東京喰種と仮面ライダー鎧武のクロスオーバー(?)作品になります。
鎧武の世界観がわかっていないと、ポカーンかもしれません。
それではどうぞ。
沢芽市。
ユグドラシル・コーポレーションが支配する、発展都市。この閉塞された町で、市民たちはユグドラシルの管理のも
と、穏やかな暮らしを提供されていた。
町の中央に立つ、ユグドラシルタワー。ユグドラシル・コーポレーションの本社である。
神話に出てくるような大樹をイメージした建造物を、喫茶店の窓越しから見つめているのは……1人の少女。
『ユグドラシル・コーポレーションがお送りする、理想的な世界を…』
テレビのCMが流れる。
「理想的な世界……」
そんなもの………私にはない。
私の理想的な世界なんて……。
「私は…世界に受け入れられることのない存在……。」
私……紅宮 深雪(あかみや みゆき)はコーヒーを飲み干し、喫茶店を出た。
今日の沢芽市も平和だ。人々は笑顔で暮らし、若者達はストリートでダンスを楽しむ。
私は一つのステージに目が止まった。
「キャー‼︎鎧武サイコー‼︎」
「いいぞ鎧武ー‼︎」
青のパーカーに身を包み、ステージで舞うのは……ビートライダーズチーム、チーム鎧武。
この町の若者達の間では、ビートライダーズと呼ばれるストリートダンサーたちのパフォーマンスが流行しているのだ。
〜っ、………
音楽が止まる。これは……
「始まった……。」
ステージのスピーカーのカード…ビートライダーズが踊るための音楽を流すのに必要なカードを抜いた黒いジャケットの男。
その後ろには数人の、同じジャケットを身に纏った男達。
チームレイドワイルド。それが彼らのチーム名だった。
「このステージを頂きに来たぜ……チーム鎧武よぉ‼︎」
レイドワイルドのリーダー、初瀬 亮二が吠える。
そこへ、ステージ端から1人の男が飛び出してくる。
「分かってるよな?負けたらそっちのロックシードは、全部俺たちが貰う‼︎」
チーム鎧武の葛葉 紘汰が言い放つ。
「上等だ…‼︎」
初瀬は両手に…ロックシードと戦極ドライバーを取り出した。
インベスゲーム。それが、若者達の間で流行しているゲーム。ロックシードと呼ばれる錠前から怪物…インベスを呼び出し、バトルさせる。勝ったビートライダーズチームは、ダンスのための場所を確保、敗北チームからロックシードを奪うことが出来る。
そしてその勝敗は、ビートライダーズのランキングにも反映される。
ランキング上位に上がるほど、特別ボーナスが手に入るため、ビートライダー達はロックシードを手に、ランキングのため、自らの存在を主張するため、バトルをするのだ。
そしてここ最近になり、ビートライダーの新たな戦力、アーマードライダーというのも現れた。
戦極ドライバーと呼ばれるベルトを装着し、ロックシードの力で変身する、鎧を身に纏った戦士のことだ。
チーム鎧武の葛葉も、戦極ドライバーを取り出した。
2人はお互いに装着。
「行くぜ‼︎ 変身‼︎」
「変身‼︎」
そして、お互いのロックシードが解錠された。
『オレンジ‼︎』
『マツボックリ‼︎』
葛葉と初瀬の頭上からファスナーが現れ、そこから果実の形をした鎧が現れる。
2人はロックシードをドライバーに装着し、ロックを閉じる。
『ロック、オン‼︎』
法螺貝の音色が鳴り響く。2人は戦極ドライバーのブレードで、ロックシードをカット。
『ソイヤッ‼︎』
『オレンジアームズ‼︎花道・オンステージ‼︎』
『マツボックリアームズ‼︎一撃・インザシャドウ‼︎』
葛葉の頭にオレンジが被さり、鎧に展開。同じく初瀬の頭にもマツボックリが被さり、鎧に展開した。
これがアーマードライダー。葛葉の変身した鎧武、初瀬の変身した黒影がお互いに武器を持ち、睨み合う。
「うおらっ‼︎」
黒影が専用の槍、影松を振るう。鎧武はそれをオレンジ型の刀、大橙丸で受け止める。
「甘いぜ‼︎うおおっ‼︎」
大橙丸で影松を弾き、黒影に蹴りを入れる。
「くっ…このやろぉっ‼︎」
黒影が飛びかかる。そこに鎧武が、腰に差した無双セイバーを引き抜き、横に振るう。
「うおらっ‼︎」
「ぐああっ‼︎」
黒影が吹き飛び、地面に叩きつけられる。
「これでどうだぁっ‼︎」
鎧武は、ドライバーの刀を二回切った。
『ソイヤッ‼︎ オレンジオーレ‼︎』
鎧武は飛び上がり、黒影に急降下してくる。
「セイハーッ‼︎」
鎧武のキックが黒影に炸裂。黒影はステージから吹っ飛ばされた。
「ぐわあああああっ‼︎」
黒影は強制的に変身解除され、ベルトからロックシードが外れ、鎧武の手元に飛んできた。
「いよっしゃああっ‼︎」
鎧武の叫びとともに、観客も叫ぶ。
「アーマードライダーカッコいいぜー‼︎」
「鎧武ーっ‼︎」
私は呟く。
「アーマードライダー……鎧武…。」
現在のビートライダーズのランキングトップはチーム鎧武。アーマードライダーを初めに使ったチーム。多くの強豪チームを破り、最下位からトップに躍り出たのだ。
まさに下克上。実力が結果を呼ぶ。
「………。」
私は歓声に包まれるステージを後にした。
「こいつがオススメだがどうだい?」
「よし、買った‼︎」
フルーツパーラー、ドルーパーズ。ビートライダーズの休息の場、そして、ロックシードの取引の場でもある。ここにはロックシードを販売する錠前ディーラー・シドと呼ばれる男がいる。
シドを横目にコーヒーを啜る。
ロックシードを買ったビートライダーが出ていった後に、私はシドに歩み寄る。
「おや、いらっしゃい。あんたは確か……あぁ、無所属の孤独ビートライダーか。」
シドはロックシードをいじりながら、私に不敵な笑みを浮かべる。
「あんた……何がしたいんだい?ランキングの反映は小さいものなのによ、他のインベスゲームに乱入してはを繰り返し…」
「……私には、戦いしか生き甲斐が無い。」
私はシドの前に座り、彼の目を見つめる。
「生まれた頃からそうだ。生きるために戦ってきた。孤独に。そして、この町に迷い込んだ時、確信した。この町は戦いの盛んな町。ここなら、私の居場所が見つかるはず。」
「ほう……なるほどな。」
「居場所を探すために戦う。そのために私は、この力を使う。」
私はロックシードを取り出した。それは、血のような赤黒さを持った……ワイルドストロベリーロックシード。
「はははっ……あんた面白いねぇ……気に入ったよ。」
シドはスーツケースから……戦極ドライバーを取り出した。
「……何のつもり?」
「気に入っただけさ。存在意義を探すために戦うあんたに。それに、ゲームは複雑な方が盛り上がるしな…。」
戦極ドライバーはテーブルの上に置かれる。私はそれを手に取った。
「お代は結構だ。出血大サービスだ。」
「……それはどうも。」
私はドライバーとロックシードを懐にしまい、シドのいる部屋を出て、金を置いて店を出た。
夜。私はビルの裏を進んでいた。ここには、私の『食糧』があるのだ。
「……やはり、この町に『喰種』はいないか。」
喰種-グール-。それは、人間を食べることでしか生活出来ない亜人種。
私はかつて、喰種の蔓延る町で生きていた。地獄のような日々を送った。喰場を奪われ、誰からも助けられることもなく、腹を空かせ、飢えに苦しみ……何人もの人間を手にかけた。
人を殺すことには慣れ切ってしまった。そんな感情に恐れを感じたのも束の間だった。
私はその町を抜け出し、彷徨う。毎日、1人を殺して喰らい、空腹を満たしては進む。
そうやって転々と町を歩き渡り、辿り着いたのが……沢芽市だった。
喰種のいないこの町なら、私は自由になれる。
そう思い、私はこの町に身を置いているのだ。
この町で強くなる。ビートライダーズを全て倒し、この町の支配者になる。そうすれば生き甲斐も存在意義も生まれ、私は本当の私を見つけられるはず。
私の『食糧庫』……ビルの裏にある倉庫。そこを開くと……一体の死体。昼に自殺した男の死体で、病院の裏から運んできた。
「良かった、盗られてない……」
やはり、この町に喰種はいないか……。
かつては、こうやって蓄えた死体を盗まれたりしたことがよくあった。ほぼ毎回だった。でも、もう大丈夫だ。
ここにいる喰種は……私だけ。
「ちゃんとした喰場で食べられるなんて……幸せ。」
私は死体の腹部を抉り、内臓を全て引き摺り出し、血に塗れながら、それを口に入れた。
美味しい……もっと食べたい。
私はその死体を、肉を全て削ぎ落として口にし、その場を後にし、帰路についた………。
こんな感じでやっていきます。
次回は深雪ちゃんの初変身です。ご期待ください。
感想などお待ちしております。ドシドシよろしくお願いします。