「どうなんだ、明日香の兄さんの容態は?」
校長室へと向かう途中、夜光たちは明日香から吹雪のことを尋ねていた。セブンスターズの内情を知る貴重な情報源である彼だが、明日香は首を振り、ダークネス時の記憶がないことを告げる。闇のデュエルで一気にライフを4000削られたせいなのかデュエルで負けると記憶が消えるようになっていたのかは誰にもわからない。
「このまま記憶が戻らないんじゃないかって不安で……」
(無理もないな。行方不明の兄さんが帰ってきたと思ったら数年分の記憶喪失。不安になって当たり前だ)
「心配なのはわかるけど、そのうち思い出してくれるって」
「……それもそうね」
明日香は短く答えると、呼び出された校長室へと入っていく。それに続き、夜光らも入っていくと黄金の眼を模した眼帯をしている探偵風の男が鮫島の隣に立っていた。そして、七星門の鍵を持つ人全員が集まったことを確認すると、鮫島はさっそく本題に移る。
「鍵を奪われることなく、残るセブンスターズも約半数の4人となりました。しかし、このまま彼らが何の手も打つことなくやられるとは思いません」
「下手をすれば無関係の人間を人質をとったり、力づくで鍵を奪ったりすることも考えられるというわけか」
「ええ。そこで本島から警察の応援を呼び、警備の強化をさせていただくことにしました」
「警部のマグレです」
「って、一人だけかよ」
「複数人を呼ぶとそこにセブンスターズの息がかかった者が紛れ込む可能性が高くなりますからな。私一人だけできました。お分かりかな」
マグレの言葉に大きな矛盾はなかったため、全員が頷く。そして、マグレの提案により鍵の保管場所が適切かどうか確認していく。十代・夜光は机の引き出しの中、万丈目は流しの下、三沢・クロノスは部屋の中にある金庫の中、明日香はアクセサリー入れの中にそれぞれ保管していた。それぞれの保管場所を確認しているとき、警備員やオシリスレッドの生徒らが近くを通りすぎていたが、身分がはっきりしているためさしたる問題はなかった。
その夜、万丈目が何やら騒々しい物音がしたため、目を覚ますと鍵をかけたはずのドアが木端微塵に破壊されていた。それをみた万丈目は真っ先に流しの下を見るが、そこに鍵はなかった。もしかするとと思い、万丈目は容疑者全員に自分の部屋に来るようメールを送った。
「じっちゃんの名にかけて、この事件万丈目サンダーが解いてやる。真実はいつも一つだ」
名探偵万丈目サンダー誕生の瞬間である。
万丈目が七星門の鍵の所有者の話を聞いたところ、7人中5人の鍵が奪われたことが判明した。また、物音がしてすぐ目を覚ましたことから、犯人はアカデミアから逃亡する余裕はない。
「つまり、犯人とその共犯者はこの中にいる!」
「犯人は誰なんだ? 万丈目」
「サンダー。それはお前とお前とお前とお前とお前だ!」
万丈目が指をさしたのはマグレ警部、女医のミーネ、管理人のゴーグ、レッド生徒のチック、警備員のクリフの5人だ。
「なぜ、私たちなんだ」
「盗まれた鍵の個数から5人組と推測される。そして、鍵を託された俺たちは犯人じゃない。となれば、犯人はお前ら5人しかいない!」
「消去法かよ!」
「ふふ……さすがは名探偵万丈目サンダーだ。そう、俺たちが黒蠍盗掘団だ!」
「……駄目だ、こいつら」
「それが黒蠍盗掘団!」
夜光はあきれてものも言えない。正体がばれた黒蠍盗掘団は表に出て、万丈目とデュエルを行い鍵を奪うことにした。無論、万丈目はそれから逃げるような真似はしない。
「「デュエル!」」
ザルーグLP4000
万丈目LP4000
-ザルーグのターン-
「私のターン、ドロー!
私は補給部隊を発動し、モンスターを裏守備で召喚。カードを1枚伏せてターンエンド」
特にこれと言った動きもなく、ザルーグはターンを終える。
手札:3枚
場:裏守備
魔法・罠:補給部隊
1枚
-万丈目のターン-
「俺のターン、ドロー!
俺は手札断札を発動。互いに手札2枚を捨てて、デッキからカードを2枚ドローする。さらに手札から捨てられたおジャマジックの効果により、デッキからおジャマ・イエロー、おジャマ・グリーン、おジャマ・ブラックを手札に加える。おジャマ・イエローを召喚」
『おいらたちの力を見せるわよ~ん』
「雑魚は引っ込んでいろ!おジャマ・イエローを墓地に送り、手札の魔聖騎士ランスロットを特殊召喚する」
黒い鎧を着た騎士が万丈目の場に降り立つ。攻撃力2000と上級モンスターにしては心もとない数値だが、序盤戦を任せる程度は可能だろう。
「ランスロットで裏守備モンスターに攻撃!」
「キラートマトの効果により、デッキから首領・ザルーグを特殊召喚する。さらに補給部隊の効果で1枚ドロー!」
ザルーグのデッキはやはりと言うべきか【黒蠍】である。ミーネでサーチできないザルーグをリクルートし、補給部隊でドローブーストと隙を作らない。
「カードを1枚伏せてターンを終了する」
手札:5枚(グリーン、ブラック)
場:ランスロット
魔法・罠:伏せ1枚
-ザルーグのターン-
「私のターン、ドロー!
私は黒蠍-棘のミーネを召喚する。そして、最強の盾をミーネに装備する。これにより、ミーネの攻撃力は守備力分アップする(ATK1000→2800)」
「攻撃力2800だと!?」
「ミーネでランスロットに攻撃!棘の鞭」
棘の鞭で打たれたランスロットが破壊される。
万丈目LP4000→3200
「ミーネの効果により、デッキから黒蠍盗掘団を手札に加える。私自身(ATK1400)でダイレクトアタック!ダブルリボルバー」
ザルーグが2丁拳銃で万丈目を乱れ打ちする。
万丈目LP3200→1800
「私自身の効果により、貴様の手札をランダムに1枚捨てさせる」
『おいらを墓地に送るなんてひどいよ』
「さっさと墓地へ行け!お前のおかげで他のカードが守れたわ」
『ひどいよ、万丈目のアニキ~』
万丈目はデュエルディスクによって選ばれたおジャマ・ブラックを捨てる。蘇生手段が多いおジャマは墓地にあったほうが何かと融通が利くため、ザルーグの効果が裏目に出たと言えよう。
「カードを2枚伏せてターンエンドだ」
「エンドフェイズにリビングデッドの呼び声を発動!アームド・ドラゴンLv3を復活させる」
手札:2枚(盗掘団)
場:ザルーグ
ミーネ
魔法・罠:最強の盾
補給部隊
伏せ3枚
-万丈目のターン-
「俺のターン、ドロー!
この瞬間、アームド・ドラゴンLv3はLv5へと進化する。
レベルアップを発動。アームド・ドラゴンLv5をLv7へと進化させる。さらにLv7を生贄にアームド・ドラゴンLv10を特殊召喚!
おジャマ・グリーンを召喚。おジャマ・グリーンを墓地に送り、ランスロットを復活させる」
おジャマ・グリーンをコストにアームド・ドラゴンLv10の効果を使えば、ザルーグの場をがら空きにすることもできたが、モンスターを1体でも多く出したほうがよいと判断したのか万丈目はランスロットを召喚する。
「行け、アームド・ドラゴンLv10!ミーネに攻撃!!」
「そうはさせん。シフトチェンジ!ぐぬおぉぉぉぉ」
ザルーグLP4000→2400
「私が破壊されたことで1枚ドロー!」
「ちっ、ミーネを破壊できなかったか。カードを2枚伏せてターンエンド」
万丈目はミーネをアームド・ドラゴンの効果で破壊するかどうか迷ったが、手札もそこまで悪くなく、アームド・ドラゴンの攻撃力はミーネの攻撃力よりも高い。カードをバウンスできるゴーグやチックを出したとしてもランスロットの攻撃力には及ばない。仮にザルーグの手札に2枚目の最強の盾等があれば、先のターンで使用しているはず。つまり、強化魔法を手札に持っている可能性は低いと言える。それならば1ターンくらいならば耐えきれると判断でき、カードを伏せるだけにした。
「奇跡の残照を発動。私自身を復活させる」
手札:0枚
場:アームドLv10
ランスロット
魔法・罠:リビデ
伏せ2枚
-ザルーグのターン-
「私のターン、ドロー!
私は黒蠍盗掘団を召喚。トランスターンを発動。黒蠍盗掘団を生贄にデッキから黒蠍-強力のゴーグを特殊召喚する。
死者蘇生を発動。黒蠍-逃げ足のチックを特殊召喚する。さらにリビングデッドの呼び声を発動。黒蠍-罠はずしのクリフを特殊召喚する」
「手札断札のときに黒蠍を墓地に送っていたか。だが、攻撃力はアームド・ドラゴンの方が上だ!」
「そいつはどうかな。連合軍を発動!俺たちの攻撃力を1000ポイントアップする」
ミーネATK2800→3800
ザルーグATK1400→2400
ゴーグATK1800→2800
クリフATK1200→2200
チックATK1000→2000
黒蠍が手を取り合い、攻撃力を上昇させる。これでミーネの攻撃力はアームド・ドラゴンを上回った。
「行くぞ、野郎ども!まずはクリフでランスロットに攻撃だ!トラップナイフ」
「罠発動、ドレインシールド!攻撃を無効にし、ライフを回復する」
伏せカードを破壊されるのはまずいと考えた万丈目はクリフの攻撃を防ぐ。
万丈目LP1800→4000
「ゴーグでランスロットに攻撃!ごうりきハンマー」
「罠発動、ガードブロック!戦闘ダメージを0にし、1枚ドロー!」
ゴーグでアームド・ドラゴンをバウンスされたら、丸裸になってしまう。そのため、万丈目はこのタイミングでガードブロックを発動させるしかなかった。
「ミーネでアームド・ドラゴンLv10に攻撃!棘の鞭」
万丈目LP4000→3200
「ミーネの効果でデッキから必殺!黒蠍コンビネーションを手札に加える。私自身でダイレクトアタック!ダブルリボルバー」
万丈目LP3200→800
「私自身の効果でその手札を墓地に送る。チックでダイレクトアタック!元気槌」
「俺は墓地のタスケルトンを除外することで、このバトルを無効にする」
ギリギリのところで黒蠍の攻撃を耐えた万丈目。だが、どの黒蠍も攻撃力は2000を超えており、やすやすと破壊することはできない。
「ぐぬぬ。私の効果があだになってしまうとは……
しかし、次のターンで黒蠍コンビネーションを発動させれば、私たちの勝ちだ。カードを1枚伏せてターンエンド」
黒蠍コンビネーションは黒蠍全員が揃わなければ発動できないカード。だが、戦士の生還などのサルベージ手段に優れた黒蠍であれば、1体程度やられたところで挽回することは可能だろう。つまり、万丈目に残された道はこのターンで黒蠍を複数破壊するか決着をつけるしかない。しかし、万丈目の手札は0。フィールドに伏せカードもモンスターもいない。このドローにすべてがかかっている。
「俺のターン、ドロー!
マジックプランターを発動。デッキからカードを2枚ドローする。
貪欲な壺を発動。墓地のアームド・ドラゴンLv3、Lv5、Lv7、Lv10、ランスロットをデッキに戻し、2枚ドロー!
トライワイトゾーンを発動。墓地のおジャマ・イエロー、おジャマ・グリーン、おジャマ・ブラックを特殊召喚する。そして、おジャマ・デルタハリケーン!!を発動!貴様のフィールドのカードをすべて破壊する」
「なに!?」
おジャマが宙に舞い、おしりから謎の光線が出てザルーグの場を吹き飛ばす。
「だが、おジャマの攻撃力は0。私にダメージを与えることはできん!次のターン、私が攻撃力800以上のカードを引けば、私の勝ちだ」
「それはどうかな」
「なに!」
「俺は右手に盾を左手に剣をを発動。おジャマたちの攻守を入れ替える。行け、お前たち!」
おジャマたちがパンツを脱ぎ捨て、ペチペチを殴りつけてザルーグのライフを0にする。
ザルーグLP2400→0
「む、無念……」
「お頭~」
ザルーグたちが光り輝き、元の姿である黒蠍のカードになる。単なるコスプレ集団ではなく、どうやら闇の力で実体化し、人間として生活していたようだ。
「万丈目、そいつらどうするつもりだ?」
「ふん。このまま海にでも放り投げても構わんが、せっかくだから拾ってやろう。使う使わないは別だがな」
万丈目は落ちていた黒蠍を拾い、ポケットの中に入れて寮へと帰る。その晩、もう一度寝ようとした万丈目だったが、黒蠍とおジャマがどんちゃん騒ぎしたせいで寝ることができず、拾ったことを後悔するのであった。
久しぶりに執筆したので、うまく書けない。
マスタールール3対応は2期以降になると思います。このタイミングでマスタールール3になるのは不自然だし。