ふたりはヒーロー   作:かきねん

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風邪引いた(´・ω・` )
頭がぐわんぐわんする…


皮肉なヒーロー

ーーー???ーーー

 

ローマ正教にはとても優秀な隠秘記録官の男が居ました。

 

少しでも魔術で救われる人のために仕事をこなしていた彼は、魔術図書館の不幸な少女と出会いました。

 

彼は不幸な少女の教師役を買って出ました。

 

しかし、彼は少女が1年ごとに記憶を消去しなければ脳がパンクして死んでしまうと知りました。

 

少女の記憶を消さなくても済むように、彼は碌な睡眠も取らずに打開策を探し続けました。

 

しかし、その方法が見つからないまま1年が過ぎてしまいました。

 

彼は泣いて泣いて泣きじゃくりました。何故少女がこんなにも不幸であるのかと。

 

少女は記憶を消す前に言いました、『ごめんね』と。

 

記憶が少しでも残ってくれればと思った彼は記憶を消去された少女に自分のことを覚えているかと尋ねました。

 

すると、少女はまたしも『ごめんね』と言いました。

 

絶望した彼はローマ正教から逃げ出し、世界を敵に回しました。彼は錬金術師である自らの力を使って吸血鬼を作り出し、その吸血鬼に少女の血を吸わせることによって少女を不老不死にしようと考えました。

 

しかし学園都市には吸血鬼を呼び集め、血を吸った者を殺す、吸血殺しという原石の少女が居ることが判明しました。

 

彼は学園都市に侵入すると吸血殺しの少女を監禁し科学宗教施設と化していた三沢塾という塾を乗っ取り、吸血殺しの少女と手を組みました。

 

ーーーファストフード店ーーー

 

(そォいえばよォ)

 

(ん? どうしたんだ?)

 

吸引力の変わらないただ1人のインデックスによって大量のハンバーガーが吸引されていく中、一方通行が上条に問いかける。

 

(なァンで俺たちの目の前には明らかに不審者チックな巫女さンが居るんですかァ!?)

 

(ああ、こいつは姫神って言ってな、吸血殺しっていう能力の原石だからって三沢塾に監禁されてるんだよ)

 

(……ごめン、何だその能力?)

 

吸血殺しなんて言っても知らない人は全くわからないだろう。ましてや科学サイドの一方通行が吸血鬼を認めるわけがない。

 

(居るのかどうかもわからない吸血鬼を呼び集めて、姫神の血を吸ったら灰になるっていう能力だよ)

 

(吸血鬼ィ?? 三下はそこまでアタマがお花畑だったンですかァ?)

 

(お前も魔術を知ったんだからちょっとは認めろよ!!それに、魔術サイドでも能力が判明してるだけで吸血鬼自体は確認されていないらしい)

 

(つまりあれかァ? 能力が存在するンだから吸血鬼も存在するだろォっていうことかァ?)

 

(……お前はホントに賢いよな)

 

姫神が100円を求めてきたり黒服に連れて行かれたりしていたが一方通行のせいでさっぱり気づいていない上条であった。

 

「いいの。私。先生達になら気付いてもらえるから」

 

ーーー三沢塾ーーー

 

キングクリムゾンッ!!

 

なんて上条は都合良く時間を消し飛ばして『結果』だけを残せるわけもなく、今は唐突に現れたステイルと三沢塾を攻略中である。

 

インデックスは前回とは違って神裂が面倒を見ているそうだ。

 

「ほらステイル、さっさと行こうぜ! 結界があるからエレベーターは無理だぞ!! 」

 

「……前から思っていたけどなんで君は一般人のくせにそんなにも知識が豊富なんだ……」

 

(ちったァ自重しろォ……)

 

上条とステイルはエレベーターではなく階段をひたすら駆け上がった。

 

しかし何事にも順調に行くわけではなく、途中で三沢塾の生徒たちに出会った。

 

ただの一般人なら何も問題無かったのだが、彼らは一斉に魔術の詠唱を始めた。

 

すると生徒たちの目の前には青く光る球体が現れる。

 

「君の出番だ」

 

「わかってるよ!! 」

 

(オイオイ無茶しすぎじゃねェか!?)

 

ステイルが上条の背中を押す前に上条は駆け出した。

 

(じゃあ一方通行、頑張れ!!)

 

(はァ!?)

 

上条が生徒たちに向かって走っていく途中にわざと意識を手放して倒れそうなフリをすると、即座に一方通行が主導権を握り、立ち直した。この状態で転べば顔が悲惨なことになりかねないからだ。

 

その時の上条(一方通行)の顔は酷く歪んでいた。

 

「なァンでこォなるンだあァァァァァァ!!!! 」

 

上条(一方通行)は絶叫しつつも生徒たちと光弾の間を駆け抜けていく、と言っても飛んでいるわけだが。

ベクトル変換を使っているので、自動車の最大速度ぐらいのスピードは出ている。

 

当たりそうになった光弾は全て幻想殺しで打ち消しているものの、上条の体の神懸かり的な反射神経でなければ到底不可能な領域のワザである。

 

「後でぶち殺してやるからな三下あァァァァァ!!!! 」

 

(ブラックコーヒー缶1本でどうだ?)

 

「対価に合ってないわァァァァァ!!! 」

 

「……インデックス、君のパートナーは少々異常じゃないかい? 」

 

ケンカ(傍から見ると1人で叫んでいるただの変人)しながらも上条(一方通行)はちゃっかり生徒たちを撒いた。暗部の勘は意外と鈍っていないようだ。

 

もっとも一方通行は最強である故に逃げることなど無かっただろうが……逃走のノウハウは知っているのだろう。

 

「ぜェ……ぜェ……いつかグツグツのシチューにしてやる……」

 

(あァァァんまりだァァあァ!!!)

 

「愕然。貴様のような少年がここで何をしている? 」

 

「あァ? 」

 

かつての無敵の一方通行にはありえなかったほどの危機を乗り越えて息をついていた上条(一方通行)が声がした後ろに振り向くと、そこには緑髪オールバック、2mほどの長身の白いスーツを着た男の姿があった。

 

(ダミーじゃないのか……?)

 

(ダミーがどォいうことかは知らねェが、あの白いスーツはだせェなァ……)

 

「人に名前を聞くときは名乗ってからってママに習わなかったのかァ?? 」

 

アウレオルスの白いスーツが気に入らないのかどうかはわからないが、上条(一方通行)はアウレオルスを煽り始めた。

 

「この領域に来る者は私の名前を知っている者だと思っているのでな。それに、私は見知らぬ者にわざわざ名乗ってやる程親切では無いのだよ」

 

「人には優しくしねェと友達がいなくなるぜェ?アウレオルス=イザードくン? 」

 

(一方通行!! そいつは口に出したことはなんでも実現するから気をつけろよ!!)

 

(はァァァ!? 無茶が過ぎるだろォ!!!)

 

厳密には思念を現実に表す魔術なのだが、口に出すことによってイメージの固定を図っているアウレオルスには適切な説明と言えるだろう。

 

「間然。私は世界を敵に回した身なのでな。最初からそんな者は居らぬ!!! 」

 

「寂しいやつだなァ!!! ぼっちを公言してンじゃねェぞォォ!!! 」

 

上条(一方通行)はベクトル変換でアウレオルスに突撃する。アウレオルスは首に医療用の鍼を指した。

 

「少年、ここであったことは全て忘れよ」

 

その瞬間、上条と一方通行はとてつもない違和感を感じ、浮いていた体も地面に落ちた。

 

(あれ? いつの間にここまで来たんだ?)

 

(誰だこのおっさン……)

 

どうやら上条(一方通行)の反射が無意識に働いたのだろう。足のベクトル変換が消された代わりに、勝手に頭に働いた反射のせいで上条たちの記憶は中途半端に消し飛ばされた。

 

「眠れ!! 」

 

記憶が中途半端に消えたことを知らないアウレオルスがそう言うと、上条たちは頭に強い衝撃を感じた。

 

「痛ェ!!! なンだこりゃァ!!! 」

 

(…思い出したぞ!! 一方通行!! 頭を右手で触れ!!!)

 

(? まァいいけどよォ……)

 

上条(一方通行)が右手で頭に触れると、幻想殺しが働いた音が響き、上条の体に記憶が戻った。

 

「愕然!!何故眠らないのだ!!? 」

 

「……めンどくせェ……こォいう輩はさっさと殺すに限る」

 

(殺すんじゃないぞ!!)

 

(わかってンよォ!!)

 

アウレオルスが黄金錬成の詠唱要員が欠けたのかなどと考えているうちに上条(一方通行)はベクトル変換による高速移動で詰め寄る。

 

「っ! ……死ねぇ!! 」

 

アウレオルスが咄嗟に死ねと呟くが、上条の体の心臓は止まることなく動き続ける。

 

どうやらアウレオルスの深層心理が上条(一方通行)は死なないと信じこんでいるため、黄金錬成が働いていないようだ。

 

「……じゃァな」

 

一方通行がアウレオルスの首を掴むと、ベクトル操作で全身から脳に伝わる血液を遮断し、気絶させた。

 

(一方通行……優しくなったんだな!! 父さんは嬉しいぞ!!)

 

(……俺は打ち止めに危害を加えるバカしか殺さねェって決めてンだよ……あと気持ち悪ィからそのキャラやめろォ!!)

 

「大丈夫かい!?……って君なら心配無いか」

 

「先生っ!!! 」

 

階段を駆け上がって来たステイルと、倒れているアウレオルスに駆け寄る姫神。

 

俺はもう疲れたから後はお前が説得しろォと言って上条に主導権を渡した一方通行。

 

「……あなたが。先生を殺したの? 」

 

「……死んじゃいねえよ。気絶してるだけだ」

 

「そう……」

 

それを聞いてホッとする姫神。しかし、歪んだ顔をしたステイルからは残酷な言葉が告げられる。

 

「……悪いけど、君の言う先生は大罪人だ。故に裁かれなければならない」

 

「……そう、ですか……」

 

暗に二度とアウレオルスとは会うことができなくなると告げられた姫神は肩を落とした。

 

「……ステイル!! アウレオルスが死なずになんとかなる方法はねえのかよ!? 」

 

「……あるにはあるんだけど……結局そこの彼女は辛い思いをすることになるね」

 

「……記憶を消して顔を焼くのか」

 

「……そうなるね」

 

上条たちの間に沈黙が走る。

 

(なァンで三下はコイツを殺したくねェンだァ?)

 

(……オティヌスだ)

 

(あァ?)

 

(姫神のこともあるけど、コイツならオティヌスに対抗できるかもしれない)

 

(……三下はバカなンですかァ??)

 

(……なんでだよ)

 

2人(?)は険悪な空気に陥る。

 

(なンでここにいる生徒が魔術とやらを使えると思ってンだァ? 恐らく、あの青い光の魔術行使で傷ついた生徒をアウレオルスとやらがチートみてェな魔術でいちいち治療してるからだろォな)

 

(……それがなんなんだ?)

 

(そもそも、アウレオルスはどォやってあのチート魔術を使ってンだァ? 個人で扱えるなら学園都市はとっくに魔術サイドに落とされてるよなァ?)

 

(……! まさか生徒が!?)

 

(そォとしか考えられねェな。詳しくは知らねェが、大人数の生徒たちにあの魔術の詠唱を行わせてンだろォ。詠唱のための生徒たちは1人でも欠けないためにあの魔術で侵入者から身を守り、同時に侵入者を殲滅する。それで傷ついた生徒たちは生徒自身が発動させた魔術で治療する。随分と素敵な防衛システムだなァ?)

 

(……じゃあオティヌスは)

 

(あァ。アウレオルスが魔術サイドでの大罪人ってことを考えると、詠唱を手伝ってくれるやつらも居ねェだろォしな。役には立たねェだろォよ)

 

(……クソっ!!)

 

(ま、他にこのチート魔術を使える奴を探したらいいンじゃねェの?)

 

(……確かこの黄金錬成っていうのはグノーシズムの魔術って呼ばれてたような……グノーシズムの人間は魔術サイドを敵に回すことになるらしいから誰も使えないんじゃないか?)

 

(……じゃァまた違う方法を考えればいいだろォが)

 

(……そうだな! まだまだ他にも方法はあるだろうしな!!)

 

(うるせェ!! ちったァ静かにしやがれェ!!!)

 

「……わかりました。先生をなんとかしてください」

 

姫神がボソッと呟いた。

 

「……悪いけど、僕は彼のための記憶消去術式は知らないよ。顔を変えることはできるだろうけどね」

 

「……そんな……」

 

「じゃあ俺がやるよ」

 

(……一方通行!! お願い!!!)

 

(あァもォお前も記憶ぐらい消せるよォになっとけよ!!! なンのための左手の能力だよ!! 進化しろ!!! 反射だけとか甘えンな!!! せめてベクトル操作ぐらいできるよォになれよ!!! わざわざ入れ替わるのがめンどくせェンだよ!!!)

 

(はいはいわかったからよろしくなー)

 

(あァァァァァァァめンどくせェ!!!!!!)

 

結局、ツンデレの一方通行はちゃんとアウレオルスの記憶を消したそうな。

 

ーーー???ーーー

 

優秀な彼はヒーローに倒されてしまいました。

 

せめて処刑は逃れさせようと考えた人たちに記憶を消され、顔も変えられました。

 

罪からは逃れられた彼ですが、本当に幸せになれたのでしょうか。

 

不幸な少女が救われたことも知らないまま、少女のことさえも忘れてしまった彼。

 

彼がローマ正教から逃げ出し、グノーシズムに走らなければこんなことにはならなかったでしょう。

 

少女を助けることを諦め、ひたすら時が流れるのを待っていればこんなことにはならなかった。

 

これはそんなことができない優しい彼が招いた結末。

 

皮肉にも、ヒーローになろうとした彼が招いた結末。


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