そして、応急修理女神のヒロイン力のまさかの向上。
とある孤島で夕張がトチ狂った提案をしたり、ラバウル鎮守府がてんてこ舞いになったあの日から早一ヶ月ほどが過ぎ去る。
コレは、そんな中の港湾施設に住むとある応急修理女神の一日の記録である。
港湾施設の朝は早い。
まだ時刻は早く、水平線の向こうからようやく朝日が顔を出す頃…。
半ば名目上の主と化しているアクセルが起き出す前に、応急修理女神が寝床からのそのそと這い出してから一日は始まる。
彼女は、その手の平サイズのボディからは想像できない機敏さで施設内を駆け回り。
あちこちでやりたい放題すき放題やった挙句寝落ちしていた妖精らを蹴り起こすと、まず真っ先に食料庫へと向かう。
そして、中にある食材を幾つか吟味し。どこからともなく取り出した篭に食材を放り込むとソレを頭上に掲げて厨房へと走る。
一部の装備妖精がよく食事をしている光景が提督らに目撃されているが、原則彼女達は食事を必要としていない。
彼女達は、霊的なサムシングや土地から発されるナニかによって体を維持しているとされている。がそのあたりは未だに不明である。
では、そんな彼女が何故食料を抱えて厨房へ走り甲斐甲斐しく食事を用意するかというと。
「うぃー…っす」
「ふぁぁ……おはようございます」
彼女の相棒であるアクセルと、孤島唯一の艦娘である夕張のためである。
「おー、今日も美味そうだな」
「アクセルさん、何見てもソレ言ってませんか?」
「しゃーねぇだろ、アメーバ焼いたのとかが主食だったんだから」
「……そういえば、そうでしたね」
食卓に用意されている焼き魚に炊き立てのご飯、そしてワカメと豆腐の味噌汁に漬物。
俗に言う一般的な朝ごはんであるが、アクセルはソレを見てチンピラな風貌に子供のような笑顔を浮かべ。
夕張に突っ込みを入れられるも、彼の返しに彼が居た世界の記憶を持つ夕張は思わず納得してしまう。
そんな二人に、食べながら喋るのは行儀悪い。とぷんすこ応急修理女神はしゃもじを手に怒り。
二人は思い思いに返事をしながら、食事の手を進め……素直な二人に応急修理女神は満足げに頷く。
まごうこと無き、オカンの貫禄であった。
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そして朝食が終わり洗物が終わると、応急修理女神は定位置であるアクセルの肩へ飛び乗る。
たまに夕張の頭の上に乗る事もあるが、やはりこちらの方がしっくりくるのかどこか満足げだ。
「あー……確か今日は提督が6人ぐらい来るんだっけか」
腹をぼりぼり掻きながらクリップボードに止めた予定表を確認するアクセル。
ソレを応急修理女神は一緒に覗き込み、アクセルが見落とした時のフォローをすべく情報を頭へ叩き込む。
「しっかし、俺メカニックだったはずなのに気が付けばトレーダーみてぇな事してんな」
まぁ生きてくのに十分過ぎっからいいけどよ、と呟いてアクセルは歩き出す。
そしてラバウル鎮守府の元帥の協力もあり充実した、工廠施設の状況をアクセルとともに確認したり。
時にははっちゃけてやらかそうとする妖精に、アクセルから肩パルト発進した応急修理女神がミサイルじみたドロップキックを叩き込んだり。
武装試験艦として非常に重宝されている夕張が、怪しい笑みとともに帰ってこなくなりかけた瞬間手加減したドロップキックを放ったりと。
彼女の午前中はやらかそうとする連中への対処に追われる事となる。
なお、実はアクセルがドロップキックを叩き込まれる回数は実はそれほど多くはない。
だがしかし、叩き込まれる瞬間は最大出力のモノが叩き込まれる事になる。
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そして新装備の開発や見回り、洗濯が終わると昼食が始まる。
本日のメニューは焼きうどんであったが、これまたアクセル夕張共に美味い美味いと満足げに平らげ。
昼からは艤装の発注と受け取りにくる提督の応対に追われる。
「えーっと、規定素材数は……十分到達してるな。ほんじゃ連撃12cm単装砲4門に装甲タイルMを4セット確かに承ったぜ」
「よろしく頼む」
港湾施設の桟橋で、アクセルの肩の上で提督から受け取った目録を確認し彼が持ち込んできた素材を確認。
問題ないことをアクセルに伝えると、アクセル自身も再度確認した上で受注を受け……返事を聞いた提督が深く頭を下げる。
すると、どこからともなく集まってきた妖精らが次々と工廠施設へ素材を運び込んでいき……。
「しかし、受け取って間もなく製造できるとはな……」
「妖精達様々ってヤツだ、開発技術を確立しちまえばアイツらあっという間に作れるようになるからな」
頼もしい限りだ、と肩に座る応急修理女神の頭を指で撫でながら笑うアクセルにつられ提督も笑い。
呉鎮守府からはるばる足をのばしてやってきた提督は、港湾施設を今一度見回す。
あちこちには対空機銃が設置されており、更には桟橋の向こう側で見た事も無い艤装に妖精達が群がって何やら動作試験をしているのが見え。
もはやそこにはかつての前線基地の面影は残ってはおらず、今やこの場所は前線にぽつんと現れた艤装の入手場所と化していた。
「お…仕上がったみたいだな……ってオイてめぇら、一門明らかに12cmじゃねぇのが混じってるぞ。 あ? 18cmのが偶然できただぁ?」
「是非も無い」
「いいのか? 注文どおりじゃねぇんだが」
妖精が抱えて持ってきた艤装の一つに気付き突っ込むアクセルに、妖精はやっちまったぜ☆とばかりに答え。
思わぬ副産物に提督は恥も外聞もなく飛びつき、アクセルの疑問に首を縦に振った。
そんな二人がやり取りをしてる間に応急修理女神は地面へと飛び降り。
不穏なオーラを察して逃げようとした、やらかした妖精……ソレも実は常習犯へドロップキックを放ち。
そのまま、受注通り作らないとアクセルの信用問題になるだろうがっ。と怒りながら妖精にキャメルクラッチを叩き込む。
「……なぁ、アレはいいのか?」
「大丈夫だよ、もはや恒例行事だ」
心配そうに指差す提督に、肩をすくめながらアクセルは答え。
地面をタップし続けた妖精がぐたり、と崩れ落ちることによって制裁が完了。
解放されたやらかし妖精を、これまた手馴れた様子の妖精達が胴上げするように抱えて工廠ドックへと消えていった。
ラバウルの伊達元帥が慎重に情報を大本営へと報告した結果。
アクセルらが住む孤島は、潤沢な資材と素材を持つ提督にとって……重要な施設の一つへと変化していた。
その結果、虎視眈々とアクセルの首を狙うとあるフラグシップヲ級が、警備の厳重さに地団太を踏む羽目になったりしているが。
あまり彼らにそのあたりの事情は関係なかった。
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そして、次々とやってくる提督の注文を終え。日が暮れると。
応急修理女神はひょいっとアクセルの肩から飛び降り、一足先に夕食の支度を始め。
提督が礼として差し出してきた新鮮な鰹を手早く捌き、それ以外にも様々な食事を用意し終えると。
ドックにて夕張と一緒に油まみれになりながら、水陸両用車両へとマイクロバスを改造しているアクセル達を呼びに行く。
しかし作業に夢中になっているのか、二人は中々作業の手を止めようとせず……。
業を煮やした応急修理女神のドロップキックが炸裂、ようやく二人は手を洗い食卓へつき。
奇形じゃない新鮮な海の幸にアクセルが舌鼓をうちながら、瞬く間に二人で夕食を平らげる。
そして、二人はまた作業へ戻り応急修理女神は洗物をしてから風呂の用意をし。
また作業に没頭している二人を呼び、今度は素直にやってきた二人に風呂を勧める。
大体は自分は後で風呂に入るのだが、たまにアクセルにそのまま持ってかれて一緒に入る事もあったりする。
まぁ当然手の平サイズの応急修理女神にアクセルが何かをするわけもなく、互いに駄弁りながら風呂に入るだけなのだが。
ともあれ、風呂を上がれば後は適当に酒を飲み。そのまま就寝する。
そんな、特に事件も事故も胃痛もない。
とある孤島の応急修理女神の一日であった。
嘘装備図鑑No.4
レアリティ:☆☆レア
名称:連撃12cm単装砲
種別:小口径主砲
射程:短
装備適正:駆逐、軽巡、水母
能力:火力+2、対空+2、命中+1
装備編成に関わらず、昼戦・夜戦における連撃発生のチャンスを得る。この効果は同種装備を搭載する事で重複する。
入手条件:遠征『孤島のメカニックと接触せよ!2』成功報酬、12cm単装砲+謎兵器残骸を一定個数と交換
嘘装備図鑑No.5
レアリティ:☆☆レア
名称:連撃18cm単装砲
種別:中口径主砲
射程:中
装備適正:軽巡、重巡、戦艦、航戦(高速戦艦は装備不可)
能力:火力+5、対空+2、命中+2
装備編成に関わらず、昼戦・夜戦における連撃発生のチャンスを得る。この効果は同種装備を搭載する事で重複する。
入手条件:遠征『孤島のメカニックと接触せよ!2』成功報酬、連撃12cm単装砲交換時に低確率で入手。
嘘装備図鑑No.6
レアリティ:☆☆レア
名称:装甲タイルM
種別:追加装甲(中型)
装備適正:重巡、軽母、水母
能力:装甲+5、装備艦娘が致死ダメージ被弾時に装備消滅と引き換えに大破で生存する。
入手条件:遠征『孤島のメカニックと接触せよ!2』成功報酬、水上機怪戦車残骸A一定個数と交換。
そんなわけで、応急修理女神回でした。
マイクロバスのお披露目は次回をお楽しみに。
嘘装備図鑑については、なるべくぶっ壊れにならないよう艦これ装備のパラメータを確認しつつ設定してます。