを思い出す。友達と思っていた彼が自分に本当のことを言わなかった悔しさよりも、あのとき大徳寺先生の行方よりも重要な夜光の用事に疑問を持って、呼び止めていれば夜光を一人で戦わせるような真似はなかったという後悔の方が強かった。だが、今の十代にすべきことは過去を悔やんで立ち留まることではない。
「俺とデュエルしろ!アムナエル!!」
「良いだろう、十代。最高の錬金術師が持つ究極のアイテム、エメラルド・タブレッドの前で闇のデュエルを受けるがいい!!」
「「デュエル!」」
十代LP4000
アムナエルLP4000
-十代のターン-
「先行はもらうぜ。俺のターン、ドロー!闇の誘惑を発動。2枚ドローし、手札のネクロダークマンを除外する。E・HEROブレイズマンを召喚」
背中に小型のブースターをつけた炎の拳闘士が十代の場に現れる。
「このカードが召喚に成功したとき、デッキから融合を手札に加えることができる。HERO'sボンドを発動。場にHEROがいるとき、手札のレベル4以下のE・HERO2体を特殊召喚できる。来い、E・HEROエアーマン、E・HEROシャドー・ミスト!」
孤立無援のブレイズマンに駆けつけるかのようにエアーマンらが十代の場に現れる。エアーマンがいつものように十代の手札を増やすと、それに負けじとシャドーミストが十代の影からカードを作り出し、手札に加えさせる。
「エアーマンが特殊召喚に成功したことで、デッキからE・HEROオーシャンを手札に加える。さらに、特殊召喚したシャドー・ミストの効果でマスク・チェンジを手札に加えるぜ。融合を発動。場のエアーマンとブレイズマンを融合!現れろ、E・HEROノヴァマスター!カードを2枚伏せてターンエンド」
手札:2枚(オーシャン)
場:ノヴァマスター
シャドー・ミスト
魔法・罠:伏せ2枚
-アムナエルのターン-
「私のターン、ドロー!
異次元の生還者を守備表示で召喚。カードを2枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズにマスク・チェンジを発動。シャドー・ミストを変身召喚!M・HEROダークロウ!!シャドー・ミストが墓地に送られたことで、デッキからE・HEROフォレストマンを手札に加える」
「えっ、なんでエンドフェイズにマスク・チェンジ使ったの? 次のターンで連撃した方がイイじゃないスか」
「恐らく十代は相手が異次元の生還者を召喚したことから、あの伏せカードが異次元グランドのようなカードを除外する罠と読み、シャドー・ミストの効果を阻害されない内にマスク・チェンジを使ったのだろう。無論、それ以外のカードの可能性もあるが、セブンスターズほどの相手が除外効果を持つカードを使うこと前提でデッキを組んでいるのも考えにくい」
翔の疑問に応える三沢。傍から見ても焦りの色が見える十代だが、それによるプレイングミスはしていないようだ。
手札:3枚
場:生還者
魔法・罠:伏せ2枚
-十代-
「俺のターン、ドロー!
融合回収を発動。墓地のエアーマンと融合を手札に加える。エアーマンを召喚。エアーマンの効果で2枚の伏せカードを破壊する」
「私は罠カード、ブレイクスルー・スキルを発動。エアーマンの効果を無効にする」
「もう一枚の伏せカードはできなかったけど、相手のモンスターは一体だけ」
「三沢がいうことが正しいなら、ミラフォのように攻撃を止めるカードじゃないんだなぁ」
「最後のセブンスターズが聞いてあきれるな。これなら、俺が戦った黒蠍の連中の方がよほどマシだ。ジ・アースを出すまでもないだろ、十代」
「ああ。それに早く助けに行かないと……バトルだ!ノヴァマスターで異次元の生還者に攻撃!」
勝負を急いた十代はジ・アースを召喚せずに、バトルフェイズに入る。そして、ノヴァマスターが異次元の生還者に炎の手刀を繰り出した時、アムナエルのリバースカードが発動する。
「罠発動。マクロコスモス。私はデッキから原始太陽ヘリオスを特殊召喚する。そして、このカードが存在する限りカードは墓地に行かず、除外される」
「ノヴァマスターの効果で1枚ドロー!エアーマンでヘリオスに攻撃!ダークロウでダイレクトアタックだ!」
アムナエルがヘリオスを召喚するも、今の十代の猛攻を防ぐには力不足だ。
アムナエルLP4000→1600
ダークロウの攻撃の余波で覆面にひびが入る。そして、欠けた覆面から覗かれる素顔は皺くちゃになっているもの大徳寺先生本人だった。最後のセブンスターズが恩師であることに困惑する十代たち。
「なんで大徳寺先生が……セブンスターズに…………」
動揺しているせいか十代はカードを伏せることもなく静かにターンを終える。
手札:5枚(融合、オーシャン、フォレストマン)
場:ダークロウ
ノヴァマスター
エアーマン
魔法・罠:伏せ1枚
-アムナエルのターン-
「私のターン、ドロー!生還者を生贄に……風帝ライザー!」
「あれはアニキを倒したモンスター!」
「ライザーの効果は身に染みているはずだ。もう一度、その効果を受けるがいい!」
ライザーが竜巻を引き起こし、ノヴァマスターをバウンスさせようとする。だが、意気消沈していたはずの十代がリバースカードを発動させる。
「……速攻魔法、禁じられた聖杯を発動。ライザーの効果を無効にする代わりに攻撃力を400ポイントアップさせる」
「このターンで場のモンスターが全滅を避けたか」
「へへ。流石に何度も効果を受けるわけにいかないからな。先生、このデュエルで俺があのときよりもどれだけ成長したか見せてやるぜ」
「ふふ、面白い。それでこそ十代君だにゃ。ライザーでダークロウに攻撃!」
ライザーが小型の竜巻を発生させ、ダークロウを粉砕する。
十代LP4000→3600
「闇の誘惑を発動。2枚ドローし、バトル・フェーダーを除外する。カードを1枚伏せてターンエンド。そして生還者はフィールドに戻る」
手札:2枚
場:ライザー
生還者
魔法・罠:伏せ1枚
マクロ
-十代のターン-
「俺のターン、ドロー!
死者蘇生を発動。シャドー・ミストを特殊召喚するぜ。そして、シャドー・ミストの効果でデッキからマスク・チェンジを手札に加える。融合を発動。手札のE・HEROオーシャンとフォレストマンを融合!E・HEROジ・アース!!
出し惜しみはなしだ!ジ・アースの効果発動。シャドー・ミストを生贄にささげる。地球灼熱!」
ジ・アースの攻撃力が3500まで跳ね上がる。仮にアムナエルが帝の生贄要因兼壁として優秀なメタル・リフレクト・スライムを伏せていたとしても、戦闘破壊できる数値だ。
「エアーマンで生還者に、ノヴァマスターでライザーに攻撃!」
アムナエルLP1600→1400
2体のHEROの攻撃でアムナエルの場はがら空きとなる。ジ・アースの攻撃が通れば十代の勝ちだ。
「ノヴァマスターの効果で1枚ドロー!ジ・アースでダイレクトアタック!」
「罠カード、ドレインシールド!」
アムナエルLP1400→4900
「まだ、俺のバトルフェイズは終わってないぜ。マスク・チェンジを発動。エアーマンを変身召喚!M・HEROカミカゼ!カミカゼでダイレクトアタックだ」
右手からエネルギー波を放ち、アムナエルに直接攻撃する。
アムナエルLP4900→2200
ジ・アースの攻撃を逆利用されてしまったもののライフを微増させたに過ぎない。しかも、十代の場には強力なHEROが3体もいる。ライザー1体だけではこの状況を覆すことは不可能と言えよう。
「カードを1枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズに生還者は戻ってくる」
手札:2枚
場:ジ・アース
ノヴァマスター
カミカゼ
魔法・罠:伏せ1枚
-アムナエルのターン-
「十代君。君に我が錬金術の最大の成果を見せてあげよう」
「錬金術の成果? 何言っているんだ」
「賢者の石とは卑金属を貴金属に変える物質。我が肉体にはその賢者の石が埋め込まれている」
「なるほど。その賢者の石を使って数百年の間生き続けてきたというわけか」
「賢者の石……まさか実在していたなんて」
「デュエルモンスターズの歴史には最強のデュエリストのみが行えるドローがあると言う。存在しないカードをその場で創造する……まさにそれは錬金術に等しい。そして、私は各時代の最強デュエリストを研究し、ついに賢者の石の完成間近まで出来つつある」
「ん? 完成したんじゃないのか」
「残念ながら、今の賢者の石は使用すれば劣化していく未完成品だ。だが、その力の一端は使用できる。いくぞ、最強デュエリストのドローはすべてが必然!ドローカードさえもデュエリストが想像する!シャイニングドロー!!」
「シャイニング……ドロー……」
アムナエルの右手が黄金色に光り輝き、デッキからドローする。そして、アムナエルはドローしたカードを見て、不敵な笑みを漏らす。
「私は帝王の開岩と帝王の烈旋を発動。カミカゼと生還者を生贄に……烈風帝ライザー!」
「最上級の帝だと!?」
「帝モンスターはすべて上級モンスター。最上級モンスターは存在しない!」
「万丈目君、三沢君、私は言ったはずだ。存在しないカードを創造したと」
ライザー単体ではこの状況を覆すことはできない。ならば、この状況を覆すようなカードを創造すればいい。どんなに追い詰めてもその場に合ったカードを創造すれば、必ず勝てる。それは当たり前の真理だ。
「烈風帝ライザーの効果発動。場と墓地のカードをデッキトップに戻し、さらに風属性モンスターを生贄にした場合、モンスター1体を手札に戻す。私はジ・アースと融合回収をデッキトップに戻し、ノヴァマスターを手札に戻す」
旋風が巻き起こり、ジ・アースとノヴァマスターが融合デッキに戻される。
「さらに帝王の開岩の効果で邪帝ガイウスを手札に加える。烈風帝ライザーでダイレクトアタック!」
十代LP3600→800
創造したカードのせいで、デッキトップを今の状況では全く使えない融合回収にされた上にモンスターも0。先ほどの攻勢から一転、十代は窮地に追い込まれる。そして、アムナエルはメインフェイズ2にすることもないので、ターンを終える。
手札:1枚(ガイウス)
場:烈風帝ライザー
生還者
魔法・罠:マクロ
開岩
-十代のターン-
「俺のターン、ドロー」
十代はライザーの効果によってデッキトップに戻された融合回収をドローする。だが、この危機的状況で役に立たないカードを引いているにもかかわらず、十代の目から闘志の炎は消えていない。
「俺はライフを半分払ってヒーロー・アライブを発動。デッキからE・HEROシャドー・ミストを特殊召喚する」
十代LP800→400
十代の影からシャドー・ミストが現れ、十代に1枚のカードを渡す。
「シャドー・ミストの効果でマスク・チェンジ・セカンドを手札に加える。カードを2枚伏せてターンエンド」
手札:1枚
場:シャドー・ミスト
魔法・罠:伏せ3枚
-アムナエルのターン-
「私のターン、ドロー!
カオス・グリードを発動。私の墓地にカードが無く、4枚以上除外されているとき、2枚ドローする。2枚目と3枚目のカオス・グリードを発動。4枚ドロー。進撃の帝王を発動。このカードの効果により、生贄召喚に成功したモンスターは効果の対象にならず、破壊されない。生還者を生贄に邪帝ガイウスを召喚。ガイウスの効果発動。シャドー・ミストを除外し、除外したモンスターが闇属性ならば1000ポイントのダメージを与える」
シャドー・ミストは名前からもわかるように闇属性のため、ガイウスの追加バーンの対象になる。この効果で除外されてしまえば、残りライフが400しかない十代のライフは0となってしまう。そのため、十代は伏せカードを発動せざるを得なかった。
「速攻魔法、マスク・チェンジ・セカンドを発動。手札の融合回収を捨てて、シャドー・ミストを変身召喚!M・HEROダークロウ!」
「ガイウスの効果を躱したか。だが、生贄召喚に成功したことでイリュージョン・スナッチを特殊召喚する。ライザーでダークロウに攻撃!」
ライザーが真空波を放ち、ダークロウを八つ裂きにする。これで十代を守るモンスターはいなくなった。
「ガイウスでダイレクトアタック!」
「速攻魔法、クリボーを呼ぶ笛を発動。デッキからハネクリボーを特殊召喚する」
「ハネクリボーは破壊されたとき、このターン受けるダメージを0にする効果を持つ。だが、それは墓地に送られたときの話だ。つまり、このマクロコスモス下においてハネクリボーの効果は発動しない。ガイウスでハネクリボーに攻撃!」
「俺の相棒を甘く見るなよ、先生。ドロー・マッスルを発動!1枚ドローし、ハネクリボーはこのターン、戦闘破壊されない」
「今の私にハネクリボーを除去するカードはない。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
手札:1枚
場:烈風帝ライザー
ガイウス
スナッチ
生還者
魔法・罠:マクロ
開岩
進撃
伏せ1枚
-十代のターン-
「俺のターン、ドロー!」
(平行世界融合、これでガイアを出して進撃の帝王の対象外になっているスナッチの攻撃力吸収すれば、先生のライフを丁度0にすることができる)
十代が何の考えもなしに平行世界融合を発動しようとしたとき、アムナエルの鋭い眼光が十代に突き刺さる。期待を裏切るような真似をすれば、躊躇なく潰すと言った視線だ。十代は知る由もないが、アムナエルが伏せたカードは自分のモンスターの攻撃力を元に戻す聖水の弊害。そのため、十代がガイアを召喚しようとしても、1000ポイントのダメージしか与えることができない。
(駄目だ。ガイアは出せない。どうする。どうればいい?)
「何、ウジウジ悩んでいるんっすか!そんなのアニキらしく無いっす」
「翔……」
「そうね。十代はどっちかと言うと悩むくらいなら当たって砕けるタイプだもの」
「明日香、俺だって悩むくらいのことはあるんだぜ」
「ふん。とにかくお前は何も考えずに突っ走ればいい」
「万丈目、それで負けたらどうするんだよ」
「そのときはこの万丈目サンダーがアムナエルを倒してやる」
「つよいぞー」「かっこいいぞー」「万丈目のアニキー」
後ろに居た仲間たち(おジャマを除く)が声をからしながら、十代を応援する。十代の後ろには心強い仲間がいる。なにも十代一人で世界を救う責任を負う必要はない。仮に十代が負けても万丈目や明日香、カイザーやクロノス先生たちもいる。なにを恐れる必要があるのか。十代は覚悟を決め、カードを発動させる。
「分かったぜ、みんな。俺はこのカードにすべての可能性を賭ける!平行世界融合を発動!」
十代の融合デッキが光り輝く。十代が融合デッキを確認すると見知らぬカードが入っていた。なぜ、そのカードが入っていたのか分からないが、今はそれに賭けるしかない。
「除外されているM・HEROカミカゼとM・HEROダークロウを融合!」
「M・HERO同士の融合!?」
「十代君、君はやはり……」
「平行世界より姿を現せ、俺のNEW HERO!C・HEROカオス!!」
左右が白と黒に分かれているHEROが十代の場に現れる。EでもMでもない、別の可能性を持つ新しいHERO、それがC・HERO!聞いたことも見たこともないC・HEROに驚愕の色を隠せない万丈目、そして自分の目は狂っていなかったと思うアムナエル。そう、アムナエルの目的は十代を自身の後継者にすることだ。そのため、アムナエルは十代の前に立ちふさがったのだ。そして、アムナエルという巨大な壁を越えようとする十代はカオスに攻撃命令を当てる。
「行け、カオス!烈風帝ライザーに攻撃!」
カオスがガッチャのようなポーズをとると、指からビームがライザーの胸部を貫く。
アムナエルLP2200→2000
「カードを1枚伏せてターンエンド」
-アムナエルのターン-
「私のターン、シャイニングドロー!」
シャイニングドローの余波か賢者の石の摩耗のせいかアムナエルは片膝をつく。しかし、ここで倒れてしまうわけにはいかないと自身を奮い立たせ、立ち上がる。
「存在しないカードの創造……十代君、君はこの瞬間、錬金術師としての境地に踏み入れた。だが、たかが攻撃力3000のモンスターではこの状況を覆すことなど不可能。私はガイウスを生贄に怨邪帝ガイウスを召喚!」
怨念の力によって更なる力を身に着けたガイウスが十代の前に立ちふさがる。アムナエルが持つ究極にして最強の帝こそ怨邪帝ガイウスだ。その恐るべき力を今発動する。
「怨邪帝ガイウスはアドバンス召喚したモンスターならば一体のリリースで済み、さらに闇属性をリリースして生贄召喚に成功したとき、2枚のカードを除外し、1枚でも除外すれば1000ポイントのダメージを与える。これで終わりだ」
「そうはさせない。俺はブレイクスルー・スキルを発動。怨邪帝ガイウスの効果を無効にする」
「忘れたか。進撃の帝王の効果で私のモンスターは効果の対象にならない!」
「俺はカオスの効果を発動していたぜ。カオスは1ターンに1度、表側表示のカードを無効にできる。俺は進撃の帝王の効果を無効にした!」
「なに!」
「これでブレイクスルー・スキルの効果は有効!」
ガイウスの放った黒い球体道半ばで消滅する。光と闇を制するカオスはカードの力をも制御するのだ。そして、アムナエルは効果を止められてしまった以上、このターンでケリをつけることはできない。だが、アムナエルの手札にはバトル・フェーダーがある。ほぼ確実に1ターンは持つだろうと考え、次のターンで決着をつけることにした。
「開岩の効果でガイウスを手札に加える。怨邪帝ガイウスでハネクリボーに攻撃。他のモンスターを守備表示に変更してターンエンド」
そして、回ってくる十代のターン。ガイウスをサーチされた以上、このターンで決着をつけなければ、十代の敗北が決まる。しかし、今の十代に敗北を恐れる気持ちは一切ない。
「皆の思いが詰まったこのドロー……俺のラストタァァァァン!」
「ミラクル・フュージョン!場のカオスと墓地のブレイズマンを融合!現れろ、E・HERO The シャイニング!」
文字通り奇跡を呼び起こす融合。混沌によって導きだされた光がこのデュエルに終止符を打つため、十代の場に現れる。
「Theシャイニングの攻撃力は除外されているE・HEROの数×300ポイントアップする。除外されているE・HEROは、ネクロ・ダークマン、ブレイズマン、シャドー・ミスト2体、エアーマン、オーシャン、フォレストマン、カオスの8体。よって、Theシャイニングの攻撃力は2400ポイントアップ!(ATK2600→5000)」
「Theシャイニングでガイウスに攻撃!オプティカル・ストーム!!」
Theシャイニングガイウスの身に宿った怨念を成仏させ、その姿を昇天させる。
アムナエルLP2000→0
十代はアムナエル、いや大徳寺先生を心配したのかゆっくりと歩み寄る。そして、模造品の賢者の石の限界がきたのかアムナエルの身体がぼろぼろと剥がれ落ち、ゆっくりと砂になっていく。そして、アムナエルは自分が消える前に友人が三幻魔の力を手にしようとしていることを伝える。
「十代、いずれこの島には今以上の災いが起きる。私にはその災いに対抗できる力を育てる必要があった……これを受け取れ……」
大徳寺先生はそう言うと、自身が持っていたエメラルド・タブレットを十代に手渡す。ずっしりと重たいのはただ本が分厚いだけではないのだろう。このエメラルド・タブレットは大徳寺先生の人生そのものだと言っても差し支えはない。
「大徳寺先生……」
「十代、災いを防げるのは『今』を生きる君たちだけだ……」
そう言い残し、大徳寺先生は砂となって消える。死んだ大徳寺先生に敬礼するかのように空に向けってガッチャのポーズを決めた。そして、十代たちはアムナエルとのデュエル中に何度もあった地震がおさまったことから、地上のデュエルも終わっているのだろうと思い、夜光の安否を案じながら外に向かっていくのであった。
投稿遅れました。すみません。
メダロッターになっていて執筆が進まなかった。
面白かったんだものメダロット8。
戦闘面が面白いのは良いよね。なお、ストーリーは……
年内にもう1話投稿出来たら良いな。
その話を吹雪さんのギャグコメにするか三幻魔戦にするかを考えないといけないけど。