ふたりはヒーロー   作:かきねん

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助け合うヒーロー

「ったくよォ、なんで俺がわざわざこンなことを…。」

 

(悪い!!今日はタイムセールがあるんだ!!)

 

補修が終わった上条(一方通行)はまたもやベクトル変換で猛スピードで飛んでいる。

 

地面を蹴った時のベクトルで浮き上がり、重力のベクトルを推進力とすることで地面に足をつけることなく高速移動を可能としている。

 

流石に人の目に付くところは普通に走るが…。

 

「ちょっと、アンタ!! 」

 

「あァ?? 」

 

後ろから声をかけられたのでそちらを向くと、そこには学園都市第3位の御坂美琴の姿があった。

 

「な…オリジナル!? 」

 

「オリジナルって何よオリジナルって。」

 

(おい一方通行!!俺と変われ!!)

 

(…。)

 

一方通行からの返事は無い。

 

「わ、悪ィ、今日はタイムセールがあるからちょっと無理ィ!! 」

 

「ちょ、ちょっと!! 」

 

そう言うと上条(一方通行)はベクトル変換で駆け出した。

 

「…アイツ、飛んでる…。」

 

ツンツン頭のアイツは本当に無能力者なのだろうかと疑い始めた美琴であった。

 

(…。)

 

(一方通行!!大丈夫か!?)

 

(…あァ、悪ィ、性に合わねェことしちまったなァ…。)

 

(大丈夫ならいいんだけど…やっぱり御坂は苦手か?)

 

(…この時代の妹達が殺され続けてるってのを見逃してる状況で会うのはキツイかも知れねェなァ…。)

 

(…そうか…。)

 

2人は暫く沈黙する。

 

タイムセールがあるスーパーは寮を通り過ぎたところにあるので寮の前を通り過ぎようとすると、自分の部屋の前に知人が居ることに気づいた。

 

(ちょ、一方通行ストーーーップ!!!)

 

「いちいち騒がしいやつだなァ…なんだァ?? 」

 

(ごめん、今は体を譲ってもらっていいか?)

 

「まァいいけどよォ…。」

 

上条は一方通行から体の所有権を受け取ると、自分の部屋の前に駆け出した。

 

(お、オイ三下ァ!!タイムセールはどォすンだァ!?)

 

「悪い!!今はそれどころじゃ無い!! 」

 

(なんだか嫌な予感がするんだ…。)

 

(…そォか。)

 

上条は寮の階段を駆け上がり、自分の部屋の前まで駆けつけると、そこには部屋の中でも付けっぱなしだったヴェールを被っておらず、血まみれで倒れているインデックスと赤髪の黒い神父服を着た長身の知人が居た。

 

「"ステイル"!!テメェインデックスに何してやがる!!! 」

 

そう言うと、ステイルはこちらに振り向いた。

 

「…学園都市の生徒なのに僕とこの子の名前を知ってるということは…君は普通の生徒じゃ無いね? 」

 

「何言ってんだよ!!一緒に戦ったこともあるじゃねえか!!インデックスを自分の命にかけても守るって言ってたじゃねえか!!なのに何やってんだよ!!! 」

 

(落ち着け三下ァ、ここは"過去"だ。お前があいつのことを知ってても今のあいつはお前のことを知らねェはずだ。)

 

(っ…そうか、そうだよな…。)

 

「…君が僕の何を知ってるのかは知らないが、この子の回収を邪魔するというのなら容赦なく消し尽くすよ? 」

 

ステイルは右手にルーンを構える。

 

「じゃあ俺はそんなお前を潰してやるよ!! 」

 

ステイルは小手調べに炎の槍を飛ばしたが、上条の右手によってそれは消えてしまった。

 

「なにぃ…!! 」

 

上条はさらにステイルとの距離を縮める。

 

「イノケンティウス!! 」

 

ステイルは設置した大量のルーンを使って最終兵器のイノケンティウスを出現させた。

 

イノケンティウスが十字架で上条を潰そうとするが、上条はそれを右手で受け止める。

 

さっきの槍は一発で消すことができたが、今回はそう簡単にはいかないらしい。

 

(三下ァ、お前の力で消滅しねェってことは消える度に出現してるンじゃねェか?)

 

「っ…じゃあどうすれば!! 」

 

(そのエセ神父はルーンって言うのかは知らねェが、カードを使ってやがった。ってこたァその化け物はルーンから延々と魔力ってのを供給されてンじゃねェか?)

 

「…じゃあどこにあるんだよ!! 」

 

(多分下の階だァ。俺は魔術を解析したことがあるが、確かにその時に感じた力が下の階から感じるぜェ。)

 

「わかった!!下だな!!! 」

 

ステイルは一体何を一人で喋ってるんだと言わんばかりの目でこちらを見ていたが、そんなことは気にせず上条は後ろに下がった後、下の階へ続く階段を駆け降りた。

 

すると、そこには一面ルーンがビッシリと貼り付けられているという異様な光景が広がっていた。

 

「これをなんとかすれば…。」

 

(三下ァ、そこにある警報装置を押せ。そォすればスプリンクラーでインクが流れたルーンとやらは使い物にならなくなるンじゃねェかァ?)

 

「わかった!! 」

 

上条が赤い色の警報装置のボタンを押すと、スプリンクラーが作動し、軽くゲリラ豪雨ぐらいはあるんじゃないかという量の水が散布された。

 

おかげで上条も濡れ雑巾状態であるが。

 

上条が階段を駆け上がりステイルの元へ行くと、ステイルも同じように濡れ雑巾となり、イノケンティウスは既に消え去っていた。

 

「ぼ、僕のイノケンティウスが…。」

 

「歯ぁ食いしばれよ!!この馬鹿野郎があああああ!!!! 」

 

上条がステイルに向かって駆け出し、頬に右手ストレートを叩き込むと、ステイルはあっさりと気を失った。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

(三下ァ、こいつはそこの大食らいシスターを守るって言ってたンだよなァ?)

 

「ん?あ、ああ。そうだけど…。」

 

(じゃあこいつにもこいつなりの事情ってのがあるわけだァ。今からそいつを俺が聞き出すから変わりやがれェ。)

 

「…拷問とかしないよな? 」

 

(拷問はしねェよ。ただ脅すだけだ。)

 

こういうのは自分よりも一方通行の方が向いているかと考え、上条は体の主導権を譲った。

 

上条(一方通行)はステイルに触れるとステイルの電気信号を操り筋肉を硬直させ、動けないようにした。

 

「今から俺の質問に正直に答えねェとギリギリショック死しないレベルの痛みを与え続けるがァ…今やるべきことはわかってるよなァ? 」

 

(えげつねえ…。)

 

「…そう簡単に僕が喋ると思うかい? 」

 

「では最初の質問でェす。」

 

上条(一方通行)はステイルを無視して質問を始めた。

 

「お前の使う魔術ではインデックスの背中をあンな風に斬ることができねェはずだァ。つまり仲間が居るンだよなァ?そいつの名前は? 」

 

「…言えないね。」

 

(三下、誰だ?)

 

(え、えっと、確か神裂火織だ。)

 

「ふーン、神裂火織ねェ…。」

 

「なっ!! 」

 

ステイルは驚愕の表情を浮かべる。

 

(他に特徴はァ?)

 

(世界に20人しか居ない貴重な聖人体質で胸が大きい、元天草式の女教皇、現在イギリス清教所属で七天七刀って刀を使う…ぐらいか?)

 

「聖人体質でェ、胸が大きくてェ、元天草式の女教皇でェ、今はイギリス清教所属でェ、七天七刀っていう刀を使うのかァ、へェー…。」

 

「何故そこまでわかるんだい!? 」

 

「そりゃあ脳内の情報を読み取れますからねェ…。あとは喋った方が楽じゃねェの? 」

 

「…仕方ないか。」

 

ハッタリではあるがステイルは騙されたようだ。

 

ステイルはインデックスとの関係、自分たちの任務、完全記憶能力者で10万3000冊の原典を記憶しているインデックスは1年周期で記憶を消さなければインデックスは死んでしまうことなど全てを話した。

 

「…はァ!? 」

 

一方通行は唐突に素っ頓狂な声をあげた。

 

(どうしたんだ!?)

 

(後で説明する。)

 

「ど、どうしたんだい!? 」

 

「…いや、とりあえずインデックスを治療すンぞォ…どこに連れて行けばいいンだァ? 」

 

「あ、ああ。着いてきてくれ。」

 

硬直が解けたステイルはインデックスを背負い、神裂との集合地点に向かった。

 

ーーー第19学区 廃工場ーーー

 

ステイルと神裂は学園都市で最も寂れており、身を隠しやすい第19学区の廃工場に潜伏しているようだ。

 

「ステイル…!それにあなたは!? 」

 

「神裂、彼は少なくとも敵じゃないよ。」

 

「インデックスを助けねェといけねェからなァ、ちっとばかし協力してやンよォ。」

 

「は、はあ。それはありがたいのですが…。」

 

「あくせ…上条当麻だァ。呼び方は好きにしろォ。それと、俺の右手には幻想殺しっていう魔術だろォが能力だろォが消しちまう力がある。これが今回のキーポイントだァ。」

 

「あなたは学生ではないのですか!?何故魔術のことを…。」

 

「ま、それなりの経験があるってことだァ。」

 

(おいこら一方通行!!俺のハードルを上げんじゃねえ!!)

 

(どォせ魔術師とやらと戦ってたンだろォ?だったら同じじゃねェか。)

 

(…そうだけども…。)

 

「そうでしたか…では何故その右手が関係しているのですか? 」

 

神裂は若干訝しむような目でこちらを見る。

 

「そォそォ、今からそれを解説してやろォと思ってたンだけどよォ。」

 

少し間が空いてから一方通行は語り出した。

 

「外の魔術師ってのはここまで科学に疎いもンなンですかねェ? 」

 

「「…は? 」」

 

(一方通行、どういうことだ?)

 

「だいたいよォ、本を10万3000冊で脳の容量を85%を占めてるって時点でおかしいとは思わねェのかァ?なンでそんな魔術書の情報量を割り出すことができるんだァ? 」

 

「それは…。」

 

「それによォ、1年で15%を消費するなら完全記憶能力者は6年とちょっとで死なねェとおかしいよなァ?でもよォ、世界の完全記憶能力者って普通60歳以上は生きるんだぜェ? 」

 

「つ、つまりインデックスは…。」

 

「あァ、おそらく何らかの呪いとやらがかけられてるだろォなァ。」

 

それを聞いた神裂とステイルの顔が怒りに歪む。

 

「あの女狐が…! 」

 

「私たちを騙していたんですね…!! 」

 

(なるほど、インデックスってそうやって記憶が消されてたのか。)

 

(…そォいえばお前は記憶喪失だったんだなァ。)

 

「…そこであなたの幻想殺しというわけですか。」

 

「そォだ。悪ィが流石に呪いの場所までは分からねェから、それは探してくれよォ。ついでに回復魔術ってのもあるんだろォ?それも頼む。」

 

「わかったよ。」

 

ーーー5分後ーーー

 

「上条当麻!!見つけましたよ!!口の中です! 」

 

「おう!!じゃあ今すぐ壊すぞ!! 」

 

今は上条に主導権が渡っている。

 

(あー、柄にもなく長いこと喋っちまったなァ…。)

 

(俺じゃ分からなかったから助かったよ。ありがとな、一方通行。)

 

(…当たり前のことをしたまでだァ。)

 

ツンデレクールキャラ特有のセリフを放った一方通行。

 

「…じゃあ壊すぞ。」

 

そう言って上条はインデックスの口内に右手の指を入れた。

 

しばらくするとパリンとガラスが割れたような幻想殺し特有の音が響き渡り、インデックスの目がカッと開いた。

 

「警告、第3章から第2節、第1から第3までの全結界の貫通を確認。自動書記を起動します。」

 

そう言いながらインデックスは浮き上がり、上条たちから距離を取った。

 

「敵性物質排除のために最も有効である術式を構築。聖ジョージの聖域を展開した後、竜王の殺息を発動します。」

 

インデックスがそう言うと、インデックスの周りに結界が発生し、その隙間から淡く青色に光る光線を上条に向かって打ち出した。

 

咄嗟にそれを右手で受け止めるが打ち消すことができず、あまりにも強力な威力のためコンクリートの地面に足が沈み込んでいく。

 

「ぐ、ぐおぉ…。」

 

「なんてことだ…。」

 

「あの子が魔術を…。」

 

(ぐっ…三下ァ!!そのビームを左手で受け止めやがれェ!!それから俺に主導権を譲れェ!!)

 

(どうするつもりだ!!??)

 

(俺がそれを解析すれば反射できるだろ!?魔術は向きを逸らすぐらいしかできねェが少なくとも左手を失うことはねェ!!いいからさっさと左手で受け止めろ!!)

 

(わかった!!)

 

上条は右手と左手を入れ替え、主導権を一方通行に渡した。

 

「!?何を!? 」

 

「そんなことをしたら幻想殺しじゃない君の左手が…!! 」

 

「…竜王の殺息の解析を開始。第5結界…解除…。」

 

一方通行は竜王の殺息の解析を始めた。

 

「どういうことだ!?幻想殺しは右手だけのはず…! 」

 

「まだ何かあるというのですか!? 」

 

解析が進むたびに竜王の殺息はさらに太くなる。

 

「…現状では効果が無いと判断。さらなる破壊のために海皇神の御矛(トライデント)を起動。第3式…。」

 

「…第4結界…解除ォ! 」

 

「第2式…第1式…構築完了。海皇神の御矛、発動します。」

 

そう言うと、インデックスの後ろに全長2mはある鈍い黄金色の三叉の矛が現れた。

 

それは回転を始め、まるで一本槍のようになると、上条へ向かって飛び出した。

 

「そうはさせません!! 」

 

そう言った神裂が"唯閃"で三叉の矛を弾いた。

 

それをステイルが出したイノケンティウスが受け止め二つに折ると、それは消滅した。

 

「せっかくあの子を助けられるチャンスだからね、そう簡単に邪魔はさせないよ! 」

 

「最終結界…解除ォォォ!! 」

 

上条(一方通行)が竜王の殺息を解析した瞬間、竜王の殺息は反射され、聖ジョージの聖域を破って威力が落ちた後、インデックスの鳩尾に命中した。

 

インデックスに上条の部屋に忘れていたヴェールを被せておいたため、歩く教会の力は健在である。

 

竜王の殺息はインデックスの胸を貫くことなくインデックスを上に仰け反らせた。

 

その隙に上条(一方通行)はインデックスに駆け寄り、右手で頭に触れた。

 

「聖ジョージの聖域…全結界…の…破壊を確認…自動書記を終了しま…す…。」

 

「やっ…たか…。」

 

上条(一方通行)はそう言うと地面に倒れこんでしまった。

 

「いえ、まだです!! 」

 

神裂は大声で叫ぶ。

 

竜王の殺息で貫かれた廃工場の天井が白い羽根となってひらひらと舞い降りて来る。

 

「上条当麻!!早く逃げてください!!!その羽根は一枚に竜王の殺息と同威力の力が込められています!!!だから!!早く!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー???ーーー

 

 

 

 

 

(…クソッタレがァ…結局悪党ってのはこンな無様な死に方をするもンなのか…。)

 

 

 

 

 

(…俺はお前のことは悪党なんて言わねえよ。)

 

 

 

 

 

(ダメなンだよ…俺は妹達を10000人殺した。それ以外にも数え切れねェほどの人間を殺しちまったンだよ…。)

 

 

 

 

 

(…じゃあさ、その殺してしまった人たちの分だけ誰かを救えばいいんじゃないのか?)

 

 

 

 

 

(…もう遅いんだァ…もうすぐ俺は死ぬンだぜェ?…あの羽根が体に当たった瞬間になァ…。)

 

 

 

 

 

(…じゃあまずは俺がお前を助けてやるよ!!!)

 

 

 

 

 

(何を…。)

 

 

 

 

 

上条の体は自然と動き出した。




あくまでも海皇神の御矛というのはオリジナルの魔術ですよ(´・ω・` )

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