……のはずが、ダメ提督共の集まりにしかならなかったかもしれない不具合。
提督が第六駆逐隊に絞られる薄い本を読み返したのは、きっと無関係。おそらく無関係。
アクセルと夕張と、マッドに片足突っ込んだ妖精共が孤島にてはっちゃけている頃。
兵藤が艤装を持ち帰ったラバウルでは、ちょっとした騒ぎになっていた。
「艦娘が装備可能な対艦ミサイルだと?!」
「バカな、常識はずれにも程がある……彼女らが装備できる艤装は太平洋戦争時の装備のみのはずだ?!」
「それならば、今先ほど兵藤中将の愛宕が射出し目標へ着弾させた事実はどうなる!!」
訂正、とんでもない騒ぎになっていた。
当初は兵藤の報告を鼻で笑って聞き流していた他の大将や中将らであったのだが。
愛する男をバカにされてちょっとお冠になった愛宕が進言し、確かに使って見せた光景と結果を見た結果。
芸術的な手の平コークスクリューが展開された。
「……兵藤中将、件の人物から受け取ってきた艤装の内訳を改めて報告してもらえるかね?」
他の元帥らがバカにする中、一人状況の推移を見守っていた胸に元帥の階級章を下げた男性。
立派なヒゲを蓄えたナイスミドルな男性の言葉に、場の空気が静まる。
「ハッ! 単発式の大型対艦ミサイル型艤装を8門、単独で連撃が可能な12cm単装砲が2門に艦娘が装備可能な高性能暗視装置が一基であります!……ですが」
「……続けたまえ」
「……暗視装置については、うちの艦隊の川内が死んでも離さないとゴネてまして」
兵藤が報告する内訳に更に会議室がざわめき。
暗視装置の言葉に何人かの提督が目を輝かせるが、続けて報告した兵藤の言葉にしょうがねぇかー。と諦める。
「……個体差は多少あるが、川内の夜戦への思い入れは特に強いからな。しょうがあるまい」
「そうでありますな、いやーうちの川内も海の上でもベッドの上でも夜戦夜戦うるさくて」
「憲兵! 不届きモノがいるぞぉー!!」
「ぬわぁぁ?!何をする貴様ら!私は大将だぞぉぉぉぉ!!」
元帥の言葉に、一人の提督が肩を竦めながら言葉を発し。
その内容に元帥がクワッと目を見開き憲兵を呼び出すや否や、天井裏から飛び降りてきた憲兵が大将の階級章を下げた提督を両脇から抱え連行していく。
「何はともあれ、兵藤中将には今回の功績に報いてやらねばならぬな」
「そ、そうでありますな。 中将が話をつけたも同然でありますしな」
嵐のように過ぎ去った憲兵らを見送った後、咳払いと共に元帥が口を開く。
そして。
「兵藤中将、今回得てきた装備の内鎮守府に大型対艦ミサイル4問と、連撃12cm単装砲1門を提出してくれ。残りは君の艦隊で運用するといい」
「は………ハッ! しかし元帥殿、よろしいのですか?」
先ほどの騒ぎを感じさせない、爽やかな元帥の表情と言葉にポカンと呆け。思わず聞き返す兵藤。
「構わぬよ、君の持ち帰った情報が間違いでないのならば。ソレらは潰して資源にするしかなかった機怪群で作れるものだ……目を吊り上げて全て取り上げるものでもない」
穏やかに笑った元帥は、秘書艦である暁が入れたお茶を啜り。湯飲みをことりと机に置く。
「今回の案件、ワシが責任を持って大本営へ報告しよう。君もアクセル殿の立場も悪くせん事を保証するよ」
コレにて、この議題は終わりだ。と元帥は告げ……。
そして、目元を不気味に暗くして瞳にギラリと狩人の眼光を宿し。
「続いての議題はだな……」
突発的な会議であった今回の会議、そもそも予定も何もないはずと提督らがざわめく。
そんな中、先ほど大将を連行していった憲兵らが戻ってき……会議室の中の空気が凍りつく。
「ケッコンカッコカリもしておらぬというのに、艦娘に不埒な行為を働いたモノへの軍法会議を執り行う」
瞳だけが笑ってない獰猛な笑みを浮かべ、元帥が宣言した。
彼の名は伊達右京、ラバウルが誇る最大戦力であると共に五月雨と雷、さらに電や響、とどめに暁とケッコンカッコカリしたツワモノであり。
ケッコンカッコカリ前の艦娘に手を出した提督らへのデストロイヤーでもあった。
尚、兵藤はケッコンカッコカリする前に愛宕に押し倒されたが、翌朝ケッコンカッコカリしたためギリギリセーフだったりする。
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手を出した艦娘と速やかにケッコンカッコカリする、と憲兵と元帥に逆さ吊りにされた提督が宣言する事により。
ちょっとした粛清と血の嵐が吹き荒れた会議は終わりを告げた。
「つ、疲れた……」
「お疲れ様です、良介さん」
自らの執務室に戻り、席につくや否や……机に突っ伏す兵藤。
ラバウルに赴任した当初から世話になった元帥であったが、彼が持つ階級という圧力とデストロイヤーな側面は苦手な青年であった。
「あの方は、本土の方の酷い提督がやった事の結果を見てきた方ですから……」
「うん、わかるんだよ。わかるんだけどね……」
頬に手を当てため息をついた愛宕の言葉に、頷いて同意を示す兵藤。
仁義に厚く正義に燃え、力無き者の盾となり刃となる。
この言葉を体言する、男として憧れる人物であるのは間違いない。間違いないのだが。
「……なんであの人がケッコンカッコカリした艦娘、全員幼いんだよ!!」
一番反応に困るわ! と防音なのを良い事に全力で叫ぶ兵藤であった。
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一方その頃、とある孤島のメカニック共はというと。
「ねぇねぇアクセルさん! もっとスーパーハープーン撃ちたい! 一度の出撃で100発くらい!!」
「お前アホか、弾薬代えらい事になるぞ。仮にポッド式開発成功してもぜってぇお前積めねぇぞ」
「こ、根性で!!」
「なんともならねぇよ」
ミサイルハッピーを発症した夕張を宥めるのに四苦八苦していた。
夕張の言葉を受け、真剣に設計図を書き始めるマッド妖精に応急修理女神がドロップキックを叩き込んだりする中。
頬をぷくー、と膨らませた夕張がとあるブツに視線をとめる。
「ねぇねぇアクセルさん」
「今度はなんだよ」
「アレにハープーン山盛りにして、牽引してっちゃダメ?」
「……お前、俺以上に狂った発想してんなぁ」
夕張が指し示した先、そこには。
港湾施設奪還作戦にてズタボロになり、そのまま整備が忘れられかけていたマイクロバスが鎮座していた。
提督図鑑No.1
名前:兵藤 良介(ひょうどう りょうすけ)
階級:中将
年齢:ようやくお酒とタバコが解禁される年齢
解説
提督としての適正が特に高かったため、少年の頃から提督として戦ってきた実は歴戦の提督。
もとはショタ提督、今はエロゲ主人公的提督。但し胃痛と頭痛がお友達、胃薬と頭痛薬は盟友。
提督図鑑No.2
名前:伊達 右京(だて うきょう)
階級:元帥
年齢:ナイスミドル
解説
ラバウル鎮守府立ち上げの頃から居るベテラン中のベテラン、実は元々は横須賀鎮守府所属。
そこにて、一本長編が書ける程度の騒動に巻き込まれ長年共に戦い続けてきた駆逐艦娘らと共にラバウルへとやってきた。
彼の前ではブラック鎮守府提督も、鬼畜提督もおとなしくなるらしい。が撲滅は中々できない事に頭を悩ませる。
尚、秘書艦は順番制らしい。何の当番だろうね(すっとぼけ)
コレも全て、個性豊かすぎる世の提督諸兄がいかんのや(露骨な責任転嫁)
冗談はさておき、当作品では艦娘は以下のように考えています。
・同じ艦娘が複数存在する
・フォーマットといえる性格、能力は同じだが。出来てからの経験や付き合いで幾らでも変わる。
感情がある少女としか思えない存在だから、完全に同一ってのはないと考えてます。
なお、コレは私の解釈なので本当のところは不明です。