FPS民が世界を荒らしていますが特に問題はありません   作:K.I.Aさん

1 / 7
デデン デッデ デンデン…

デデン デッデ デンデン…


学園黙示録編~FPS民が世界を荒らしていますが特に問題はありません~
第1話


藤美学園二年生、小室考は考える。 一体全体どうしてこうなってしまったのか、と。

朝に母親に春の日差しを浴びて温かみを帯びた布団から追い出されるように起こされ、バターをたっぷり乗せたトーストを眠気覚ましに口にする。

すぐに学校に行くが、先生たちのありがたい授業を受けることなく抜け出し、いつものように滅多に人の来ることのない旧校舎の非常階段へ赴いて時間を潰す。

日が暮れ始め、家へと帰る者と部活へ勤しむ者が現れ始めたら自分の教室へと戻り鞄を手にして家へと帰る。

帰り際に目に留まったゲームセンターに立ち寄って遊んだり、店で新譜の確認をしたり、漫画を読んだりしてようやく帰宅をし。

そして夕食を食べて、帰宅までに収穫した娯楽品で寝る前まで遊び、いつもの時間で布団に潜って夢の世界へと旅立つ。

そんなろくでもない日常がいつまでも、いつまでも繰り返されると僕は思っていた。

でも、それは脆くも崩れ落ちた。

 

――人が人を喰らう。 まるで映画でしかない作り物の物語を実際に目にしてしまった、その瞬間から。

 

僕は今、学校の天文台へ続く階段を上っていた。 一体どうして自分はこんな目に遭っているのか、そしてなんで自分はこんなにも必死に逃げ回らないといけないのだろうか。

こんなにも全力で走った事、いままであっただろうか。 心臓が強く、そして激しく鼓動することによって体内の血液が高速で循環し酸素と二酸化炭素を循環させている。

全身が千切れるように苦しく、右手に持っている唯一の武器である木製バットが煩わしく感じた。 だが、これを手放すわけにはいかない。

それに苦しいのは自分だけじゃないのだ。 ふと、後ろへと振り返り二人の姿を確認する。

 

「永、大丈夫なの!? 肩貸した方がいい?」

「大丈夫だ、麗。 本当に大丈夫だから、気にするな。 後で止血したらなんとかなる……筈だ。」

 

階段で膝を付き倒れこんだ男子生徒は僕の友人である井豪永。 そしてそんな永を助けようと傍に歩み寄る、箒を折って即席で作った槍を持つロングヘアの女子生徒が幼馴染の宮本麗だ。

仲の慎ましい恋人同士である二人の姿を見て思わず黒い想いが心から溢れようとしたのを感じ、慌てて視線を逸らした。

こんな気持ちを沸かせている場合じゃないだろう、そう自分に何度も何度も言い聞かせる。

そして永は傷をしていた。 それは何故か、本校舎からこちらの校舎に移ろうとし、繋がっている渡り廊下を通り抜けようとした時にまでさかのぼる。

屋上へと向かう僕らを遮るようにして現れた現代国語を担当にしている脇坂先生だった(・・・)ナニかに襲われたのだ。

その際に麗が槍術部で学んだ見事な槍裁きを披露し、人間ならばとっくに倒れているほどの威力を持った連撃を何度も食らわせ、最後には心臓を一突き。

豊満な肢体から産まれた強烈な一撃は、60キログラム程度、それ以上はある筈の成人男性の体を持ち上げてしまうほどの威力。 人間ならば即死確定だが如何せん相手が悪かった。

確実に心臓を貫かれ、致命傷を受けた筈だったヤツは平然と動き出したのだ。

有り得ない、その際に浮かんだ麗の表情はまさにそれだった。 同様した彼女はそれが大きな原因となって致命的な隙を作ってしまう。

ヤツは胸に刺さった槍を捻じるようにして身体を動かし、その際に槍を持っていた麗は力に対抗しきれず渡り廊下の手すりに身体を強く打たれる。

すぐに永がヤツを後ろから羽交い絞めにして麗を逃がし、その行動を危険と判断した僕はすぐに離れるように注意した……が時すでに遅し。

空手の有段者である永の力ですらヤツの力の前には及ばず、結果的にはバットで頭を飛ばす事で助けれたものの左二の腕の肉を喰い千切られるという怪我を負ったのだった。

 

永は痛々しい左腕の痛みを堪えるように出血を抑え、麗は自分の想い人が自身の思慮の浅さの所為で怪我を負ってしまったと考えているのだろうか、悔やむような……心配するような目で永を見つめ、そして自分は先頭に立って安全を確認する。

そして、屋上の天文台へと続く普段は鍵が掛けられて封印されている扉の窓をバットで殴って割り、破片で怪我をしてしまわないように向こう側へと手をまわして鍵を外した。

二人は……しっかりとついてきている。 

顔を合わせて無言のままアイコンタクトを交わして二人はしっかりと頷きを返してくれたのを確認してから、ドアを開ける。

怪我をしている永を前に出すわけにはいかないので、先に前に出て屋上を確認する。 ……どうやらまだ、ここにはヤツらは現れていないようだ。

だが、そこから見えた光景は……到底信じられないものだった。

 

「何だ、これは……?」

 

思わず漏れてしまったその声は僕ら三人の心象を代表している物に違いないだろう。

何十年も戦争が無く、平和そのものだった日本の道路が血で染まっているだなんて。

民家や高層ビルの至る所からは炎が燃え上がり、黒い煙が立っているだなんて。

沢山のヤツらが街を徘徊し、逃げ回る人々を襲い掛かかっているだなんて。

 

 

『敵の歩兵隊を発見!』『敵軍部隊を発見!』    『了解!』『了解!』『了解!』

『敵の潜水艦を発見!』   『駄目だ!』『駄目だ!』『駄目だ!』

 

『奴さん射的の的になりたいようです!』 『撃てー!』 『我々の陣地を守れ!』

 

そして――そんなヤツらを木端微塵にブッ飛ばしている幾つもの戦車と……兵士たちがいるだなんて。

 

 

 

「…………………………はい?」

 

 

 

ある高速道路上では道路に並んだ自動車の上を戦車が潰すようにして力強く駆動し、ヤツらの集まっている方向に向いている主砲が火を噴いた。

だが自動車の上で射撃しているせいで不安定なのかヤツらの若干上を砲弾が飛び、見事その射線上のデパートに命中。 10階ぐらいの建物は綺麗に崩れるようにして落ちていった。

ある住宅地ではヤツらを踏み潰しながらも装甲車が悠遊と走り、幾つも装着している装置から絶え間なくミサイルを乱射する。

白い軌道を描いたミサイルはヤツらを吹き飛ばすこともあるが狙いがずいぶん適当なのだろうか、大抵の外れ弾が宙を舞いドミノでも倒していくかのように民家を次々と崩していく。

ある大通りでは人が乗った幾つものバギーが地面を駆け巡り、奴らへと勇敢にも正面から向かっていく。

奴らの数十メートル前でバギーに乗ってた人達が突如一斉に転がるようにして下車、勢いの残ったバギーは奴らの群れへと突っ込んだかと思うといきなり大爆破を起こし、コンクリートで整地された地面もろともヤツらを吹き飛ばし穴ボコだらけにする。

 

そして空を見上げてみれば僕らの頭上を編隊の組んだヘリコプターが何処かへと飛んでいく姿があった。

あるヘリは上空でホバリングしたまま、左右に設置されたミニガンを掃射しながら落下用のロープも使わずに次々と人間が飛び降りていき空中で何事もなかったかのようにパラシュートを開き地面へと降りていく。

その数はどうみてもそのヘリコプターに搭乗できる人数を超えているのは確定的に明らか。

あるヘリは沢山立てられている高層ビルと高層ビルの間をまるで曲芸のように避けながらも、取り付けられている機銃を掃射しまくっている。

左右に乗っている兵士たちによるロケットランチャーによる援護射撃も途切れなく行われ、次々とヤツら共々建築物を壊しまくっているようだ。

キイイィィン、という轟音が近づいてきたと思ったら突然背中から強烈な風に煽られ、隣で立っていた麗が体制を崩す。

何事かと思い、今しがた僕らのすぐ上を高速に飛んで行った何かに視線を向けてみればそこには戦闘機が空を舞っていた。

戦闘機は機銃による対地攻撃を行ったのか、弧を描いた特徴的なジェット煙を残し急降下からのキツい急上昇をしていった。

 

 

 

――あれッ? なんかヤツらの被害よりもアイツらの所為で余計に被害でかくなってね?

 

 

 

 





考「なんだ、これは?一体、何が起こってるんだ……!?(道路を走るエイブラムスを見ながら)」
麗「ついさっきまではいつも通りだったのに……!(平和的な意味で)」

・『敵の潜水艦を発見!』『←駄目だ!』【BattleField1942】
ある兵士が砂漠のど真ん中にて潜水艦を発見し、味方に帰ってきた返事がこれ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。