「痛ぇ」
山田晃助は鈍い痛みにより意識を覚醒させた。
「なんだココ」
自分は自室で気を失ったはず、ならば起きる場所も自室であるはずだ、だが自分が座っている場所は原っぱだ。
「…………ハァ!?」
まだ若干頭が回っていないが、なぜ俺の手には草の感触がある? なぜ青臭い刺激が鼻をつく?
服装は帰ってすぐに食事をして(手は洗ったが)自室に入りそこで気を失ったので制服のままだ、持ち物は、
携帯電話、ハンカチ、絆創膏、以上三つ学生が普段持ち歩いているものではこの状況を打開できない。
とにかく頭を起こす運動がてら散策しよう。晃助はそう判断し立ち上がった。
歩いて数十分してなにやら大勢の人々の騒ぎ声が聞こえた、とにかくここが何県で駅の方角を知らなければ、
喚声のする方へ行き誰でもいいから教えてもらおうと晃助は草を掻き分け走り出したがそこには――――
「おぉぉぉ」
「おのれぇ雑魚が」
「うがぁ」
「ぎゃあぁぁぁ」
「……あ~殺し合い中ですか~」
平原で戦が行われていたのだが、あまりにも自分の日常とかけ離れた状況に気の抜けた反応をしてしまった。
すぐそばには腹から槍を生やした足軽が倒れている、近寄って調べてみると、半分白目をむいて死んでいた。
「……ハァ、…………マジで? ……え? ……ちょっとなんだコレ」
普段の穏やかな日々とは正反対の喚声、雄叫び、悲鳴、そして目の前の死体と来て晃助は状況を理解していく、彼の周りをよく見て判断する力はこの時、
彼は目の前の出来事を現実として受け入れてしまっている、それで正解だなにせ現実なのだから仕方ない、
下手な現実逃避や否定ができない、混乱と狂乱に心身共に任せて叫びだせば、彼は救われたか? ……否
そんなことをしても時間の無駄だ、血と闘争本能に溺れた兵士共に気付かれ彼は首になるだろう。
「…………」
だがそれでも晃助は冷静になること、落ち着くために時間が必要だった。
親戚の葬式に何度か参加している彼にとっても、生々しい死体と必死に相手の命を奪おうとする兵士たちを目の当たりにして衝撃が大きかった。
時間にして二分程、彼は足軽の目を閉じさせ手を合わせた、そして足軽の腰に差してあった刀をとると。
「冥途に
そう言い訳して森に走り出した、こんな見晴らしのいいところにいては、戦闘に巻き込まれる恐れがあったからだ。
平原から見えないくらいに進むと晃助は歩みを止め、考え始めた。
「ココはどうやら俺が本やゲームで知っているような世界であそこにいたのは、最低二つ以上の勢力……戦の理由はわからんが、ここから遠くない場所でも殺しあっている可能性が高い」
声に出して確認と推測をすることで自分を鼓舞する意味がある。
推測については、たとえ間違っていても己に自信を与えなければ、なんの拠り所もないこの世界で自分を守れないからだ。
「なんにせよ情報を集めることに変わりはないんだ。非戦闘地帯まで進み農民や商人から情報を引き出す。
まぁその場合この格好は面倒だな」
戦国時代といえば千五百年代から千六百年代だ。
(どの位か分からないが南蛮渡来の服と言えば誤魔化しが利くか? いや肌の色からして日本人の俺がこれを着ているのはおかしい、ああどうしようか……あ! さっきの足軽から服をはぎ取ればしくったわ~)
「………もしくは」
ガサガサ
「!?」
「!?」
「なっ何者だ!!」
(この戦場で聞くかなんだよな)
突然右も左もわからず、味方・庇護者もいない世界に放り出されることはとても恐ろしいことです。
まぁ創作主人公だからここまで冷静なんですけど,,