遊戯王GX~Ritual Story   作:ゼクスユイ

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第11話 皇帝

 とある日の昼下がり、夜光が三沢の部屋のインターホーンを鳴らす。

「おーい、三沢。まだ支度していないのか」

「すまない、あともう少しで片付けが終わる。

外で待たせるのは悪いから、中で待って居てくれ」

 部屋から出てきた三沢に案内された夜光は三沢の部屋へと入っていく。

 三沢の部屋は壁一面に見たこともないような複雑な数式が所狭しと書かれており、部屋の中央部にはシステムダウンやクリスティアといったメタカードが散乱している。三沢がそれらのカードを1枚1枚確認しながらカードアルバムの中に入れていく。

 夜光は近くに落ちていたカードアルバムを拾い、パラパラとめくると発売されたパックの日付とカードに小さく書かれているカードナンバーごとに分類されていた。その几帳面すぎる性格に呆れるのであった。

「なあ、三沢。こういう分類分けだと爬虫類族のレベル4モンスター探したいと思ったときはどうやって調べているんだ? まさか、このカードアルバムを1冊1冊調べるのか?」

「そうならないように俺が持っているカードはパソコンにデータベースとして保存している。

俺が構築したデータベースはカード名やレベル、種族・属性だけでなく効果や最新のI2社の裁定を載せている。いずれは世界中の人がいつでも見れるようなデータベースにするつもりだ」

 三沢がパソコンをカチカチと操作し、自身満々にパソコンを夜光に見せる。ブルーアイズとブラック・マジシャンがトップページに書かれている『デュエルモンスターズ データベース』で適当なカードを検索すると、細かい文字で効果の説明や代表的なコンボの一例、三沢のコメントが書かれていた。

「……もう少し文字大きくしたほうが見やすくね?」

「そうか? それなら少し文字サイズいじってみるよ。

……よし、これで片付けも終わりだ」

「それじゃあ行くか、明日香から聞いた抽選会に」

 カードを片付けた三沢と一緒に夜光はサイバー流後継者であるカイザーとデュエルできる数少ない機会である抽選会場へと向かうのであった。

 

 サイバー流はデュエルモンスターズ黎明期の頃に作られた流派であり、心・技・体を日ごろから鍛え、対戦相手を敬うリスペクトデュエルを尊重している。そしてアカデミアにはサイバー流の使い手でもトップクラスのデュエリストであり、アカデミアの成績も1、2位を争う丸藤亮、通称カイザーがいる。彼の優れた容姿から男子だけでなく女子たちからの人気も高い。そのため、彼とデュエルしたいと思う生徒たちは数多くいる。

 しかし、挑まれたデュエルはすべて受けようとするカイザーもアカデミアにいるほぼすべての生徒とデュエルする時間はないので、友人と相談したところ週末に抽選会を開き、運がいい生徒だけがカイザーとデュエルできるようにしたのだ。なお、発案者は明日香の兄、吹雪である。

 会場となる運動場にはレッドやブルーに関係なく数多くの生徒たちが詰め寄り、何かの学園行事かと思うくらい賑わっている。何人かの生徒は校舎や木の上からも観戦しているほどだ。そして運動場に設置された壇上に2年の男子生徒が登り、マイクをとる。

「それでは第54回カイザーと戦うのはだ~れだ抽選会を開きます」

 盛大な拍手が鳴り響き、いたるところからカメラのフラッシュがたかれる。そしてスモークの中からカイザーが悠然と歩き壇上近くに設置されたステージ台へと登り、机の上に置かれた透明な箱の前に立つ。その箱の中には数えきれないほどの応募用紙が入っている。中には用紙のふちにラインマーカーなどで色を付けた者も見受けられる。

 そしてカイザーが箱の中に腕を突っ込み、用紙を取り出す。そして用紙に書かれた生徒の名前を呼び、その生徒とデュエルするのであった。

 

「ダメージステップ時にリミッター解除を発動(ATK5600→11200)!

エヴォリューション・ツイン・バースト!!」

「うわぁぁぁぁ!!」

 

男子生徒LP1900→0

 

 カイザーのサイバー・ツイン・ドラゴンの二回攻撃により、パワーが自慢だった男子生徒のガーゼット(ATK10000)が破壊され、ライフが0となった。

「あれだけやって負けなしかよ。

1回くらい手札事故が起こって負けてもよさそうなのに……」

「今回の抽選会だけじゃない。

カイザーは1年のある時から負けなしだ」

「ある時?」

「天上院吹雪、通称フブキングの失踪事件だ。

それまではフブキングに負けることもあったらしい。

しかし、失踪してからはカイザーの実力に拮抗する者もおらず、公式・非公式問わず全てのデュエルにおいて無敗だそうだ」

「フブキングか。失踪事件が解決したらお手合わせしたいね。

ところでもう一人の失踪者、藤原優介はどういうやつなんだ?」

「ん? 失踪者は一人のはずだ」

「えっ? 俺が知っている話だと二人だっ……」

 三沢に詳しいことを聞こうとしたとき、本日最後の対戦者として夜光の名前が呼ばれる。こんなときに呼ばれることになり、夜光は少し不満そうな表情になる。

「良かったな、夜光。お前の番が来たようだ。

俺の分まで頑張ってくれ」

「……ああ。それじゃあ、行ってくる」

 夜光は気を取り直し、カイザーが待つステージへと向かうのであった。

 

 ステージに上がるとカイザーが仁王立ちをし、挑戦者を待ち構えている。カイザーが放たれる強いプレッシャーを感じた夜光はデータ上の数値よりも巨大に見えた。

「明日香から月一試験のことは聞かせてもらった。

実習生を倒したその実力……見せてもらおうか」

「おう!今の俺が出せる力を見せてやるぜ」

 二人は距離をとり、互いにデュエルディスクを展開する。そして審判のコイントスの結果、先行はカイザーになる。

「「デュエル!」」

 

カイザーLP4000

夜光LP4000

 

-カイザーのターン-

「俺のターン。ドロー!

俺はカードガンナーを守備表示で召喚」

 カイザーの場にキャタピラ走行するおもちゃのロボットが現れる。

「カードガンナーの効果でデッキからカードを3枚墓地に送る」

 

落ちたカード

サイバー・ドラゴン・ツヴァイ

アーマード・サイバーン

ミラフォ

 

 カイザーは最初から墓地肥しを行い、次のターンに備えていく。

「カードを2枚伏せてターンエンド」

 

手札:3枚

場:カードガンナー(DEF400)

魔法・罠:伏せ2枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

俺はガーゴイル・パワードを召喚」

 夜光は自分のデッキの切り込み隊長であるガーゴイル・パワードを召喚したが、攻撃を少しためらった。伏せカードが2枚もある状況下で攻撃するのはリスクが高いのではないかと思ったからだ。しかし、弱気になればカイザーはそこをついて圧倒的な力で攻撃するだろう。夜光はよぎった迷いを振り切り、攻撃命令を与える。

「ガーゴイル・パワードでカード・ガンナーに攻撃!パワード・ビーム」

 ガーゴイル・パワードが口からビームを放ち、カードガンナーを粉砕☆玉砕☆大喝采!

「臆せずに攻めたか。

カードガンナーが破壊されたことにより、1枚ドローさせてもらう」

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

手札:4枚

場:ガーゴイル・パワード(ATK1600)

魔法・罠:伏せ1枚

 

-カイザーのターン-

「俺のターン。ドロー!

俺はリビングデッドの呼び声を発動。墓地のサイバー・ドラゴン・ツヴァイを特殊召喚」

そして地獄の暴走召喚発動。デッキから2体のサイバー・ドラゴン・ツヴァイを特殊召喚する」

 カイザーの場にサイバー・ドラゴンの小型化に成功したサイバー・ドラゴン・ツヴァイ3体が出そろう。地獄の暴走召喚のデメリット効果により、夜行はデッキから場にいるモンスターをデッキから可能な限り召喚できるが、首を横に振る。

「俺のデッキにはガーゴイルパワードは1体しかいない。

デッキ確認するか?」

「いや、構わん。お前の目を見れば、嘘をついていないことはわかる。

俺は3体のサイバー・ドラゴン・ツヴァイの効果発動。手札の融合を見せてサイバー・ドラゴンとして扱う。

融合発動。3体のサイバー・ドラゴンを融合!現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」

 カイザーの切り札である3つ首の機械龍、サイバー・エンド・ドラゴンが咆哮を放つ。

「融合回収を発動。墓地から融合とサイバー・ドラゴン・ツヴァイを手札に加える。

サイバー・ドラゴン・ツヴァイを召喚。

再び、融合を見せてサイバー・ドラゴン・ツヴァイをサイバー・ドラゴンとして扱う。

ゲットライド!を発動。アーマード・サイバーンをサイバー・ドラゴン・ツヴァイに装備する。

アーマード・サイバーンの効果発動。装備しているサイバーモンスターの攻撃力を1000ポイント下げ、フィールド上のカードを1枚破壊する」

 

アーマード・サイバーン(アニメ効果)

ユニオンモンスター

星4/風属性/機械族/攻 0/守2000

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとして

自分の「サイバー」と名のついた機械族モンスターに装備、

または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、

装備モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンし、

フィールド上に存在するカード1枚を破壊できる。

(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。

装備モンスターが戦闘で破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

 

 サイバー・ドラゴン・ツヴァイに青と黄色に塗られた戦闘機が合体する。そしてアーマード・サイバーンはツヴァイからエネルギー供給を受けて、1枚のカードをロックオンする。

「サイバー・ドラゴン・ツヴァイの攻撃力を1000ポイント下げ、伏せカードを破壊する」

「リバースカード、ダメージ・ダイエット!

このターン、受けるダメージを半分にする」

「魔法の筒のような攻撃反応型罠だと思っていたが、フリーチェーンの防御カードだったか」

 カイザー、いやパワーデッキを扱うデュエリストにとって厄介なカードの一つが魔法の筒やディメンション・ウォールといったダメージを跳ね返すカードや次元幽閉などのモンスターを除去する罠である。どれだけ攻撃力を高いモンスターを従えていても、攻撃が通らなければ意味がないのだ。

「機械複製術を発動。

対象は俺の場にいる攻撃力が500となったサイバー・ドラゴンとして扱うサイバー・ドラゴン・ツヴァイ!

デッキから同名モンスター、すなわちサイバー・ドラゴン3体を特殊召喚する。

融合発動。3体のサイバー・ドラゴンを融合!現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!!」

 2体目のサイバーエンドが

「2体目のサイバー・エンド・ドラゴンだと!?

アーマード・サイバーンの対象がダメージ・ダイエットでなく、ガーゴイル・パワードだったらやられているじゃねぇか!」

「何を勘違いしている」

「へっ?」

「俺のメインフェイズはまだ終了していない。

俺はマジック・プランターを発動。リビングデッドの呼び声を墓地に送り、2枚ドロー!

2枚目の融合回収を発動。墓地のサイバー・ドラゴンと融合を手札に加える。

継承の印を発動。墓地に同名モンスターが3体以上いるとき、そのうち1体を特殊召喚できる。

俺の墓地には墓地でサイバー・ドラゴンとして扱うサイバードラゴンツヴァイ2体とサイバードラゴンが2体、合計4体のサイバードラゴンが存在しているため、その発動条件は満たされる。

墓地からサイバー・ドラゴンを特殊召喚する。

融合発動。回収したサイバー・ドラゴンと場のサイバー・ドラゴン、サイバー・ドラゴン扱いのサイバー・ドラゴン・ツヴァイを融合!現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!!!」

「嘘だろ、サイバーエンドを3体同時召喚!?」

「互いに全力を出し切り、相手をリスペクトする……

それが俺のリスペクトデュエルだ!」

「誰だ、カイザーほど紳士的なデュエリストはいないぜとか言った奴は!

明らかに力で押しつぶそうとしているじゃねぇか!

アカデミアの皇帝・カイザーというよりも地獄の皇帝・ヘルカイザーとかの方が似合っているだろうが!!」

 夜光は生徒から事前に聞いていたカイザーの情報と大きく異なり、軽いパニックに陥っていた。珍しい夜光の狼狽っぷりに三沢は驚く。

「1体目のサイバー・エンド・ドラゴン(ATK4000)でガーゴイルパワード(ATK1600)に攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト、ダイイチダァ!」

「ええい、手札からクリボーの効果発動。戦闘ダメージを0にする」

 無数のクリボーが夜光の前に現れ、夜光をサイバーエンドの光線から防ぐ。

「2体目のサイバー・エンド・ドラゴンでダイレクトアタック!エターナル・エヴォリューション・バースト、ダイニダァ!」

 

夜光LP4000→2000

 

「フィールド上にカードが存在しないときにダメージを受けたことで冥府の使者ゴーズとカイエンを守備表示で特殊召喚する」

 夜光の前に現れる2人の冥界の使者。しかし、彼らでもサイバー・エンド・ドラゴンの圧倒的な攻撃力の前では霞んでしまう。

「冥府の使者ゴーズ……珍しいカードを使うな。

だが、サイバー・エンド・ドラゴンの方が攻撃力が上。さらに貫通効果が備わっている。

サイバー・エンド・ドラゴン(ATK4000)でカイエン(DEF2000)に攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト、ダイサンダァ!」

 

夜光LP2000→1000

 

 サイバーエンドの攻撃を受けたカイエンは跡形もなく消滅し、夜行は大きく吹き飛ばされてしまう。

「ターンエンドだ」

 

手札:0枚

場:サイバーエンド×3(ATK4000)

魔法・罠:なし

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

俺は一族の結束を発動。

そして奈落との契約を発動。レベル7冥府の使者ゴーズを生贄にガーランドルフを儀式召喚!

ガーランドルフの効果発動!ガーランドルフの攻撃力は一族の結束の効果により3300。よって守備力2800のサイバーエンドはすべて破壊だ!!」

 ガーランドルフがサイバー・エンド・ドラゴンの懐に飛び込み、爪先に闇の力を凝集させ、サイバーエンドの首を切断させる。サイバーエンドも反撃を試みようとするが、巨体ゆえに懐にいるガーランドルフに攻撃することができない様子だ。そうこうしている間にガーランドルフはサイバーエンドの首を次々と切り落とし、破壊していく。

「サイバー・エンド・ドラゴンをこうも簡単に破壊するとは……」

「圧倒的な攻撃力を誇るサイバー・エンド・ドラゴンもカード効果には耐性がないという弱点があるからな。

ガーランドルフの攻撃力は自身の効果により300ポイントアップする。(ATK3300→3600)

ガーランドルフでカイザーにダイレクトアタック!」

 ガーランドルフがカイザーの腹に殴りつける。あまりの衝撃にカイザーは膝をついてしまう。

 

カイザーLP4000→400

 

「これ以上することはないから、ターンエンドだ」

 

手札:0枚

場:ガーランドルフ(ATK3600)

魔法・罠:一族の結束

 

-カイザーのターン-

「俺のターン。ドロー!

俺はアームズ・ホールを発動。このターンの通常召喚を封じる代わりに、デッキトップを墓地に送り、デッキ・墓地から装備魔法を手札に加える。

俺はデッキから継承の印を手札に加える。

継承の印の効果発動。墓地からサイバー・エンド・ドラゴンを復活させる!」

 再びカイザーの場に現れるサイバー・エンド・ドラゴン。先のターンでガーランドルフにやられたせいかサイバーエンドは怒りに燃え、睨めつけているようにも見える。

「サイバー・エンド・ドラゴンでガーランドルフに攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 サイバーエンドの圧倒的な極太のビームがガーランドルフに向けられ、ガーランドルフは跡形もなく消滅する。

 

夜光LP1000→600

 

「くっ、ガーランドルフが……」

 夜光は自身の切り札がすぐさま破壊されたことに歯噛みする。

「俺はこれでターンを終了する」

 

手札:0枚

場:サイバーエンド(ATK4000)

魔法・罠:継承の印

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

俺は一時休戦を発動。互いにカードを1枚ドローし、カイザーのエンドフェイズまで互いに受けるダメージは0になる」

(このカードは……!?

どうする? この状況ならデメリットはほとんどないが……)

 夜行は引いたカードを見て、使う・使わないの帰路に立たされる。

「……ターンエンド」

 夜光は逡巡した後、次のターンにすべてを託しターンを終える。

 

手札:1枚

場:なし

魔法・罠:一族の結束

 

-カイザーのターン-

「俺のターン。ドロー!

俺はカードを1枚伏せてターンを終了する」

 カイザーもこのターンは大きく動くことはなかった。しかし、夜光の場にはモンスターがなくカイザーの場には攻撃力4000のサイバーエンドがいるため、劣勢には変わりはない。

 

手札:1枚

場:サイバーエンド(ATK4000)

魔法・罠:継承の印

     伏せ1枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

俺はアームズ・ホールを発動」

「俺と同じカードを使うか」

「あんたも使うとは思わなかったけどな。

このターンの通常召喚を封じる代わりにデッキトップを墓地に送り、デッキから装備魔法、リチュアル・ウェポンを手札に加える。

そして儀式の準備を発動。デッキからデビルズ・ミラーを手札に加え、墓地の高等儀式術を手札に加える」

「アームズ・ホールで墓地に落としたか」

「その通りだ」

 高等儀式術はこのデュエル中に一度も使われておらず、手札断札のような手札交換カードも使用していない。そのため、高等儀式術を墓地に送ることができるタイミングはアームズ・ホールの時しかなかった。

 運が良いと言えばそこまでだが、カイザーは単に運だけではないと考えていた。なぜなら、先のターンで一時休戦を使った後、ターンを終了するまで時間がかかっていたからだ。そのことから、カイザーはおそらく一時休戦で引いたのはアームズ・ホールだと推測していた。もし通常召喚を封じられるのを嫌い、先のターンにアームズ・ホールを使っていれば、儀式の準備は墓地に送られ、逆転劇はなかっただろう。まさにデッキを信じる心がなければ、起こりえなかった一撃と言えるだろう。

「高等儀式術を発動。デッキのレベル3深淵の冥王とレベル3ゴーゴンエッグを墓地に送り、レベル6デビルズミラーを儀式召喚!

デビルズ・ミラーにリチュアル・ウェポンを装備する。

こいつはレベル6以下の儀式モンスターのみ装備でき、攻撃力・守備力を1500ポイントアップさせるカードだ」

「あの雑魚モンスターの元々の攻撃力は2100だから……」

「よし、デビルズ・ミラーの攻撃力は一族の結束とリチュアル・ウェポンの効果で2300ポイント上昇し、攻撃力4400だ」

 デビルズ・ミラーに怪しげなオーラが纏われる。この場だけとはいえサイバーエンドを上回り、古代の機械究極巨人に匹敵する攻撃力を持つようになったデビルズ・ミラーを見て、唖然としている生徒が多数を占めている中、数名の生徒が今起こっていることを冷静に見ようとしている。

「デビルズ・ミラーでサイバー・エンド・ドラゴンに攻撃!魔鏡滅殺光」

「この攻撃が通れば、夜光の勝ちだ!」

 三沢の勝利宣言とともにデビルズ・ミラーにサイバーエンドの姿が映し出される。そして鏡の中のサイバーエンドがパリンと割れると現実のサイバーエンドが破壊され、サイバーエンドの部品がカイザーに襲い掛かる。

「リバースカード、ダメージ・ダイエット。戦闘ダメージを半分にする」

 

カイザーLP400→200

 

「惜しい、削り切れなかったか。ターンエンドだ」

 

手札:0枚

場:デビルズ・ミラー(ATK4400)

魔法・罠:一族の結束

     リチュアル・ウェポン

 

-カイザーのターン-

 カイザーは自分の手札とフィールドを再度確認する。

(俺の手札は伏せカードを破壊するナイトショットのみ。そして夜行の場にはサイバーエンドよりも攻撃力が高いデビルズ・ミラー。

……このターンのドローですべてが決まるか)

「俺のターン!」

 カイザーが勢いよくカードを引き、そのカードを見ると口元が緩む。

「どうやら俺のデッキもお前を認めたようだ。

見せてやろう、サイバー流のもう一つの切り札を……

俺は墓地のサイバー・ドラゴン3体、サイバー・ドラゴン・ツヴァイ3体、サイバー・エンド・ドラゴン3体を除外し、サイバー・エルタニンを特殊召喚!!」

「サイバー・エルタニンだと!?」

 巨大な龍の頭部を模した胴体から9体のサイバー・ドラゴンの頭部が生えた兵器がカイザーの場に現れる。吹雪の失踪事件以来、召喚されることがなかったカイザーの切り札が夜光を睨み付ける。

「サイバー・エルタニンの攻撃力は除外した光属性・機械族モンスターの数×500ポイントとなる。よってサイバー・エルタニンの攻撃力は4500!

サイバー・エルタニンの更なる効果発動。このカードが特殊召喚に成功したときこのカード以外の表側表示のモンスターをすべて墓地に送る。コンステレイション・シージュ!」

 エルタニンの攻撃を受けたデビルズ・ミラーは抵抗もむなしく消滅する。夜行の場にはモンスターも伏せカードもない。エルタニンの攻撃を防ぐ手段がない夜光の敗北が決まった瞬間であった。

「あの状況をたった1枚のドローで覆した……!?」

「これが俺の全力だ!サイバーエルタニンでダイレクトアタック!ドラコニス・アセンション!!」

 

夜光LP600→0

 

 エルタニンの攻撃を受けた夜光はステージ端まで吹き飛ばされる。カイザーは夜光のそばに近づき、手を差し伸べる。

「久しぶりに俺の全てを出し切ったデュエルをすることができた。礼を言う」

「久しぶりにって……

今まで全力じゃなかったのかよ」

 夜光はカイザーの手を取り、立ち上がる。そしてカイザーは先の言葉を否定するかのように首を横に振る。

「そういう意味ではない。俺はどんなときで全力をだしている。

ただ限界まで追い詰められ、心の底から楽しむことができるデュエルができたのは吹雪や藤原が居たとき以来だ」

「アカデミアの三天才と並べられるなんて照れるな。

今度、機会があればデュエルをしようぜ」

「ああ。その時を楽しみにしている」

 互いに握手した後、ステージから降りていく二人。互いの友人に囲まれ話をしているとき、二人はほぼ同時に一つのことに気づく。

((なぜ、あいつは藤原のことを知っている……!?))

 二人は後ろを振り返り、相手の顔を見る。今にもそのことを話したいと思う。だが、関係がない人間が数多くいるこの状況下では聞くことができない。そう遠くはない未来に彼らは藤原のことを聞こうと心の中で決めるのであった。




久しぶりに小説を投稿しました。
いや~、GWに間に合ってよかった。仕事は忙しい。

アーマード・サイバーンは自分の【表サイバー】に3積みしているモンスターです。
複製術で3体召喚してルーラー出したり、デブリで釣って千鳥にしたりと意外と万能な奴です。
アニメ効果でOCG化していたら、ゲットライド!を投入していたかも。
今の環境ならアニメ効果でもいいのではないかと思う。
環境の変化って怖いね。

それでは数か月後にお会いしましょう。

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