真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~ 作:スペル
短期のバイトのせいで、更新が止まってましたが漸く再開です
久しぶりなので、短く話はさほど進んでいませんが、楽しんでくれたら嬉しいです
戦場各地で、西方十勇士と川神学園の武士娘達らを筆頭に、戦闘を開始した事で、戦の流れが再び変わり始める。
その恩恵を特に受けているのが、川神学園だ。強敵である西方十勇士の動きを止めた。
それだけで、彼らに討たれる確率は減り、天神館本陣に近づく事が出来ている。
しかし彼らはまだ、十勇士が半数近く残っていると言う意味を理解してない。
「よし!マルさんと京のお蔭で、大部分が進軍出来たぞ!!」
ある程度、安全な距離まで進んだクリスは、自分達を進ませてくれた仲間である、マルギッテと椎名への感謝の言葉が自然とこぼれる。
「おいおい。まだ感謝すべきときじゃねえだろ?感謝するのは、敵大将を討ち取った時。違うか?」
そう言ってクリスを諌めたのは、井上準。S組の良心とも言われている人物であり、葵冬馬の幼馴染であり、右腕である。
しかも、なかなかの実力者であり、男子の中では間違いなく、五本の指には入るほどだ。
優しく気配りも出来る人物な訳だが、欠点が一つ 重度のロリコンなのだ。
しかし腕は確かなので、今回の進軍の副将としてクリスを支えている。
「む!確かにその通りだな。済まなかった。以後、気を付けよう」
「いやいや。わかってくれたなら、問題ない(こいつ...マジで将としての資質があるな。流石は中将の娘って所か)」
そう言いつつ準は、今までの進軍を思い出し、クリスの非凡な指揮能力の高さを認めていた。
事実、クリスは、大友の砲撃や毛利の狙撃に怯える、面々を落ち着かせ、無事に突破したのである。
「よし!此処までくれば、恐れる者はない!!一気に、敵本陣に進撃する」
「ああ、異論はないぜ。大将」
そう言って、クリス達は、再び進軍を開始する。
しかし、数メートル進んで直ぐに、その動きは停止する。その理由は、至極単純なモノだ。
「おい、クリス」
「ああ。この先に、誰かいるな」
クリスと準の二人が、自分達が進む先から発せられる、闘気に気が付いた事に他ならない。
「普通に考えると、十勇士の誰かだな。それで?どうするよ。迂回するか」
「いや。それだと、マルさんや京の負担が大きくなる。このまま進む」
「...わかった」
準は、クリスの意思を尊重した。それが、将としての言葉ではなく、私情の言葉である事を理解していながら、止める事はしなかった。
その決断が、果たして正しいのかどうか、誰にも分からない。それでも彼らは、進むしか出来ないのだ。
大将である、クリスの言葉をただ信じて。
そうやって、慎重に歩を進め、前進していくクリス達の前に、
「ゴホッ!川神には、俺よりも優れた技術者がいるのか!!」
咳き込みながら、手に持ったパソコンを落とし、愕然と呟く大村の姿が映った。
◆◇◆◇
クリスたちが、大村と相対した時と同じくして、川神本陣。
「!。英雄様」
「うん?どうした、あずみよ」
「しばし、この場から離れさせて貰います」
「何かあったのか」
「いえ。英雄様がお気になされる事では、ありません。私一人で、十分対処できますので」
「よかろう。ならば、何も言うまい。頼んだぞ、あずみ」
「きゅるるるるん。はい、英雄様!!」
そう言って英雄と話してたのは、九鬼のメイドであり、英雄専属である忍足あずみ。
英雄に心酔する元風魔の忍びである。
「と言う訳だ。てめえも来い」
「どう言う訳なのじゃ!!」
因みに、英雄の前では猫を被っている。
「うるせえな。黙って付いてきやがれ!!」
「ぬわぁぁ!は、離すのじゃ!そもそも、お主は一人で十分と言っておったでは無いか」
「うるせえ!!英雄様の前だから、かっこつけただけだ。一人で、十分だと思うが、英雄様の信頼を、裏切る訳にはいかねえ。だから、保険の意味でお前を連れて行く」
「全て、お主の勝手ではないか!!」
「それにな、あたいも誰でもいいって訳じゃない。お前の実力を買っているからこそ、連れて行くんだよ」
そのあずみの言葉を聞いた、不死川の機嫌がみるみると変わっていく。
「そうか、そうか。此方の実力を認めているか。よかろう!此方が、力になってやろうではないか」
不機嫌だったモノが、上機嫌なモノに変わっていく。その姿を確認したあずみは、笑みを浮かべながら、
「(やっぱ、こいつは、ちょろいな)ああ、よろしく頼む」
「勿論なのじゃ」
不死川を引き連れ、本陣の裏側に向かっていく。そうやって、ある程度進んだ場所で、彼女たちは激突する。
「なんや、敵が目の前に居るで」
「気づかれたか」
あずみと不死川の目の前に、部隊を率いた尼子と宇喜多が現れる。
「ちぃ。思ってたよりも多い」
「ふん。何人いても、此方らの敵ではないわ」
敵の多さに舌打ちするあずみと、余裕の姿を崩さない不死川の姿に、尼子と宇喜田も武器を構える。
「なんや、えらい、不思議な敵やな」
「ああ、メイドと着物とはな」
「それにしても、あの着物なかなかに高そうやな」
「お前もブレないな」
敵の姿を納めても、全く緊張を見せずに、話し合う二人。その姿を見ていたあずみは、静かに警戒心を露わにする。
「厄介だな」
静かに、クナイを構えるあずみの姿を確認した尼子が、面白いと言わんばかりにあずみに告げる。
「お前の相手は、西方十勇士の一人 尼子晴がしてやろう」
宣言と共に、自分の武器である鉤爪を構える。
「はん。一人で、あたいを相手どるってか?随分、舐められたもんだぜ」
「だれが、ひとりといった?」
尼子の言葉に反応する様に、後ろにいた兵達も武器を構える。
「自慢の尼子隊も当然参加だ」
「まあ、当然か」
二人が、武器を構え間合いを測り始めたころ。
「つう事はや、うちの相手は、そこの高そうな着物着たあんたか」
「にょほほほ、其方如きが、此方の敵を名乗るとは、愚かじゃの」
「ほぉ、言ってくれるやんけ」
不死川の挑発にとれる言葉に、宇喜多は怒りに顔を歪めながら、武器であるハンマーを構える。
そのまま、突っ込んでいこうとした宇喜多だが、
「!。あかんあかん。冷静に確実にや」
何かを思い出したのか、頭を振り足を止めて、自分の感情を鎮める。
「さて、仕切りなおしていこか」
そう言って、自分の武器を改めて構える。
「何じゃ、攻めて来ぬか」
「そらそうやろ。見たとこ自分、柔術を使う見たいやし。うちとの相性最悪やん。そんな相手に、バカ正直に攻めたりはせんで」
「無駄な事なのじゃ。何をしても、此方の勝ちは決まっておる」
「それは、戦ってみなわからんやろ?」
不死川の言葉に宇喜多は、不敵な笑みを浮かべながら返す。
その笑みは、不死川に恐怖心を与える程に、意味深なモノであった。
「ふん、口だけは、達者の様じゃな」
不死川は、自分が感じた恐怖心を隠すために、あえて言葉に出して話す。
しかし、宇喜多は答えず、静かに間合いを測り始める。
二人の戦いは、宇喜多が先手を取る形で、始まった。
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